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働くの「コレカラ」(全3記事)

Amazonが掲げる、全世界共通の「14の行動指針」 巨大IT企業を支える礎

2019年3月14日~15日にかけて、「Sansan Innovation Project 2019」が開催されました。「Sansan Innovation Project」は、あらゆる分野の専門家、最前線で活躍するプレイヤーを招き、組織を次のステージへと導くためのさまざまな 「Innovation」について紹介する、Sansan主催のビジネスカンファレンスです。本パートでは、「働くの『コレカラ』」の講演をご紹介します。今回は、アマゾンジャパン、Sansanの企業カルチャーについて語りました。

「働くの『コレカラ』」をテーマに3社が登壇

金泉俊輔氏(以下、金泉):みなさんこんにちは。クロージングセッションのモデレーションを務めさせていただきます、NewsPicks編集長の金泉と申します。本日はよろしくお願いいたします。今ここにお水が出ているんですけれども、このあとの懇親会ではサンサンビールもあるということです。本当は我々もビールで始めたかったのですが(笑)。

本日は「働くの『コレカラ』」ということで、お三方に登場いただきました。

さっそくですが、登壇者のご紹介をさせていただきたいと思います。まず本日のスピーカーの、アマゾンジャパン合同会社ディレクター、Amazon Business事業本部 事業本部長の石橋憲人さんから、自己紹介をいただければと思います。

石橋憲人氏(以下、石橋):みなさんこんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします。石橋と申します。私は、アマゾンジャパン合同会社(当時は株式会社でした)に入社して、約8年半、もうすぐ丸9年目になります。

Amazonでは、いろいろな事業を経験しておりますが、最初はAmazonがものを仕入れて販売する、いわゆる直販部門のホーム&キッチンという事業で事業部長を務めていました。

その後、事業者様にAmazonで商品を販売いただくという、Amazonマーケットプレイスの営業責任者を4年ほどやりまして、今はAmazonビジネスという、「企業購買のためのECサイト」の日本の責任者をしております。本日はよろしくお願いいたします。

金泉:お願いいたします。まさに働き方の新しいかたちにつながっているということで、このあとのお話を楽しみにしております。2人目は、DENSO International America、Vice Presidentの鈴木万治さんです。先ほど別のセッションにも出演して、「もう燃え尽きた」なんて話もされていたんですけど、自己紹介のほうをよろしくお願いいたします。

働き方にイノベーションを

鈴木万治氏(以下、鈴木):みなさんこんにちは。今回は、シリコンバレーからはるばるやってきました。どれほど疲れたかというと、先ほど言われたように、5Gのセッションでかなり燃え尽きたので、みなさんが話してる間に充電しようかなと思います。

たぶんみなさん、Amazonさんの話とかSansanさんの話をうかがっても、「そりゃあさ、そこだからできるんじゃない」みたいに思うかもしれませんが、でも、今日僕がここにいるということは、「製造業でもできる」という、少し逆行的な役割も担っていると思うので、シリコンバレーに行ってからわかった話とかもしますけど、なにかみなさんとシェアできるものがお届けできればいいと思います。よろしくお願いいたします。

金泉:よろしくお願いします。ちょっと説明させていただくんですけども、鈴木さんはNewsPicksのプロピッカーをやっておりまして、働き方に関する記事のコメントで、堀江貴文さんを抜くぐらいのLikeをもらっていらっしゃいます。5Gから働き方まで、お話を聞けるのが楽しみだなと思っております。

3人目は、Sansanの共同創業者である取締役の富岡圭さんです。よろしくお願いいたします。

富岡圭氏(以下、富岡):富岡と申します。改めまして、本日はSansan Innovation Projectにお越しいただいてありがとうございます。今日参加したセッションでおもしろいなと思ったのは、「自己紹介のイノベーション」ですね。参加された方はいらっしゃいますでしょうか?

