2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:そろそろ質問が始まったようです。
青野慶久氏(以下、青野):はい、すみません。そろそろ(感想の共有タイムを)終わりにしていただけると、ラルーさんへの質問が始められますので、よろしくお願いします。たくさん質問をいただきまして、ありがとうございました。
みなさんがすごく心を動かされていることが伝わってきます。今から15分ほどお時間をいただきまして、ラルーさんと上田さんと一緒にこのご質問を拾って回答していきたいと思います。
フレデリック・ラルー氏(以下、ラルー):お二人でどうぞ。
青野:これ、本当にプレッシャーですよ?
(会場笑)
たぶん、これは多くの人が感じていると思うので、1つ目の質問はこれを選びたいんですが。では、「組織のトップではない、意思決定者ではない人が、どのようにその組織改革を進めていけるのか。それは困難なことなのか」。これはおそらく多くの方がお感じになっていることだと思うので、ぜひお聞きしたいと思います。
上田祐司氏(以下、上田):僕もぜひラルーさんに聞きたいんですが。僕はよく聞かれるんですけど、「討ち死に覚悟で行っていただいて、骨は拾う」という。
(会場笑)
そういった感じで(笑)。どうなのかはぜひ聞いてみたいです。
ラルー:自分が中間管理職にいたり、会社では階層的に下の立場にいる。そして、トップはティール組織のような考え方は理解しないだろう。でも、自分にはティール組織に可能性を感じている……権力構造の中で自分のやりたい姿が伝わらないだろうと感じると、非常に不満が溜まると思います。
ままならない状況でも、自分のレベルで、自分の周りで、できることがあると思います。例えば青野さんが先ほど言われたように、実際に現場の人のところに話にいって、質問をして、語りかけて聞いてみることができると思うんです。そして自分としても、もう裃も脱いで、仮面も脱いで、自分も傷つきやすく、こんなことに困っているんだということをさらけ出すこともできると思います。
または自分がチームを持っているとしたら、その範囲内で「これからは今までと違う意思決定の方法をとります。助言プロセスを使ってやりましょう」と提案することができるかもしれません。そうした実践をやっている人をたくさん知っています。
上の人が理解してくれないから、会社の中でレーダーに探知されないようなかたちで、隠れてやる。それを組織の中でやっている人が、あるイベントでこんなふうに語っていました。
「自分がやっているのは、糞を受け止める傘をみんなの上に広げてあげていることなんです。上からたくさん、ゴミや糞が降ってくるから、それがみんなにかからないように、自分が受け止めてやっているんです」。
(会場笑)
ちゃんと「shit(糞)」のところを訳しましたか(笑)。
実際のところ、実験するのは非常に壊れやすいものなんですね。大きなシステムの中の小さい空間で、自分は一生懸命に実験をやっている。でも、システムの抗体の方がはるかに強いので、あなたがそのシステムから離れると、あなたが作ったその空間も、そのシステム自体の抗体の免疫反応によって潰されてしまうでしょう。
それでも、いろんな意味において、それで構わないわけです。実験をやっている間は、あなたもよい人生を送れたかもしれないし、他の人たちも、違った体験をすることができた。
その実験を通して参加した人の中から、自分の見方の視点が変わったという人も出てくるかもしれません。そのような組織の中で、あっちこっちでそうした実験がちょこちょこちょこちょこ行われているというのは、大きなアリ塚にすこしずつ穴を穿っているようなもので、そうやってちょこちょこやっていくうちに、ガラガラッと崩れていく。
ラルー:昨日の講演でも言ったことですが、自らに尋ねておくべき大切な質問は、「自分はどのくらいのリスクを冒してもいいだろうか、または冒す用意があるだろうか」。そして、どの程度のリスクを冒せるかどうかは、自分がプランBを持っているか持っていないかによって左右されると思うんです。
プランBを持っていないと、「この実験をやると、自分のキャリアに支障が出て生活が立たなくなるかもしれない」と、怖気づいちゃって、最低限のことしかできなくなる。
でもプランBを持っていると、実験がうまくいかなかったとしても、別の生き方は残されている。そう考えると、自分には力があると思えるようになるんです。なので、たくさんリスクをとって、何が起きるか試すことができるんです。
誰かが「もうこれ以上我慢できないから、もう辞める」と言うのを聞くと、おもしろいなと思います。
その会話がなぜおもしろいかというと、「どうせ辞めてもいいのなら、逆に留まって会社から見るととんでもないことをやってしまってもいいのでは?」と思うからです。最悪な結果は「辞めてください」と言われるだけで、少なくとも自分はその気になっているんだからいいじゃないか、と思うわけです。
でも、辞める代わりに会社に留まって、本当にやりたかったいろんな実験をやっていく過程で、たくさんの学びを得ているいるわけです。おもしろい人に会って新しいコネクションができる。そして、次に就職する組織が、自分のやりたいことと方向性が揃う確率も高くなります。
私はみなさんに、ぜひ実験することをおすすめします。あなたを通して生きたがっている人生に、耳を澄ましてください。なぜかというと、あなたが今感じている不満は、なにか他の人生があなたを通して生きたがっている兆候だからです。
(会場拍手)
お二人はなにか言いたいことは。
青野:日本の人たちは、1つの会社に長く勤めることが大事だと思っているので、なかなか辞めるというプランBを持っていない人が多いと思って見ています。でも、まさにこの「辞めてもいいんだ」というね。これを持つことで、実はもっとポジティブに、アグレッシブにその組織に対しても提案していくことができる。すごく大きなヒントをいただいたと思います。
