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共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~(全10記事)

「どうすればうまくいく?」で始まる思考は、うまくいかない 問題を更なる難所へ導く、解のない“間違った問いの立て方”

創設以来、35年以上にわたって日本の組織開発をリードし、実践と研究の両面において最先端の取り組みを行ってきた、株式会社ヒューマンバリューの代表取締役社長 兼清俊光氏。同氏が登壇されたイベント「共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~」の模様を公開します。

1つ前のパートはこちら

「どうやったら業績が上がるか?」という“問い”に、解はない

斉藤知明氏(以下、斉藤):ではQ&Aに入っていければと思っております。人事の方なのかな? 「他部門を巻き込もうとすると拒否反応が起きがちです。拒否反応解消の第一歩は何をすべきでしょう?」という質問です。 

兼清俊光氏(以下、兼清):拒否反応への最初の一歩は「まず自分ができることをやる」だと思うんですよ。正解がないから。お互いのチームを超える……拒否反応がどっちの部署から出ているか? というのもあると思うんですけど。相手の部署から出ていたら、そこと「関係の質」を上げていくみたいなところで、自分ができることからやるしかない。それだと、それこそ「挨拶からする」みたいなことだったり。

自分のチームの中から出ていたら、寄り添ってそれをやることの価値とか可能性とか、それを阻害しているものは何かを考えて、まずやってみるというやつですよね。

やってみてうまくいかなかったら「何がよかった」というのを確認して意味づけして、次の1歩をまた生成する。まさにアジャイルなので。「どうやったらうまくいくか?」という問いに基づく思考パターンは「うまくいかない」というですね。「まずできることは何か?」っていうことなのではないかななんて思いました。

斉藤:これまさに、カルティベートなんでしょうね。

兼清:そうそう。「どうしたらみんながやる気になるか?」とか「どうしたら組織がうまくいくか?」「どうやったら業績が上がるか?」なんて、解はないですよね。そうじゃなくて「いつか必ずみんなを高いモチベーションのチームにしたいんだ」「いつかは高い価値を顧客に提供できるようになりたいんだ」。「じゃあまず何から始めるか?」っていってアクションリストを出して、やって。

そこから早く学んで早く成長するっていうのを、回し続ける。絶対あきらめないっていうポジティブシンキングでやり続けていくというですね。それしかないなと思うんですけどね。問いの立て方を間違えちゃうと、答えが出ない。隘路に入っちゃうっていうですね。

斉藤:なかなか難しいですね。拒否反応というものはどうしてもすぐなくしたいんだけど、どんどん耕していかないとなかなか向上しなくて。でも耕すためにも拒否反応があると難しくて、みたいなところはリアルな悩みとして上がってきそうですよね。

兼清:やってみてまだ拒否反応が来たら「このやり方じゃうまくいかないことがわかってよかった」ですよね。違うやり方をやるわけですよね。

斉藤:「ポジティブ思考」と先ほどどこかに(コメントで)書いていただいていましたけど、自分自身にも向けたカルティベートにもなるということですね。

兼清:そうそう、自分自身のカルティベートですね。

マネージャーとピープルリーダーの明確な違いは“対象”

斉藤:次のご質問です。「マネジメントという考え方が消えつつある、というお話がありましたが。今後の企業では、マネージャーと部下という関係はどのように変化していくとお考えでしょうか?」。

まさに、ピープルリーダーとマネージャーという関係性が変わるというところについて、ディスカッションでも少し触れられたポイントかなとは思うんですけれども。改めていかがでしょうか?

兼清:マネージャーとかピープルリーダーそのものが「自分のビジョンを生きる」です。自分が大事にしていることを手放さず、自分が実現したい世界に向かって日々生きている状態っていうのが、周りの仲間たちに同じようなチャレンジを生んでいくので。そういう「あり方」とか「生き様」みたいなものがすごく大事になっていくんだろうなって。だからピープル“リーダー”なんだと思うんですね。

「もうやってらんないよ!」って本気で言っていたら、みんなもやってらんないよになっちゃうじゃないですか。うまくいかないかもしれないけど、絶対あきらめないでチャレンジし続けている姿が、ピープルリーダー。

ただし、それが何のチャレンジか? というのは、その人が実現したい世界。例えばメンバーが本当に成長するチームを作りたいと思ったら、成長するチームができるまであきらめずにやっているとかですね。

もっともっとお客さんに価値を提供したいと思っていたら、カスタマー・セントリシティで顧客に向かっている姿、できることをやり続けているという姿が、仲間たちをそういうグロース・マインドセットに持っていけるんじゃないかなと思いますけどね。

斉藤:マネージャーっていうのが「みんなをなんとかする」とか……「manage to do」って「なんとかして達成する」とかって意味があるじゃないですか。「だからマネジメントっていう捉え方が間違っているんだ」みたいな論調って、数年前に流行ったと思うんですけど。

