見抜くのは「やりきる力」があるかどうか

小川嶺氏(以下、小川):自分は最初、F Venturesの両角将太さんにお願いしたんですけど、1時間の内、50分は雑談しました。残りの10分で「ところでなにをやっているの?」と聞かれて、経緯を話すと「じゃあ、いくら出資するわ!」と決めてくれました。

本当に起業家の本質を知っているというか、どういう人だったら続くかどうかを見ている。結局シード期の事業なんて、当たるか当たらないかはわからないんです。それをやりきるかどうかを本当に見てくださる方なので、ぜひ出資してもらったほうがいいです。

伊藤和真氏(以下、伊藤):絶対事業ってピボットするじゃないですか。だから、人に投資するしかない。起業家でちゃんと実行してやり続けられる人は本当に少なくて。「それができたらなんとかなるでしょう!」みたいな感じですもんね。それは、合理的と言えば合理的なのかもしれないけれど……。

栗島祐介氏(以下、栗島):そのあたりをどう評価したのかは(会場の両角氏を指して)あそこにいる人に、個別に聞きたい方はあとで聞いていただければ。

両角将太氏(以下、両角):資料を見ていないわけじゃないですよ? 資料は見ているんですけど、会話の中で、質問の回答の速さや今までの経験を見て、「この人が最後まで諦めずにやっていくかどうか」を一番見ていますね。とくに(伊藤)和真とかは最初に登竜門のイベントを東京でやってもらって……。

伊藤:本当に無茶振りだったんですよ! 

栗島:どんなふうに振られたんですか?

伊藤:福岡のイベントで、「これ、東京でもやりたいんだよね」みたいになって。僕は東京のスタッフで1人だけだったんですよ。「じゃあまかせた!」と。会場とか人とか……。「必要なのは最低で100人とかだよね? じゃあ200人くらい集めてね。じゃ!」みたいな感じで。でもまあいいやと。

両角:そう。実行に移して本当にしっかり人を集めたので、それで行動力は判断できましたね。これができたら起業もできると……。

人手不足でつぶれていくお店を助けたい

栗島:小川さんもそんな感じだったんですか?

両角:小川さんは1回事業もされていますし、失敗経験というか前の経験があるので、ちゃんとやりきれる力があると判断しました。その後、1回資金調達をやめたことも、普通は学生だとできないような意思決定なので、「それは本当にすごいな!」と感じて投資させていただきました。

栗島:なるほど。2人とも光るところが見出されたんですね。じゃあ、あとでまた呼ぶかもしれないので、よろしくお願いいたします。次の質問を最後として、その後に会場のみなさんからの質問を集めていきたいと思います。

では質問です。過去と現在は何をしていて、今回ファイナンスして、これからどういう未来を描いていくのか。そういった情報も共有していただきたいなと思っています。誰からいきましょう? じゃあ、小川さんからいきましょうか。

小川:はい、ビジョンを語るのはCEOの役目なので。1~2ヶ月に1回、社内総会をした時は1時間では終われないくらい語ります。今は働き方改革ということで、単発で働くバイトサービスもやっています。

人手不足で苦しんでいる飲食店が本当にいっぱいあって、3年で7割の飲食店がつぶれているんですよ。そういうところを助けるために、もう少し貢献できたらなと思います。ほかにも農業とかホテルとか、いろんな業界が人手不足で苦しんでいます。

それを解決したいところがあるので、短期的なビジョンとしてはその人手不足をすべて解決することを目指しています。ビジョンは1年後・3年後・5年後みたいに引いているんですけど、今年は新しく事業を3つ立ち上げるんですよ。

栗島:3つ⁉

小川:3つ。これ、公開してもいいのかな……。

栗島:喋りすぎると株主に怒られる。

(会場笑)

「一人ひとりの時間を豊かにする」というビジョン

小川:まぁ、という感じでおもしろいこともいっぱいあるので、社内に来ていただければ。オフィスは東京ドームの目の前にあります。卓球台と麻雀台があるので、ぜひ遊びに来てもらえればなと思います。

