交通事故の原因の20パーセント近くを占めるのは「ドライバーの疲労」

ハンク・グリーン:長距離をドライブしていて1時間ほど経つと、なんだかぼーっとしてきませんか。少々だるくなる場合もあるかもしれません。これは、目的地に着く時間に間に合わなくなるだけではない、困った事態を引き起こします。イギリス王立災害防止協会によりますと、ドライバーの疲労は、交通事故の原因の20パーセント近くを占めるといいます。

もちろん、前日の夜によく眠れなければありうる事態ではありますが、健康体で休養が充分に摂れていても、居眠り運転は発生します。つまり、人は運転により眠くなりやすいのです。そしてその理由は、実はよくわかっていません。

一説には、ホワイトノイズに眠くなる効果があるのではないかとされています。この場合のホワイトノイズとは、タイヤが道を通る際の、低い持続音です。

これを検証する小規模の研究が、いくつか実施されました。例えば、2015年の研究では、被験者たちに、大きな運転音をたてるシミュレーション用道路と、小さな運転音をたてるシミュレーション用道路の双方を運転してもらいました。音の大きな道路では、運転速度がゆっくりになったり、うっかり車線をはみ出したりなど、被験者たちに疲労のサインが多く現れました。

しかし、はっきりとした問題点は見つかりませんでした。というのも、被験者たちが明確な疲労を自覚したわけではないため、ノイズが原因とは言い切れなかったからです。

運転中に眠くなる原因は車の振動

眠くなる原因が、道路のノイズでないのであれば、車がたてる振動ではないでしょうか。2018年実施の研究では、振動台に取り付けられたドライビングシミュレータを、被験者15人に運転してもらったところ、上のような結論が導き出されました。

被験者たちには、毎秒4回から7回振動する台と、静止している台のシミュレータを、それぞれ高速で運転してもらいました。その後、運転前と運転後に感じた眠気を評価してもらいました。また、眠気の指標の一つとするため、心電計のモニターを付けてもらいました。

1時間の運転シミュレーション後、振動を受けていた被験者たちは、強い眠気を訴えました。一方で、振動せず運転をした被験者たちからは、そのような訴えは見られませんでした。

さらに、振動していた被験者たちに疲労のサインが見えはじめたのは、時間の経過が既定の1時間に満たないうちでした。わずか15分運転しただけで、被験者たちの心電計は、彼らが眠気を感じている波形を示しました。ところで、どなたか僕のベッドを振動させてくれませんかね!

でこぼこ道を走るときは強い眠気に注意

研究者たちは、ドライバーたちは、振動により、体の活動を抑制しリラックスさせる、副交感神経系が活性化されたのではないかと考えました。ところが不思議なことに、心電計の波形は、副交感神経系の逆の働きをする、交感神経系の活性化を示していました。交感神経系は、闘争・逃走反応などを司るものです。

研究者たちは、交感神経系の活性化は、振動による眠気に対抗するための身体のサインであるという結論を出しました。つまり、振動により眠くなり、運転が困難になると、交感神経系が活性化されて集中力を高めようとするため、心電計の波形が変わるのです。

未来の車は、衝撃吸収力が高められ、揺れが抑えられて、眠気は起こりにくくなるかもしれません。しかし、それが実現されるまでは、でこぼこ道では強い眠気に注意が必要です。また、本当に眠くなってしまった場合は、ウェンディーズかどこかに車を止めて、休憩してくださいね。くれぐれも、危険を冒してはいけませんよ。