人間は数万年後にどう進化するか?

石黒浩氏:最後、未来の人間の存在はどういうふうになるのかという話をしてみたいと思うんですけれども。数万年後の未来ですね。人間がどのように進化していくかということですね。

人間の存在はどう変わっていくのか。今ある人間の存在の意味とはなにかということですけれど。(スライドを指して)丸が出てきたら人間だと思ってくださいね。人間の進化というのは2つの方法があるんです。1つは遺伝子。生物ですからね。

もう1つは技術。これは重要なんです。人間は、技術によって能力をどんどん拡張していったわけです。これは他の動物とは違うところです。技術による進化は、遺伝子による進化よりはるかに速度が速いわけですよね。

いくら遺伝子を変えようとしたって、たぶん月には行けないです。でも、ロケットがあれば月に行けちゃうわけですよね。500万年前に人類が誕生して、農耕が始まった1万年前くらいから、人類はその能力を技術によって飛躍的に進化させてきたわけですね。

人間がなにかという定義はわからないし、その定義を探すために我々は生きているわけですし、いろいろな活動をするわけです。だから今日のように、「存在とはなにか」という講演会があったりするわけですけれど、最低限言えることは、人間というのは道具を使っていくんですね。

猿と人間の違いは技術を使うということなので、技術なくして人間は定義できないです。ロボットなくして人間は人間になれない。当たり前のことなんですね。それなのにみなさんは、ロボットと人間を比べて、ロボットが怖いと言うんです。矛盾しています。

「あなた、人間やめるんですか?」って、僕は言いたくなるくらいですね。今の人間の活動を見てみると、こういう人工物の建物の中で、人工物の服を着て、みんながスマホを手に持って、人間の活動のほぼ9割は技術によって支えられている。

人類の歴史上、技術が衰退したことはほとんどない

脳とかまだ人間らしい部分は残っているわけですけど、義手や義足や人工臓器など、ほとんどのものが全部機械に置き換えられようとしている。それが今の人間なんですよね。そういう技術開発というのは止まらないですね。どんどん技術を開発して、人間は能力を拡張していく。

人間は能力を拡張して生き残っていく、という遺伝子に刻みこまれた使命に従って生き続けているわけです。その能力を拡張し続けているわけですけど、人間が能力を拡張する新しいルーツは、この世に生き残るという使命を持った人間にとって、非常に魅力的なものです。それを手に入れ、生活を豊かにすることは、生きる目的と経済の発展を支えていると。

ゆえに、人類の歴史において技術が衰退したことはほとんどないわけです。そうした技術によって、生命の限界を超えた進化を達成するには、あとはなにが必要なのかと。脳をコンピュータで置き換えることですね。コンピュータって、今でもどんどん進化をしています。

ムーアの法則は続いているかどうかわからないんですけれど、毎年コンピュータは記録的に進歩をするわけですね。一番速いやつはむちゃくちゃ進歩していますし、少なくともみなさんが思うよりもコンピュータの方がはるかに優れているのはもう間違いないことですよね。

そうなると、(スライドに)丸で示した人間はほとんど技術で。でも、ちょっと動物的なところが残っていて、それが脳だと言っていたわけですけれど。それも全部機械に置き換わることになるんです。そうすると最終的に人間というのは、技術だけでできた無機物になるということですね。

これは私の学説なんですけど、さらなる人間の進化とは、そのまま機械化することであって、より長く生き残る技術があって、ある程度の人が利用していれば、もちろん人は「より長く生き残りたい」と思うわけです。

1万年後の人類は、無機物でできた知的生命体になる

不自然な抗生物質を使って生き延びるのとまったく一緒です。よく考えてみると、こういう考えは、実はもうみなさんが受け入れているんですよね。例えば、人工の手足を使っていても100パーセント人間ですし、時に健常者よりも優れている。

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