事業を新たに3つ立ち上げますということで、公開してもいい範囲で言うと、旅行サービスもリリースするんです。「タダ旅」という、後払いでもなく無料で旅行にいけるというすごいサービスを考えていて……。8月リリースなので、まだ先なんですけど。楽しみにしていてほしいです。

そうやって「『働く』をもっと楽しくする」というビジョンを自分の中で掲げていて。今、リゾートバイトみたいに、いろんな地方で旅行しながら働けるサービスをつくっているんですよ。

普通の観点ではない切り口から「働く」というものを見ているからこそ、ユーモアあふれる物をつくれるのかなと思っているので、これからもそういうものをどんどんつくっていきます。それが1つです。

もう1つ、5年先で言うと「一人ひとりの時間を豊かにする」というのがうちの会社のミッションです。「(社名は)なんでタイミーっていうの?」と聞かれるんですけど、「タイム」は時間の概念、「エイム」は目的です。

「豊か」の定義はたくさんあると思うんですけど、時間と目的ということで、「その時間でできる『目的』をたくさん増やしてあげよう、それで一人ひとりの『時間』が豊かになる」と思っています。

例えば「Twitterを見ていることは豊かじゃないのか?」と言われたら、俺はそうじゃないと思っていて。Twitterを見る選択肢もあれば、今日TORYUMONに来るという選択肢もある。寝るという選択肢もある。その中で「Twitterを見る」という判断をすることに、意味があるんですよね。でも今は、自分の1時間でなにができるかが、可視化されない世界なんですよ。

今1時間空いている人同士が出会えるかもしれないし、近くの居酒屋がセールしていて安く食えるかもしれないし、アパレル・ファッションに行けるかもしれない。そういう情報が全部可視化される。

Googleができていない世界、リアルタイムのリアルデータを提供できる会社にしたいですね。世界で一番大きい「時間」の会社をつくっていきたいなと思っています。

採用基準は「目を輝かせているか」

栗島:素晴らしい。なにか募集事項やアピール事項があれば。

小川:アピール事項で言うと、月に8人採用しているんですよ。今40人くらいいるんですけど……。

伊藤:このままだと100人くらいいくよ。

栗島:これは成長速度がやばいですね。

小川:そのくらいいくのかなと思っていて。月に30~40人くらいにご応募いただいて、書類を見て面接してという感じなんですけど。採用基準で言うと、一番見ているのは目を輝かせているかどうかですね。

能力うんぬんではなく、初回は会って3分話して面接は終わります。めんどくさいし、人と1on1で話すのはすごく苦手なんですよ。3分話せば、人柄はだいたいわかります。

そこでなにを見るかというと、「どんな夢をもっているのか」「どういう思考の深さを持っているのか」です。(相手の)目をちゃんと見て、本当にまっすぐな目でしっかり話せる人は、そういう経験をしているからだと思うんです。

今やっている経験は、絶対にためになります。がむしゃらに走っていながらも「なんで俺は、この行動をやっているんだろう?」と振り返る経験をすると、どんどんステップアップしていくのかもしれない。 

俺も今成長している最中で、めちゃくちゃ楽しいです。そういうことをどんどん繰り返してもらえたら、良い起業家になり、(人に)求められるような、日本を引っ張れる人になるんじゃないかなと思います。そうなりたい人は、ぜひタイミーにきていただければ。

栗島:ありがとうございます。なんだか締めっぽくなったな(笑)。

(会場笑)

ビジネスモデルは政治家版の「食べログ」

栗島:(次に話すのは)どちらがいいですか?

伊藤:じゃあ僕。そうですね、僕は「なにをしたいか?」と聞かれたら、「国をつくりたいな」と思うんですよ。国、つくりたくないですか?

