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パネルディスカッション(全5記事)

そのメルマガは、本当に“マガジン”ですか? 「北欧、暮らしの道具店」のメルマガ開封率が30%を超える理由

2019年6月25日、永田町GRIDにて「『選ばれ続ける』ブランドになるためのマーケティング戦略」が開催されました。本イベントは、ECメディア「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコムが、企業のマーケティング担当者様向けに開催するリアルイベント。今回はゲスト登壇者として、「ZENB」という食品ブランドをD2Cモデルで立ち上げた株式会社ミツカンの高橋宏祐氏と、「ソフラン」「キレイキレイ」といったマスプロダクトのコミュニケーションを担当するライオン株式会社の内田佳奈氏が登壇。選ばれ続けるブランドにしていくためにどのようなことを考え、日々の試行錯誤をされているかについて、株式会社Moonshotの菅原健一氏、株式会社クラシコムの青木耕平氏を交え、パネルディスカッションを行いました。本記事では、開封率30パーセント以上を誇る「北欧、暮らしの道具店」のメルマガについて語ったパートを中心にお送りします。

「記事広告はもう死んだ」と思っていた

菅原健一氏(以下、菅原):少し話が逸れました。それでは次のテーマにいきたいと思います。「メディアとの仕事の醍醐味とは?」。先ほどの話でもありましたが、お二人は当然代理店さんを経由して広告を出すこともあるでしょうし、今回のようにクラシコムさんとほぼ直接お仕事をして、むしろクラシコムさん側のお任せで記事を作っているわけですよね。

それってリスクがあるようにも見えますが、何かの狙いがあってやっていたんだと思います。どういった考え方や、使い分け方でやっているんですか?

高橋宏祐氏(以下、高橋):まず、今回の取り組みでは、僕はあまり口を出していません。最初はオールターゲットにいったので、「まずは自由にやってください」という感じでした。なにが刺さるかわからないから。

菅原:太っ腹な客だなあ〜。

高橋:いやいや。

菅原:「もういいよ、好きにやって!」と?

高橋:始まって1ヶ月目くらい、会社に入ってから1週間くらいで「どう思いますか?」と言われても、わかるわけがない。

菅原:むしろメーカーさんだと、お客さんのことはわかんないものですよね。メディアのように毎日「どうもこんにちは」というようなこともしていませんし。売り場がある小売の方がむしろ、もうちょっと詳しいくらいの感じですよね。

高橋:僕、実は記事広告というものをあまり信用していなかったんですよ。前職のソフトバンクのときに記事広告をたくさん書いて、最初の頃はすごく良かったんですが、後半の頃にはもう飽きられていて。ほぼ読まれないし、そこから先のクリックもない。そんな状態で、「もう記事広告とディスプレイは死んだんじゃないか?」くらいに思っていたわけですよ。

「もうソーシャルとリスティングでいいんじゃない?」くらいで。ミツカンにきて、「いまさら記事広告なんかやるの!?」というぐらいに思っていたんですが……。申し訳ありませんでした(笑)。

青木耕平氏(以下、青木):いえいえ!(笑)。

メルマガが本当に「マガジン」であれば、本数が多くても読んでもらえる

菅原:あらすじを見ちゃうとアレですが。

高橋:良かったです、すごく。

菅原:あれはでも、すごい数字すぎて。ちょっとね。

青木:メディアに関して言うと、よく僕らECの業者は、メールマガジンやLINE@などに打つわけですよね。実はうち、メルマガを週5から6も打っているんです。

高橋:そんなに!?

青木:そんなに打っているんです。LINEは1日何通も、というくらいですから。

高橋:1日に! 多いねえ。

青木:メルマガが2通来る日もあるくらいですから。そのときによく社員から「こんなに打ったらお客さんに嫌われちゃいますよ!」って心配される瞬間もあったんですよ。メルマガを増やしていく過程において。

最初は週に1回くらいから始まって、「もうちょっと増やせるんじゃね?」という感じでやっていって。これは先ほどの記事広告の話にも通じると思って言っているんですが、メルマガの回数が多いのが問題なのか、中身の問題なのかを切り分けて考えないといけないと思っています。

菅原:内容がつまんないから読まれないと。

青木:堀江貴文さんの有料のメールマガジンを取っているんですけど、お金を払ったら週に1回来るじゃないですか。あれ、同じ値段で週に5回来ても、嫌がる人はあまりいないと思うんですよね。「メールマガジンをいくらで送りますよ」という約束をしていて、その約束と違うコンテンツを送っていても、基本的に量が増えるなら喜ばれるはずであると。

ただ僕らの業界でいえば、「メールマガジンを送ります」と言ってパーミットを取ったはずなのに、メールチラシを送りつけていたら嫌がられる。

菅原:どこが「マガジン」なんだと。

青木:「マガジンじゃねーだろ」ということになる。僕らのメルマガは見ていただくとわかると思いますが、週5回送っていても、そのうちの2個は例えばラジオの告知だったり、ぜんぜん商品の話ではなかったりします。「20時のおつかれさま」という、火曜日の20時に送っているメルマガなんですが、それは純粋にエッセイだったりする。つまり、「マガジンとして約束しているからマガジンを送る」ということを守ってさえいれば、回数が多くても読まれるのではないかと思っています。

「北欧、暮らしの道具店」のメルマガ開封率が30パーセントを超える理由

内田佳奈氏(以下、内田):現に驚異的な開封率ですよね。

菅原:そうなんですか?

