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社長・青野のテレワーク術を大公開! 組織の一体感を高める「プロセス公開型マネジメント」って?(全2記事)

2022.02.09

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「サイボウズ、思っていたよりもチームワーク感がないんです」 中途社員の衝撃発言を受けた、青野社長のテレワーク奮闘記

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社主催の総合イベント「Cybozu Days」が2021年も開催されました。今回のテーマは「LOVE YOUR CHAOS」。クラウドサービスを活用した組織作りなどについて、豊富な知識を有したゲストがトークセッションを行いました。本記事では、サイボウズの青野慶久氏による「社長・青野のテレワーク術を大公開! 組織の一体感を高める『プロセス公開型マネジメント』って?」の模様を公開。テレワークで薄れたチーム感を取り戻すため、サイボウズでは「分報」が活用されていると言います。

サイボウズ社員が、青野慶久氏のテレワーク術を深堀り

翠氏(以下、翠):みなさま、こんにちは。

青野慶久氏(以下、青野):こんにちは。よろしくお願いします。

:楽しいセッションが始まるので、ぜひ聞いていただければと思います。今回は、「社長・青野のテレワーク術を大公開! 組織の一体感を高める『プロセス公開型マネジメント』って?」というセッションですね。

青野:3年目の翠さんに、社長のテレワーク術を暴かれるというセッションになっております。

:(笑)。ということで本セッションでは、気になったところやおもしろいなと思ったところがあれば、ツイートしていただいたり、写真を撮っていただけたらと思います。自己紹介ですが、登壇者は社長の青野慶久と私の2人でやっていこうと思います。

青野:青と緑(翠)で。

:そうなんですよ。実は今日、服を青と緑で揃えてきているんです(笑)。

本日は、この2人で進めさせていただけたらと思います。

2021年、青野氏の平均出社日数は月間2〜3日ほど

:さっそくなんですが、青野さんは現在テレワークされてると思うんですが、出社の回数を調べたところ、10月は4日間だけだったんですよね。

青野:そう! 実は、これでもけっこう多くて。

:そうなんですか?

青野:2021年でいったら、たぶん平均2日から3日ぐらいじゃないかな。10月はCybozu Daysがあるから(出社が多かった)。

:Cybozu Daysの打ち合わせとかですかね。

青野:そうなんですよ。実は、週1でもけっこう多いんですよね。

:そうなんですね。これは去年、サイボウズ式で出させていただいた記事なんですが、「オンライン社長宣言」ということで。

青野:そうそう、これね。

:「出社しない」と。

青野:そう、出社しない。結局、僕は古い人間だったんですよね(笑)。会社へ行ってみんなを会議室に集めて「おいこらー!」ってやるから、(働く場所によって格差が生まれて)アカンのやということがわかったので、バーチャルになろうと。基本は会議もオンラインでするし、会社へ行っても「みんな集まってこい」とか言わない。

:そうですよね。社内でも集まって会議することは減りましたね。

青野:会社に行ったとしても、それぞれが違う場所にバラけて会議する。なので、「オンライン社長」というのを自分の肩書にしようと思ってます。

家族と過ごす時間が増えて「テレワーク最高!」

:経営者の青野さんから見てもいいですし、青野さん個人的にでもいいんですが、実際テレワークってどこが良いところですかね?

青野:やっぱり時間ですよ。家から会社まで、片道30分強かかります。もっと言うと、着替えたり荷物を準備したりも含めると、ずいぶん時間を取られますよね。それが全部なくなりました。例えば、九州に講演に行ったりすると1日取られる。ところが(テレワークなら)1時間半。

:早いですよね。

青野:九州で1時間半講演した後に30分空けて、今度は四国で講演とか。こういうことがやっぱりできるんですよね。

:オンラインじゃなきゃできないことですよね。

青野:できない。時間(の効率)が圧倒的に良くなった。それによって、もう1つ良いのは家族との時間が増えたことですよね。

:そうですよね。青野さん、家族を大切にされてますから。

青野:大切に(笑)。まあがんばってるんですけれども。家族との時間が長く取れるようになったことが、僕にとっては「テレワーク最高!」と思ってるところですね。

:そうですよね。青野さんは「テレワーク最高!」なタイプですが、先ほど別のステージでは「テレワークつらたん」のセッションもやっておりまして、サイボウズ社員でも(テレワークが)つらい人もいたりするんです。

青野:なるほどね。

:青野さんは(テレワークの恩恵として)講演で遠方まで行かなくなったとか、いろいろあると思うんですが、実際にチームの個々人の働き方としてはどうなのかな? と思うところがあったりします。

