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doの肩書き、beの肩書き 〜あなたの肩書きを改革する〜(全4記事)

ヒット作やベストセラーは基本見ない コルク佐渡島氏が教える、自分の価値観を知る3つの方法

2018年で開催6年目を迎える「Tokyo Work Design Week」は、“働き方の祭典”として、のべ2万人が参加。今回は渋谷をはじめ、横浜・大阪・韓国でも開催されました。本セッションには、勉強家/京都精華大学人文学部 特任講師/「スタディホール」研究者の兼松佳宏氏、株式会社コルク代表取締役 会長の佐渡島庸平氏、株式会社ツクルバ 代表取締役 CCOの中村真広氏の3名が登壇。「doの肩書き、beの肩書き 〜あなたの肩書きを改革する〜」のパネルディスカッションのパートをお送りします。社会的な所属や役割を表すdoの肩書きに対して、beの肩書きは自分自身のあり方を表すもの。今回は参加者の質問に答えながら、改めてdoとbeの肩書きを深掘りしていきました。

doとbeの肩書きの距離感

兼松佳宏氏(以下、兼松):じゃあ、質問は自然の流れでいきます。

(会場挙手)

質問者4:「肩書きとの距離を感じる」というのが気になっていて。なぜかというと、みなさんはたぶん、普通の人よりははるかにdoとbeがかなり近しいんじゃないかなと思っていて。なので、あえて距離を感じるという表現をされているのは、どういう意図なのかなと気になりました。

兼松:なるほど。ちなみに今、肩書きとの距離を感じていらっしゃいますか?

質問者4:私は今日参加したことを通じて、肩書きとの著しい距離を感じていることに気付いたので、自分の在り方を再考したいと思いました。

兼松:大変だ。「著しい」ってなかなか出ないですよね(笑)。じゃあ、中村君。

中村真広氏(以下、中村):これを挙げたのは僕でした(笑)。だけど、ネガティブな意味じゃなくて、むしろ距離を感じたら楽しいなって意味で書いたんですけど。例えばbeの肩書きとdoの肩書き。さっきのコメディアンのケースとか。

兼松:バスの運転手。

中村:一見距離があるじゃないですか。

兼松:確かに。その距離はありますね。doとbeの距離ですね。

中村:doとbeの距離もあるし。自分でこれがbeかなと思ったけど、今はそれに慣れてるのかなという距離もあるかもしれないし。そういう距離を楽しむのもいいのかなと思って。ちゃんと相対的に見ておくという意味で書きました。

今の自分とありたい自分のギャップ

兼松:公務員ってものがdoとしてあると、そのbeにどんなものがきても、ギャップがあっておもしろいんです。編集者としての公務員もなんか良さそうじゃないですか。その差。でも、今のお話で言うと、自分がふだん名乗っているものと今の自分、本来のものとの差。そういうイメージ、ギャップみたいな感じでしたね。

中村:今のdoと本当にありたいbeに、ちょっとギャップがあるんですかね。

質問者4:そうですね。例えば、会社では「肩書きじゃないところで、やりたいことはがんばれ」みたいな感じで。例えば、「空いている時間を使ってがんばれ」って言ってるけど、あまりにbeとdoがかけ離れすぎていて、説明することが難しくなってきたぞ、というのが今回感じた印象としてありました。

兼松:beの肩書きって、それを選んだみなさんが本質的に秘めている価値であって、「どうしてそれを選んだのか」という理由の方が大切だと思うんです。

「お笑い芸人」でいうと、お笑いを見るのが好きとか、大喜利が得意みたいなことだけではなく、それぞれが言いきれないことをきちんと拾ってあげて、ツッコむことでその人の才能を引き出す、という意味での「お笑い芸人」だとしたら、それは会社でどんな仕事をしていても、日々のコミュニケーションに当てはめられるじゃないですか。

だから、そのギャップがあるからこそおもしろいし、楽しいのかもしれないですね。佐渡島さんはどうですか?

