働くことのリアリティを誰も教えてくれなかった

川野洋平氏(以下、川野):さっき杉本さんが言ったように、起業って「自分がこの問題を解決できる」と思えるので、すごく楽しいんですよ。僕は最近、ゴミがない道を歩きたいなと思っているんです。この間飲んでいるときに、「福岡市内でゴミ拾いをやろう」と言って盛り上がりました。

みなさんは、働きたいと思ったことはあるのかな。僕は働くのが嫌で、バンドをやっていたときも、ずっとギターを弾けたらそれでいいと思っていました。自分が好きなこと以外は、本当にやりたくないと常に思っていました。

さっきエンジニアになってよかったと話したのも、「そもそも働きたいかどうか」というよりも、「人生に対する向き合い方」を考えたときに、そう実感しています(笑)。どうですか?

落合渉悟氏(以下、落合):僕は、今は働くことが大事だと言えるんですが、昔はやっぱり働きたくはなかったですね。また、働くということのリアリティもゼロでした。

高校時代、僕は理数科に通っていましたが、大学に進学するときの学部選びが雑だったんですよ。仕事のことや将来のことを考えずに、興味だけで学部を選んだ。興味といっても、まだ高校生ですから、印象ですよね。

高校の先生には、よく「物理って、太陽光発電の効率を19パーセント、20パーセントと追っていく仕事でしょ。でも化学だったら実験も楽しそうだし、そちらのほうがいいかな」と、質問していました。

そして、化学と物理の選択肢のうち、化学に近いほうの学部を選んだのですが、大学1年生で、化学の進路に行きたくないと思ってしまいました。その時はすごく苦しくて、学部を変えようとかウダウダしてるうちに、時間が過ぎてしまうんですよね。

苦し紛れに、興味があるからということで、その中でも理論物理寄りの量子力学のような分野を触っておいたんです。それでも、「その分野も仕事にならないから」という理由で、プログラムを書こうと思ったんですよね。結果として、現在はプログラマーをしています。

今思うと、あの頃は本当にリアリティがなかった。そして働くことのリアリティを、誰も教えてくれなかった気もします。やっぱり高校にいるうちから、働くということをもっとリアルに想像したほうがいいと思います。

知らないことを知ったとき、興味を持って調べるかどうか

黒田直樹氏(以下、黒田):一般的に「仕事」というと、「家族を養うために本当はやりたくないことをやっている」というようなニュアンスがあるかなと思います。

僕の場合はぜんぜん違っていて、楽しいことや趣味の一環で、ずっと仕事ができています。きっと大谷翔平やイチローは、自分のやりたいこと、自分の趣味の延長上で仕事をしていて、それを突きつめているんだと思います。そうしたスタンスで仕事をするのが、一番いいのではないでしょうか。

だからぜひみなさんには、「自分の好きなことを仕事にする」ということを目標にしてほしいですね。

川野:きれいにまとめてくれてありがとうございます。自分でしゃべりながら、どこに行くのかなと思っていました。プログラミングも、起業も、「仮想通貨って何?」という疑問も、結局は「働くということをもっとリアルに想像して、自分の好きなことを仕事にする」ということにつながるんだと思っています。

例えば仮想通貨って、ふつう授業では習わないし、わからないですよ。MacBook Airだって知らない。たぶん大人でも知らない人はけっこういると思うんですよね。今日もWindows率が高くて、僕は後ろから見学していて、「MacBook Airを持っているのは、たぶん俺だけじゃないかな」と思っていました(笑)。

仮想通貨も、さっき出てきたイーサリアムも、今日登壇してくれているマネーフォワードという会社も、知っていたらいつか調べることもできるんですよね。

起業という言葉を聞いて、何だろうと考えて、そうやって知る機会になる。「起業の話になると、めちゃくちゃ勢いよくしゃべったのはなんでだろう?」とか。「年収の話になると黙ってしまうのはなんでだろう?」みたいな(笑)。ちょっとおもしろいですね。

傷の治りが早いうちに起業したほうがいい

川野:次は、「起業するなら若いほうがいいですか?」。いい質問ですね。黒田さん、若いほうがいいんでしょうか?