青野:大丈夫ですか? 残り5分ということなので、すみません。もう1つ、これも今日お話を聞いていて、まさに本には書かれていなかったことだと思いますが、「人生の目的は自分が見つけるのではなく、『見つけてもらう』とおっしゃっていて、その感覚についてもう少し知りたいです」という質問を何件かいただいていますので、少しお話をいただけませんでしょうか。
ラルー:あるストーリーをシェアしますね。エリザベス・ギルバートという、アメリカのすごく有名で、ものすごく本が売れている作家がいます。彼女にはブラジル人のボーイフレンドがいて、その彼がブラジルのジャングルの中に彼女を連れて行ったんですね。
そして、50年代に、このジャングルを開拓するというすごく馬鹿げたプランがあったことを彼女に話しました。ここを全部切り開いて高速道路を通して、高層ビルを建てるような計画があったんだよ、と。一度それを試みたんだけど、熱帯雨林の力が強かったので、全部呑み込まれてしまったんですね。
そのときに、エリザベス・ギルバートに新しい本のアイデアが降ってきたんです。自分でもすごく気に入って、もうそれに掴まれてしまい、その本のためのリサーチをし始めました。
それはどんなストーリーかというと、アメリカの中西部の会社の社長が、ジャングルにハイウェイを作るという計画を立てて、それをやっている中で、ジャングルとともに本人も消えていくというものです。でも、本当の主人公はその社長ではなくて、ひそかに社長を愛している秘書の話なんですね。
その女性は中西部にずっと生まれてから住んでいる人で、一度も海外に出たことがない人なんですが、自分が心から愛していた社長が、ブラジルのジャングルの中で消えてしまった。だから、初めて海外旅行をして、彼を探しに行くという物語なんです。
その本を書いているときに、エリザベスさんある問題が起こって、2年間執筆を進めることができなかったんです。彼女はとても不本意でしたが、仕方がありませんでした。2年後にようやく執筆に戻れたんです。
ところが、もともとのアイデアが消えてなくなっていたんですね。どんなにがんばっても、インスピレーションが浮かんでこない。エリザベスさんも私と同じく、存在目的やアイデア、プロジェクトというものは、どこか上の方に浮かんでいるエネルギーで、そのエネルギーが、いつか自分のところに降ってくると捉えているんです。
ラルー:この話の続きを聞いてください。数ヶ月後に、もう1人のすごいベストセラー作家であるアン・パチェットという人に、このエリザベスさんが会ったんです。会った途端に親友になった。そして、そのアンさんが、「今はこんな本を書いているのよ」と、エリザベスさんに言ってくれた。
その出会ったばかりのアンという別の作家が言うわけです。私が今書いている本は、ある社長が――エリザベスの構想にあった農業企業ではないのですが――ブラジルのジャングルに消えるという話なのよ。でも、主人公は社長じゃなくて、その社長を、心密かに思っている秘書の話なの。
(会場笑)
エリザベスさんは「あぁ、私のところに降っていたアイデアが彼女のところに行ったんだ!」と、鳥肌が立っちゃったそうです。
エリザベスさんはアイデアが自分を選ぶという感覚があったので、自分が2年間そのアイデアを実現することができなかったから、そのアイデアが「あぁいいよ、だったら他のところにいくから」と、ポイッといっちゃったように思ったんですね。今の話が、私にとって存在目的をどのように捉えるかについて、新しい目を開いてくれました。
この世界の中には、成し遂げられるべき重要な仕事があり、私たちがそれを受け止める準備ができていれば、その仕事が私たちを選ぶのです。でも、私たちの方が、受け止める準備ができるように、本当に開かれていないといけないんです。
最後に、もうひとつエリザベスさんのおもしろいエピソードをご紹介します。朝執筆を進めているときに、なかなかアイデアが湧いてこない、降りてこないときがある。そういうときはなにをするかといえば、1回やめて、寝室に戻って、もっとセクシーな服に着替えてくるんです。彼女は、そのアイデアにとって自分がセクシーな存在でないと、相手が降りてきてくれないと思うからです。
(会場笑)
だから、私自身はセクシーではないと思うんですが(笑)、ここには深いメッセージがあるように思います。世の中で達成されるべき、成されるべき重要な仕事や、そのアイデアが降りてこられるような美しい人間として自分を作っていく、磨いていこうではありませんか。これで、もう終わりの時間になったと思います。
(会場笑)
青野:ありがとうございます。
(会場拍手)
目的を探すよりももっと大事なことは、受け入れる準備です。心の準備は自分でもできますからね。ないものを探すのではなく、受け入れる準備をする。これはすごく心に残る言葉ですね。
先ほど上田さんが紹介してくださいましたが、私は今、選択的夫婦別姓というものを、国に訴えていますが、あれも実は私が言い出したことじゃないんですよ。ある別の原告の方がいらっしゃって、それを勧めたい弁護士の方がいらっしゃって、お声がけをいただいて、私もそれに乗っただけなんですね。
受け入れるということは、こうした感覚だろうかとも思いましたね。重要な仕事は、仕事の方から私を見つけてくるのかと。今、そんな気がしました。もっともっとお話をうかがいたいところですが、時間になってしまいましたので、マイクを司会の方にお渡ししたいと思います。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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