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パネルディスカッション(全4記事)

「CAの藤田社長が出資してくれなかったら倒産していた」 若手起業家たちが苦しんだ、資金調達成功への道のり

2019年2月16日、日比谷 Base Qにて「第3回TORYUMON TOKYO」が開催されました。スタートアップに興味のある学生を中心とした大規模交流会として開催されているTORYUMON。本記事では、若手起業家をゲストに迎えたパネルディスカッションの模様を全公開。2記事目となる今回は、いかにして資金調達に成功したについて語り合ったパートをお送りします。

若手起業家たちは、いかにして資金調達を実現したのか

栗島祐介氏(以下、栗島):長引くと怒られちゃうので、2つめの質問にいきたいと思います。事業や創業期についてお話しいただきましたが、資金調達をうまく実現したところから、そこでどんな苦労があったのか、エピソードも含めてお聞きできればと思います。じゃあ、今度は逆からいきましょうか。

ワラガイケン(以下、ワラガイ):苦労話ですよね。資金調達をメインでやっているのは工藤で、僕はそのサポートなんですけども。去年、東西のJRさんから資金調達させていただいて、どっちも一緒に入れたかったところがあったので、その持っていき方はあったかなと思いますね。額は出していないんですけど。

そういえば僕らのサービスの説明、まだできてなかったんですけど、ecbo cloakってご存じですか?

(会場挙手)

おお、半分は知ってる(笑)。荷物預かりサービスなんですけど、コインロッカーとかを置くわけではなく、お店の空いているスペースに荷物を、主に旅行者のスーツケースなどを置かせてくださいっていうものです。

利用料金は300円〜600円くらいで、コインロッカーと同じ金額ですね。その中から一部僕らも手数料をいただいて、残りはオーナーさんへ支払うというシェアリングをやっています。

駅からの距離が近い店舗は結構人気があるので、拠点となる駅を早めに押さえておきたいという思いが当初からあって。そういった意味でJRさんとシナジーを感じていて、けっこう力を入れていて、結果として成長に繋がった感じです。

小川嶺氏(以下、小川):めちゃくちゃいいアプリですよね。

ワラガイ:ありがとうございます。

小川:アプリを入れるとわかるかと思うんですけど、UIがすごくきれいで。うちもAPP UI使ってて、本当に参考にさせてもらってます。ぜひ入れておいてください。

ワラガイ:うれしいです。ありがとうございます。

5年、10年先の未来を言語化できる強み

小川:全てのデザインをやってらっしゃる?

ワラガイ:やっていますね。僕らのサービスの利用者は観光客が多いので、外国人の利用が多くて。最初はWeb限定でやってたんですけど、今年に入ってやっとアプリが出せました。このイベントが終わったらすぐにダウンロードお願いします。iOSもAndroidもあります。お願いします。

栗島:今すぐダウンロードできます。ちなみに、ecboさんって事業連携先がめちゃくちゃ大手じゃないですか。若手の起業家は普通落とせないところばっかりだと思ってるんですけど、どういう戦略を練って、どう落としていってるんですか?

ワラガイ:そこは僕が工藤に惹かれたポイントの1つなんですけど、彼が未来を描くのが上手というところは1つあると思います。今すぐとか1年後だけじゃなくて、5年10年先の話が彼の頭の中にはあって、それを少しずつ言葉に落とせているところが理由の1つかなと思います。

栗島:工藤くんのやり方をいろいろ見てたら、普通、なかなか会えない方々のところに行こうとするじゃないですか。あれって戦略的にやってるんですかね。そこで一緒にビジョンを語って、仲間にさせていく感じなんですか。

ワラガイ:本田圭佑さんとかですかね。

栗島:会社の経営者層を狙って、ありとあらゆる手を使って会いに行っているなと思ってまして。

ワラガイ:そうですね。彼とよく話しているのは、やはりシナジーがあるかが第一です。シナジーがなさそうだけどお金がもらえそうなところとかは、最初から意識してないです。JRさんとかまさに大きいところですし、例えば郵便局とかも入ってるんですけど、そこはけっこう狙ってるところです。

栗島:資金調達はあまり苦戦してない感じがしますね。

ワラガイ:いや、苦戦していますよ(笑)。常にしています。最初の頃なんてとくに、いくつも当たってはダメだったということはたくさんあったので。

栗島:VC界隈では「これって本当にいけるのか?」って懐疑的な人は多かった気がするんですけど、それってどんなタイミングでどう変わっていったんですか?

