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共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~(全10記事)

ポジティブシンキングは、単なる「楽観主義」ではない “確信に満ちている”からこそ生まれる、物事への肯定的な姿勢

創設以来、35年以上にわたって日本の組織開発をリードし、実践と研究の両面において最先端の取り組みを行ってきた、株式会社ヒューマンバリューの代表取締役社長 兼清俊光氏。同氏が登壇されたイベント「共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~」の模様を公開します。

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「自身の行為がどんな価値につながるか?」の自覚

斉藤知明氏(以下、斉藤):(「成熟度の低い人には外発的動機で仕事を与え、成熟度が上がるにつれて内発的動機にシフトさせていく」という、30年ほど前の人材開発・組織開発に適応されていた理論の説明を受けて)あ〜なるほどなぁ。Uniposの中でも「感謝」っていうのを使うんです。これを提供していく中で、僕らは「感謝にもやり方がありますよね」っていう話をよくさせていただくんですよ。「あなた達がこういうことをしてくれたのはすばらしいよね」「あなたのこの行動はすばらしいよね」だけだと、なかなか意味づけにつながらなくて、正直効果が薄いと。

ウェビナーとかでもワークに参加していただいたことがあるかもしれないんですけど、どういう伝え方をするといいかというと「YouメッセージじゃなくてIメッセージだ」って言うんですよね。これは何かというと「あなたがしてくれた行動によって、私ないしチーム、会社はどう助かったか? というのを伝えて感謝をするべきである」と。

そうすることによって人が「なるほど。自分の行動って、会社にとっての貢献だったり、社会に対しての貢献につながっていたんだ」という実感のシナプスをつないでいくことができるんじゃないかなと思っていて。心理的安全性の観点で石井(遼介)さんにレビューしてもらいながら、話したりはしているんです。こういう解釈ってあってますかね?

兼清俊光氏(以下、兼清):「あなたがこれをやってくれたので、私はこういうところがすごく役に立ちました。すごくよかったです。ありがとう」って言うのはぜんぜんオッケーというか、むしろすばらしいと思うんです。特に「自分がやったことが、どういう価値につながるか?」が自分の中で自覚できていないと、フィードバックのループがかからないと、やった意味がわからないじゃないですか。

一方で「あなた自身は、自分の取り組みの中でここまでうまくいったのは何がポイントだったんですか?」とか「どういう努力をされたんですか?」といった問いを立てて「自分にとって、こういうことをやったことがすごくよかったのかもしれない」っていう、自分のアクションに対する内的意味づけも必要です。

「あなたがやってくれたことで、私たちはこんなに助かりましたよ」っていうのは外的な結果であって、内的な意味を見つける問いを立てないと「人に褒められたいから働く」という外発的動機のままになっちゃうっていうですね。だから両方が必要。

斉藤:なるほど、なるほど。まさに「関係の質」のローワーレベルの話と、レベルが高くなってきた1段階目から5段階目へつながっていくというのは、すごくわかりやすいと思います。

海外だと使われなくなりつつある「マネージャー」という言葉

斉藤:ピラミッドがあるとしたら、素地だと思うんですよね。「挨拶」だったり「声かけ」っていう素地があるからこそ、関心が広がっていくように動いていくし。ありがとうって言われるからこそ笑顔だし、フレンドリーに思えるからこそ問いかけが成立するっていう、この素地の順番だと思っていて。

僕、やっぱりUnipos社の人間として気になっちゃうのが、感謝というソリューションだったりとか。僕は「自律型マネジメント」というのをすごく大事にしているんですけど、オートノミー(自律性)というのは(「ミレニアル世代の動機要因」の)ランクでいうと下位のほうにあったんです。この自律って……再解釈かな? 「再解釈が重要だ」っていう話を、自分のチームのメンバーに対して研修とかでよくするんですよ。

「再解釈っていうのは、あなたが自分ごと化してそれを問い続けることだよ」みたいなことを言うんです。それを実現してもらう。行動に対してフィードバックをしても、なかなか起こらない人と起こる人っていうのが分かれる時に「関係の質」から投資をしていくというのが、まさに考えないといけないことだと思います。

