2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石黒浩氏:最後、未来の人間の存在はどういうふうになるのかという話をしてみたいと思うんですけれども。数万年後の未来ですね。人間がどのように進化していくかということですね。
人間の存在はどう変わっていくのか。今ある人間の存在の意味とはなにかということですけれど。(スライドを指して)丸が出てきたら人間だと思ってくださいね。人間の進化というのは2つの方法があるんです。1つは遺伝子。生物ですからね。
もう1つは技術。これは重要なんです。人間は、技術によって能力をどんどん拡張していったわけです。これは他の動物とは違うところです。技術による進化は、遺伝子による進化よりはるかに速度が速いわけですよね。
いくら遺伝子を変えようとしたって、たぶん月には行けないです。でも、ロケットがあれば月に行けちゃうわけですよね。500万年前に人類が誕生して、農耕が始まった1万年前くらいから、人類はその能力を技術によって飛躍的に進化させてきたわけですね。
人間がなにかという定義はわからないし、その定義を探すために我々は生きているわけですし、いろいろな活動をするわけです。だから今日のように、「存在とはなにか」という講演会があったりするわけですけれど、最低限言えることは、人間というのは道具を使っていくんですね。
猿と人間の違いは技術を使うということなので、技術なくして人間は定義できないです。ロボットなくして人間は人間になれない。当たり前のことなんですね。それなのにみなさんは、ロボットと人間を比べて、ロボットが怖いと言うんです。矛盾しています。
「あなた、人間やめるんですか?」って、僕は言いたくなるくらいですね。今の人間の活動を見てみると、こういう人工物の建物の中で、人工物の服を着て、みんながスマホを手に持って、人間の活動のほぼ9割は技術によって支えられている。
脳とかまだ人間らしい部分は残っているわけですけど、義手や義足や人工臓器など、ほとんどのものが全部機械に置き換えられようとしている。それが今の人間なんですよね。そういう技術開発というのは止まらないですね。どんどん技術を開発して、人間は能力を拡張していく。
人間は能力を拡張して生き残っていく、という遺伝子に刻みこまれた使命に従って生き続けているわけです。その能力を拡張し続けているわけですけど、人間が能力を拡張する新しいルーツは、この世に生き残るという使命を持った人間にとって、非常に魅力的なものです。それを手に入れ、生活を豊かにすることは、生きる目的と経済の発展を支えていると。
ゆえに、人類の歴史において技術が衰退したことはほとんどないわけです。そうした技術によって、生命の限界を超えた進化を達成するには、あとはなにが必要なのかと。脳をコンピュータで置き換えることですね。コンピュータって、今でもどんどん進化をしています。
ムーアの法則は続いているかどうかわからないんですけれど、毎年コンピュータは記録的に進歩をするわけですね。一番速いやつはむちゃくちゃ進歩していますし、少なくともみなさんが思うよりもコンピュータの方がはるかに優れているのはもう間違いないことですよね。
そうなると、(スライドに)丸で示した人間はほとんど技術で。でも、ちょっと動物的なところが残っていて、それが脳だと言っていたわけですけれど。それも全部機械に置き換わることになるんです。そうすると最終的に人間というのは、技術だけでできた無機物になるということですね。
これは私の学説なんですけど、さらなる人間の進化とは、そのまま機械化することであって、より長く生き残る技術があって、ある程度の人が利用していれば、もちろん人は「より長く生き残りたい」と思うわけです。
不自然な抗生物質を使って生き延びるのとまったく一緒です。よく考えてみると、こういう考えは、実はもうみなさんが受け入れているんですよね。例えば、人工の手足を使っていても100パーセント人間ですし、時に健常者よりも優れている。
だから生身の身体でも、人間にとって意味はないんです。生身の身体は、人間の定義に必要な要件じゃないんです。それはもう、みなさんがちゃんと受け入れていることなんですよね。そう考えれば、人類は無機物から生まれて無機物に戻ろうとしているということです。
