テンセントと日本の働き方改革の次元の違い

金泉俊輔氏(以下、金泉):はい、それでは充電も十分かと思いますので、鈴木さんにお願いしたいと思うんですが、ちょっと鈴木さんの会社というよりは、やや趣きの違うスライドが出てきたので、ぜひお話を聞きたいなと思います。

鈴木万治氏(以下、鈴木):スライドとは関係なく、DENSOは今なにを大切にしているかというと、とくにグローバルで大切にしてるのが、みなさんも聞かれたことあるかもしれないんですけど、コンシャス・インクルージョンという、インクルージョンですよね。

細々とした項目をたくさん挙げると、僕たちではやっぱり身に沁みつかないので、一番大事なことってインクルージョンじゃない? ということです。ダイバーシティというのは多様性のことを言ってるだけで、多様性を認めても、それはそれだけの話なので。

要は、多様性に対してエクスクルージョンしない、「みんなで一緒にやりましょう」ってところが、いま僕たちがグローバルですごく大切にしていることですね。それがたぶんDENSOのかたちってところです。

それで、このスライドはちょっと違っていて、たまたま僕もシリコンバレーにいたものですから、日本を外から眺める機会も非常に多くて。これは深圳にいたときに感じたことなんですけど、夜中の10時にちょっと飲み終わって、深圳のところを歩いていた時に、すごく煌々と電気がついていたビルがあったんですよね。

「あれ何?」と言ったら、「Tencentだよ、Tencent」と。「Tencentってあの微信のTencentじゃん」「そうそう」って。「もうこんな夜遅くなのに、あんなに電気ついてていいの?」みたいな話をしたら、「いや、いいんだよ別に。彼らは社員が一生懸命、価値を創出しようとしてがんばってるし、会社はそれを支援してるんです」と。

だから、代わりになにをやってるかというと、食事を出したり、遅くなったらタクシーで送ったりとか、そういうことをやってるんですよね。社員は一生懸命価値を創出しようとしてるし、会社はそれを支援している。

そういう話を聞いた時に、日本の働き方改革ってこうだったらなって思ったりしていると、「もう10時で閉めます」みたいな、なんか時間を管理してるような。それってなんかTencentの例と比べると、価値創出・支援という関係と、時間を管理するということで、次元が違うなと感じたのがひとつですね。

イノベーションとは「新結合」である

鈴木:次のスライドをお願いします。それでInnovationって、日本でもどこでもそうですけど、「Innovationって必要ですか?」っていうと、やっぱり必要に決まっていて、Innovation不要って言う人はいないと思うんですよね。だけどみなさん、Innovationの定義ってなんですかね。

シリコンバレーのクレイジーな奴らが、なんかわけのわからないことをガンガン言いながらやってるのが、Innovationだと思っている方も中にはいると思うし、違うって言う方もたくさんいると思うんですよ。

僕がシリコンバレーで働いていてなんとなく感じたのは、シュンペーターというものすごく古い方なんですけど、ドイツ語でいうneue Kombinationですよね。英語で言うとnew combination。

つまり、新結合であるという概念が非常に腹に落ちて。これはSansanさんの話もまさにこれだと思うんだけど、例えば自動車業界でディスラプトに晒されているってみんなが言ってるんですよね。

これは、100年に一度の大きな波が来るんだと。だから、もたもたしているとディスラプトされると言いながら、何をやっているかというと(スライドを指して)左側ですよね、業界の人たちと話してるんです。

業界の人たちと話して、ディスラプトの波が検出できれば、例えば家電だってディスラプトされてなかっただろうし、半導体だってディスラプトされてないわけですよ。

ということで、大事なことってのは、新結合の「新」の部分で、(スライドを指して)右側に描いてあるんですけど、自分とは関係ない人。例えば、僕がいまシリコンバレーで話してる人たちって、マネーテックとかウイルステックとかフィンテックだとか、あとリテイルとか、real estate・不動産ですよね。

ぜんぜん関係ない人たちと話すことによって、例えば、ある業界ではベストプラクティスなんだけど、自動車業界ではぜんぜんそうなってない、とかってのがよくわかる。シェアリングエコノミーなんて、例えば、Uberを見てればAirbnbができますよね。だから、そんな感じで他のところから持ってきて結合させるっていうのが、すごく重要じゃないかと思ってます。

イノベーションを起こすカギは、異分野での価値の交換

鈴木:次、最後お願いします。じゃあ、その結合はどうやって作ればいいかっていうと、これはたぶん世界のどこでも同じです。ただ、日本だと不明確だけど、シリコンバレーだとすごく明確って違いがあるんですけど、要は、価値と等価交換というものがあると思うんですよね。