中途社員が吐露した、衝撃的な本音

:青野さんとこのセッションの打ち合わせをしてる時に、1個衝撃的な話を聞かせていただいたんです。「サイボウズ、思ってたよりチーム感がない……」っていう、この発言。

青野:これ、中途入社でサイボウズに入られた方(の発言)ですよね。

:そうです。中途の方が青野さんに言ったという。

青野:チームワークの会社に入社したのに、コロナ禍だから会うこともできない。「サイボウズ、思っていたよりもチームワーク感がないんです。前の会社のほうがありました」と言われた、この衝撃。

:びっくりですよね。私が入社したのはコロナ禍の前なので、普通に会社で研修を受けて、研修旅行とかも行ったりしたんです。だから、新卒の子とかと話をすると、「あんまり会社のことをわかってないです」とか、サイボウズという会社に入った雰囲気を感じてないという人がいたりして。

青野:うわー、つらい。サイボウズはチームワークの会社なのに、チームワーク感が少ない。

:これはサイボウズだけじゃなくて、実際にテレワークされてる会社さんでも、コミュニケーションの問題を意識される方が多いようです。

青野:なるほどね。他社さんも同じことで悩んでるんですね。

:そうですね。調査を持ってきたんですが、中小・大企業どちらも、テレワークではコミュニケーションが問題になるところがあります。

青野:なるほど、やっぱりね。

「プロセスの共有」が、組織にチーム感を生む

:話が先ほどのスライドに戻るんですが、じゃあ実際に「チーム感」って何だったんだろう? ということを、青野さんに聞きたいなと思います。

青野:一応、理論的には「チーム」という言葉の定義がありまして。人が集まっているだけでは、チームになりませんよね。人が集まって、一緒に目指す目標・目的ができた時にチームと呼ばれます。

「みんなで売上をいくらあげよう」「こんな製品を作ろう」「甲子園を目指そう」でも何でもいいんですが、今度は役割分担が発生するわけですよね。それに向けて、「じゃあ、あなたは何をしますか?」ということを、みんなで共有していくわけですよ。

「僕はこの担当なんだけど、こうやりました」「これはここまで進みました」「これにちょっと困ってます」というプロセスを共有することで、一緒のところを目指しているんだな、という感覚をみんなで持つ。

そのプロセスの共有は、別に堅いことだけじゃないですよね。「自分がこれをやってる」だけじゃなくて、「こんなことを見て、こんなことを思いました」とか、もうちょっと雑談的なところも含めてプロセスを共有します。これこそがチーム感だと思ってるんですよね。

:なるほど。チーム感とは、プロセスの共有。会社に行っていると、仕事以外の話もしていましたね。私が出社すると、青野さんに「今日出社が早いね」と声を掛けていただいて、「実は今日、こういう準備があって……」という話をしていたり。

オンライン会議だけで会うようになると、時間も限られているので、(コミュニケーションが)必要最低限になっちゃうところがありますよね。

青野:会議が始まって、やることやって終わって、「はい、さよなら」ですもんね。文脈も何もないよね。

:あとは、目的がある会議になっちゃうと、「話をそらしちゃいけない」と思うところもあるかなと思います。

青野:「これを決めます」「はい、決まりました。終わり」って、効率はいいけどね。本当は会議が終わった後に、「実はあの件だけど……」「こんなこともありまして、あれとつないだらおもしろいと思ったんですよね」というふうに話が広がっていって、また次の問題発見や課題解決につながっていく。そういうのがチーム感の良いところですよね。

日報よりも細かく状況共有できる「分報」とは?

:テレワークで失ったチーム感は、プロセス共有の喪失であるということで。じゃあ、プロセス共有をどうしていくかという、今回のお話をしたいと思います。

「社長・青野のテレワーク術を大公開!」ということで、青野さんが実践していることをみなさんにいくつかお話しできればと思います。ということで、他にもいろいろされていることもあるんですが、青野さんには今回この3つをお話ししていただけたらと思います。

青野:なるほど。僕がやってきたものを拾ってくれたやつですね。(中途社員から)「チームワークがないです」と言われて(笑)、悩んでいろいろやってきましたよ。

:いろいろ模索されている姿もkintone上で見ているんですが、「分報での発信」からお話ししていこうかなと思います。分報が何だかご存じない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明だけさせていただきたいと思います。

日報は、1日の気づきをまとめられるところがあると思うんですが、分報はそれをもうちょっと細かく、作業ごとに「分」けて状況を説明するものです。例えば、「お昼へ行ってきます」「お昼から帰ってきました」という状況を、オフィスにいる時のように説明するものです。

これは実際の私の分報なんですが、勉強会のお弁当の注文とか、「まだだった。発注書作ります」とか、何をやってるのかを書く。テレワークだけど、チームメンバーに状況を報告する場所になってますね。

青野:なるほど。「今、翠さんは何をしてるな」というのが伝わってきますよね。

:オフィスだったら「晩御飯は何を食べた」など、何気ない近況の話をするかもしれないですが、わざわざテレワークで、メールやZoomではしないかなって。

青野:おもしろい。確かに、なかなかZoom会議ではできない話。

オフィシャル文書だけではなく、社長も分報を始めた理由

:分報はコロナ禍になってから始められたと思いますが、ずっと前から全社向けの発信はされてたと思うんですよね。例えば、全社会議っていうんですかね?