これは地球の歴史を考えたら、45億年前に地球が生まれて、最初は無機物じゃないんだけど、偶然有機物が発生して、その最終進化の形態が人間なわけですよね。その人間は、9割も身体を機械化しようとしている。もうほぼほぼ、有機物をやめようとしているわけですね。
有機物というのは、タンパク質とかそういう意味なんですけれどね。人間は無機物に戻ろうとしているわけですよね。そういう意味では人間が存在した理由というか、有機物が存在した理由ですけれど、複雑な分子構造を持つ有機物は環境適応性が高い。一方、その複雑な構造というのは壊れやすい。永遠に維持できない。
だから、人間という有機物の身体は、物質の進化や知能化を加速させるための手段に過ぎなかったということですね。最終的に、我々は無機物の知的生命体になろうとしているというのが私の仮説で、たぶん1万年経ったらそうなります。
単純に生き残りゲームをやっているので、1万年も経ったらものすごい温暖化が起こるとか太陽に異変が起こると。そうすれば有機物なんて全員消えてなくなってしまう可能性があるわけですよね。
そのときに技術がどんどん進んで、無機物化されたものだけが生き残る可能性が強くなる。当たり前のことのように思いますよね。なにかこう悲しい未来な感じがするわけです。みんなディストピアだと思うわけです。
それはなぜかというと、みなさん映画を見過ぎちゃってるんですね。映画を見過ぎて、無機物の知的生命体と言ったら、ターミネーターみたいなロボットになると思っちゃってるんですね。
(会場笑)
ハリウッドの映画は最低なんですよ。ロボットが出てきたら必ず世界が滅びるようになっているので、ロボットが出てくるだけで(人間は)世界が滅びる、と思ってしまう。僕はそんなに世界を滅ぼしたいとまでは思わないですね。
世界を滅ぼす、人を殺して喜んでるのがハリウッドの映画ですよね。あんなもの見ない方がいいです。だから、そうじゃないんです。要するに身体を機械化するということはどんな身体にもなれるということなので、好きなやつを選べばいいわけです。
もうまったく自由に選べるわけですよね。だって、(自分の体を指して)こんな身体だけって嫌じゃないですか。手なんてあと2本くらいあったっていいし、足もあともう2~3本あった方が疲れないかもしれないですよね。自由な身体にもなれるわけですよね。
要するに進化というのは多様性なんですよね。だから、身体を機械化するということは、多様性を担保してもらうことです。よく「将来は幸せになれますか?」っていう質問がありますが、幸せというのは相対的な価値観なので、もし将来が幸せだったら平安時代は地獄だったかということになるわけで、そんなことはないわけですよね。
唯一、幸せを担保するのは多様性だけです。いろいろな価値観、人それぞれに幸せの担保性を持てるということが重要なわけで、多様性だけが将来を担保してくれるんです。それは機械の身体になるということなわけですね。
人それぞれに価値があってユニークなんだと。将来、ロボットがたくさん出てくる世の中というのは、人間の存在について考えさせられるような社会であると共に、我々が多様な可能性を享受できる社会なんだ、といって。
幸せなのかどうかわからないですけど、人間の可能性がさらに広まって、人間について深く考えるような世の中がやってくるのだろうということですね。
そういう意味で、ロボットというのは、人間の存在について考えるうえで、いろいろなことを教えてくれる道具というかパートナーのようなものだと思うわけですね。
ちょっとでもロボットに興味を持っていただければと思いますし、もうちょっとで渋谷のそこらへんにうちのアンドロイドが来てなにかしてくれる日がくると思います。では、あとは質問を受けたいと思います。
司会者:はい。以上ということで、ありがとうございます。
(会場拍手)
さて、10分間の質問の時間がありますので、どなたかこんなこと聞いてみたいなどということはありますか。じゃあ、まずこちらまで出てきていただいて。
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