肩書きがあることで生まれる固定観念

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):僕自身が、肩書きと自分の今の在り方の距離について考えることはあまりないんですけど。例えば、社長とかそういう肩書きで、周りの人が態度を変えることがあるんだなって思いました。

一度関係値ができていると、別に社長であろうとなんであろうと、関係値自体は変わらないというのが、僕の価値観なんだけど。そうじゃなくて、変わる人がいるんだなと思いますね。

でも、それは入ってきた社員が、社長には相談しちゃいけないことと相談していいことがある、と勝手に思うことなんだな、と思って。僕なんかは、大きい会社で社長と会えないのなら相談できないことが存在するなと思うんですけど。小さい会社なら、社長はそこらへんにいるんだから、相談したらいいのになあと。そういうふうに決めつけているなと思って。

中村:そういう前の会社の文化を引っぱりながらやってたりしますよね。

佐渡島:そうですね。固定観念にけっこうとらわれていて。その固定観念が、経験にも基づいていない場合もあったりするなあと(笑)。

兼松:コルクやツクルバの中で、ユニークな肩書きとかあるんですか? チーフスピリチュアルオフィサーじゃないけど。

中村:なってみますか?

兼松:チーフスピリチュアルオフィサーですか?(笑)。ぜんぜんなりますよ。うかがいたかったのは、僕が20代の時に、ある意味、自分に肩書きを無理強いして成長してきたように、「この子にはこういう肩書きをあげたら伸びるんじゃないか」という経営的な目線で、肩書きをギフトするみたいなことがあるのかなって。

「doの肩書き」は社会的な実力を測るもの

中村:ありますね。お二人の前で言うのは、ちょっとおこがましいんですけど、co-ba渋谷というさっきのシェアオフィスで、コミュニティマネージャーって言葉をまだ発明できてなかった頃に、co-ba編集長という言い方をしていたんです。「これいいじゃん」って、名刺にも書いて。人を編むというか、そういう意味でつけましたね。

兼松:いいですね。編集っていってもいいのかな、というところがあるけれども、そうとしか言いようがなかったという。

中村:なんて言おうかなと思って。

兼松:そういうのってありますか?

佐渡島:コルクの場合、新しい職業や新しい先を作りたいという気持ちが強かったので、はじめは編集者もファンコミュニティのマネージャーだなと思っていて。「コミュニティプロデュース」や「コミュニティマネージャー」というふうに名前を変えて、そういう職業になるんだ、と言っていたりしてたんです。でも、転職者がもとの職業と同じ職業名のほうが、その人も活躍できるかなと思って。

新しい職業名だと来やすくなるんですけど、自分なんて無理じゃないか、と思う場合もあるし。あと、どっちかというと実力がない人が「ここって私でもできるかも」と思っちゃうんで。

兼松:なるほど、なるほど(笑)。

佐渡島:職場なので、ある程度、doの肩書きで来てほしいんですよ。でも、beの肩書きで来ちゃうんで、その既存のdoの肩書きのほうがいいと今は思っています。

兼松:確かに。イノベーションファシリテーターとか言った時に、「なんだかできそう」って思っちゃう。

佐渡島:そう。大学生が来ちゃいます。

(会場笑)

兼松:あるよなあ。

中村:今でこそコミュニティマネージャーなどが浸透していますけれども、数年前は「コミュニティマネージャー」で求人を出すと、本当にいろいろなbeとしての人たちが来ましたね。

兼松:悪いことじゃないんですけどね。doがあるほうがいい。それは社会から求められるものでもあるから。

佐渡島:あとね、自分でできていると思っているから、「できていない」という指摘を聞けないんですよ。

人事評価のグレードで成長感を演出

兼松:これは若いみなさんは要注意(笑)。でも、ありますね。グリーンズの採用でもけっこうあった気がします。ちなみに僕、グリーンズの副編集長になる人たちを、勝手に副編集長にしていった歴史があって。おのっち(小野裕之氏)というメンバーがいて、二人でインタビューを受けたときに、朱入れでこっそり肩書きを副編集長にしておいて、あとで言う(笑)。そういう肩書きで発破をかけるみたいなことをやってきた。

佐渡島:それは肩書きというよりグレードですね。

兼松:グレードか。

佐渡島:人事評価のグレードというのは、成長感の演出にはなる。

兼松:確かに。ステップアップをちゃんとして、それと役割は微妙にまた違うっていう。

佐渡島:そうです。

兼松:おもしろい。この話もっとしたい(笑)。すみません、選んでいただいた方どちらでしたっけ? どうでしたか?

