アポ率や営業力を変えるのは、成功体験の積み重ね

清水貴裕氏(以下、清水):時間がだいぶ来ているんですけど、聞きたいこととして。単刀直入なんですけど、どうやったら営業力が上がるんでしょうか? 営業の数字がどう上がるかというと、もちろん「ターゲットが……」という話になっちゃいますよね。どうやったら営業力が上がるのかを少し聞いてみたいです。

久我温紀氏(以下、久我):営業力の定義が必要ですよね。売り上げなのか、個々人の力なのか。

清水:確かにそうですね……売り上げよりは(個々人の)力のほうがいいですかね。

山川周氏(以下、山川):僕は成功体験を持たせてあげられることかなと思います。いわゆる営業同行のときに、マネージャーが新人の横について商談をすることになりますが、ここで一番すべきことは、受注するところを目の前で見せることに尽きるかなと思っていて。

逆にメンバーに任せて、終わったあと喫茶店に戻ってフィードバックするのは一番イケてないなと思っていますね。

清水:僕も実は同じで。営業において、「自負」というのはすごく大事かなと思っているんですよ。昔、今のベルフェイスに入って、新卒に展示会に出てもらったことがあって。展示会に出た後と前では、ぜんぜんアポ率が変わったんですよね。これはおもしろいなと思って。

なんでかと言うと、展示会で100件とか、お客さんの前でプレゼンテーションをしているので、自分の話やお客さんのイメージが明確にできるんですね。そうすると「私の話はこれで正しい」というイメージができるので。

スキルは1ミリたりとも変わっていないのかもしれないんですけど、その自負によってアポ率とか営業力がぜんぜん変わるという経験があって。

やっぱり僕、本当におっしゃるとおり、小さな成功体験をどうやったら持ってもらえるかが営業力に直結するなと思いますね。今井さんはどうですか?

営業は質問1つで、お客さんの前提や事実を変える力がある

今井晶也氏(以下、今井):はい。どれを言おうかな、と正直ちょっと迷うんですよね(笑)。たぶんその人に応じて営業力を上げるポイントは違うと思うんですけど。

2つ代表的なものを挙げさせていただくと、商品力ではなく営業力でいくと、「買おうとしていない」ことが前提です。やっぱりその前提を変えられるスキルや能力が必要だと思うんですね。それは2つあると思っています。

1つは、逆算してプロセスを設計できる力と、あとはお客さんの事業の未来とか、個人であればお客さん自体の理想の将来、これを描く想像力の2つかなと思っています。

逆算のほうからちょっとお話をさせていただくと、僕ら営業はなんでも売れるわけではないんです。自分たちの会社のプロダクトやサービスがあって、じゃあそのサービスやプロダクトはなんでもお客さんの課題を解決できるかといったら、それはできないんですよ。

特定の領域を決めているわけですね。「この商品を使うとこの問題が解決できます」という、ソリューションを決めているわけです。そうなったときに、お客さんがその商品を使ってその問題を解決したほうがいい理由を、商談の中で見つけてあげられなければ攻略はできないという、そういうゲームになっているんですよ。

そうなったときに、どういう質問を渡したらお客さんがその商品を必要だと気づけるようなきっかけを与えられるのか。というような、お客さんに自分たちの問題を認識させるための質問や、答えさせたいキーワードといった質問の仕方を用意しておく必要があると思います。

例えば車に月1回乗るか乗らないかの人に「車、乗りますか?」と聞くと「乗らないです」と言うかもしれないですよね。でもその人たちに「車に乗るときは、荷物を運ぶときですか?」と聞くと「そうですね」と言うかもしれない。

なので、月1回乗るか乗らないかの人に対して質問の仕方を自由にしてしまうと、実際に車に乗っている人も乗らないお客さんに変わってしまうかもしれないんです。僕たちの質問1つでお客さんの前提を変える力や、事実を変える力を持っている。この言葉の力を営業は忘れてはいけないんです。

だとすると、質問の設計ですよね。「どういう質問の仕方をすると僕らの提案したい商品の問題解決と紐づけやすいんだっけ」というところをちゃんと見てあげたほうがいいです。

清水:うーん、さすがですね。

今井:天才なんですかね?

(会場笑)

お客さんの事業や未来を想像することが大切な理由

今井:あともう1個のほう、お客さんの事業や未来を想像できることが大事だと思っていて。なのでビジネス力はやっぱり上げておく必要があります。お客さんは「儲かる」と思わなかったらお金を出さないですよね(笑)。

清水:出さないですね、はい。

今井:売り上げが上がるかコストが下がるか。うちの会社に必要か必要じゃないかという判断で、投資するかしないかを決めるわけですから。

だとしたらお客さんの事業のこれからのこととか、お客さんの会社のライバルや、お客さんの会社の顧客。顧客にとっての最終分析をやってあげて、そして必要な理由を見つけてあげることが大事じゃないかなと思います。ちょっと長くなっちゃいましたけど、その2つです。

清水:ありがとうございます。ちょっと時間をオーバーしてきまして。

(会場笑)

いや、違うんですよ。素晴らしいから止められないという。この企画、最初からこの登壇だけでもよかったんじゃないかと思ったりもするんですけど(笑)。

仕組みや組織を作るときのポイントは専任を置くこと

清水:せっかくセールスイネーブルメントの話なので、最後にお聞きしたいなと思っているんですが、営業の仕組みや組織づくりで重要なポイントとか、感じていらっしゃるところがあれば教えていただきたいなと思っております。

今井:いろいろある前提の中で1つだけ絞るなら、「それを推進する担当をちゃんと置きましょう」だと思います。

清水:専任者は大事ですね。

今井:はい。責任の所在を明確にしないと難しいと思います。優先度はやっぱり下がってしまうと思います。

清水:ありがとうございます。山川さんはどうですか?

