2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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ポピー・ハーロウ氏(以下、ポピー):CZIには資金が豊富にありますよね。すばらしい人材がいて、マーク(・ザッカーバーグ)とあなたは99%の資産を提供している。しかし問題を対処するための一部に過ぎません。
既存のシステムの中では、政府の支援者も必要ですよね。かつて、あなたは講演で、私たちを示す言葉として「an american」という言葉を使いました。
また、「増税はこの国にとってはいいことだ」と言っていました。 私はとても興味があるのですが、裕福層への増税をすべきなのでしょうか? もしそうであれば、それを効果的に使うためにはどうすればいいのでしょうか?
プリシラ・チャン氏(以下、プリシラ):政治システムについての話ですが、科学分野には毎年300億ドル以上のお金をかけています。これは大きな数字です。
そこでできることを俯瞰して見るべきです。何を変えて、どんな役割を担うべきか。何が必要で、何が欠けているか。必要とされるフィールドでパートナーになり、コラボレートするのですが。
国は税収で国民にリターンを与えています。国の活動の補足および促進のために、いかにテクノロジーを駆使してリスクを取るかを心がけるべきです。税の問題に関しては、余裕がある人が税をより多く払うことは悪いことではありません。私たちはそうすべきです。
ポピー:あなたは政治家ではないわけですが、CZIは政治家に献金をしていませんよね。
プリシラ:していません。
ポピー:富裕層が住むエリアについて、1,000万ドルクラスのの課税を提案していましたよね。CZIのような機関が効率的かつ賢く、政府を手助けできるんじゃないでしょうか?
プリシラ: 私は本当に政治家ではないので……。
ポピー:2020年に立候補しない? たくさん立候補しますよ。
(会場笑)
日曜日にCNN のタウンホールにいる人もいますよね?
(会場笑)
プリシラ:ポピーの提案は置いておいて、システムのためにリソースを得ることについては、もっと考えを巡らせるべきです。何が必要かを考えることについては、政府がもっとも適しているわけではない場合もありますし、効率的でない場合もあります。
いろいろ例はありますが、政府がテクノロジーを使ってシステムを築こうとしても、どこから始めていいかわからない場合もあります。何が問題かわかっていない組織や人を頼ってしまうかもしれません。その人たちはテンプレートで「こういうことができますよ」「お金はたくさんかかりますよ」とは言う。しかし、彼らは知見や覚悟を持ち合わせていません。
少なくとも、私たちは何が効果があるのかわかっているので、政府が大金をかけてしまう前にサポートするに値すると思っています。
ポピー:今までの研究によってわかってることですが、多様性のある労働人口を確保できれば、より良い結果が生まれる。この事実には抗えないのですが、シリコンバレーの会社や銀行を見たとき、いまだに男性が組織を仕切っています。
一方でCZIは、人種、性別などにとらわれず、フレキシブルかつ臨機応変にワークしていました。この前お話ししたとき、あなたは「確信犯的にそういうシステムにしている」と言っていましたよね。それはなぜか? どういう結果になったのか? シリコンバレーがフレキシブルに対応していないことに考えはありますか?
プリシラ:私たちは日々改善しています。 おっしゃる通り、CZIのダイバーシティは意図的です。雇用することで社会問題について取り組んでもらうわけでなく、個々のバックグラウンドによってもたらされるものが、実際のミッションに役立つからです。
病気を治し、子どもたちに教育の機会を与え、刑事司法を改善する。この多様性が組織には必要で、関わっている人々の代弁者でもあるのです。心から問題を理解をするためでもあります。
プリシラ:CZIでは「stand close to the work」という考え方があります。人生を妨げるものは何なのか、心から理解したいのです。多様性のある職場と徹底した意図がその理解を助けます。現場で何が起こっているのか見つめることも重要です。
少なくとも、何が起こっているかを理解できる代弁者として、当事者の問題を共感できる人材ということが重要です。CZI手の多様性はとても意図的なものです。あなたが訪れた時には女性は約半分でしたが、今は60%です。
ポピー:すばらしい。
(会場拍手)
プリシラ:多様性ある社会をつくるための、わずかな1ステップですから。それが重要だとは思っていますが、意図的でゼロから積み上げなければいけません。価値観が行動でわかるようにしなければ。
ポピー:では他のシリコンバレーはどうでしょうか?