自分が価値を持っていないと、その人脈だってできないわけですよね。たまにあるのは、「いや、お前、いい人脈持ってるじゃん。ちゃんと会社に置いていけよ」だとか、「他の人とシェアしていけよ」と言われるんですけれど、そういう人たちに僕が答えるのは、「いや、あなたもわかってると思うんですけど、クレジットカードのポイントはその人しか使えないんですよ」って言ってるんですね。

要は、「クレジットカードのポイントをくれ」って言ってるのと同じなんですよ。それってできないですよね。だからやっぱり、Sansanさんのこういうイベントに出ていて思うのは、外と外とのネットワークをどうやって作るか、そこが大事だってことを実感できるのと、あと僕は少ないんですが、やっぱり自分で出すものを持ってないといけないってことですよね。

だから、イノベーションを起こすためには、まず自分がなにかを持っていて、関係ない人と話すと、そのオポチュニティが増えるんじゃないかな、というふうに思いながら仕事をしています。長々とすみません。

自分ではわからない価値に気付くための方法

金泉:いえいえ、この辺のネットワーキングの考え方と、今の国内の状況というとあれですが、各企業の状況とを見比べて、富岡さんどう思いますか? 

富岡圭氏(以下、富岡):ありがとうございます。まさにそのイノベーションを起こすためのつながりが大事だというのは、僕らが会社として提供したいことにつながっていて、ありがたいお話だなと思ったんですけど(笑)。

でも、ちょっと思ってたのが、その価値の等価交換みたいな、よくGive and Takeとか、Give and Giveみたいなことが言われますけど、ただ、価値を出していくとか、持っていくとかって、やっぱりけっこう難しくて、ハードルがあるかなと思うんですけど。

それこそ、万治さんが日本からシリコンバレーというところに行って、そういうものをどう出していっているのかもちょっとうかがいたいな、という……。

金泉:そうですね、ぜひ聞きたいですね。

鈴木:みなさん、実は自分で気付いてないだけで価値は持ってるんですよ。例えば、シリコンバレーってソフトウェアのことを知っている人たちがたくさんいるんですけどね。その人たちとソフトウェアの話をしても、僕の価値はぜんぜん提供できないわけですよ。

でも、僕は30年間自動車業界で働いているので、車のことはめちゃくちゃ知ってるわけですよ。そうすると、彼らが持ってるソフトの力と、僕の持ってる車の知識などを、もし融合できたら、「わぁ、すげえ」って話になるわけですよ。

なので大事なことは、違う土俵のなにかを持っているということ。同じ土俵で勝負すると、やっぱりかなりきつくて、なんともならないんですけど……、ちょっと前のチャプターを出してください。

(スライドを指して)だからそういう意味で、同じコミュニティーの中だと、誰が一番上だとか、あいつには勝てないとかってなるんですけど、コミュニティーを一歩出たら、コンフォートゾーンから出るんですよ。コンフォートゾーンから出ると、自分が大したことないと思うことでも、相手にとってはすごい情報だったり、あとはその逆もある。

だからみなさんが、自分ってなんか価値を持ってるのかなと思われるんであれば、一度その自分のコンフォートゾーンから出てみればいいんですよ。例えば、僕がデンソーの本社に行った時に、「今度自衛隊の人と、話をしてきます」って言ったら、みんな「なんで?」みたいな。

でも、そこに「なんで」を求めると、結局何も起こらないんですよ。それはやってみなきゃわからないから。なのでみなさん、一度ご自身でやられてみると実感が湧きますから、やってみるといいと思います。

イベントを通して異分野との出会いの場を作る

富岡:ありがとうございます。ちょっとこの場で質問させていただきましたけど、でも、違う業界にいくときって、本当そうだなと思っています。僕らも今回イノベーションというテーマでやっていますけれど、そもそも名刺をやっているSansanが、なんでこういうセッションをやってるんだとか、なんかNASAから月の探査の責任者の人が来たりだとか、たぶんいろいろ思われてると思うんですけど。

違うところとつながることで、イノベーションが起きてくるというのは、僕らもビジネスやっていてすごく思いますし、そういう場を提供できたらなと思ってやっていたので、まさに万治さんに言っていただいたようなところをやってみるというのは、すごく共感できることだなと思いました。

金泉:そうですね、鈴木さんの最初のスライドなんですけれども、このTencentの状況ってたぶん、日本の企業や官庁に勢いがあったとき、まさにこんな感じだったなぁなんて思い返しながらなんですけれども。

じゃあこれからは、いま世界ではTencentの例だとか、日本ではこういう状況がある中で、働き方についていろいろ議論があると思うんですけども、本日の本題、働くの「コレカラ」という状況を、みんなさんがどういうふうに捉えているのか。そして、どうなっていくべきだと思っているのかを、ぜひうかがっていきたいと思うんですけれども、まずは、石橋さんからお話をおうかがいしてよろしいでしょうか。