栗島:わかります。

伊藤:そうそう。僕は国をつくりたいなと思った時に、「じゃあ、今なにができるだろう?」「やっぱり国のシステムをアップデートすることだ」と考えたんですよ。政治は世の中の根本をつくっているものです。なので、PoliPoliは誰もが困った時に、政治や行政にアクセスできたらいいなという姿勢です。

政治となると「難しい」「よくわからない」と思うし、僕もそう思っていたんですけど、イメージしているのは街づくりのゲームみたいなものです。建築物をつくってみたり。そのイメージにけっこう近いです。

例えば、「喫煙所が嫌な位置にある」とか「もっと起業しやすい環境をつくってほしい」とか。そういうことを言って、実際に政治家に届いたら世の中が変わるんですよ。実際に「こうしてほしい」と言って、その街が変わることもあるので、そういう国のシステムをつくりたいなと思いますね。

数年の目標としては、この事業はビジネスモデル的には政治家の「食べログ」をつくるようなものなんですよ。なので政治家さんたちに登録してもらって、ここで票やお金を稼いでもえるようにしたいなと思っていますね。

もう少し先だと、ここで投票ができたら楽だし、それを海外にも展開していきたいなと。国のシステムやインフラをつくりたいなと思っているんです。でも僕自身はあまり目立ちたくないので、システムをつくりきった後は鎌倉のカフェで店主をやっていたいなというのが夢ですね。

サービスを支えるアンバサダー制度

栗島:ありがとうございます。まさかの鎌倉のカフェオーナー。

伊藤:(笑)。カフェの店員が夢なんです。だから、タイミーはすごくやりたいです。猫カフェの店員が夢なので、猫カフェをずっとリクエストしているんですよ。

栗島:そうやって、自分たちの未来のためにも、政治をアップデートしたいという。

伊藤:そうですね。募集内容は、今はフルコミットのiOSのエンジニアさんを1人探しています。あと、アンバサダーという制度があります。僕らはこういった公共性が高いプロジェクトで、全国に250人くらいボランティアの人がいるんですよ。

例えば沖縄とかですね。選挙があった時にイベントをやってくれたり、地元の政治家を紹介してくれたり。地元のメディアに紹介して、この選挙を局地的に盛り上げようとかもあります。ほかにも福岡の選挙の時に、局地的に盛り上げるとか。

そういう人たちが全国にいて、そういうアンバサダーという制度があります。もしPoliPoliに興味がある方がいたら、Twitterなどを開放しているので、DMをいただけるとすごくうれしいです。一緒に国づくりができたらなと思います。

小川:アンバサダー。昨日も温泉で話していて、「タイミーもアンバサダーグループをつくったほうがいいんじゃない?」と言われたんですよ。

伊藤:つくったほうがいいですよ。

小川:ちょっと、10分後くらいにツイートします。アンバサダーを今日限定でURL公開しようと思っているので、タイミーで新しく働く方やユーザーの増え具合の状況や資金調達状況など、いろいろ情報交換ができたらなと思います。

入りたい人がいれば、Twitterでハッシュタグで「#タイミー」を調べていただければ、俺のアカウント出てくるので、よろしくお願いします。告知しちゃった(笑)。

伊藤:(笑)。どっちも入ってください。

モノを取り出したい時、いつでもどこでもすぐ取り出せる未来

栗島:両方アンバサダーを。(ワラガイ氏は)やらないんですか?