質問者4:話がいろいろなところにいって、私も消化しきれてないんですけど。まず、自分自身が「doとbeが近付いてないといけないんじゃないか」という、脅迫観念を持っているんじゃないかなと、話の前半くらいで思っていました。一方で、名づけは意思だから、そこに近付ければいいなと。でも、「やっぱりdoができないとね」というような話もあるから難しいなって、いろいろなことを思いながら聞いていました。

兼松:よかったですね。もやもやしたまま帰るって最高じゃないですか。あ、無責任です(笑)。ありがとうございました。

質問者4:ありがとうございました。

(会場拍手)

兼松:でもこうやって話していただいている時点で、だいぶ進んでいると思います。じゃあ、そろそろ時間も迫ってきているので、佐渡島さんに一気に解説していただいていいですか?

自分の価値観を知る方法

佐渡島:僕のやつですか? この「読みたい本だけを読む」というのと、「会いたい人と会う」というのは、僕は自分の価値観を知るのに重要だと思っていて。例えば、本ってたくさんあるじゃないですか。僕みたいな職業をしていると、映画にしても、ヒット作やヒット本を見ていると思われるんですね。

僕は基本そういうのは見ないですね。チェックはするんですよ。パーッと見たりだとか、あらすじを確認したり、感想を見たりとか。その周りで起きている現象やプロモーションの方法は全部確認しにいくんですけれど、しっかり読むということはしないんですよ。読む本は、強烈に惹かれないと読まないんですよ。

兼松:さっき読まれていたのは、強烈に惹かれている1冊というやつなんですね。

佐渡島:そうです。さっき読んでいたのもめちゃくちゃ惹かれていて。さっき読んでいたのは、タイトルが映画を編集するとかそんな感じのやつ。僕、マイケル・オンダーチェっていう、『イングリッシュ・ペイシェント(イギリス人の患者)』を書いたカナダの小説家が大好きで。

映画もまた編集である――ウォルター・マーチとの対話

彼の本は全部読んでるんですけど。彼が映画の編集者と対談してる本なんですよ。昔の本だったんですけど、マイケル・オンダーチェがそんな本を出してることに気付いてなかったんですね。

それで読みながらずっと、なぜ僕はこの本に強烈に惹かれたんだろうってことを考えたんです。それとか例えば、今日会いたい人と会うっていうので、黒姫高原のやつも、野尻湖に行ってみたいというのと、ミヒャエル・エンデがすごく好きだったので行ったんですけど。基本は、土日の講演会って今は全部断っているんですね。

それで、じゃあ受けようというふうにするじゃないですか。そうしたら「なんで僕はこれを受けたんだろう?」って考える。本当にそういう理由かはわからないんだけど、それを考える。

読みたい本を読み、会いたい人に会い、その理由を考える

本(『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜』)の中で「doの肩書き」を使わせてもらったじゃないですか。それで、先ほど兼松さんにお会いした時に、「これ©︎ですよね」という話をしたんだけれども。

そのアイディアを誰が考えだしたのかというのは、僕の職業的には常にすごく大切にするんですね。本を書いている時に、(兼松さんに)1回連絡を入れようかなと思ったんだけど、すごくがっつり使うわけでもないのに連絡するのも、なんか自意識過剰だなと思って(笑)。

(一同笑)

WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 (NewsPicks Book)

でも、お会いするチャンスは、きっと近くにあるだろうなと。なにかのタイミングでお話ししたいと思っていて。今回のイベントもこれを受けることで、僕がそういうことをしっかりと伝えたり、そういうことで義理を果たすことを大切だと思う価値観なんだなと再認識する。そうすると、そこが自分のbeだなというふうに思うんですね。

そういう感じで、今言ったこの2つを考えて、それを文章に書きつける。今だとnoteで更新したりしているので、そうするとすごく記憶に残りやすくなる。

というので、その3つをやる。3つというか、なんで「これをやろう」と思ったのかを、本と人に関してはすごく好きなものだけ周りに置く。「なんでそれを好きと思ったんだろう?」っていう。先に好きだったからこの人を選ぶんじゃなくて、かなり直感的に選んじゃったのになんでだろう? というのを問い直し続けています。

兼松:ちなみに20代の時に読みたい本や会いたい人と、30代の今で変わってきているものってありますか?

佐渡島:それは今とても意識的に思っていて。32歳の時に起業して、そこからの5年間くらいは、めっちゃ経営者に会いまくっていたんです。経営するとはなんだろうということを、本当にすごく考えていたんだけど。今はめっちゃコルクラボの人と会ってるんですよ。

兼松:へえー!

