2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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プリシラ・チャン氏:ありがとうございます。ここに来られて感激しています。SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)についてはよく聞いていたのですが、ここに来るのは初めてです。クールな人はみんな知っている印象なので、行かなきゃなと思っていました。
私はミレニアル世代の人間です。Facebookでは笑顔の絵文字を使いますし、この場の興奮もシェアします。タコスの絵文字を使ってヒップスターな自分も演出します。インターネットがなかった時代を思い出せる最後の世代であることにも誇りを持っています。
テクノロジーで何か新しいことができるようになった時、私たちはワクワクします。若い世代の人は当然と思うかもしれないですけどね。映画『ズーランダー』のシーンを覚えていますか? 「あ、ファイルってコンピューターの中の?」と言うセリフです。私はいつもそのように感じています。インターネットが激しく稼働している時にノイズが出るのを知っているのは、アメリカでは私たちが最後の世代です。
(会場笑)
覚えていますよね?(笑)。 DVDの発売を待つのもそうです。お店で人気映画のDVDが売り切れになっていると、ガッカリしましたよね。2日で配送できる時代の「これまで」を知ってる世代も私たちで最後です。
しかしながら、全世界がこのようにアップグレードされているわけではありません。もっとも大変な挑戦の一つは、テクノロジーでどうにかできるものでもありません。私たちにとってテクノロジーとは、「可能性」という意味もありましたが、物事はそう単純ではありません。私にできる可能性は、大きな挑戦に取り組むためのテクノロジーのコントロールを手助けすることです。教育、科学、刑事司法の改革です。
テクノロジーは特効薬ではなく、ツールとしてあるべきです。ふだん私たちがテクノロジーをツールとして使うように、最前線にいる人たちを助けられるのです。正義のために戦う検察官のように、生徒のためによりよくあろうとする教師のように、進歩を加速せんとする科学者のように貢献できるのです。
もし、みなさんが「テクノロジーは魔法のようだ」というような誇大広告を聞きに来たのであれば、今すぐ帰っていただいたほうがいいかもしれません。私が今から話すことはもっと深刻な内容です。そして、もっと意味があることだと私は考えています。
勘違いしないでいただきたいのですが、 人々の人生を良くするために、テクノロジーが一翼を担っていると私も思っています。しかしポイントは、テクノロジーの力をもって困難な問題を解決するのは大変で、複雑だということです。
思いやりをもって協力しながらやらなければならないのです。エンジニアたちは個人でさまざまな問題を解決しています。「30分で美味しいパッタイを届けるにはどうすればいいか?」などです。しかし、複雑な問題に関しては、どんなエンジニアや天才も一人で解決することはできません。多様なバックグラウンドを持つたくさんの人々と、協力して作業することが必要なのです。
なぜか? それは非常に大きな試練だからです。とても複雑なものです。特定の側面を理解するためだけに、人々はキャリアのすべてを捧げます。しかし、問題を完全に理解するためには、解決策を指揮するマップが必要です。
それと同時に新しいテクノロジーはとても進歩しています。人はツールの専門性を伸ばすために、知識の構築にキャリアを捧げます。しかし、教育改革や病気の管理をする人たちと、問題を解決するツールの専門家たちが会うことはありません。私たちはみんなバラバラなのです。人々が協力し、つながることが問題の唯一の解決方法だと私たちは考えています。
ときどき行われているアイデア・ミートアップなどのことを言っているわけではありません。もっと大々的なコラボレーションのことを言っているのです。日々ほかの人から学び、ディベートし、ランチしながらブレインストームし、本音を出す。今まさに私の前にいるチームがそうです。
世界を違う見方で見ると刺激を感じます。その刺激こそが、世界を変える潜在的なエネルギーなのです。真に協力し合えたならばですが。
エンジニア、科学者、教育関係者の頭脳を一つにし、国の未来を改変する3つの領域で取り組むのです。その領域とは教育、科学、司法です。私たちはこれらに関して、幅広いエリアで取り組んでいます。刑事司法から、移民改革、化学の発見の促進、病気の予防、生徒たちに必要な経験をさせてあげることなど。世界を前進させるための最善のテクノロジーの使い方を知ってほしいのです。
そして、これに取り組む人にも完璧な理解をしてほしいのです。解決しようとしている問題の複雑さを理解してほしいのです。簡単でもシンプルでもありませんが、アプローチは可能と考えています。なぜそれができるのかという3つの説明を紹介します。
最初にまず教育。私は「CZI(Chan Zuckerberg Initiative)」の前は、別の仕事をしていました。サンホセの小学校で教えていたのです。そこで一人の素晴らしい生徒に出会いました。彼の能力は抜きん出ており、またとても活発でした。全てにおいてどんどん速く進んでいくような子です。
私はどうすれば彼の要望に応えられるのかわかりませんでした。20人の生徒に教えると同時に、彼一人のペースに合わせていくことは難しかったのです。彼は退屈に感じ、授業に参加しなくなり、暴れたりもしました。
最終的に、私は彼に立ち上がって「教室中を走れ」と言いました。彼のエネルギーを発散させるためです。しかし実際には、彼の才能を無駄にすることでしかなかったのです。クラスの他の生徒のために、彼を落ち着かせることが目的になってしまっていたからです。