兼清:「いつかは必ず、それがちょっとずつでも高まる」と信じて寄り添うっていうBelongingのマインドセットを、マネージャーが持っているか? ですね。ただ、今の日本はまだ「マネージャー」とか言ってますけど、海外だともうマネージャーって言わなくなってきていて。「ピープルリーダー」というんですね。それがピープルセンタードです。

あと日本だと優秀な社員のことをハイパフォーマー言いますけど、それも(海外だと)使わなくなってきています。ハイパフォーマーというと、ローパフォーマーとセットになっちゃうので。そうじゃなくて「正しく活動している人、ふさわしい人」という意味で「ライトパーソン」とか「ライトピープル」とか呼んだりします。

その企業で働く人々がどういう言葉を使っているかによって、企業内の文化が形成されます。言葉を変えていくことが、組織開発も含めてすごく重要なタイミング。Uniposみたいなサービスも、最初の頃は感謝の言葉さえなかった組織が、感謝を伝えるようになることの最初のステップですね。

その次のステップが、もしかしたら斉藤さんがおっしゃった「それがどうつながったか?」ということを伝えるステップかもしれません。そのあとは「感謝を伝えたあとに、どういうことがそれを生み出したのか?」を本人に考えてもらうとかですね。

丁寧に丁寧に耕していくという、カルティベートしていくというのがすごく大事で。「『共創、共創』って社会が言っているから、共創できる組織になれ!」とか言って、急になるわけじゃないっていうね。そんな感じだと思いますね。

ポジティブシンキングは、単なる楽観主義ではない

斉藤:チャットにいただいているコメントで「ポジティブシンキングも努力の積み重ねなんですね」っていう。

兼清:そうそう。そのとおり。

斉藤:本当に積み重ねなんですよね。

兼清:ポジティブシンキングはすごく重要なのが、単なる楽観主義じゃないんですね。ポジティブという言葉の英語の本意は「確信に満ちた」という意味ですね。「うまくいくかどうかわからなくても、必ず実現できるんだ」とかですね。これがポジティブの本意なので。

斉藤:オプティミズム(楽観)とは違いますもんね。

兼清:確信に満ちているから、積極的だったり、前向きだったり、肯定的なわけですよね。「なんとかなるさ」じゃないっていうですね。そんな感じですね。

斉藤:カタカナに直すと、オプティミズムと混同されがちですよね。

兼清:“楽”って書いてあるからね。“たのしい”と“ラク”っていう、両方の意味があるじゃないですか。

斉藤:海外のメンバーとも話していた中で「ポジティブってどういう意味で捉えてる?」って言ったら「プラスだ」って言ったんですよね。なんとかプラスにすることだし、プラスで常に考え続けることだっていう表現をしていて。「あぁ、なるほどな」って腑に落ちましたね。自分自身も考えている中で。

まず「自分自身が最初にライトピープルになる」という姿勢

斉藤:みなさんから、たくさんチャットでコメントいただいています。あとでQ&Aのコーナーを用意して、そこでしっかり拾っていきたいと思います。

斉藤:「内発的動機を高めるためにマネジメントって何をすべきなのでしょうか?」これまでのお話にも含まれていた部分もあります。

まず「関係の質」をどんどんカルティベートしていかないといけない。だからこそマネージャーをピープルリーダーと言い換えたらば、ピープルリーダーになる人たちの役割ってどう変容していっているんですかね?

兼清:基本的には、今の方向性として考えた時に、ホロクラシーとかティールっていう組織もありますけど「マネジメントする」という概念が消えてきているので。基本的にはピープルリーダーもそうですけど、まず「自分自身が最初にライトピープルになる」っていうですね。自分が内発的に自分で意味を見つけて自分でチャレンジしたり、自分が実現したい社会価値創造に向けてやっている姿が必要です。

メンバーたちが思い付いたアイデアとかがあったら、勝手に自己組織化してやれるような環境デザインができるかどうかです。そういうのが大事になってきているので、マネージャーそのものの世界観を変えていくということが、すごく大切になっているんだろうなと思います。

違う言い方をすると「Being」とか「あり方」っていうやつですね。いろんなところでみなさんも聞いていると思いますけど、2000年くらいから僕らはBeingということの大事さを、いろんな組織のマネージャーやリーダーたちと一緒にやっています。