山川:ドかぶりですね。

(会場笑)

やはり専任者は重要だと思います。僕がその立場でやらせていただいているのですが、まあまあ人数のいる会社のなかで、今はCLINICS事業部以外の事業部にもイネーブルメントの動きが出てきています。今後はセールスイネーブルメントからビジネスイネーブルメントの領域にちょっと取り組んでいきたいなと思っています。

清水:ありがとうございます。久我さんはどうですか?

久我:一緒ですね。前、ほかのイベント登壇で……あっ、セレブリックスさんのやつか。

今井:(笑)。

久我:「強い組織を作っていくための3つ」というのがあったじゃないですか。

今井:あぁ、はいはい!

久我:イネーブルメントも一緒だと思っていて、結局ビジョンと、メトリックスと、アロケーションだと思っているんです。アロケーションは僕、セパレートなんです。だから「どっちやる?」みたいな話じゃなくて、どこにどれだけの資源を投下するかだと思っているんですよ。

イネーブルメントをやるのであれば、イネーブルメントに投資しないと無理です。例えばインサイドセールスがフィールドセールスの下部部門につくと、営業側の状態によっては本来のインサイドセールスの投資すべき時間が奪われかねないんです。

本当のインサイドセールスは中期的なパイプラインを作っていくことなんです。しかし営業の予算に苦戦し始めると、どんどん営業部の短期的な受注のほうに引きずられていって、リソースのほとんどが本来の動きに行かないんです。要は中期的な投資に行かなくなっちゃったりするんです。

Salesforceとかも組織の分業化がすごく進んでいて、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、CSと、全本部が横並びですよね。それはセパレートされているということなので、アロケーションされていないと、たぶんできないと思います。

すべてを売り上げから考え、カスタマーサクセスに着地させる

清水:ありがとうございます。僕からも1つなんですけど、僕、けっこうセールスイネーブルメントをやっていて、一番大事かなと思ったのが2つあって。

並列なんですけど、「すべては売り上げから考える」というのが1つ。やっぱり売り上げが上がらないと意味がなくて。利益を上げるか売り上げを上げるかのための施策なので、データがあればいいわけじゃないんですよね。すべてはそこに紐づくかどうかで考えるのが1つ。

そしてもう1つは、「すべてはカスタマーサクセスに着地する」というのが大事だなと思っていて。同じですけど、データを集めてもカスタマーサクセスに意味がないのであれば、そのデータは必要ないと思いますし。

なにから着手すればいいかを考えるときに、やっぱり現場の課題感が強いものであり、かつ売り上げに直結し、しかもカスタマーサクセスに直結するような内容から、緊急性を見て対応していくのがすごく大事かなと。

イネーブルメントの担当者はやっぱり、やることが多すぎて飽和すると思うんです。でも、そのときにそういう指針が決まっていることはすごく大事なんじゃないかなと思います。

自分たちの「営業力」を定義することの重要性

久我:1個だけ、すいません。さっきの「営業力」のときに言おうかなと思っていたやつですけど、指針というのは事業に対しての役割の設計にすごく大事だと思っていて。

イネーブルメントだったら、じゃあイネーブルメントの指標値はなんなのか、個々の営業力、じゃあ生産性なのかとか、そういう話になってくるじゃないですか。

たぶん営業組織の役割によって、営業力という定義は変わるんですよ。例えば1年に1商談しかやらない高度な専門性や本当に人たらし的な能力なんかが必要な営業のタイプと、バンバン売っていかなければいけないタイプの営業だったら、圧倒的に商談数を持たなきゃ絶対に無理なんですよ。だから変わってくると思っていて。

自分たちの組織も、求められる役割が本当になんなのか、事業のバリューチェーンの中で自分たちがどこにいるのかみたいなところがすごく大事だと思っていて。ここの設計なしに組織設計していくと、全部崩れていくじゃないですか。

そこの建付けが一番難しいし、答えがないし、結局チューニングし続けないといけないけど、それでも自らの組織の役割を定義することはすごく大事だと思います。だから営業力を定義すべきだと思います。

清水:営業力の定義、やっぱりSalesforceもそうですけど、これが営業力というか、Selling pointとかを明確にしていますよね。そんな営業力の話を着地として、今日はお時間が来ましたので、これで終わりたいなと思っております。

今日いろんな学びやお話があったかなと思いますので、ぜひ可能な範囲でTwitterをベースにしながら配信してもらいたいなと思います。アウトプットをするとちゃんと浸透するというのもありますので。

「#SEC2019」と入れていただいて、Twitterで拡散していただけると非常に幸いです。みなさんもTwitterをされていると思いますので、フォロー等いただけると今後の情報も配信がありますので、うれしいです。

ただ私、ベルフェイスの話になりますが、今回私は登壇していなくて、取り組みをお話ししていないこともあります。後ろにベルフェイスTシャツを着たメンバーがいるので、お声がけいただければインサイドセールスの仕組みとか、私がなにをやってるかみたいなものをお話しします。

おうかがいなのかWebなのか、させていただくので、もしよろしければお近くのベルフェイススタッフまでお声がけいただければなと思っております。なにかみなさんからありますか?

今井:ないです。

山川:大丈夫です、ありがとうございます。

清水:では第2回、こちらで終了させていただきます。本日はありがとうございました。

(会場拍手)