doとbeの肩書きの距離感

兼松佳宏氏(以下、兼松):じゃあ、質問は自然の流れでいきます。

(会場挙手)

質問者4:「肩書きとの距離を感じる」というのが気になっていて。なぜかというと、みなさんはたぶん、普通の人よりははるかにdoとbeがかなり近しいんじゃないかなと思っていて。なので、あえて距離を感じるという表現をされているのは、どういう意図なのかなと気になりました。

兼松:なるほど。ちなみに今、肩書きとの距離を感じていらっしゃいますか?

質問者4:私は今日参加したことを通じて、肩書きとの著しい距離を感じていることに気付いたので、自分の在り方を再考したいと思いました。

兼松:大変だ。「著しい」ってなかなか出ないですよね(笑)。じゃあ、中村君。

中村真広氏(以下、中村):これを挙げたのは僕でした(笑)。だけど、ネガティブな意味じゃなくて、むしろ距離を感じたら楽しいなって意味で書いたんですけど。例えばbeの肩書きとdoの肩書き。さっきのコメディアンのケースとか。

兼松:バスの運転手。

中村:一見距離があるじゃないですか。

兼松:確かに。その距離はありますね。doとbeの距離ですね。

中村:doとbeの距離もあるし。自分でこれがbeかなと思ったけど、今はそれに慣れてるのかなという距離もあるかもしれないし。そういう距離を楽しむのもいいのかなと思って。ちゃんと相対的に見ておくという意味で書きました。

今の自分とありたい自分のギャップ

兼松:公務員ってものがdoとしてあると、そのbeにどんなものがきても、ギャップがあっておもしろいんです。編集者としての公務員もなんか良さそうじゃないですか。その差。でも、今のお話で言うと、自分がふだん名乗っているものと今の自分、本来のものとの差。そういうイメージ、ギャップみたいな感じでしたね。

中村:今のdoと本当にありたいbeに、ちょっとギャップがあるんですかね。

質問者4:そうですね。例えば、会社では「肩書きじゃないところで、やりたいことはがんばれ」みたいな感じで。例えば、「空いている時間を使ってがんばれ」って言ってるけど、あまりにbeとdoがかけ離れすぎていて、説明することが難しくなってきたぞ、というのが今回感じた印象としてありました。

兼松:beの肩書きって、それを選んだみなさんが本質的に秘めている価値であって、「どうしてそれを選んだのか」という理由の方が大切だと思うんです。

「お笑い芸人」でいうと、お笑いを見るのが好きとか、大喜利が得意みたいなことだけではなく、それぞれが言いきれないことをきちんと拾ってあげて、ツッコむことでその人の才能を引き出す、という意味での「お笑い芸人」だとしたら、それは会社でどんな仕事をしていても、日々のコミュニケーションに当てはめられるじゃないですか。

だから、そのギャップがあるからこそおもしろいし、楽しいのかもしれないですね。佐渡島さんはどうですか?

肩書きがあることで生まれる固定観念

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):僕自身が、肩書きと自分の今の在り方の距離について考えることはあまりないんですけど。例えば、社長とかそういう肩書きで、周りの人が態度を変えることがあるんだなって思いました。

一度関係値ができていると、別に社長であろうとなんであろうと、関係値自体は変わらないというのが、僕の価値観なんだけど。そうじゃなくて、変わる人がいるんだなと思いますね。

でも、それは入ってきた社員が、社長には相談しちゃいけないことと相談していいことがある、と勝手に思うことなんだな、と思って。僕なんかは、大きい会社で社長と会えないのなら相談できないことが存在するなと思うんですけど。小さい会社なら、社長はそこらへんにいるんだから、相談したらいいのになあと。そういうふうに決めつけているなと思って。

中村:そういう前の会社の文化を引っぱりながらやってたりしますよね。

佐渡島:そうですね。固定観念にけっこうとらわれていて。その固定観念が、経験にも基づいていない場合もあったりするなあと(笑)。

兼松:コルクやツクルバの中で、ユニークな肩書きとかあるんですか? チーフスピリチュアルオフィサーじゃないけど。

中村:なってみますか?