プリシラ:先ほども言ったように、積み上げていかなければならない。そうしなければ本当に大変ですから。
ポピー:それは社会によるものでしょうか? 義務としてしなければならないという。メグ・ホイットマンがヒューレット・パッカードを経営していた当時、「役員の半分は女性だ」と言ってましたが、「こういう言い訳には飽き飽きしている」と言っていました。「もっと女性が活躍できるように頑張らなければならない」と。
プリシラ:そうです。もっとやらなければいけないことがあるのです。ある意味ではどんどん簡単になっていきますから。数多くのテックカンパニーが取り組んでいるとは思っています。しかし巨大であるほど、そういうDNAをイチから作り上げていくのは大変なのです。
ポピー:ここで別の質問があります。あなたは2児の母親としての顔を持ちます。2人の子どもがあなたの仕事をどう形成したかを教えていただけますか? また、リーダーとしてどう変わったか、ミッションへの取り組み方についてもお願いします。
プリシラ:子どもを持つ前は小児科医だったのですが、「子どものことはよくわかっている」と思っていました。教師の経験もありましたし。たしかに、多くのことは知っていたとは思います。しかし子どもを一度持つと、「なぜ私がそんなことで怒ってしまったのか?」「これまで学んだことは何だったのか」と思ってしまう毎日でした。
(会場笑)
そして、本当に嫌なことが子どもたちに起こったとき、私も本当に本当に傷つきます。そして、正しい医療・教育の理想像がわかるのです。でも実際には、この感覚は本当に人間的なものです。これは私が行き来する世界観の話でもあります。
犯罪司法のシステムを考えながら、イングリットについても考えるという。そういった両方のアイデアを持ち、バランスを保てたならば、仕事も良くなると考えています。私たちが毎日やろうとしていることでもあります。母親として、CZIのリーダーとして。2つの間を行き来する。
ポピー:親として誰しも完璧ではありません。もうちょっと楽に考えてもいいと思います。観客からすばらしい質問がありました。「CZIが主導しているプロジェクトに参加したい」と名乗り出てくれた人がいます。「CZIに勤めず、私がプロジェクトに参加することはできるのでしょうか?」とのことです。
プリシラ:100%できます。あなたのバックグラウンドはわかりませんが、変わる方法はたくさんあります。テクノロジーについて話しますが、私たちの組織の半分は、もう半分を運営するためです。コミュニティでパートナーを鼓舞し、メンバーがよりよく働けるためにはどうするか。さまざまな組織やコミュニティに関与していきますし、この夏に応募のチャンスもあります。
サイエンスの領域では、私たちは強く物事を信じオープンサイエンス、オープンソースのテクノロジーを実践しています。全て自分たちだけでやっているわけではありません。科学のエコシステムの中にはツールの作り方を熟知している人材がいます。CZIといったチームだけが必要というわけでもない。
私たちはオープンソースのコミュニティを支持し、その科学の領域ではチャンスがたくさんあります。犯罪司法の側面については、それぞれのルールがあります。それぞれ個人が投票権を持ち、アクションできる。
社会として罪や反省や成長をどう考えていくか。この動きは加速していると私は信じています。あなたがたがボランティアできるチャンスもあるでしょう。この国がシステムについて考えるために、それぞれ個人が参加すべきことだからという意味でもあります。
ポピー:超党派という感じですかね。
ポピー:教育についての質問があります。コンピュータを使って学習する人が、1日でどれくらい教師と対面するのでしょうか。それについての問題はありますか?
プリシラ:スクリーンタイムにはいろいろあります。すべてのスクリーンタイムは等しいわけではありません。スマホやタブレットで漫画を見ている子どもがいたとして、祖父母に電話をかけている時のスクリーンとはまた違う性質です。起こっていることを話しながらすばらしい時間を過ごしているわけです。
スクリーンタイムの「価値」についての考え方をもう少し深めるべきなのです。子どもに関しても、教育にしても、スクリーンタイムについて考える必要があります。スクリーンの前で一日を終えるべきだとは考えてません。
しかし、スクリーンタイムは子どもの勉強を助けることもできます。自分のペースで勉強できるので成長できます。教師も子どもたちが何をしているか正確に把握できる。共同作業で本当の繋がりを体感できる。そして勉強を助けることもできる。この実践にはいろいろなパターンがあるのですが、理想形を見つけ出せばすばらしい社会になるでしょう。
ある学校を訪れたチームが、とても印象的でハッとするようなこと言いました。化学の授業が荒れていたんですね。子どもたちは先生が話してる間もうるさく、聞く耳を持っていなかった。でも、彼らは「こういう子どものエネルギーが必要なんだ」と。スクリーンタイムで強化しようとしている側面はまさにそこです。
ポピー:刑事司法についてです。罪を軽減するためにテクノロジーが役に立っているということですが、より重い罪を課すためにも使われるべきでしょうか?