内田:何パーセントくらいでしたか?

青木:メルマガが30パーセントくらい。

内田:すごくないですか?

高橋:普通って数パーセントだもんね。

内田:一般的には一桁ですよね。

菅原:一桁? マジですか!

菅原:「マガジン」じゃないんですよ。

内田:マガジンじゃなくチラシになってるからなんですよね(笑)。

菅原:青木さんはよく「約束」という言葉を使いますが、やっぱり約束は大事なんですか?

青木:この間たまたま「記事広告とタイアップ記事は違う」という記事が流れてきたんです。雑誌でいうところの記事広告というのは、広告枠だけを貸して、クライアント側が用意したものを「いいよ、載っけて」というものですよね。でもタイアップというのは、編集部がイニシアチブを取って、企業とタイアップして記事を作るものであると。なのに、タイアップと言っている記事広告が多すぎるという話があって。

菅原:それってお客さんを騙しているわけですよね。

青木:そうですね。僕らとしても、どちらかというと記事広告とはあまり思っていない。やっていることはタイアップのコンテンツ制作であると思っていて、あくまでもタイアップであるということを崩さないでやれるものだけをやらせていただいている、という感じなんですよね。でも枠だけがあって、そこに流し込めるのがビジネス的にもすごく楽なので。

タイアップで人気が出てくると、気がつくと記事広告になっている。記事広告が悪いとは思わないのですが、簡単に記事広告化してしまう。

菅原:お客さんとはタイアップの約束をしているのに。

青木:そうなんですよね。記事広告として約束をしている分にはぜんぜんいいと思うのですが。僕らのお客さんには「これはタイアップ的な取り組みだ」と言うようにしています。

読者と交わした約束をきちんと守っているか?

菅原:「私たちはそれがいいと思っていて、それがたまたまクライアントと合致したので、(タイアップで)やるんですよ」という約束ですもんね。

高橋:なるほどね。

青木:ですから、これはどのクライアントさんもそうですが、いただいた画像データで記事を作ることは、まずしません。

高橋:全部撮っていただきましたね。

菅原:商品を預かって、撮り直して……。へえー。

青木:素材もほぼいただきませんし、内容もこちらで固めたものをご提案して、「どうですか?」というように。もちろんそこで調整はしますが。そうした意味では、先ほどの話でいうと「約束を守り続けているのか?」によって、その効果があるかないかが決まってくると思っています。パッケージが始まったり終わったりはしない気がしているんですよね。メルマガも、ずっと終わったと言われているので。

菅原:「もう役に立たない」「もう読まれない」というような。

青木:「メルマガなんて誰も読まないから」というのは、それこそずっと前から言われてきています。

菅原 :それは、スパムのようなものを送っていたから終わってきた、ということですよね。

青木:そうですね。

菅原:アメリカは確か伸びています。Googleがスパムを見つける能力がすごすぎて、スパムメールが届かなくなっちゃったから、メールの開封率がまた上がったと言われていますよね。

高橋:確かに。「重要」なのは上に来ますからね。

菅原:そうそう、そうなんですよ。そうしていくと、また読んでもらえる。むしろ弾かれないようにしないといけないんですよね。

スパムフォルダに入ってしまうようなメルマガを作ってしまう側の問題

青木:これ、本当か嘘かは定かじゃなくて、ツイッターで誰かが言っていたのですが……。Gmailの機能で、メルマガだけを別タブに自動で振り分けられる機能がありますよね。でも「『北欧、暮らしの道具店』のメルマガだけはあっちにいかない!」とのことで(笑)。

内田:振り分けられない(笑)。大事なメールが届いたと思われている。

菅原:すごい!

内田:おもしろい。

青木:実地で確認していないのでよくわかりませんが、ただユーザーの反応がいいということが加味されているとしたら、起こりうるかもしれないと思っていますね。

菅原:「これは重要ですよ」と。その反対はよくありますもんね。関係なく送りつけてきて、スパムフォルダに毎回入っちゃっていたり。「すみません、うちのメルマガ、スパムフォルダにあるので見てください!」と言ってきたり。

高橋:悲しいですね。

菅原:「多くの人が『嫌だ』と言ったものを誰が見るんだよ!」という。

青木:クライアントとお話をするときに、判断基準として見ることがあるとすれば、「約束を守っているのか?」ということは1つのポイントだなと思っています。

菅原:それがあのレスポンスに変わるわけですよね。

青木:はい。

内田:確かにクラシコムさんとタイアップするときは、動画でも記事でも、「のれんの融合」のように感じるんですが。

菅原:のれんの融合?