「メンバーたちが共創できるように、主体的になるように、自分自身をどうコントロールするか?」みたいなマインドセットを持っていたら、たぶん(マネジメントするという考えには)絶対ならないと思います。

カルチャーへの投資ができる“カルチャー変革ツール”

斉藤:いやぁ、まさにこのディスカッションを通して兼清さんのバックキャスト思考をすごく見せつけられているな、っていう気がさっきからしているんです。僕が「こういう行動ってどうでしょうか?」とか「関係のところってどうでしょうか?」って問いかけた時に。

「常に共創行動を生み出していく。それはなぜ必要なのか。そのためにこういう順序があって、そこと結合するためにはこれが不足しているんだよ」っていう観点でディスカッションにお付き合いいただて……というか、引き出していただいて。すごく楽しいなと思いながら、あっという間に予定時間をオーバーしそうなので、1回このままUniposの説明に入らせていただいて。

僕らは、だからこそ「関係の質」を向上させる環境を作っていく、素地作りだと思っているんです。僕らはUniposを「カルチャーへの投資ができる“カルチャー変革ツール”だ」みたいな言い方をさせていただいているんです。これって、日々のカルティベートなんですよね。

耕して、耕して、耕して……関係性を作っていく中で、人事のみなさんってすごく忙しい。日本でいうところのマネージャーのみなさんは、すごく忙しい。だからこそ「日々耕す」という行動を、すべて自分が発信でやっていくということは、僕は不可能だと思っています。

だからこそ、さっきのナデラさんもおっしゃっていた「10万人のみんながMicrosoftを雇って、一人ひとりの意思決定のもと、それがんどんどん大脳新皮質に働きかけていって関係の質が向上していく」というふうにつながっていくところをお手伝いできるのが、改めてUniposだなぁと思いながら解釈していました。その文脈に沿ってご紹介させていただきます。

バラバラな組織をひとつに。コラボレーション改善クラウドUniposというのをご提供させていただいております。

斉藤:何者かといいますと、アプリとWebと両方あるんですけれども。その中で感謝のメッセージと少額のポイントを送り合うことができますよという、そういうサービスをご提供させていただいております。

具体的な画面で説明します。

斉藤:「今週送れるポイント」と「今週もらったポイント」というのがあって。送れるポイントの中から自分自身で〇〇さんに対して「こうこうこういうことをしてくれてありがとうございました」と。「それは〇〇という理由で難しかったと思っていて、こういうことがすばらしかったと思っていますよ」を伝えるというようなことができて。

これが、完全にオープンな場所でやりとりされるんですね。例えばこれ(スライドを指して)、ついさっき、私が準備終わったあとに送った投稿なんですけど。まえこさんといううちのメンバーが、とある会社の導入に対して尽力してくれた。「こういうことが難しかったと思うけれど、こういうスタンスがすごくいいと思っていますよ」というふうに伝えたらば、これがほかの人にも伝わって。

これ、1時間前に送った投稿なんですけど、チームのほかのみんながパチパチって拍手してくれるんですよ。彼女がもともといた部署の人事の方だったりとか、うちの役員だったりとか、ほかにもデザイナーのみんながこうやって“いいね”って送り合うことによって、彼女自身も確かに大変だったけど、乗り越えてよかったなっていう1つの実感になると思うんですよね。

兼清:1個だけ、今のところすごく大事そうなので、いいですか? これで書いてほかの人も見えるというのが、サイロを壊すんですよね。だから単なる感謝じゃなくて「〇〇さん、こんなことがんばっているんだ」っていうのがいろいろな人に見えることでサイロを壊すことにつながります。「関係の質」でいうとレベル4の『横断』っていう、ほかの人たちとか自分の仕事の周辺領域までコミュニケーションが広がらないと、基本的には「関係の質」はレベル4より深い階層にはいかないんですね。

これは単に「感謝が何個あったか」じゃなくて「〇〇さんってこういう仕事をしていて、こうがんばっていて、それに対して△△さんはこういう価値があったと受け止めているんだ」っていうのを、同じ部署じゃない人たちが知れる。これは、ものすごく重要なポイントだと思いますね。