プリシラ:個人に罪を課すだけでなく、彼らがより良い場所に行くためにデータを使うべきだと考えます。ほとんどの人は刑期を終えて、出所前のコミュニティに戻ってしまいます。去った後に彼らが何をするかということが、私たちが正しいことをしたかの指標になるわけです。
より長い刑期が必要な場合もあるでしょう。彼らが生産的なメンバーとして社会に戻るベストのタイミングは、安全に去れるか、という考え方も必要なのです。つまり、これこそが刑事司法システムを考える時にもっとも重要な質問なのです。いつ彼らが戻るのか? うまくいくのか? ということになります。
ポピー:私もライカー島(注:世界最大の刑務所が立つ、ニューヨークのエリア)でそういったデータをたくさん見たのですが、ショックを受けました。それと同時にそれぞれ別の研究から答えを探してくるのもすごく大変でした。
ポピー:もう少し質問してみましょう。小児科医と科学者として 、ワクチンについてのあなたの考え方が好きなのですが、ワクチンを打たない親を心配していますね。「間違った情報を広げてしまっている」「フェイクニュースが出回らないようにランキングを下げる」と、Facebookで言っていましたね。
そして教育関係の情報をプッシュするということでしたが、ワクチンに関してどれくらい心配していますか?
プリシラ:小児科医として、ワクチンの力をとても強く信じています。
(会場拍手)
私たち人類はこれまで、どれくらいのことを達成できたかを忘れがちです。出産が危険だったし、幼児期に病気になると病死する確率も高かった。ここまでの道のりは長かった。
正しい判断ができ、正しい情報にアクセスできることを確立させたいのです。かつて、免疫の障害のある子どもが癌を克服したと思ったら、次の病気になりました。癌の次はインフルエンザ、そんなことは起こるべきではありません。
私たちはワクチンによって守られているので、これは極端な例にすぎません。これはやり続けるべきことです。さらなる病気を防げるようなブレークスルーが見たいと思っているのです。
ポピー:観客からの質問です。メンバーたちが緊張感と当事者意識を持ってワークできる環境を作っていくためのアドバイスはありますか?
プリシラ:私は教育者であり、小児科医でもあります。CZIを始めた頃は、何の仕事してるのかがわかっていない感じでした。他の人はみんな知ってるのに、発展のことについてわかっていない。
ポピー:でも、マーク・ザッカーバーグに科学をたくさん教えましたよね?
プリシラ:たしかに彼に科学をたくさん教えました。ホントはもっとあるんですけどね(笑)。
ポピー:続けて(笑)。
(会場笑)
この答えのあとでね。
プリシラ:メンバーには「教えて」とお願いできるようになりました。今ではミーティングでいつもやっています。みんなそれぞれ違う言語を話すことも一つの理由ではありますが、その場を止めて「言っている意味がわかりません」「私はあなたの言ってることを間違って理解してるように思います」と言うのはすごい勇気がいります。あるミーティングでは、今日話していること以上にすべてのことを話していました。
ポピー:「全ての病気を治す」など、こうした講演以上のことを話していたの?
プリシラ: もっともっと話しました。大変だった。私たちは大きな夢を見ていますからね。とあるミーティングで、スタッフが「連続性と一貫性を優先しなければいけない」と言いました。みんな頷いてメモしました。
本当に理解しないとコラボレーションはできない。そうやって共感を育んでいます。質問することが最初のステップです。
ポピー:疑いを持つ人もいます。Facebook社の問題から世間の目をそらすためにCZIが設立されたと疑う人もいます。あなたは毎日CZIにいるのですが、マークとの共同設立ということもあると思います。
プリシラ:まず1つ目、CZIとFacebookは完全に別々の組織です。Facebookが母体ではありません。そして2つ目、病気を治すことよりFacebookのPRの方が簡単です。
(会場笑)
それがミッションだったら私たちはもっと楽ですね。
ポピー:では別の質問。CZIは病気・医療科学・教育のチームをどう巻き込んでいくのでしょうか。
プリシラ:いくつか興味深い例があります。チームには現在、「私たちが達成しようとしていることが何なのかを考えることに、とにかく集中してくれ」と言っています。各チーム、重複している分野もあります。
教育プログラムを作ることを考えています。マイノリティの役に立つことにフォーカスしたものです。彼らの大学進学をサポートするものだったり。科学と教育のチームとコラボレーションして、そういったプランを練っています。
ポピー:では最後の質問です。「教育や就職などの機会に触れることが、運が良いことと同義なのは、この国に存在する不公平だ」と、以前のプリシラは言っていました。あなたは本当に運が良かった。
全ての出来事が繋がり、あなたがこの国にたどり着き、ハーバードに行き着き、こういったすべてが起こった。あなたの人生を定義する言葉が一つあるとすればそれは何でしょうか? そしてそれはなぜか?
プリシラ:一言で?
ポピー:一言で。
(会場笑)
プリシラ:そうですね……「恩返し」と言おうかなと。運だとは言えないですね。
ポピー:それがなかったら、ここには来れなかったから?
プリシラ:もちろん。左を見て右を見て自分の人生も見て、賢い人がたくさんいるのに、なぜここにはいない? なぜ大学に行けない? そういったことが真実とならないために私はキャリアを捧げてきました。
ポピー:すばらしい。
時間ですね。プリシラ・チャン、今日はありがとうございました。
(会場拍手)
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