一人ひとりのライフプランの実現を目指すことが最も効率的

フレデリック・ラルー氏(以下、ラルー):青野さんのお話のあとに続くのは難しいかもしれませんが。

上田祐司氏(以下、上田):僕は、昔から効率的じゃないものが大嫌いなんです。効率が大好きなんですよね。エレベーターで、僕が降りるために前の人が1回外に出るのも許せない。

(会場笑)

着く前に場所を入れ替わろうよ、というぐらい、効率が大好きな人間なんですが、もっと効率良くするためにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、そこはまったく一緒なんですが、情報共有やコミニュケーションミスによる無駄が多すぎるからなんだと。「もっとつながりたい、つながれたら効率的なのに」という想いがすごくある。

そこで、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーに行きつくわけなんですが、働き方の方でもう一つ思うのは、給料やいろんな条件などを交渉するのは効率的じゃない。みなさんもそうだと思いますが、一人ひとりのライフプランが達成できるかどうか、そこに向かっているのかどうかこそが、一番満足度に響くと思うんです。

そこさえ掴んでしまえば、もしくはそこをサポートさえしてしまえば、逆にお金を払ってくれるんちゃうかなくらいの感じがありまして(笑)。

(会場笑)

一人ひとりのライフプランをすごく大切にして、それをみんなで共有してサポートするのが、一番効率的なんじゃないかということがすごく根源的だと思います。

一人ひとりの夢やライフプランを膨らませることが会社の利になる

ラルー:すごいですね。でも、まだ「どうしてあなたはそんなに違うのか」ということが知りたいんです。他の人は、「あなたが言っていることはぶっ飛んでいるね」と感じると思うんです。

普通なら「方針がないとダメでしょう。就業時間や働く場所も決めておかないと、会社の中がむちゃくちゃになっちゃうだろう」。マネージャーの95パーセントくらいの人が、まだそんなふうに考えていると思います。

でも、あなたは違うように考える。それは人生にどういうことが起きたから、違うように考えるようになったんでしょうか。

上田:僕の中では、ガイアシンフォニーという映画と、そのガイア理論というものがあったから、会社を創業したんですが、やっぱり一人ひとりがそうなれる社会を作りたいんだという思いは、原価ゼロですごくパワフルだと思うんですよね。

おっしゃられるように、普通のマネジメントであれば、「マネジメントをしなきゃ」ということになると思いますが、いざこの人が「いや、赤の他人も含めて車で乗り合えるライドシェアのサービスをやりたいんだ」と言ったときに、例えば僕が株主として承認権がある方がいいのか、ない方がいいのか、どっちがこの会社の利になるのか。

そういったことを言っているメンバーがいて、一人ひとりの夢やライフプランをできるだけ膨らませた方がいいのか、しっかりと押さえつけてマネジメントをした方が儲かるのか、どっちが儲かるんだろうと考えたときに、できるだけむちゃくちゃに盛り上げて、承認なども一切しない枠組みにした方がいいんじゃないかと。

実際に、僕自身が本当にミッション1つでやってきたからというところですね。

個人重視の西洋と組織重視の日本の違い

ラルー:ご両親があなたを、そんなに自由がたくさんある人に育て上げたということでしょうか?

上田:うちの親も大阪で商売をしていました。僕が覚えているのは、商売にかかりきりで放ったらかしな感じです。家の中で商売の話をしているのを、子どもながらに聞いていて、「ああなんか、お仕事はいいな」といった感じでした。

ラルー:私が今、非常に知りたいと思っているのは、お二方ともそれぞれ、一人ひとりの従業員がどんなことを考えているのか、その人たちにとってなにが大切なのかということを、個々に対話をすることをあえておやりになったことでしたね。個人と会社や組織との間には、よく緊張や歪みがあります。

西洋では、どちらかといえば、重点は個人がどうしたいかによる。それによって集団の方、グループの方、組織の方は蔑ろにされ気味な傾向があるんです。しかし、私が聞いたところによれば、東洋の方、例えば日本では逆であり、個人の方は抑制する習慣と文化があるように聞いたことがありますが。

お二方はそれについて、個人と組織、個人と集団との関連については、どのようにご覧になっているのですか?

人々は実在しないはずの「会社」に縛られている

青野慶久氏(以下、青野):おっしゃるとおりで、日本はこの会社というものをすごく大事にする国だと思います。例えば、日本人はよく、「会社のために働く、会社の方針に従う、会社に迷惑をかけてはいけない」といったことを言います。これが間違った表現であることを、弊社の副社長の山田に教わりました。今日もここに来ていますが、彼が「会社さんはいない」と言うんです。

(会場笑)

関西弁なので「会社さんはおれへんねん」という感じで言うんですが。

(会場笑)

会社は法人、法の下の人なので、実在しないんですね。実在しない人が方針を出すわけがないし、実在がない人に迷惑をかけるはずもないんです。本当は、それは経営者が決めた方針であったり、同僚に仕事の負荷がかかるということだろうと。その存在しないものを見て、存在している人たちを見ないという習慣が日本人にはあるような気がするんです。

「会社さんはいない、そこにいるのは一人ひとりだ」という発想にしたときに、なにが見えてくるのだろうか。一人ひとりまったくバラバラな人たちがここに集まって、働いているという、その当たり前の姿が見えるようになる。それならば、その人たちはどんな気持ちで働いているんだろうと。

僕たちは一緒になにを目指すんだろう。そういうところに視点がフォーカスしていくようになります。それが、私たちが経験してきた個人と会社のバランスです。

出入り可能にすることで想いのある集団ができあがる

上田:おっしゃるとおり、昔の日本の感覚としては、本当に会社を大切にということがあったと思います。(世の中で)これが崩れつつあったり、うちの会社が崩れてきているのは、やっぱりインターネットのおかげです。人と人が、外の人と中の人がつながるようになってきたおかげだと思っているので。

うちの会社を誰でも出入りが可能にしているのは、「興味がある人は集まってきて」ということなんです。「副業もして(いいし)、ぶっちゃけ興味がない人は去っていいよ」というか。別にダメじゃないし、そうした感じでなめらかにすることによって、想いのある集団ができあがると思っています。

実際に、このティール・ジャーニーのプロジェクトも、そうした思いで集まっていそうだし、もう一つすごく感銘を受けたのは、みなさんもご存知だと思いますが、青野さんがやられている夫婦別姓のプロジェクト。

あれで世の中を変えなきゃとおっしゃっていて、たぶん会社(としての取り組み)じゃないんだろうとは思うんですが、プロジェクトとしても機能しているし、成果も上がるんじゃないでしょうか。インターネットのおかげで、全部ああいう感じになっていくんじゃないかと思っています。

ラルー:本当にありがとうございます。そうやって10年、20年とこれまでやってこられたと思うのですが、その中で、マネジメントの視点からいくと、今まで会社の中でもいろいろと変化が起きてきたでしょうし、日本の中でも変化が起きてきているとは思いますが、その変化をどのように見ているでしょうか。

自分たちは例外の存在なのか、それとも他の会社もだんだん同じ方向に近づきつつある潮流ができているように見られているのか? どうでしょう。