兼松:チーフスピリチュアルオフィサーですか?(笑)。ぜんぜんなりますよ。うかがいたかったのは、僕が20代の時に、ある意味、自分に肩書きを無理強いして成長してきたように、「この子にはこういう肩書きをあげたら伸びるんじゃないか」という経営的な目線で、肩書きをギフトするみたいなことがあるのかなって。

「doの肩書き」は社会的な実力を測るもの

中村:ありますね。お二人の前で言うのは、ちょっとおこがましいんですけど、co-ba渋谷というさっきのシェアオフィスで、コミュニティマネージャーって言葉をまだ発明できてなかった頃に、co-ba編集長という言い方をしていたんです。「これいいじゃん」って、名刺にも書いて。人を編むというか、そういう意味でつけましたね。

兼松:いいですね。編集っていってもいいのかな、というところがあるけれども、そうとしか言いようがなかったという。

中村:なんて言おうかなと思って。

兼松:そういうのってありますか?

佐渡島:コルクの場合、新しい職業や新しい先を作りたいという気持ちが強かったので、はじめは編集者もファンコミュニティのマネージャーだなと思っていて。「コミュニティプロデュース」や「コミュニティマネージャー」というふうに名前を変えて、そういう職業になるんだ、と言っていたりしてたんです。でも、転職者がもとの職業と同じ職業名のほうが、その人も活躍できるかなと思って。

新しい職業名だと来やすくなるんですけど、自分なんて無理じゃないか、と思う場合もあるし。あと、どっちかというと実力がない人が「ここって私でもできるかも」と思っちゃうんで。

兼松:なるほど、なるほど(笑)。

佐渡島:職場なので、ある程度、doの肩書きで来てほしいんですよ。でも、beの肩書きで来ちゃうんで、その既存のdoの肩書きのほうがいいと今は思っています。

兼松:確かに。イノベーションファシリテーターとか言った時に、「なんだかできそう」って思っちゃう。

佐渡島:そう。大学生が来ちゃいます。

(会場笑)

兼松:あるよなあ。

中村:今でこそコミュニティマネージャーなどが浸透していますけれども、数年前は「コミュニティマネージャー」で求人を出すと、本当にいろいろなbeとしての人たちが来ましたね。

兼松:悪いことじゃないんですけどね。doがあるほうがいい。それは社会から求められるものでもあるから。

佐渡島:あとね、自分でできていると思っているから、「できていない」という指摘を聞けないんですよ。

人事評価のグレードで成長感を演出

兼松:これは若いみなさんは要注意(笑)。でも、ありますね。グリーンズの採用でもけっこうあった気がします。ちなみに僕、グリーンズの副編集長になる人たちを、勝手に副編集長にしていった歴史があって。おのっち(小野裕之氏)というメンバーがいて、二人でインタビューを受けたときに、朱入れでこっそり肩書きを副編集長にしておいて、あとで言う(笑)。そういう肩書きで発破をかけるみたいなことをやってきた。

佐渡島:それは肩書きというよりグレードですね。

兼松:グレードか。

佐渡島:人事評価のグレードというのは、成長感の演出にはなる。

兼松:確かに。ステップアップをちゃんとして、それと役割は微妙にまた違うっていう。

佐渡島:そうです。

兼松:おもしろい。この話もっとしたい(笑)。すみません、選んでいただいた方どちらでしたっけ? どうでしたか?

質問者4:話がいろいろなところにいって、私も消化しきれてないんですけど。まず、自分自身が「doとbeが近付いてないといけないんじゃないか」という、脅迫観念を持っているんじゃないかなと、話の前半くらいで思っていました。一方で、名づけは意思だから、そこに近付ければいいなと。でも、「やっぱりdoができないとね」というような話もあるから難しいなって、いろいろなことを思いながら聞いていました。

兼松:よかったですね。もやもやしたまま帰るって最高じゃないですか。あ、無責任です(笑)。ありがとうございました。

質問者4:ありがとうございました。

(会場拍手)

兼松:でもこうやって話していただいている時点で、だいぶ進んでいると思います。じゃあ、そろそろ時間も迫ってきているので、佐渡島さんに一気に解説していただいていいですか?

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。