キャッシュレス、レジレス、ウォークスルーの新世代カフェ

長谷川秀樹氏(以下、長谷川):じゃあ、3人目、横田さんの方に移っていきたいと思います。

横田聡氏(以下、横田):はい、よろしくお願いします。弊社は、ちょっと2人とは切り口が違って、「IoTを使って、IT企業が飲食小売のお店を始めてみました」という、実験の記録のような紹介になります。

(スライドを指しながら)これは今年の2月に、実際に秋葉原でオープンしたお店です。どんなお店かは、まずは動画をご覧ください。

(動画スタート)

カフェですけれども、外から注文できます。2週間ぐらいで作りました。これは、ありがちですよね。サイネージです。これは1週間で作りました。オーダー管理のシステムも1週間ぐらいで作りました。それで、コーヒーを渡す。これが1つ目の機能です。

2つ目の機能がウォークスルーの決済ですね。QRコードをかざして入店して、お店の中で商品をピックアップ。そのままカバンに入れる。普通に「万引き」をしています(笑)。エリアを出ると決済完了。これは技術検証を半年ぐらいやっていました。

(動画終了)

こういう感じのことをやっております。

長谷川:すごいですね。中国のラッキンコーヒー(瑞幸珈琲/Luckin Coffee)を抜いて、5万店舗ぐらい出したらいいんじゃないでしょうか。

横田:5万店舗ぐらい、がんばりたいと思います(笑)。

IT企業がなぜ飲食小売業を展開?

横田:自己紹介させていただきますと、学校を出まして、会社を作りました。以上です。(2019年)7月から16年目がスタートしております。会社名はクラスメソッドと申しまして、主にクラウドインテグレーション、お客様のIT支援をやっている会社です。15年ぐらいやっていたんですけど、1年ぐらい前に始めたこの飲食小売のお店はB to C、しかも路面店をやっています。

当社の企業理念は、短縮しますと「とにかく創造活動に貢献したい」ということなんですね。最近、デジタルトランスフォーメーションと言われて、みなさんもやりたいと言われるんですけれど、なかなかお客様自身も動ききれないし、僕たちもやりきれなくて、もどかしさがすごくありました。

それはなんだろうと思ったら、こういうことかなと思ったんです。世の中の事業会社さんが「IT企業をやるぞ」と声高に叫んで内製化だったり、いろいろな投資をされるんですけれども、海の向こうでは、IT企業が事業会社化されているんですね。

この流れにちょっと乗ってみるかということで、去年の5月にシアトルに行きました。(スライドのAmazon Goの店舗写真を指しながら)とにかく、すごい創造活動を発見してしまったんですね。「なんか、すげぇ!」と思いました。

外見は普通のコンビニで、店内には何やら大量のセンサーがあって、なんかすごいことやっているんだろうなと思います。だけど、1人の消費者として、「物を買った時に、何も最新テクノロジーを感じることなく物が買えてしまった」ということに衝撃を受けました。

秋葉原でAmazon Goと同様の購買体験が可能

長谷川:この中で、Amazon Goがどんなものか知っている人、わかっている人はどれぐらいですか?

横田:全員、ご存知ですよね。行ったことがある方は、どれぐらいいらっしゃいますか? やっぱり、10パーセントぐらい、10パーセントもいないぐらいですかね。(Amazon Goのあるシアトルまでは)往復で40万円ぐらいかかると思うんですけど、(クラスメソッドのカフェは)秋葉原です。400円ぐらいで行けるので、ぜひ一度ご体験いただけると幸いです。すごく雑な仕組みなんですけれども、なんとなく似たような体験ができます。

(Amazon Goには)アプリがあって、QRコードが用意されていて、AmazonのIDがあれば入店できます。そのまま「万引き」してお店を出るとスマホに通知が来て、「買いましたね?」となります。「これは、すげぇぞ」と思いました。

(Amazon Goは)何か、やっているんですよ。顔なのか、手なのか、足なのか。重さなのか、温度なのか、光なのか。何なのかわからないんですけど、何かやっている。すごく悶々としました。技術もそうなんですけど、体験のすばらしさにすごく悶々としたんですよ。

日本に帰ってきて「とりあえずやってみよう」ということで、みんな仕事が忙しかったんですけど、6月からチームを作りました。社内で8人、兼務で集めてスタート。まずは、秋葉原は(電子パーツを販売している)会社がありますので、いろいろパーツを集めました。(スライドを切り替えながら)ぜんぜんニューリテールには関係がないんですけれども、結局どう作ったのかということを、ちょっとお話しできればと思います。

大量のパーツを買って、木を削って組み立てて、完成。だいたい2週間ぐらいですかね。無印良品で買ってきた棚の上に「うまい棒」が乗っていて、下には重量のセンサーが入っています。(うまい棒を)取ると重量に変化があって、(そのデータを)クラウドに投げてというものを雑に作って、「これ、Amazon Goっぽくない?」って、みんなでレビューをしてということをひたすら繰り返しました。

ソフトウェアの会社がはんだごてを使ってモノづくり

長谷川:この時はまだ、重さのセンサーだけでやっている感じですか?

