ロジックで理解してもらうことの難しさ

森本佑紀氏(以下、森本):それで、「協業はどうすれば生まれるか?」ということについてですね。実は僕らも、けっこういろんな所に声をかけていただいたことがあったんですけれど、なかなかうまくいかないんですよね。

松浦真氏(以下、松浦):それはなぜでしょうか?

森本:まずは会議を洗ってみたんです。そうしたら、結局「利益はいくら出るんだ」という話なんですよ(笑)。「そんなもん見えるか! 」となるんです。教育に熱心な方々なら理解してくださるんですけれど、そうじゃない方、例えば経理の方々などにロジックで理解してもらうのはちょっと無理だなと思うんです。

そう考えた時に、もう自分たちで需要を作るしかないなと思いました。「この指とまれー! 」という感じ突っ走りました。それで向こうの人たちになにができるかを考えてもらう。

「自分たちはこんなことができるよ」という社内のリソースは僕たちより絶対詳しいと思うので、そういうかたちの協業を将来的にできたらいいなと思いながら、必死に自転車を漕いで操業しています(笑)。

松浦:すごい。かっこいい。

森本:いやいや(笑)。

教育産業は自動車産業よりも市場規模が大きい

佐藤昌宏氏(以下、佐藤):絶対儲かるんですよ。というのも、市場規模の話でいくと、世界の教育産業は400兆円と言われています。アナログも含めて400兆円です。これは世界の自動車産業より多い数字なんですよ。

なおかつ、日本の教育市場は塾が1兆円で、語学教育も1兆円くらいです。そしてeラーニング等を含めたものが0.5兆円くらいで、合わせると2.5兆円くらいなんですね。幼稚園から大学まで、学校の設置とか研究費とか教員の人件費とかそういったものを国が教育関係に全部払っているお金を文教費というんですけれど……いくらぐらいだと思います? 

みんなものすごい額を払っているんですよ。それに税金も払っているわけなので。約23兆円あるんですよ。民間では2.5兆円くらいしかないのに、23兆円もあるんです。しかもそれは少子化にもかかわらず毎年横ばいなんですよ。ずーっと払っているんです。

そのうち、アナログにかけるものも多いんです。なので、数%でもデジタルに変えて、もっと効率的にするだけでお金の流れが変わるじゃないですか。そのあたりは企業さんが必ず入りますよね。なので、構造的には絶対儲かるんですよ。そこに上手に穴を開けるのが必要かなと思いますね。

森本:難しいですね(笑)。例えばリソースを持っている、学校との繋がりがある会社さんとか、教材を持っていらっしゃる会社さんとか、データを持っていらっしゃる会社さんとかがすでにあるんですね。そこが今ゲームメーカーになっているので、全く違うルールを見つけていかないといけないかもしれません。

松浦:もしくは楽天市場さんで出店されている、学校用の鍋を売っている人のほうからなら「おもしろいかもな」と思ってもらえるかもしれないですね(笑)。

専用の調達制度に乗せないと買えない、学校の制度を変える

佐藤:でも、できますよ。今それに対しても検討しているものがあって。例えば、先ほどおっしゃっていた学校での調達は、ごく限られたプレイヤーに限られます。

すでにそういった企業が学校に入っていて、そこでベンチャーがポッと学校に行って「すいません、買いませんか? 」と言っても、ぜったい買わないじゃないですか。それには調達の仕組みがあって、学校は専用の調達制度に乗せないと買えないんですよ。

その時に、今経産省に向けて提案しているのが、新しい調達の仕組みです。ベンチャーでも本当に良いものであれば、公平に扱ってもらえるような仕組みを考えています。これができればベンチャーの活躍の場は広がりますよね。

森本:お願いします!

(会場笑)

佐藤:簡単ではないんですけれども、そういった1つの仕組みを変えるだけで、教育改革は一気に起こる思います。

松浦:たぶんその中で、事業者ができることもあるし、事業者じゃなくても家族や、一人ひとりの大人ができることもたくさんあると思っています。大人が子どもたちの意見を引き出したり、学び方のルールを変えていったりする取り組みも同時に重要になってくる。

ということで、パネルディスカッションの三者の方のお話はとりあえずここまでにして、残り8分ほどで、会場から質疑がありましたら、1、2件ぐらいお受けしたいなと思っています。なにかございますか? どんなことでも大丈夫です。せっかくの場なので、もし良かったら。

(会場挙手)

はい、どうぞ。あ、ここの(机のマイクを指して)所に向かってしゃべると比較的聞こえると思います。

先生側の誤認を保管するスクーリングの必要性

質問者1:うちの子どもは今学校に行っていない状態なのですが、お話しを聞いているとすごく明るい未来がやってくるように聞こえます。実際は毎日学校という枠からは外れているのですけれども、例えば、近所の人とか、先生たちの中で、どこまで理解していただけているのかがわからないんです。

今の状況に対してなかなか胸を張ってできていないところがありまして、たぶん子どもたちも、「学校に行けないのは悪い子なんだ」という認識みたいなものがあって、ニコニコした感じではなく、どんよりとしているんです。

それを変えていくのが私たちなんですが、私自身も義務教育の中で育ってきているので、それを受け入れるのに時間がかかってしまっているんですね。先ほどあったように旅をしてもいいんですけど、なんだか隠れて悪いことをしているみたいな……。それを胸を張ってできる日が早く来て欲しいなと思うんです。

松浦:まさにそんな日が早く来られるように、私たちもやっていけたらなと思っています。Edtechによって学校に行くことが強化されるような社会をつくるつもりは私にはなくて。学校以外の学び方が合う子は絶対今増えています。

学校自身も、この前文科省が作った通達にもあるように、学校に戻すことが前提ではなくなっています。先ほどの不登校の人数のデータでも出ていましたが、この考え方は学校でも30年くらい前からあるんです。

けれど、普通の学校の先生はそれを知らないんですね。「学校に来れないことは、その子たちの未来にとって良くないことだ」という前提を持ちすぎてしまっているんです。そこで先生の補完をするスクーリングをすることも必要です。

人間の本質的な強さは「つながること」にある

松浦:行政とか自治体に向けた取り組みを広げていったり、あとはデータを出していくことも大事だと思っています。そこも同時にしながら、一方で行政にもアプローチしていく。実は秋田県で少しずつアプローチをしているんですけど、なかなか変わらないんですよ。

法律が変わらない限り、そこに入っていくことは難しいです。経産省の動きなどもあるんですけれど、たぶん数年くらいはかかると思うんです。でもその前に、例えば企業さんと。こういう楽天さんの場所とかでそういう子たちを受け入れて、笑顔で過ごせたり、いろんな人と繋がる機会ができたりしたらいいな、というのは本当に思っています。

森本:それで言うと、僕はやっぱり人間の本質的な強さはつながることだと思っているんです。先ほど「企業さんと」という話をされてましたけれども、この場に来ていらっしゃる方は、たぶんそういう活動していらっしゃる方が結構いらっしゃると思います。僕が知っているだけでも数人います。

そういう方々とつながって、安心安全な場を増やして、子どもがいろんな場に行った時に、「ここは自分が否定される場じゃない」という場をいくつも見ていけば、「あ、これもありなんだな」と思える世界が来ると思うんです。

その結果、逆に学校に行きたくなることもあるかもしれません。別にそれはどっちでもいいと僕は思うんです。やっぱり学校と家庭という場所だけだと、なかなかいろんな価値観には触れられないので。そういう方々とつながっていろんな場の雰囲気を経験することで、自己肯定感もどんどん上がっていくんじゃないかなと思っています。