違う土俵に立つと自分の価値に気付く
デンソー鈴木万治氏が語る、コミュニティの外に行く意味

働くの「コレカラ」 #2/3

Sansan Innovation Project 2019
に開催

2019年3月14日~15日にかけて、「Sansan Innovation Project 2019」が開催されました。「Sansan Innovation Project」は、あらゆる分野の専門家、最前線で活躍するプレイヤーを招き、組織を次のステージへと導くためのさまざまな 「Innovation」について紹介する、Sansan主催のビジネスカンファレンスです。本パートでは、「働くの『コレカラ』」の講演をご紹介します。今回は、デンソーの鈴木万治氏が、自身がシリコンバレーオフィスで実感したことや、日本と中国の働き方の違いなどについて語りました。

テンセントと日本の働き方改革の次元の違い

金泉俊輔氏(以下、金泉):はい、それでは充電も十分かと思いますので、鈴木さんにお願いしたいと思うんですが、ちょっと鈴木さんの会社というよりは、やや趣きの違うスライドが出てきたので、ぜひお話を聞きたいなと思います。

鈴木万治氏(以下、鈴木):スライドとは関係なく、DENSOは今なにを大切にしているかというと、とくにグローバルで大切にしてるのが、みなさんも聞かれたことあるかもしれないんですけど、コンシャス・インクルージョンという、インクルージョンですよね。

細々とした項目をたくさん挙げると、僕たちではやっぱり身に沁みつかないので、一番大事なことってインクルージョンじゃない? ということです。ダイバーシティというのは多様性のことを言ってるだけで、多様性を認めても、それはそれだけの話なので。

要は、多様性に対してエクスクルージョンしない、「みんなで一緒にやりましょう」ってところが、いま僕たちがグローバルですごく大切にしていることですね。それがたぶんDENSOのかたちってところです。

それで、このスライドはちょっと違っていて、たまたま僕もシリコンバレーにいたものですから、日本を外から眺める機会も非常に多くて。これは深圳にいたときに感じたことなんですけど、夜中の10時にちょっと飲み終わって、深圳のところを歩いていた時に、すごく煌々と電気がついていたビルがあったんですよね。

「あれ何?」と言ったら、「Tencentだよ、Tencent」と。「Tencentってあの微信のTencentじゃん」「そうそう」って。「もうこんな夜遅くなのに、あんなに電気ついてていいの?」みたいな話をしたら、「いや、いいんだよ別に。彼らは社員が一生懸命、価値を創出しようとしてがんばってるし、会社はそれを支援してるんです」と。

だから、代わりになにをやってるかというと、食事を出したり、遅くなったらタクシーで送ったりとか、そういうことをやってるんですよね。社員は一生懸命価値を創出しようとしてるし、会社はそれを支援している。

そういう話を聞いた時に、日本の働き方改革ってこうだったらなって思ったりしていると、「もう10時で閉めます」みたいな、なんか時間を管理してるような。それってなんかTencentの例と比べると、価値創出・支援という関係と、時間を管理するということで、次元が違うなと感じたのがひとつですね。

イノベーションとは「新結合」である

鈴木:次のスライドをお願いします。それでInnovationって、日本でもどこでもそうですけど、「Innovationって必要ですか?」っていうと、やっぱり必要に決まっていて、Innovation不要って言う人はいないと思うんですよね。だけどみなさん、Innovationの定義ってなんですかね。

シリコンバレーのクレイジーな奴らが、なんかわけのわからないことをガンガン言いながらやってるのが、Innovationだと思っている方も中にはいると思うし、違うって言う方もたくさんいると思うんですよ。

僕がシリコンバレーで働いていてなんとなく感じたのは、シュンペーターというものすごく古い方なんですけど、ドイツ語でいうneue Kombinationですよね。英語で言うとnew combination。

つまり、新結合であるという概念が非常に腹に落ちて。これはSansanさんの話もまさにこれだと思うんだけど、例えば自動車業界でディスラプトに晒されているってみんなが言ってるんですよね。

これは、100年に一度の大きな波が来るんだと。だから、もたもたしているとディスラプトされると言いながら、何をやっているかというと(スライドを指して)左側ですよね、業界の人たちと話してるんです。

業界の人たちと話して、ディスラプトの波が検出できれば、例えば家電だってディスラプトされてなかっただろうし、半導体だってディスラプトされてないわけですよ。

ということで、大事なことってのは、新結合の「新」の部分で、(スライドを指して)右側に描いてあるんですけど、自分とは関係ない人。例えば、僕がいまシリコンバレーで話してる人たちって、マネーテックとかウイルステックとかフィンテックだとか、あとリテイルとか、real estate・不動産ですよね。