横田:これは重さだけです。でも、実際はコンビニなので、いろいろな人が入ってきて、入ったり出たりします。1人の人が複数の商品を取ったりもするので、「そのあたりはどうなっているんだろうね?」とは思うものの、誰も教えてくれないので、いろいろ研究しました。

他には、実際に買えた方がいいので、(決済機能として)Stripeを入れてみました。技術検証するにあたっては、自分のオフィスであればいいんですけど、他のところに置いた時には、なかなか有線は引けません。Wi-Fiにもできたんですけど、Wi-Fiを借りるのも難しいし、お客様の中には「Wi-Fi? 何それ?」みたいなところもあるのでSORACOMを導入しました。

とりあえずSORACOMを入れてみたかっただけです(笑)。入れてみました。顔認証で入ったり、姿勢推定(ポーズエスティメーション)と言いますけれども、人の骨格がどんな動きをしているかを映像で判別したり、商品画像の学習などもしました。

(スライドを指しながら)これはたぶん検証中の画面です。とにかく高速に試す。1パーツにつき1日か2日ぐらいで、みんなで寄ってたかって検証し、社内でレポートを上げて、「これはいけるんじゃないの?」「あれもいけるんじゃないの?」とやり始める。

長谷川:これは基本的にAWSのテクノロジーでやっているんですか?

横田:半分ぐらいです。それ以外は、世の中にある、さまざまなテクノロジーを組み合わせてやっています。これは、学習はAWSのSageMakerですけれども、推論はNVIDIAのJetsonでやっています。いろいろ組み合わせてやっています。

あと、AWSはぜんぜん関係ないんですが、基本的には最短の時間でやろうと思ったので、在りものを使おうと思ったんです。だけど、やっぱり在りものじゃ足りなかったので、はんだごてを使って、回路を書いて作ったりしています。(スライドを指しながら)これは、「測距センサー」といって、手が入った瞬間を検知しています。

手作りなので、ガムテープやボンド、リード線などを秋葉原で大量に買ってきて、はんだごてを使って作ります。うちはソフトウェアの会社です。15年間ずっと画面に向かって仕事をしてきたんですけれど、初めてのはんだごてを使っての作業ですね。社員の私物です。オシロスコープも社員の私物です。ちゃんと電流が通っているか、波形が取れるかを見ます。

(スライドを指しながら)木で作っていたんですが、運ぶたびに壊れたので、鉄にしました。ガムテープだとはがれにくかったので、養生テープにしました。そういうことを本当に高速で繰り返し実験していって、結局1年間で4回作り直したんですが、3回目の時に工場に委託して生産しました。

海外も検討したんですけど、200か300くらいのロット数で考えていたので、国内の工場さんと繋がりができて、そこに発注させてもらいました。

プリント基板に社名が載ることは、ソフトウェアエンジニアの夢

横田:(スライドを指しながら)あとは、プリント基盤も作り始めました。これは初代です。もうバージョン2、バージョン3みたいなこともやり始めています。たまたま社内に回路が書ける人がいたので、その人が書いて、設計専門の事務所に発注し、プリント基板の一歩手前まで作って、レビュー。今度はそれをプリント基板屋さんに発注して、作ってもらう。そういうことを、ほぼ内製でやっています。

プリント基板に社名が載ることが夢だったんですよね(笑)。そういうの、ありませんか? ありますよね? 「エンジニアあるある」だと思うんです。特にソフトウェアエンジニアの方は、夢だと思います。できますよ。

あとは、最初はAWSのサービスで人の動きを検知していたんですけれども、より特定のドメインの映像の解析がしたかったので、これも映像学習させて、やっていったりしています。他にも、センサーだけじゃなくて、アクチュエーターですね。入店のところに必要な棒(入場ゲート)みたいなものを設計しています。

3回作り直していますが、なぜこんなに作り直しているかというと、弊社はさっきのカフェビジネスの横展開を目的としているのではなくて、「自分たちでどのようにイノベーションを起こしていったらいいのだろうか」ということを考えているからです。

「そういえばAmazonって、フィードバックループサイクルを高速で回しているな」と思ったんですね。「じゃあ僕らも、フィードバックループサイクルを高速に回せたら、いいものができるんじゃなかろうか」と考え始めて、やり始めたのが昨年の6月です。