彼らのポテンシャルをフルに発揮させるには、どんなサポートをすればいいのか。それを常に考えていました。彼らを助けられるリソースはどこにあるのかと。そのためならなんでもしようと思っていましたが、うまくいきませんでした。個々の生徒が必要なものを与えられるなら、私はどんなツールでも試みたでしょう。
数年後、またその問題を考えることになりました。現在のCZIのコアパートナーの学校の話です。すべての生徒は「somewhat learning platform」というプラットフォームにアクセスできます。1学期間まるごとのカリキュラムがあり、彼らの学習スタイルに合わせたものが用意されています。
子どもが読みたいと思っているテキスト、リスニングが得意な子ども向けのPodcast、アクションでコンセプトを理解したい子どものためのビデオなどです。私は教師として少し不安でもありました。コンピューターの前で生徒を監督するというのは、私がしたいことではなかったからです。
学習のもっとも深い瞬間は、コネクションのもっとも深い瞬間とともに起きるのです。このプラットフォームのおかげで、現実世界のように、プログラムによって生徒がゴールを追いやすくなります。自分のペースで学べ、さらには教師にも生徒とより強い関係を結ぶための、各生徒を助けるための必要な情報を教えてくれます。
通常の授業では、生徒が遅れているのか、苦労しているのか、実験を恐れているのか、あるいはとても興味があるのかが把握できないことがあります。しかし、プラットフォームを通すことで、リアルタイムで生徒の進捗を確認でき、また生徒がメンターに会うことも助けます。教師や教育関係者が彼らの支持者になれるのです。
もちろんテクノロジーが好きな生徒もいます。テクノロジーの側面はCGIによって促進され、教師によって導かれています。これによってクラスルームについて理解でき、さらに重要な生徒のことを理解できるのです。このツールについて教師たちと話すと、「それぞれの生徒に合わせることができて効果的だ」という感想をいただきました。それを直接聞いていただきましょう。
(動画が流れる)
本当に素晴らしいことですよね。 教師とエンジニアが共に働いていて、よい結果が期待できそうです。まだ始まったばかりのプログラムで改善すべきところもたくさんありますが、これが発展していくのが待ち遠しいです。
CZIの別のゴールは科学的発見を促進させるということです。この世紀が終わるまでに病気を根絶するよう野心的に取り組んでいます。ペニシリンが発見されたのが1928年で、過去90年にわたってインパクトを与えました。これは変化が可能だということを表しています。
教育でうまくいくように、科学者や医療のプロフェッショナル、エンジニア、患者を含めたコラボレーションも可能です。科学とテクノロジーが同じジャンルだと考えると、こんなにも相性のいい組み合わせはありませんね。
私は教師を辞めた後にメディカルスクールに行きました。そしプライマリケアドクターになりました。この頃には私にとってテクノロジーは重要なものとなっていました。病院のシステムやドキュメントなどについて私は少し困惑しました。患者をケアするために、基本的なシステムを覚える必要があったのです。
この子はいつ生まれたのか? 薬はすでに受け取ったのか? アレルギーはあるのか? 同じフォームに何度も記入し、その度にこれらの項目をチェックすることになります。情報には簡単にアクセスできず、検索はもちろんできません。情報を得るために驚くほどアナログなことをしているのは、医者だけではありません。研究者もそうです。
毎日何千ものバイオメディカルの記事が出版されます。これらの記事のチャート、進歩、アイデア発見は知識の全分野に渡り、どのように生命が機能するかという集合知を表しています。我々がどのようにここに来て、これからどこに行くかということもです。
研究者にとって、最新情報を知るために研究の経緯を確認するのは、とても大変で時間がかかる非効率なプロセスです。コンピュータであれば、Spotifyを起動して、大量の音楽の中から自分の気分に合うものをすぐに探せます。学術論文の場合、これを自力でやらなければならないのです。また、同じ問題に取り組む人々のつながりは口コミでつながるくらいで、まったくないこともしばしばです。
私の同僚の1人がこう言いました。「科学で何が起こっているか誰も何も知らない」 と。このことが研究を滞らせ、恩恵を受ける人もそこで止まってしまうのです。その人というのは私たちみんなです。
CZIの初期のプログラムの1つにメタというのがあります。サムとエイミーという兄弟によって始まったプロジェクトです。サムは医療バイオ物理学者。エイミーはソフトウェアエンジニアです。
二人は一緒にツールを開発しました。そのツールはAIを使って医療の学術論文をサーチするというものです。研究者の現在の研究にもっとも関連のある物を特定し、個人に向けたフィードを届けるもので、科学分野におけるSpotifyのようなものです。新しい学術論文と共に情報もアップデートされ、研究者たちのフィールドで何が起こっているのかがわかります。レビューも見られるんです。
ある研究者はこれを使い、研究のメンタルマップを作ろうとしていました。彼によると「なにが行われたか、どのように行われたか、新しく異なるものになるにはどうすべきか」がわかったと言います。
他の癌の研究者は、腫瘍を殺す新しい方法を考えていて、「Replication stress」と呼ばれるものに出会いました。彼女にとってReplication stressは専門ではなかったのですが、メタを使って、これに詳しい研究者を探すことができたのです。そして彼らは研究誌でコラボレーションし、互いにもっとも得意なパートについて研究したのです。学びを続けるためにミートアップもしました。こうしてブレークスルーは生まれるのです。
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