関西のスタートアップ界隈が盛り上がる機運

冨田阿里氏(以下、冨田):では次の質問に移りましょう。「関西のスタートアップって盛り上がってるイメージありますか?」。

廣澤太紀氏(以下、廣澤):来週も関西に行くんですよ、大阪に。

冨田:お、盛り上がってるイメージはあるということ?

廣澤:2014年、2015年とかと比べたらすごく盛り上がっている気がしています。僕も全部知ってるわけじゃないんですけど、東京のスタートアップと呼ばれる若い企業が増えていったタイミングって、アクセラレータープログラムが東京にできたとか、あとは投資する人が増えたとか、イベントの数が増えたりしたからだと思うんですよね。

そういう兆しみたいなものが、大阪でもあるんじゃないかなと思っていて。それの何がいいかというと、こういうのに興味がある人が同じ場所に集まれる機会が、以前だったら年に1、2回しかなかった。それが月に1回くらいの頻度になっているので。なんというか、セレンディピティみたいなものが発生する可能性が高くなってるんじゃないかなと思います。

スタートアップに接する機会は確実に増えていっている気がします。今日とかも、関西で起業した人たちが東京まで来たりして、それくらいの気持ちで「やっていくぞ!」という気合いのある人が増えてきてるという意味でも、かなり盛り上がってきてるんじゃないかなとは思いますね。

坪田拓也氏(以下、坪田):今ファンドのLP(リミテッド・パートナー)さんに大阪の企業もいらっしゃるので、実は僕も毎月大阪に行っていて。

あと、今全国に投資活動を広げようとしていて、地方出張にも行っています。ぜひ大阪でイベントなどをしたい方がいれば、呼んでいただければと思います。一旦宣伝と(笑)。

冨田:盛り上がってるってことですね。

廣澤:けっこうお世話になってるところだと、仲の良いファンドでマネックスさんのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のマネックスベンチャーズの代表の方とかも、ほぼ毎月くらいのペースで大阪に行っていて。実際そっちでも投資したりしていて、さらに社数を増やすとも言っていたので、投資家が関西に行く機会もかなり増えてるんだろうなという気がします。

東京の課題感と、関西・地方の課題感の違い

坪田:語弊を恐れずに言うと、僕は関西出身で今は東京で働いているんですが、ざっくり言うと東京って課題が少ないなと思うんですよ。けっこう便利ですし、いろんなサービスがあるじゃないですか。本当にいろんな解決手段がある中で関西に帰ったりすると、まだまだそういうものがぜんぜん進んでないんです。最近やっと両親がケータイもスマホになって、Uber Eatsとか(タクシー配車アプリの)DiDiを使い始めていて(笑)。

特徴として、東京は例えば「AIとかブロックチェーンがきてるから、これでどういった事業領域に入ろうか」みたいにHowから事業アイデアを考えるような方が、わりといると思います。

でも関西ってそもそも課題が多いので、「ずっとこの課題を解決したいと思ってました」とか、「この領域にいてこれを成し遂げたい」と思っていたところにちょうど解決に繋がるテクノロジーが出てきたから、掛け合わせでこんなことやるんです、みたいに課題やニーズに基づいて起業されている方がすごく多いなという印象ですね。そういった意味ではすごくおもしろいなと思ってます。

冨田:ありがとうございます。私も大学が神戸でしたが、今度すごく久しぶりに、「神戸大学卒業生スタートアップ飲み会」というのをやります。

坪田:そんなのがあるんですね!

冨田:そう! 「そんなのがあるんですね」と言われる(笑)。

廣澤:神戸大学って、意外とスタートアップが多いですもんね。

冨田:そうなんです。関西でくくる飲み会はあったけど、神戸大学でくくっても人が集まるようになってきて。盛り上がってきてる感があります。

いいピッチの動画を見てひたすらいい事業を作ることが、コンテストで勝つポイント

冨田:次は……あ、いい質問。「今日のようなピッチコンテストで勝つポイントを2人から聞きたいです」。こういうピッチコンテストで勝つための実践的なノウハウですね。

廣澤:SmartHRの宮田(昇始)さんの、過去のピッチ動画を見まくる。

冨田:いいピッチを見まくるということですね。

廣澤:一時期のB Dash Campのピッチとか、IVS(Infinity Ventures Summit )のピッチコンテストをみていると、ほぼ宮田さんのフォーマットじゃないかなというくらい似ていることがあって。でも、やっぱりめちゃくちゃわかりやすいんですよ。投資家に対して何がウケるのかを含めて、すごく伝わりやすいものになっているので。

準備という意味では、それが一番いい方法なんじゃないかなと思います。昔、宮田さんにそれを聞いたブログ記事を書いたので、よかったら見てください。宮田さんのお話を文字起こししただけなんですけど、凄く参考になります

冨田:いいですね。

坪田:一番の勝つポイントは、ぶっちゃけ「いい事業を作る」だと思います(笑)!