青野:そうですね、全社ミーティング。

:売上の報告とか、チームを取り上げていろんな話をしたり。他にも、青野さんが考えられていることをきれいにまとめていただいて、発信していただくメッセージもあります。

青野:僕にとっては、分報は若い人がやるもの。やっぱり社長だから、一応発言には重みを持ってやらないといけないわけですよ。僕が適当なことをつぶやいて、みんなが大混乱になったらいけないわけです。だから、決まったことや議論したことを議事録的に公式文書として発信することが自分の役割だと思って、心がけておりました。

:ところが、今回分報を始められたということで、これはいったい何が変わったのでしょうか。今、青野さんがおっしゃっていたように、今までの発信は公式的で、堅めのしっかりとした発信だったかと思うんです。

それは「情報の共有」という感じなんですが、分報を始めたことによって、青野さんの今の状況がわかるようになってきたことがプラスアルファですよね。

青野:プラスアルファなんですが、めっちゃ怖いんですよ?(笑)。

:そうなんですか?

青野:余計なことを言って、批判を浴びる政治家がいるじゃないですか。あんな感じですよ。ある意味、会社の中では一番見られている立場だから、今までは本当に言葉の端々まで気をつけながら、推敲を重ねて文章を出してたわけですよ。

:ボロが出ると、誰かが突っ込んできますからね。

青野:ね、それは大変だから。僕の役割は左側(情報共有)だと思ってたんですが、さすがにプロセス共有感が薄れているので、ちょっと若者っぽいことをやってみようかなと。

分報を活用して、経営会議をリアルタイムに報告

:なるほど。ということで、分報が始まったんですね。まさかの初回から13回も書き込まれていて、実はこれはすごく多いほうなんですよ。「始めます」と、お昼の報告、「今日はこれで終了します」だけの方も多い中で、13回も書き込まれています。すごくびっくりしました。これには社内が震撼でした。

青野:盛り上がってたんですか?

:盛り上がりましたよ! 開発の人が始めた文化なので、開発の方や若手は分報している人も多いんですが、「ついに青野さんが分報を!?」みたいな感じで。

青野:そうなんだ。でもね、何を書き込んだらいいかわからないわけですよ。お昼のことを書き込んで、「本当に社長は暇やな」と思われても嫌だから、ちょっと仕事に絡めていこうかなと。でも、仕事っぽいことだけをやってたらあんまり変わらない。ものは試しで、いろんな切り口で13回書いてみたところですね。でも、いきなり「32いいね!」とか。

:そうです。分報で「32いいね!」はけっこう多いです。他にも、毎回分報の頭にスケジュールを書かれていて、そこからいろんな分報がつながっていくんですが、経営会議の感想をリアルタイムでつぶやかれていますよね。

青野:そうですね。会議なんかをやっていても、参加している人じゃないと臨場感が湧かないですよね。僕もずっとしゃべってるわけじゃないので、手が空いた時に「今、彼がこんなことしゃべってます」「こんな話を聞いて、僕はこう思いました」と書くと、これがけっこう喜ばれることがわかりました。

2時間の経営会議も、分報のサマリーなら10秒で読める

青野:こんなふうにスケジュールを載せてから分報するのは、まさにプロセスの共有です。「だいたい1日はこんな感じで動いてるよ」とつぶやくと、「青野さん、今は会議中のくせに内職してるわ」とかも伝わりますし。「今日はスケジュールがいっぱいあるから、分報が少なめだな」とか、なんとなく行間を読んでもらえるところもありますよね。

:そうですね。他にも、サイボウズでは経営会議に入ろうと思えば参加することはできるんですが、わざわざ入ろうとまでは思わなかったり、入ったらちゃんと聞かなきゃ……という気持ちになるんです。

分報で青野さんがつぶやかれてるのだけをチラッと見ると、「今はこういうことを話してるんだ」「青野さんはこう思ってるんだな」と、わかるようになる。

青野:そうか。これは2行ぐらいしか書いてないですが、2時間ぐらいの経営会議のサマリーを10秒ぐらいで読んで、「なるほど。今はそういう感じなんだ」というプロセス感が伝わるだけでも、ぜんぜん違ってくるわけですね。