黒田:若いころがいいと思いますね。

川野:中学生起業家なんていう話もあります。

黒田:起業から学ぶことって本当に多いですよね。僕は自分の性格でいうと、痛い目にあわないと身につかないタイプなんです(笑)。

川野:痛い目を見た結果が、ホームレスですよね(笑)。

黒田:傷の治りが早いため、やっぱり若いほうがいい。結婚して子どもが3人いるお父さんが起業するのは、めちゃくちゃリスクがあるじゃないですか。

川野:次の質問、「何歳ですか?」。シンプルでいいじゃないですか。僕は27歳で、10月で28歳になります。

落合:28歳で、11月で29歳です。

黒田:35歳で、12月で36歳になります。

杉本至氏(以下、杉本):僕は先月32歳になりました。

川野:はい、じゃあ次。

(一同笑)

川野:「エンジニアになるのに何年かかりましたか?」。

落合:僕は2ヶ月でしたね。

川野:おー。2ヶ月?

落合:僕はアネクトという会社で22歳のときにインターンをして、最初の2ヶ月間は、電卓のアプリをAndroidで作りました。足し算と引き算しかできないやつです。

それがいい出来だったため、Rubyという言語でWebサービスが簡単に作れる「Ruby on Rails」というフレームワークを書く仕事を、毎月10万円もらうという条件で始めました。

お金をもらい始めたという意味で、(エンジニアになるのにかかったのは)2ヶ月間かなと僕は思っています。大学に行きながら夜中までずっとプログラムを書いていたので、その2ヶ月は本当に大変でしたね。

仕事が自分に合っているかは、やってみないとわからない

川野:そもそもエンジニアって何ですか? 何をやるとエンジニアになりますか?

黒田:モノを作る人。

落合:広いですけどね。エンジニアはモノを作り、それでお金をもらっている人です。

黒田:ちなみに僕がエンジニアになったのは、30歳手前だったんです。10代とか20代の若い子が、後からどんどんエンジニアとして入ってくるので、あくせくしながら一生懸命勉強していたなという感じでした。

杉本:私は2011年に大学を卒業して、IT企業に就職して今まで8年くらいやっていますが、まだエンジニアになれたという実感はありません。日々、「わからない!」「これをいつになったらできるようになるんだろう」とか思っています。

さっきも「不安なことはありますか?」という質問があったのですが、けっこう毎日不安です。でも、だからこそいろんなものに興味を持ってチャレンジしていくことが、大事だと思います。

「エンジニアの仕事が自分に合っているかどうか、どうやって確かめたらいいですか?」という質問に対する回答は、「やってみてわかることのほうが多い」です。実は、僕はエンジニアの仕事が自分に合っているとは思っていません。あんまりプログラムを書くのが得意じゃないと認識しているのですが、僕はそれがすごく好きだし楽しいからやっています。

苦手なところは、もちろん自分もがんばるのですが、ほかの得意なメンバーにやってもらうという手もあります。逆に、一緒に仕事をしている人が苦手なことで、自分が得意なことがあれば、一緒にやってあげればいい。好きなこと、得意なことを見つけていくと、きっとエンジニアになれるんじゃないかなと思います。

川野:「今、最も自慢できることは?」とか。この質問よくないですか? 答えやすそう。

杉本:ここで登壇していることですかね。

川野:おー。嬉しい。

杉本:もともと僕は、ここに登壇する予定はなかったのですが、「川野さんという人、おもしろいな」と思って話しているうちに、川野さんにも興味を持っていただいた。「じゃあ一緒に話そうよ。座談会出てよ」と言われたのは、すごく嬉しいことでした。そうやって言われること自体が、自慢できることかなと思います。

川野:めちゃくちゃ嬉しい。ありがとうございます。

海外でエンジニアとして活躍する方法

川野:「外国で過ごすにはどうすればいいですか?」。これ落合君はたくさんあるんじゃないかな?