廣澤:いや、そうですね。おっしゃるとおりです(笑)。

坪田:いやいや(笑)。そのうえで、それをいかにさらに良く見せるかという観点で(廣澤氏の)おっしゃるとおりですよね。うまくいっている人の過去のピッチをひたすらインプットして、あとは練習ですね。ひたすらアウトプットを繰り返すことで完成度を上げていくのが一番だなと思います。

たぶんピッチって、資金調達を前提にVCに対して個別に行うものだったり、アクセラレーターでのDEMO DAYのものだったり、IVSのような大規模なピッチイベントだったりで、それぞれ目的と視聴者が違うと思います。

それに合わせて、もちろん見せるポイントというか、押すポイントも変わってくると思っていて。そこをしっかり理解したうえで作り込むのがいいのかなと思います。

エアロネクスト田路氏のピッチから学べること

冨田:お2人の答えに頷くばかりです。ありがとうございます。私もこの間、ICCのオフサイトセッションで「「プレゼンテーション講座」」という勉強会に参加しました。

まず、みんながわかりやすい基本の型を作って準備する。でも、本番では相手の顔を見て、「今日は聞いてくれる人に何を伝えるんだっけ?」という話をしていて。

そのときはエアロネクストの田路(圭輔)さんが話してくださったのですが、宮田さんのピッチとは真逆でした。それも動画が上がっているので検索ください。ぜんぜん型にはまってないんですよ。最初に課題から入らなかったり、すぐにドローンの動画で魅せる。動画で興味を惹きつけて、スライドの説明じゃ伝わりにくいことを伝える。

ドローンを使った知財ビジネスを一番わかりやすく、ドローンに詳しくないオーディエンスに理解してもらったからこそ、1年間ピッチコンテストの一位を総ナメできたという話をされていて。

お二人が言ったとおり「いい型をまずやる、そしてオーディエンスを見極める」ようにして、あとは事業さえよければピッチは勝てるんじゃないかって(笑)。

坪田:あと今日ちょっと気づいたのが、ひたすらピッチの練習をしたり、事業の解像度を上げていく中で、どんどん感覚ってマヒしてくると思うんですよ。事業理解というか、「これぐらいはみんなわかるもんだろう」というところ。

なので、例えば同じ創業メンバーに対して練習しても、たぶん話って通じちゃうんです。でも、初めてその事業を知る人にとっては別で、どういった事業なのかが理解されなかったりする。それはもったいないので、初めてその事業や業界を知る人を想定したパターンも練習しておいたほうがいいですね。

冨田:本当にそうですね。スマートピッチをやるときに、応募があった人のピッチを全部見てフィードバックもさせていただいたのですが、ピッチする起業家のほうが、そのビジネスに詳しいから、初めて聞いた私が「えっ、それ何ですか?」と思うことがあって。

「それって何だろう?」と思うと、もう次の言葉が頭に入ってこなくなっちゃって。やっぱり初見の人に1回聞いてもらうのがいいと思うし、スマートピッチに応募してもらえたら私が必ず聞きますので(笑)。

廣澤:直接フィードバックをいただけるんですね。

冨田:はい、必ずフィードバックします。そして、SmartHRさんや、エアロネクストさんの動画も、検索して見てみてください。

異常な高さの下駄を履かせたファイナンスはNG

冨田:では次の質問に。「M&Aエグジットの可能性を捨てないために、やらないほうがいいことはありますか?」。

廣澤:実態から大きく乖離したファイナンスをする。

冨田:そうですね、価格を上げすぎない。

廣澤:実態からかけ離れすぎているような資金調達をするんであれば、ものすごい将来の成長に対して期待して出資してもらうことになると思うので。M&Aをする側に回ったことはないですけれども、やっぱり担当者の方とお話をしていると「ベンチャーキャピタリストが投資するときの視点」と「M&Aする側の視点」は、かなり乖離があるので。

例えばM&Aで10億のバリュエーションがつく会社がVCからファイナンスを受けたら、本当にその数倍とか、下手したら10倍以上になることもあるので。そもそもロジックが違うというところを把握して、そのうえでどういう選択を取るか「決め」を持つことなんだろうなと思います。

一番よくある、難しくなるパターンは、あまりに期待値を上げすぎてファイナンスをして、結局「M&Aしたいです」となると、前回のラウンドの投資家が「割に合わない」ということでブロックされたりとか。そういうケースもぜんぜんあると思うので。

こういうものもいろいろ聞いてみると、起業家の方同士で情報をシェアできるのが1番だと思うので、起業家の友達が何人かいるとよいんだろうなと思います。

冨田:ありがとうございます。

坪田:あと「やらないこと」じゃないですけど、あまり大きくない金額のM&Aだったら、そもそも創業者があまり得しないパターンもあります(笑)。そういった意味では、M&Aを視野に入れるんだったら、ファイナンスの仕方もあるのかなっていう。IPOだけ目指すんであれば、取りにいく手段もちょっと変わってくるのかなと。