ただその前提として「自分のチームにいるメンバーをこうすることによって、チームの成果を上げたい」というのがマネジメントだとしたら、ピープルリーダーというのは「自分自身のあり方を変える」っていう、まさに対象が違うんでしょうね。

兼清:対象が違うんです。「人を操作するんじゃない」っていう。

Uniposが生む「自分の言葉で語りつつ、相手を称賛する」行動

斉藤:よくわかりました。次の質問ですが「Uniposが提供できるのは、横方向の連鎖の図における結びとリード、ハイライトの部分、赤太線の下までという理解でよろしいでしょうか?」 というご質問をいただいておりまして。

兼清:そんなことないと思いますよ。お互いの『背景理解』がサービスを通して広がったり、違う部署の人たちと『横断』というのも上がってきますけど。

Uniposのフィードバックの時、感謝のコメントを書き込む時に「僕らが実現したいここに向かってこういう効果があって、すごくありがたかった」というようなことをみんなが語り始めたら『一体感』とか『協働』とか『信頼』というところまで上がってきます。組織の成長度合いによっては、Uniposでもレベル5までいけると個人的には思いますよ。

ただし、最初から急にレベル5になるわけじゃない。低い組織だと最初はレベル1、2って上がってきて、3の『感謝の言葉(ありがとう)』がいっぱい出始めた時に、ものごとをありのまま受け止めて前向きに受け止めるという「思考の質」のレベル2が上がり、自分らしく過ごせるチームに変わってきて。

そういう文章でのやりとりの文字数が増えてくると、お互いの背景理解という「関係の質」のレベル4が上がりはじめ、思ったことを率直に言えたり、違う部署の人がやっていることが見えてきて。そうすると「思考の質」レベル3の『当事者意識』とか影響環境を広く捉えることができるので、自分がやっている仕事の意味づけが変わって、主体的行動まで上がってくる。主体的行動に近づいてくるというように、ずっと行くんだと思うんですね。

だからUniposは「これだとここまで」「これだとここまでじゃない」というのではなくて、それをどう自分たちで意図を持って活かし切るかによって、可能性はあると思います。

斉藤:まさにUniposを最初にご導入いただいた時とかって、とりあえず「感謝する習慣を付ける」ってところからスタートするみなさんと、あとはハッシュタグ機能があって会社の行動指針を登録しておくんですね。この行動指針を付けた投稿ばっかりで最初からスタートしようという企業さんとか、けっこう分けてご提案させていただいたりするんですけど。

ハッシュタグを付けると、会社にとって大事にしているカルチャーだったりとか、考え方について一人ひとりが自分ごと化していく。自分の言葉で語りながら、相手の行動を称賛するっていう行動が生まれるので。

これ自身がいわゆる当事者意識だったりとか、会社における背景を理解していくというところに対してつながっていくポイントだったりするのかなぁというのは思いながら。兼清さんにそう補足いただけたので、僕は解釈が間違っていなかったなと思って安心しました。ありがとうございます。

“学び続けていく”ことがポジティブシンキング

斉藤:続々いきましょう。質問3つにお答えしている間に10個増えていたので、テキパキといきましょう(笑)。

次のご質問です。「相手の行動に批判的な目を向けることは、ポジティブシンキングの訓練を阻害するのでしょうか?」本来の意味のほうの「ポジティブ」ですね。

「例えば、自分は前に進めようと言っているのに『本質的じゃないからおかしい』と否定してくる、みたいにただ愚痴って終わる、みたいなことがあるとします。それはポジティブシンキング的に考えると、自分の提案が通らないのはあの人にも事情がある、とか、自分の提案に根本的におかしいところがある、という風に考えるということでしょうか?」

つまり「提案しましたが、批判を受けました・否定されました」って思った時に「相手の行動が悪いんだ」ではなくて「『自分の提案をこういうふうに変えたらうまくいくだろうか?』って変えていくことが重要なんじゃないだろうか?」って質問者の方は思っているんだけど、どう思いますか? というご質問ですね。

兼清:まったくそうだと思うんですけど。ただですね、批判というか、observationなんですよ。何が起きたかを意味を付与せずに、まず一旦見るっていう。そこから、自分が本当に実現したいのが提案を通してそれをやることだとしたら「何ができるとその可能性が高まるか?」って考えて、まず1歩踏み出すイメージだと思うんですね。

それは提案の質なのかもしれないし、さっきの提案をした人たちの背景理解が低いのかもしれないじゃないですか。仮説を持って次のアクションを生成してやってみて、やってみたら自分の提案のロジックじゃなくて、組織の中のリソース配分における戦略的なウェイトみたいなことの理解度が低かったんだ、とかですね。

なんでもいいんですけど、そうやって学び続けていくということがグロース・マインドセットであったり、ポジティブシンキングなんだろうなっていう感じがしますね。おもしろい。

斉藤:素敵な再解釈です。ありがとうございます。

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