日々の小さな貢献・実績の積み重ねが信頼になる

斉藤:ありがとうございます。これまさに僕、感謝っていうのがもったいないと思うんですよ。感謝って、みんなしてると思うんですよ。僕も心の中でしてます(笑)。でも心の中でいっぱいしていても、発露するのって一部です。その発露する一部が1人に落ちているともちろんもったいないし、伝えるだけでももったいなくて。みんなが見える場所で伝えると、ほかのみんなも見えるんです。

ただ、これいきなりみんなに「みんなが見える場所だから、ぜひやってよ!」っていう高尚なことを言うとですね「あ~、ちょっと難しいな……」って言われるんですよ。だから僕らは、ポイントっていうのを付けてやっているんですけど。

この「送れるポイント」「もらったポイント」。送れるポイントは自分のためには送れなくて、人にしか送れないんですね。拍手や投稿でしか送れないんですが、もらったポイントは給料に変わります。給料に変わることによって、会社からすると一人ひとりの貢献だったり小さなことに対して「ちゃんと報いよう」という姿勢になるんですよね。

会社としてこのツール、Uniposの仕組みを導入することによって、一人ひとりの貢献を小さなことであってもちゃんと認めようとするし。それがオープンな場所でやりとりされてほしいという、意思になるんです。

この意思を込めることによって、今、兼清さんにおっしゃっていただいたみたいに関係……感謝だけじゃなくてどんどんほかの人のことを知ることができます。知る、認める、信頼するというステップで積み上がっていく、と考えています。

なにも知らなくて、なんの工夫をしているか知らない人をいきなり信頼してくださいって、無理じゃないですか。だからこそ、日々の小さな貢献の積み重ねが信頼。日々の小さな実績の積み重ねが信頼になるからこそ、僕らはそれをサポートできるプロダクトなんじゃないかなと思っています。

ほかにもさまざまなアップデートをしている中で、例えばこういうところも他者貢献、他者承認とか、さまざまなエンゲージメントサーベイだったりとかの中でもお役立ちできるんじゃないでしょうか。というポイントに比べて、給与っていうのがいきなり難しかったらば、給与だけじゃなくてリワード。

斉藤:本人にとっても嬉しいし、それが本人がまた新しいコラボレーションを生み出そうということに対してつながるものでもいいなと思っていて。

勉強会っていうちょっとハイなものもあれば、例えば「みんなでリモートランチでUberEats頼んでいいよ」っていうチケットだったりとか。「リモートワークで腰痛いから、椅子買っていいよ」っていうチケットに変えられたりだとか。住環境や働く環境を向上したり、コラボレーションを生み出すようなリワードに変えることができるっていうプランだったりですとか。

あとはこれを見ていると、チームの中でも今、部署別のコラボレーションの状況というのもうまく自分自身の感謝が送り合われていて、それがほかのチームにも連鎖していっているかどうかというのが、正直見えてきます。

だからこそ、不調という言い方はちょっと強いかもしれないんだけど、こういう「コミュニケーションが起こっていて、関係性が強まっていっている組織」とそうじゃないチームというのが見えてきた時に、ここのチームって今どういう状況なんだろう? ってヒアリングしてみよう。一方的に決めつけるわけじゃなくてですね。ヒアリングしてみようだったりですとか。

ほかのサーベイと照らし合わせた時に、どういう課題があるだろうか? っていうのを見るための材料として、日々の行動の積み重ねなのでリアルタイムにいつでも見ることができます。という組織コンディション事前察知レポートというのも、オプションでご提供させていただいております。

斉藤:社員数1,000名以上の企業のみなさまの中でも、ご導入いただく例というのが徐々に出はじめてきています。このテレワーク下において、これまで(リアルで)「関係の質」向上を日々やっていたのって、すれ違った時のコミュニケーションとか“タバコミュニケーション”って、あったと思うんですよね。(テレワークになって、それらが)やっぱり薄れてきてしまっている中だからこそ重要だということで、日々お引き合いも増えてきておりますので、よろしければみなさんご導入の検討いかがでしょうか? というようなかたちでございます。

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