ワラガイケン氏(以下、ワラガイ):今朝、僕らのメルマガで「アンバサダープログラムを始めます」というのを出したんですよ。ecbo cloakは北海道から沖縄までいろんな店舗があるので、店舗にいって、荷物預かりを利用してリポートするとか、そういうことをタイムリーで始めていて……。

伊藤:3つとも始めましょう(笑)。

栗島:これ、本当になんの打ち合わせもしていないんですよ(笑)。

伊藤:本当に、なんにも打ち合わせしていないですよね。アンバサダーという制度はすごく良いんですよ。僕らは毎週の活動や、あんまりオープンに出せないような情報もそこで出しています。

本当に起業したい学生で、政治系のことを考えている人の力になるなど、PoliPoliのシナジーが合ったらけっこう協力をしているので。3社に入ってもらって、いろいろ学んでもらったら良いなと思いますね。

小川:……はい、今ツイートしました。

栗島:ぜひ見ていただければ。

ワラガイ:そうですね。ecboのミッションは「モノの所有を、自由に。」というのを掲げていまして。人々がモノに対してどう扱うか、所有の概念自体をどんどん変えていきたいなというのが1つです。

そのステップ1として、現状は荷物預かりをやっています。2025年には、僕たちは世界500都市でecbo cloakを使えるようにすることを、大きな目標として掲げています。

現状は国内だけなんですけど、すぐにでも海外展開をやっていきたいよね、という話を進めている状況です。ecbo cloakは一時的な荷物の預かりですが、将来的にはモノを預けるのはもちろん、取り出したい時にすぐ取り出せるという未来を描いています。

イメージとしては四次元ポケットみたいなかたちで、欲しい時に欲しいモノを欲しい場所に取り出す。そこまで持っていきたい。しかも、日本だけじゃなくて世界中でできることを目標としています。カルチャーを変えるだけでなく、人類史に残るようなことをやりたいというのが、僕らの考えです。常に仲間を募集しています。

Uber Eatsが創り出した価値

小川:ものすごく事業提携したいんです。

ワラガイ:うちとですか?

小川:飲食店ってすごく多いですよね。観光客はその飲食店に荷物を預けて観光して、荷物を引き取りにまた飲食店に戻らなきゃいけないじゃないですか。その荷物をホテルに届けるんですよ。ホテルに届ける人をうちで提供できるので……。そんな感じで、いろいろできるのかな? と思って。

ワラガイ:それはすごくおもしろいですね。

小川:ちょっと今度(ecbo代表取締役社長の)工藤さんとお会いしたいです。ぜひよろしくお願いします。

ワラガイ:それは、新しい仕事を提供することになりますよね。Uber Eatsがすごくわかりやすいと思うんですけど、今までなかったところに新しい職を提供して、新しい価値を提供していく。

ここではとくに、そういったサービスが生まれやすいと思うんですよ。僕らもどんどんそういうことをやっていきたいけれど、この会場からそういう新しい価値提供が生まれるといいですよね。

伊藤:海外のベンチャーだと、法規制で本当に必要なサービスができないことがあるので、僕はそういうのがやりたいですね。「ベンチャーでこういうのができないかな?」みたいな。けっこう政治家が登録してくれたり、知り合いを紹介したりできるので、プレゼンしに行って「じゃあ法規制を変えましょう!」と。

そういうことでどんどん(起業家と政治家が)近づいていければベンチャー産業は盛り上がるだろうし、そういうことをやりたいなと思いますね。

小川:良いですね。ぜひやりましょう!

大企業ではできない、グレーゾーンの攻め方

栗島:「この法律おかしいよね!」というのがあれば、伊藤くんに連絡すれば……。

(会場笑)

伊藤:できないことのほうが多いかもしれないですけど、できることがあればおもしろいな、と思います。

小川:これも1つのヒントで、法律が増えたところには、ものすごくチャンスがあるんですよね。 

伊藤:チャンスです。

小川:うちもちょっとグレーなんですけど、そういうところには大企業が入りづらいんですよ。大企業は調べるのに時間がかかるので、その間に企業側がどんどん実績を伸ばせば、後から追い付けなくなるんです。そういうところは逆に法律を勉強するとか、そういうのもまたおもしろいのかな、と思います。

伊藤:そうですね。やっぱり、グレーゾーンにいかないと駄目だと思います。

栗島:TORYUMONに来る子たちは、グレーゾーンを攻めにいく人が多い気がしますね。どうしてだろう? 福岡がそうなのかな。