ぜんぜん関係ない人たちと話すことによって、例えば、ある業界ではベストプラクティスなんだけど、自動車業界ではぜんぜんそうなってない、とかってのがよくわかる。シェアリングエコノミーなんて、例えば、Uberを見てればAirbnbができますよね。だから、そんな感じで他のところから持ってきて結合させるっていうのが、すごく重要じゃないかと思ってます。

イノベーションを起こすカギは、異分野での価値の交換

鈴木:次、最後お願いします。じゃあ、その結合はどうやって作ればいいかっていうと、これはたぶん世界のどこでも同じです。ただ、日本だと不明確だけど、シリコンバレーだとすごく明確って違いがあるんですけど、要は、価値と等価交換というものがあると思うんですよね。

自分が価値を持っていないと、その人脈だってできないわけですよね。たまにあるのは、「いや、お前、いい人脈持ってるじゃん。ちゃんと会社に置いていけよ」だとか、「他の人とシェアしていけよ」と言われるんですけれど、そういう人たちに僕が答えるのは、「いや、あなたもわかってると思うんですけど、クレジットカードのポイントはその人しか使えないんですよ」って言ってるんですね。

要は、「クレジットカードのポイントをくれ」って言ってるのと同じなんですよ。それってできないですよね。だからやっぱり、Sansanさんのこういうイベントに出ていて思うのは、外と外とのネットワークをどうやって作るか、そこが大事だってことを実感できるのと、あと僕は少ないんですが、やっぱり自分で出すものを持ってないといけないってことですよね。

だから、イノベーションを起こすためには、まず自分がなにかを持っていて、関係ない人と話すと、そのオポチュニティが増えるんじゃないかな、というふうに思いながら仕事をしています。長々とすみません。

自分ではわからない価値に気付くための方法

金泉:いえいえ、この辺のネットワーキングの考え方と、今の国内の状況というとあれですが、各企業の状況とを見比べて、富岡さんどう思いますか? 

富岡圭氏(以下、富岡):ありがとうございます。まさにそのイノベーションを起こすためのつながりが大事だというのは、僕らが会社として提供したいことにつながっていて、ありがたいお話だなと思ったんですけど(笑)。

でも、ちょっと思ってたのが、その価値の等価交換みたいな、よくGive and Takeとか、Give and Giveみたいなことが言われますけど、ただ、価値を出していくとか、持っていくとかって、やっぱりけっこう難しくて、ハードルがあるかなと思うんですけど。

それこそ、万治さんが日本からシリコンバレーというところに行って、そういうものをどう出していっているのかもちょっとうかがいたいな、という……。

金泉:そうですね、ぜひ聞きたいですね。

鈴木:みなさん、実は自分で気付いてないだけで価値は持ってるんですよ。例えば、シリコンバレーってソフトウェアのことを知っている人たちがたくさんいるんですけどね。その人たちとソフトウェアの話をしても、僕の価値はぜんぜん提供できないわけですよ。

でも、僕は30年間自動車業界で働いているので、車のことはめちゃくちゃ知ってるわけですよ。そうすると、彼らが持ってるソフトの力と、僕の持ってる車の知識などを、もし融合できたら、「わぁ、すげえ」って話になるわけですよ。

なので大事なことは、違う土俵のなにかを持っているということ。同じ土俵で勝負すると、やっぱりかなりきつくて、なんともならないんですけど……、ちょっと前のチャプターを出してください。

(スライドを指して)だからそういう意味で、同じコミュニティーの中だと、誰が一番上だとか、あいつには勝てないとかってなるんですけど、コミュニティーを一歩出たら、コンフォートゾーンから出るんですよ。コンフォートゾーンから出ると、自分が大したことないと思うことでも、相手にとってはすごい情報だったり、あとはその逆もある。

だからみなさんが、自分ってなんか価値を持ってるのかなと思われるんであれば、一度その自分のコンフォートゾーンから出てみればいいんですよ。例えば、僕がデンソーの本社に行った時に、「今度自衛隊の人と、話をしてきます」って言ったら、みんな「なんで?」みたいな。

でも、そこに「なんで」を求めると、結局何も起こらないんですよ。それはやってみなきゃわからないから。なのでみなさん、一度ご自身でやられてみると実感が湧きますから、やってみるといいと思います。