落合:簡単に言うと、その国にいる人に必要とされることですね。その国の人から仕事を手伝ってほしいと言われれば、「その国にいていいですよ」と相手の国から許可がおります。いわゆるビザですね。

これは基本的に、働くということに紐付いている。とにかく、行きたい国の人に価値を提供することですよね。

その点、プログラマーはすごく相性もよくて、どこの国でも必要としている仕事です。例外はアメリカですね。アメリカは、H-1ビザというものがあって、すごく厳しいんですよ。

これを言うと、学部選択を歪める可能性があるため嫌なのですが。その国に行く価値を提供する「専門」と自分の大学などでの「専攻」が一致していて、しかもそれなりに信頼がおける会社で信頼がおける実績を残している。そういうすごく厳しい条件をクリアしないと、アメリカのビザはあまりおりません。

「本当にアメリカでやりたいんだ!」という人は、ちゃんと自分の仕事と大学の学部は合わせて行ったほうがいい。計画的にやらないと、アメリカのビザだけはおりないですね。僕は大学を辞めてしまったので、アメリカは行きにくいんですよ。

川野:あー、なるほど。ちなみに落合さんは海外に行かれることが多いですよね。もともとジャカルタに数年間住んでいましたし。たぶんこの質問にも答えられるかなと思います。「日本のエンジニアのレベルは世界的に見てどれくらい?」。

落合:これは2通りの答え方がありますが、基本的には高いです。

川野:高い。

落合:高いどころか超えている部分もあります。日本語と英語って言語が違うのですが、インターネットの時代は情報が流れてくるスピードが速いため、あまり関係ないですね。

もう1つの答え方でいうと、お金の話になります。やっぱりアメリカのサンフランシスコや中国の上海、北京あたりはすごくお金が入ってきます。

お金があると、世界中からたくさん優秀な人を雇えるんですよ。その優秀な人の隣で働くと、知識が横の人に伝わっていくじゃないですか。そのため、めちゃくちゃお金が集まっているところで、発達している技術もあります。

ただ、ブロックチェーン技術はあまり関係ないです。僕の会社は世界を引っ張っている自負があります。

エンジニアほど実力が評価される職種はない

川野:「マネーフォワードはどういう人が求められるんですか?」という質問。

黒田:そうですね。募集しているポジションにもよります。シニアエンジニアを募集している場合には、当然それなりの実力や経験を求めます。しかし一番大事なのは、やはり会社のミッションやビジョンを理解してくれて、カルチャーに合う人ですね。その人と同じ会社で一緒にがんばっていける、と思える人です。

川野:それは、“仲良くなれそう”的な話ですかね?

黒田:そうですね。例えば、「会社がこういうことをやろう」という将来の話をするときに、ワクワクする気持ちを持てるか、みたいなところじゃないですかね。

川野:ありがとうございます。それから、「シニアって何だ?」と思いました。

黒田:それなりの経験やスキルがある人をシニアと呼んでますね。

川野:いただいている質問の一番上。「みんなの話を聞きすぎてよくわからなくなったのですが、結局エンジニアになるためには証券会社に入ればいいの?」。

黒田:これはまったく関係ないです(笑)。

川野:あと「高専卒でも高収入なエンジニアになれますか?」。

黒田:高卒でもぜんぜん構わない。東大に行っていようがどうしようが、腕のあるエンジニアのほうが高い給料をもらうべきという世界ですね。

川野:いろんな方がいらっしゃいますよね。これほど学歴はあんまり関係なく、実力が評価される世界はないです。

落合:いい時代だよね。アプリにユーザーがたくさんいるとか、お金をたくさん稼げるとか、使っている人が少なくてもすごく必要とされているとか、そういうものさえ作れたら、実力ですよね。