(会場挙手)

ありがとうございます。自己紹介というのは、どうしたらイノベーションを起こせるんだろうというテーマで、45分間のセッションだったんですけど、おもしろかったんですよね。そこで言われてたのは、日本だと「こういう大学を出て、こういう会社に入って、こういうのやっています」という自己紹介が多くて、本当だめだよねという話だったんですけど、いま僕のを見ると、そのままそうなっているので(笑)。

(会場笑)

金泉:イノベーションできてないじゃないすか(笑)。

富岡:ぜんぜんできてないんですよ(笑)。なので次からイノベーションを起こしたいなと思うんですけど。そういう意味では、僕らもテーマとしてイノベーションを掲げていて、「名刺からイノベーションを起こしていこう」と考えてまして。働き方というのは、1つの大きなテーマかなと思ってますので、今日はそんなディスカッションをみなさんとやりたいと思っています。本日はよろしくお願いいたします。

Sansanが最も大事にしているミッションドリブンなカルチャー

金泉:みなさんの自己紹介が予定よりも早めに進んでますので、このあとじっくり議論できればと思います(笑)。まずは、各社の「企業カルチャー、人事制度」のお話といきたいんですけど、まさに4月1日から、働き方改革関連法案が順次施行されるというタイミングで、みなさん働く側も「どうなっていくんだろう?」みたいな不安もあるかと思います。

実際に振り返ってみれば、「週休二日制になったのはいつからだっけ?」と考えると、全面週休2日というのは平成に入ってからなんですね。働き方の変化って本当に早いと思うんですけど、これもまた、平成が終わるタイミングで大きく変わると思われますね。

なので、このあたりが先進的な3社に、お話を聞きたいなと思っております。まずは、自己紹介のイノベーション問題も抱えていると思うんですが、ぜひ富岡さんから、実際にSansanはどういう人事制度・働き方を考えていらっしゃるのかというお話をうかがえればと思います。

富岡:ありがとうございます。「Sansanって、どんな会社ですか?」と、けっこう聞かれます。その時に答えているのは、「ミッションドリブンな会社です」ということを言ってます。僕らは会社として、Missionというものを一番大事にしてるんですね。そういう意味で働き方とか人事制度にも、Missionという軸を通そう、ということでやっています。

「Sansanのカタチ」というのは、当社のミッションステートメントになります。Missionが「出会いからイノベーションを生み出す」というものなんですけど、次にValuesというものがあって、最後にPremiseという「前提」があります。とくに「働く」というテーマにおいては、このValuesが1つの軸になるかなということで、今回このスライドを用意させていただきました。

Valuesには、ちょっといろんな解釈があるかなと思うんですけれども、「姿勢」というのが近いと思います。働くことに対する姿勢ということで、僕らが大切にしているものを5つ挙げています。それとMissionを大事にしてるということなんですけど、創業からずっと同じミッションステートメントを掲げていたわけではなくて。

5人でこの会社を始めたんですけど、「Missionを後付けにしたくないな」と思いまして、創業前に5人で合宿をして決めています。ただ、「それをずっと守るぞ」というよりも、その時々で見直すということをやっていまして、今回のこのMissionも、実は1年以上全社で議論して作っています。そういう意味で、ミッションドリブンなカルチャーを作ってきているというのは、Sansanの1つの特徴かなと思います。

Amazonの特長はMissionやVisionを根づかせる仕掛け作り

金泉:従業員数など、変化のフェーズによっても、けっこう違ってくると思うんですけど、この1年で作ってきたという点では、どういったところがポイントだったんですか?

富岡:まさに人が増えてきたというのは1つ大きいかなと思います。うちの会社は今、400人超えたところなんですけれども、この2年で倍ぐらいに増えてきたというのがあります。そういう中にあって、目指すべき方向性みたいなものを、よりシンプルにしていこうということで、議論を始めたというのがきっかけになります。

金泉:「200人の壁」とかあると思うんですけども、その200人から400人へというところで、よりシンプルに変わっていったということですね。かしこまりました。

では、Amazonさんについてもうかがいたいんですが、日本国内の社員数はどのくらいなんでしょうか? 

石橋:現在、6,000人以上の社員が勤務しています。

金泉:国内に6,000人もいらっしゃるんですね。ではさっそく、Amazonさんのカルチャーというか、そういった制度についてのお話を、ぜひおうかがいしたいと思うんですけども。

石橋:はい。今もミッションドリブンの話がありましたが、Amazonもかなりミッションドリブンで物事を考える会社です。それからもう1つ、今回は「働き方」がテーマですけども、働き方改革につながる「何のために働くのですか?」という点についてもかなり明確なので、そのあたりをご紹介させていただきます。

まずAmazonのMission(企業理念)は、「地球上で最もお客さまを大切にする企業であること」です。そして「地球上で最も豊富な品揃え」というVisionを持っています。この2つは世界共通で、創業当初から変わりません。