ワラガイ:ちょっと細かい話なんですけど、最初は倉庫業をやろうとしたって経緯があって。ecboは今クロークなんですけど、最初はストレージっていう倉庫をしようとしていたんです。

でも、倉庫業だけだとやはりそこまで大きくスケールできないので、ちょっと休止して、クロークを出したんですね。その基点から未来が描きやすくなったということはあると思います。

栗島:そこから急にきたんですね。なるほど。ありがとうございます。

資金調達の内幕をすべて公開

栗島:じゃあ、次は小川さん。

小川:はい。僕らは8ヶ月で3回資金調達したんです。

栗島:めちゃくちゃやってますよね。それに資料を全部公開していてすごいなと思っていました。あれ、VC怒られるんじゃないかなと思ってるんですけど。

小川:今のところ大丈夫ですよ。なにも言われてないです。

小川:まだ見てない人はぜひ見ておいてください。

栗島:資金調達のエンジェル、シード、シリーズAのファイナンスの資料を全部noteで公開してるので。

小川:バリエーションも全部公開してますけど、そういうものってなかなか公開しないと思うんですよね。8ヶ月で3回調達して、次の資金調達も緩くもう動いているんですけど、実はすごい苦労してます。

シード調達は、もともとファッションの会社のときに、資金調達しようとVCを30~40社回ってまして。39社からは断られて、エンジェルに1人だけOKって言われて、どうしようかなと思って結局やめたということがあって。

その39社のネットワークがあったので「あのときのビジネスですけど、もう1回会ってくれませんか」って会いに行ったりしました。

その成長度合いみたいなものも見てもらえてるのかなというところはあります。最近シリーズで3億円の資金調達をしたんですけど、すごい苦労していて。3ヶ月くらいかかったんですよね。

栗島:いや、それ苦労してない。

(一同笑)

資金調達できなかった倒産していたかもしれない

小川:でも、シードとプレシリーズは両方とも1ヶ月くらいで終わったんですよ。資金調達って1ヶ月くらいで終わるのかなと思ってたんですけど、3ヶ月かかっちゃって。けっこうつらかった。

その理由は、バリエーションをめちゃくちゃはね上げていたんですね。うちの会社はこんなに価値が高いです、今資金調達してます、だから何円くださいっていうのが資金調達なんですけど。

そのとき売上が20万円とかしかなくて、それぐらいだと本当はバリエーションで10億円もいかないんですけど。「15億円で俺は資金調達します」と40社くらいに言ったんですよ。VC40社中、40社に「事業はいいけど高すぎる」って断られた。

栗島:バリエーション5億円くらいって言われそう……。

小川:ちゃんと試算したら6億って言われて。「前回3億円調達して、2倍しかあがってないじゃないですか。こんなに成長したんですよ」みたいなこと言って、最終的にサイバーエージェントの藤田さんがポンと出してくれたから終わったんですけど、それがなかったら終わっていなかったと思ってます。

栗島:今もやってたかもしれないですね。

小川:12月にも調達したんですけど、資金調達してなかったら実は1月に倒産してたんです。

栗島:だいぶギリギリの橋を渡ってる。

伊藤和真氏(以下、伊藤):(笑)。攻めきってますね。

小川:危なかったです。でも、やりきる力はけっこうあると思っています。

CA藤田氏からの資金調達をどうやって成功させたのか

小川:最終的にちょっと妥協して、15億円から13億円にしたこともあるんですけど。

でも、楽しいですね。資金調達のたびに自分の能力が上がる気がしてます。自分の会社を、いかに大きく見せられるか、しかもロジックがちゃんと立てられてるかが資金調達のおもしろさだと思っていて。それをいかに説得するか、1on1の勝負がすごく楽しいです。

栗島:藤田さんにはどのように会いに行って、どういったところが評価されて今回の調達になったんですか?