内田:メディアを本当に真摯に愚直に作っているという姿勢と、ものづくりをすごく愚直にやっているけど不器用すぎて下手なくらいのうちと(笑)。「もう少しうまいことやれよ」って思っちゃうんですが。

(一同笑)

内田:ものすごく愚直に作っていて。柔軟剤の消臭力検証のために、靴下を5,000足も嗅いでみたりもしちゃう。そういう根性でやっちゃうところがあったりするので。それをタイアップでうまく引き出してくれて、お互いの愚直なところが融合して、それを愛してくれる人に丁寧にお届けできている気がする。

菅原:いいものを作りたい人たちと、ちゃんとお客さんが納得するかたちで届けたい人、ということですよね。

内田:はい、不思議な感じもします。

シェアが伸びるコモディティ商品はほぼない

菅原:うっちーさんが2個目に言っていた商品はなんでしたか?

内田:『ソフラン プレミアム消臭』です。

菅原:先ほど最後に、しれっと「シェアが伸びています」って言っていましたが。

内田:そうなんですよ。

菅原:あれはもっとちゃんと言ったほうがいいんじゃないですか? シェアが伸びるコモディティ商品って、最近はほぼない。みんな新商品を作りすぎて、シェアはどんどん分散されている。シャンプーなんてスーパー銭湯がトップシェアになっていて、どんどんどんどん細分化されちゃうじゃないですか。

ああいうものとはぜんぜん違う動きだと思いますが、やっぱり使われ続けたいですよね。一番いいのはずっと使われることですよね。

内田:そうですね。うちでよくあることで言うと、例えばCMがうまく機能したときに、一時的にシェアが上がるということはあるんですよ。

菅原:要は刈り取りみたいなものですものね。その瞬間に「柔軟剤が欲しい!」といった人に、「こんな柔軟剤ありまっせ」と伝えたら、みんな覚えているから手に取って買う、くらいの感じですよね。

内田:そうなんですよ。好調なシェアが続いているかがすごく大事なのです。

菅原:でも次に他社さんにそれをやられちゃったらね……。

内田:やっぱり一瞬ガッと盛り上げるというか、初めて手にとってもらうというところでは、もちろんタレントさんの力は大事です。そこに対しての仕掛けはめちゃくちゃ考えていて、いっぱいやりましたが、それと同時にライオンの愚直なものづくりの姿勢や、ソフランが持っているブランドパーパスを伝えるというところがないと、好調なシェアが続くということは絶対になかったと思います。

ライオン × クラシコムによるタイアップコンテンツの成果

菅原:ちなみに、そこはちゃんと聞きますが、BRAND NOTE(「北欧、暮らしの道具店」によるタイアップ記事コンテンツ)はどう貢献したんですか?

内田:BRAND NOTEに関しては、『青葉家のテーブル』(「北欧、暮らしの道具店」によるオリジナルドラマ作品)とのタイアップだったので。『青葉家のテーブル』の動画の中で、ソフランの持っている世界観を受け取ってもらっているんです。その動画を見せる場所を、BRAND NOTEの中に作ってくれたんですよ。

つまり、BRAND NOTEでソフランが持っているブランドパーパスであったり愚直なものづくりの秘話などを語らせてもらいました。研究員が、本当にニオイが消えたかどうかを確かめるために5,000足の臭い靴下を集めて、1個1個ニオイを嗅いでニキビができたというような話を(笑)。

(一同笑)

内田:エビデンスになるようなことをちゃんと言った上で、そのBRAND NOTE内に埋め込まれている動画として『青葉家のテーブル』タイアップを見てもらえるかたちになっていたので。アンケートを見てみると、まずは「『青葉家のテーブル』とタイアップして、こんないいものを作ってくれてありがとう」、「シーズン1が終わったと思っていた私たちにアナザーストーリーをくれてありがとう!」と感謝されました。

菅原:感謝から始まるんですね。商品でそんなに感謝されることはありませんよね。

内田:ないない、ないですよ!

菅原:なんだったら、20円安い方が手に取って買われるようなもので、「ありがとう」とはなかなかないですよね。

内田:そうなんですよ。「ありがとう」に加えて、「5,000足の靴下なんて、やるじゃない」という。

(一同笑)

「じゃあ買いにいくわね!」というような話になって。中には「買ってきました!」ということをわざわざ言ってくれる人もいて。

菅原:えー! うれしい!

内田:これ、おもしろくないですか? 「アンケートがある!」と思って実際に買いに行ってから、わざわざ報告までしてくれるという。

菅原:「アンケートを書く前にちゃんと買わないと悪い」と思った人もいるんだ。律儀な読者さんがいますね。

菅原:なるほどなあ。おもしろい。

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