私はコンサルティング会社に勤務していたこともあって、こうしたMissionやVisionを掲げている企業が数多くあることを感じていました。同時に、各社のMissionやVisionを社員一人ひとりに根付かせるという点で苦労されているケースが多かったようにもお見受けしました。Amazonの特長は、いろんな仕掛け作りがあって、MissionやVisionが社員の日常生活に組み込まれるようになっているところだと思っております。

「働くのは誰のためですか?」というと、Amazonでは「お客さまの満足を高めるため」です。「お客さまの満足を高めるために、何をすればいいんですか?」というと、「イノベーションを起こす」必要があります。

14項目からなるAmazon社員の行動指針

石橋:「では、イノベーションを起こすために、何をすればいいんですか?」といった点に関して、Amazonには2つのキーワードがあります。横文字で恐縮ですが、1つは、Diversity(多様性)。それからもう1つは、Well-beingと呼んでいるんですけども、要は、社員は身体も心も健康でないといけない。そうでないと、イノベーションを起こせないでしょう、と。

イノベーションを起こすために、その2つをしっかり追求していこうというときに、先ほどお伝えした6,000人以上の社員が、実は50以上の国と地域から集まっているであるだとか、昨年オープンした目黒駅前の新しいオフィスには礼拝室や母親社員のための搾乳室などがあったりといったことが挙げられます。こうした取り組みを、一つひとつ積み重ねていってるんですね。

今、ここに出ていますけども、AmazonにはOur Leadership Principles(以下、OLP)という、14項目から成るAmazon社員の行動指針があります。

石橋:一番最初のCustomer Obsessionというのは、先ほどお話ししたお客さまを大切にするということですね。そのほかには例えば、Dive Deep(常にすべての業務に気を配り、深堀する)というものと、Think Big(大胆な方針と方向性を示す)という項目があったりするのですが、これらは相反するものだったりするので、状況に応じてどの行動指針を重視するかが問われます。

この14項目が社員全員に染みついておりますので、いかに多様性を追求したとしてもAmazonという組織として目指す方向性やアプローチが世界で共通しているというのが、Amazonの大きな特長だと思っております。

金泉:最初にあったMissionとVisionはずっと変わっていないということですが、その他の行動指針というのは、段階的に変わってきたものなんですか?

石橋:実はこのOur Leadership Principlesは、私が入社した2010年以降、2回のマイナーチェンジをしております。

金泉:それはある種、Sansanも同じですけれども、やはりAmazonでもそういった指針というのは、常に状況を見ながら変わってきているということですね。

全世界共通の行動指針が、日常会話から評価制度まで浸透

石橋:そうですね、Amazonは必ずこういうステートメントの一番最後に、「より良いものが見つかるまではこれでいく」ということを書いていますね。なので、絶対変えませんと言っているわけではないんですよね。

金泉:ちなみに、変わったものはどれか、ご記憶ありますか?

石橋:直近では、Learn and Be Curious(常に学び、好奇心を持つ)という、左側の上から5つ目にあるのが、新しく加わったものです。それまでは、Earn Trust of Others(真摯に他者の意見を受け入れ、謙虚であり続けます)とVocally Self Critical(自身やチームの欠点や間違いを率直に認めます)という2つがあったんですけれども、これがEarn Trust(敬意を持って接し、間違いを素直に認める)にまとまりました。

富岡:すみません、横から聞いてもいいですか? その浸透策というか、どういうふうに浸透させていくのかというのを……。

石橋:結局、これは人事制度に直結しているんですよ。まさに今、その季節ですが、Amazonの場合には、従業員同士で評価し合うという、いわゆる360度評価があるんですけれども、そのときの評価軸が全部、このOLPなんですね。

この社員はこのOLPが素晴らしいとか、あるいはこの社員はこのOLPに対してもう少し強化できる機会があるのではないかといった具合です。あとは日常会話においても、かなりこのOLPが入ってきます。さまざまなビジネスジャッジをする時に「これをOLPに照らしたらどうなの?」という考え方が日常的に行われているんですね。

このOLPは世界で共通しているので、例えばアメリカのシアトルに行って会議をしても、同じようにOLPに立脚した議論になるので、とても楽ですね。

金泉:非常に参考になりますね。

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