佐渡島:コルクラボの人と食事に行ったり、コルクラボの掲示板でみんなと喋ったりということをたくさんしていて。それで、なにかを成し遂げた人が何を考えているのか、経営とはなんなのかをすごく知りたいと思ってたんですけど。やっぱり僕は、もう1回この時代のコンテンツを作りたいと思っている中で、多くの人の心の襞(ひだ)の中の感情の在り方がなんなのか。それを今、もう1回知りたいと思っているから。今のコルクの状態もそうなんですけど。

兼松:なるほど。

「beの肩書き」を見直すことが自分の救いになった

佐渡島:もう一度日本を代表する作品の編集をしたい。そのためには経営者の人の考え方や心を見てても、そういうことって気付けなかったり、アイディアを思いつかなかったりするんで。コルクラボは本当に多様な人がいるので、それがおもしろいですね。

兼松:社会のフラクタルみたいな。

佐渡島:そう。社会全体を見ていても情報が多すぎてわからないんで。

兼松:今は探求家的なものがそこに向いているということですね。土日なのに、本当に参加していただいてありがとうございました。

(一同笑)

義理深い人だというのがすごく伝わってきました。ちょっと時間が来てしまったので、最後に一言ずつ。中村君から最後の一言で、佐渡島さんで締めたいと思います。中村さん、今日いかがでしたか?

中村:ありがとうございます。今日、僕自身は「beの肩書きをもう1回自分の中で再考したいな」と思って参加したんですけど。僕は、けっこう自分のbeの部分に救われているんです。救われたんです。去年くらいですかね。自分でbeとかあまり考えずに突っ走ってきた事業をして6年ほどで、自分の中で不一致があった時期があって。

さっきの佐渡島さんの話じゃないですけど、社内外で自分のdoの部分の肩書きが独り歩きしちゃって。ある意味、はじめから経営者になろうと思っている起業家って、あまりいないと思うんですよね。「起業しちゃった」「創業しちゃった」から、経営者の道が進んでいくと思うんですけど。

その時に自分は代表取締役というロールを担っているものの、本当に何がしたかったのかということに立ち戻ったんです。その時にたぶん兼松さんの記事がポーンと出て、beと向き合おうと思った時に、数年前の活動家みたいなものが自分の中で影を潜めているなと思って。仕掛けるみたいなところが。

自分の中で1番テンション上がるのは、そこだなと思って。そこからちょっと吹っきれ始めたんですね。この1年で自分で再会したbeの肩書きに救われてきた1年だな、と思っています。それをもう1回越えていきたいなと。もう1回チューニングしたいなと思っているところなので、プチワークをしていきたいと思います。

兼松:拍手を。ありがとうございます!

(会場拍手)

無知の知を意識し続ける

佐渡島:先ほど僕の1番下のbeのところだと「庸平」というのがいいなと言いましたけど、同時に、常に無知の知を自分に言い聞かせています。無知の知という言葉は、週に何回も頭の中で思っています。

自分が何を知らないのかとか、何が見えてないのかとか、何が見えていると思ってしまっているのか。僕が例えば、出版業界出身だから当たり前と思っているとして。本当は当たり前じゃないけど、なにかを当たり前だと思っているんじゃないかとか。そういうことはすごく思っています。

兼松:ソクラテス。

佐渡島:そう、ソクラテス。すごいなって思いますね。

兼松:そっか。佐渡島さんはソクラテスなんですね(笑)。

(会場笑)

僕が空海で、佐渡島さんがソクラテス。はい、ありがとうございました。拍手をお願いします。

(会場拍手)

ちょっとオーバーしてしまいましたが、僕は今「ワークショップができる哲学者」になりたいと思っていて、おこがましいんですけど、自分が考えた言葉が©とか関係なくオープンソースで広がって、知らないうちに誰かの言葉になっていくのがとても嬉しいです。ですので、ぜひみなさんピンとくるものがあれば、beの肩書きのワークショップをやってみてください。

よかったらnoteにいろいろ書いているので、見ていただきたいのと。あと宣伝です(笑)。『beの肩書き』の本にいろいろなやり方が載っていますので見てみてください。中村君の話も載っております。ということで、改めてお二人に拍手をお願いします。ありがとうございました。

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