:ぜんぜん違いますね! 1ヶ月に1回の会議とか、月に2回のメッセージだけじゃなくて、もっとリアルタイムで「状況を共有」していただいてるなと思っています。

社員の引用コメントで、さらに他部署にも拡散

青野:あっ、これ覚えていますよ。取材を受けて、それがネット上に公開されたから、広報の人が「このメディアに青野さんがこんなふうに出てます」と言ってくれたんですが、後で見直してめっちゃ思うところがあったんですよね。

「自分が本当にやりたいのは、別に売上を1兆円にすることじゃないんだ。とにかくすごいグループウェアを作って、世界中に広げて、そこまでやらないと俺は納得がいかないぞ」って、自分で動画を見て思ったことをつぶやいたんですよね。そうしたらこれ、けっこういいねがついて。

:これはいいねだけじゃなくて、実は社内で引用して感想やコメントを書いてる方もいらっしゃって。2人とも開発の方なんですが、「やはり頷ける」「会社の目的がお金儲けになったらつまらんと思うんです」って。

青野:うわ、共感してくれてる。でもこれ、気づいてなかった(笑)。

:引用されることで、青野さんの分報を見ている人とはまた違う層に伝わっていきますね。

青野:確かにね。

:青野さんがどういうこと考えてるかという、プロセスを共有していく。

青野:そうか。開発の人でも全員僕の分報を見てるわけじゃないけど、彼らが拾って拡散してくれることで、他の開発の人たちにバーっと伝わっていくと。

:オフィスの時も、「なんかちょっと聞いたんだけど」「さっき偶然お昼に会って、この話をしたんだよね」とか、自分の部署に持って帰って伝えるじゃないですか。そういう感じで広がっていくのが、すごくおもしろいというか。

青野:おもしろい。社内でこうやって拡散されてるんだ。でも、何を言われてるかちょっと怖くなってきましたよ(笑)。「青野がバカなこと言ってるわ」とか。

5年目の社員から社長へ、フラットに質問が寄せられることも

:実際にどれくらいの人が引用してるのかを調べてもらったんですが、青野さんが5月に(分報を)始めてから117人の人が引用していて、かつ368回も引用して書き込まれています。

青野:じゃあ、毎日分報を書いているとしても、1日に2、3回は引用されてるってことですね。すごいなぁ。

:そうです。引用の時って、一緒に自分の感想を書くじゃないですか。「共感する」とか、その人の考えのプロセスが見られる感じでおもしろいです。

青野:確かにね。「青野さんがこう言って、僕はこう思った」というのが伝わっていくと。

:しかもそれを私と関わりのない人が見て、いろいろ考える。

青野:なるほど、おもしろいね。「開発の人ってあれを見てこう思うんだ」とか、間接フリーキックでプロセスが共有されていくんや。

:(笑)。それ以外にも、ツッコミを入れてくれる人がいたり。

青野:いるんですよ。あっ、これはよっしーのやつや。吉原(寿樹)さん。5年目ですよね?

:今、5年目です。

青野:もうね、普通に社長に突っ込んでくるんですよ。信じられなくないですか?

:「軽い気持ちでお聞きしてみるのですが」って(笑)。

青野:仮にも社長ですよ。「青野さんのこれがよくわからないんですけど」的なことを突っ込んでくるわけです。とりあえず、僕も無視しちゃいけないなと思うので、返しましたね。ありがたいですよね。これは覚えてます。

うっかり忘れた結婚記念日、危機を救ったのは1人の社員

:今までは真面目なところを見ていただいてたんですが、他にも、実は青野さんは結婚記念日を分報に救われていると。

青野:そう! みなさん、これだけはつぶやかないでください。私は7月7日が結婚記念日なんですが、今年20周年を迎えました。20年間仲良くやってきたんですが、その20周年の結婚記念日を忘れておりまして。3、4日前ぐらいにお花を買おうかなと思ってたんですが、当日まで忘れてしまっていて。それで、泣きつくように書き込みをしたんですよね。

「ごめん、やっちゃった。困った」と書いたら、近藤(理沙)さんという総務の方が、パパパッと調べてくれて。「青野さん! 花キューピットだったら当時配送間に合いますよ」「まじか!」って(笑)。

これ、朝の9時43分ですよ。会社が始まってすぐに教えてくれたから、これを見て即注文したら、午後4時には届いてましたよ。妻が帰ってくる時には大きな花束ができていて、びっくりしていました。「あなたすごいね。これ、買ってきたの?」「そうだよ。僕はちゃんと結婚記念日に合わせて買ってきたよ」ということがありました。

:危機を救われたと。

青野:自分にない知識をバーっと寄せ集めてくれるリアルタイム感は、分報ならではですね。

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