イベントを通して異分野との出会いの場を作る

富岡:ありがとうございます。ちょっとこの場で質問させていただきましたけど、でも、違う業界にいくときって、本当そうだなと思っています。僕らも今回イノベーションというテーマでやっていますけれど、そもそも名刺をやっているSansanが、なんでこういうセッションをやってるんだとか、なんかNASAから月の探査の責任者の人が来たりだとか、たぶんいろいろ思われてると思うんですけど。

違うところとつながることで、イノベーションが起きてくるというのは、僕らもビジネスやっていてすごく思いますし、そういう場を提供できたらなと思ってやっていたので、まさに万治さんに言っていただいたようなところをやってみるというのは、すごく共感できることだなと思いました。

金泉:そうですね、鈴木さんの最初のスライドなんですけれども、このTencentの状況ってたぶん、日本の企業や官庁に勢いがあったとき、まさにこんな感じだったなぁなんて思い返しながらなんですけれども。

じゃあこれからは、いま世界ではTencentの例だとか、日本ではこういう状況がある中で、働き方についていろいろ議論があると思うんですけども、本日の本題、働くの「コレカラ」という状況を、みんなさんがどういうふうに捉えているのか。そして、どうなっていくべきだと思っているのかを、ぜひうかがっていきたいと思うんですけれども、まずは、石橋さんからお話をおうかがいしてよろしいでしょうか。

自分と違う世界の人と出会うためには、まず時間が必要

石橋憲人氏(以下、石橋):働くの「コレカラ」ということで、私はこういったところの専門家ではありませんので、自分の体験、あるいはお客様の声をご紹介したいと思います。

イノベーションというのは、これからもキーワードになると思いますし、企業がいろいろな活動をしていくには大事なことだと思うんですね。

じゃあ、どうやってイノベーションを起こしますか?というと、今、お話にあったように、自分とは違う世界の人に関わるようにするということも、もちろん大事だと思うのですが、その前提として、そうするための時間を作らないいけませんよね。

みなさん本当にお忙しく仕事をしている中で、そういう時間を作ろうと思っても現実的にはなかなか難しくて、ゆっくり考える時間も持てないのではないかなと思います。先ほどご紹介したAmazonのOLPの中に、こうした現実に対するアプローチにもつながる、Think Big(大胆な方針と方向性を示す)ですとか、あるいはInvent and Simplify(革新と創造を求め、シンプルな方法を模索する)という言葉があるんです。

Amazonは、いろいろなイノベーションを通じてお客様の満足を高めることを目指している会社です。手前味噌になりますが、その一例として、私が現在、担当しているAmazonビジネスという企業購買専用のECサイトを導入くださった、とある介護施設の事業者様のケースを紹介させてください。

Amazonビジネスで、企業の購買に関わる時間を大幅に削減

石橋:Amazonビジネスは各社様の企業購買活動にご利用いただいています。介護施設で勤務されるスタッフの方は、日常的に介護サービスに必要なものをショッピングセンターに買いに行ったり、その経費精算の処理をしたりしています。

こうした業務は、介護サービスの提供という本業ではないものの、そこにすごく時間を使っておられます。Amazonビジネスをご利用いただくことで、ワンクリックで商品が買えたり、個人による経費精算がまったく必要なくなるんですね。

こうしたツールを導入することで、ちょっとした働き方改革になり、そしてそれがイノベーションにつながっていくというような仕組み作りができ始めています。これは1つの例ですが、先ほどのSansanさんの名刺のお話も同様だと思います。

個人的には、さまざまなツールを活用することによって、社員のみなさんのリソースをいかに本来業務やイノベーションを創出するための時間に割けるのかというのが、これから非常に大事になっていくんじゃないかな、と思っております。

金泉:言える範囲でいいんですけど、その介護施設が画期的に時間を作れた商材だったり、商品というのはどんな感じのものだったんですか。

石橋:介護施設様では本当に多岐にわたる商品を購入されています。とある介護施設様は、なんと1年間で2万種類の商品をAmazonビジネスでお買い求めになっているんですね。また全国で約90施設を運営されている別の介護施設様では、年間でトータル9,000時間を削減できた、と言われてます。

例えば、ドライバーの方と介護士の方が、二人で七夕の飾りを買いに行きますとみいうことがあるんですね。ただ、買いに行ったものの、在庫がなかったので取り寄せにしましたとなると、もう一回行かなくてはなりません。

そのあと、買ってきた商品の領収書を経理部に送ったり、経理部ではその従業員の銀行口座に購入金額を振り込んだりというような業務があり、当然ながらそこでも時間がかかるわけです。こうした業務負担がなくなり、残業が減って、必要な時間が確保できるようになることが、お客様にとっての働き方改革の一助になればと思っています。

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