小川:はやまりナイトっていう、起業家が集まって藤田さんとご飯を食べるっていう特殊な会があるんですよ。3月まで開かれてるので、もしかしたら行く人もいるかもしれないですけど。いっぱい起業家がいる中で、みんな資金調達の話をするわけです。

「20~30人も起業家がいたら、藤田さん絶対覚えてないな」と思って、とりあえず「1億円ください」しか言わなかったんです。「1億円が欲しい。あなたからの1億円が集まれば、俺の資金調達は終わるんだ」って言った。

2次会で、藤田さんに「1億円の男です」ってすぐメール送って「ぜひ1億円検討してください」って言ったら、藤田さんが「なんか悪くなかった気がするから秘書に確認しとくわ」と言ってくれて。そういうところから出資してもらった。

栗島:サービスについてはさすがに説明してますよね。

小川:さすがに軽くは説明しましたけどね。詳しく話してもたぶん覚えていないと思ったので、本当に魅力だけ。「バイト版Uberを作ってるんです」「日本にないサービスで、世界で見ても3カ国くらいしかない、世界を狙えるサービスだと思ってるんで、ぜひ出資してください」みたいな話を振りました。

栗島:勉強になりますね。

伊藤:ファイナンスする学生さんもいると思うので、参考になりますよね。

ヒッチハイクが資金調達成功のきっかけに

ワラガイ:20人もいる中で、どう目立つかってことじゃないですか? どうインパクトを残せるかが、普通にUXに繋がりそうな(笑)。

小川:本当にそうだと思ってます。会場に今日150人くらいいると思うんですけど、その中でどう目立てるかはすごい大事だと思う。別に目立つのがすべてじゃないんですけど、目的意識を持ってこのイベントとかに来たほうがいいと思っていて。ただ参加して聞いて、ああよかった、楽しかったって帰ったら、なんにも意味がないと思ってます。

ここって、それなりに起業見込みがあったりスタートアップに興味がある仲間が来ていると思うので。このあと交流会もありますし、一緒に会社やろうよとか、どんなふうにふんばってるの? とかディスカッションすると、1人で考えるよりみんなで話したほうが絶対楽しいし、どんどんアイデアが膨らんでいくので。こういう機会を大事にしていただきたいなと思います。

栗島:時間が長くなっちゃうので、次、PoliPoli伊藤さん。

伊藤:僕は1月中旬くらいにプレなんですけど、けっこうつまんないというか。既存投資家だけの1回目って、全部が1週間くらいで基本終わった感じです。

おもしろい話としては、リード投資家っていう、リスクを取って最初に投資する人を見つけるところが政治サービスではすごく難しいので大変なんですよ。そのときに、ネットエイジの西川さんっていう、けっこう昔からいる投資家さんにお話をもっていただいたんですけど。出会ったきっかけがヒッチハイクだったんです。

僕らはお金がなかったんでヒッチハイクしてて。向こうから「めっちゃ早くしろ」みたいな感じで、「僕らはこういうこと考えてて」って言ったら、その乗せた弁護士のおっさんみたいな人がご飯に連れてってくれて。その人が西川さんの知り合いで、西川さんを紹介してくれて調達に繋がったんです。

栗島:まさかの。

伊藤:ヤバくないですか?

栗島:よく引きましたね。

伊藤:そう。世の中どうなるかわかんないなって思いました。ヒッチハイクでおっさんに出会ってなかったら、僕はたぶん調達してなかったと思いますね。

企画書なしで、人への投資

栗島:ヒッチハイクは、福岡から東京に行くためですか。

伊藤:そうです。金がなかったので。ただ、調達でぜんぜん響かなかったので、自己紹介するんですよ。僕、創業メンバーとキングオブコントとかに出てたんです。そういうことやってますって言ったら、「コントやってよ」って言われて。「ぜんぜんやります」と。

2人の投資家にプレゼンしてたんですけど、もう1人と創業者と僕の3人でコントしちゃいました。投資には繋がらなかったですけど。

(一同笑)

でも、すごく仲良くさせていただいて。なんでもやるということです。

栗島:すごいなぁ。それが最初のファイナンス……。最初は確かF Venturesでしたっけ?

伊藤:そうそう。F Venturesで働いてたんですけど、そのまま投資いただきました。両角さんのすごいところは、企画書とか見ないんですよ。人に投資するってスタンスなので、「じゃあ、いくらくらい投資するわ。あと資料、あとでちょうだい」みたいな感じ。

栗島:決めたあとで資料をよこせと。

伊藤:資料もあまり見ないくらいのノリ。

栗島:なるほど。そういうところにそれを言えば……。

伊藤:あそこの壁にもたれている人に、「いくらいくらください」って言ったらたぶんくれると思う(笑)。

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