2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:お二人に1つ質問したいことがあります。昔は、人生のサイクルがだいたい1週間単位だったような気がするんですよ。例えば、フジテレビの月9を例にすると、(主人公は)「次は誰なんだ」と。その子が視聴率をとって人気者になると、毎週楽しいことをして、その1週間単位の月曜日の楽しみ、火曜日の楽しみ、水曜日の楽しみ、週末の楽しみというサイクルになっている。心地よい、ちょうどいいペースだったんじゃないかなと思っているんですけど。
今はデジタルで、さっき言ったYouTuberもV-Tuberも本当に雨後の筍のように現れてきて、毎日毎日何本と動画が回ってきます。そのバイオリズムが受け手にとって心地よいものなのか、はたまたちょっと無理して楽しんでいるものなのか、中毒の中でまやかしのようになっている状態なのか。
最近、ロングヒットってすごく少なくなってしまっています。短期的にはものすごくヒットしてスターみたいになるんだけれども、なかなか長期化しない。そこらへんが僕はものすごく疑問で、そういうことをお二人はどうお考えか聞いてみたいです。
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):今、サイクルが1週間単位というお話があったじゃないですか。中世について考えると、生まれたところから死ぬところまで、村の変化がほとんどないんですよね。
だから、寿命が延びた1つの原因には「見たい」という欲望があるんですよ。全然違う世界を見てみたいという欲求が、生きるモチベーションになりえていて……それで、今、ロングスパンのものがないというのは、あまりに立ち上がりが新しいから。iPhone自体が(出てきて)10年じゃないですか。
それで、ソーシャルゲームは、出たばかりのときに1~2年で終わると言われてたんだけど、モンストだって、パズドラだって終わってなくて、その時に言われていた予想は間違っていたわけですよ。結局、その一歩前の時代のテレビやドラマも、シーズン2が作られるものは、1,000に1個ぐらいしかなかった可能性はぜんぜんあった。
佐渡島:結局、ロングタイムになるコンテンツの割合は、変化しているかどうかはわからないというか、同じじゃないかなと思っています。ソーシャルゲームのロングスパンの場合も、ドラマや本で大ヒットした時よりも、影響力はぜんぜん大きくなっているということが一番大きい変化かな、と思ってるんですよね。
香田哲朗氏(以下、香田):僕は、消費させようと思えば消費させられるし、発信しようと思えば発信しちゃう。だから、まさにヨーロッパの高級ブランドがやっているように、いかに出す量を引き算していくか、コントロールしていくかというのが、昔は言われたことですけれど、けっこう大事なところなんじゃないかな、というところがあります。
あと、認知度と出荷量を逆行の目から見るほど、二次流通のかさがプレミアム化していって、認知度と出荷量を比例させていくと、どこかのタイミングで人気が落ちてしまうことがあるなと思っています。
デジタルなので、毎日いくらでもYouTubeであげていくことはできるけど、昔は週に2回とか。でも、お客さんはそれを求めて、毎日見る人がいるんだったら、そちらにいるというようになって。
佐渡島:毎日だと多すぎると、さっき(司会の)金山さんも言ってたじゃないですか。学校が同じだと生涯の友になれるけど、塾の友達は生涯の友になりにくいことを考えると、コンテンツは毎日のほうが、ロングスパンのものになりやすいんじゃないか、というか。
香田:そうですね。ゲームもまさに、毎日ログインしていただくためにどうするのか、日夜考えています。まさに3日後。入ってきた人と、真ん中で入ってきた人と、後ろから入ってきた人と、3日後まで行かせると、かなりその後に続くとか。例えば、人間の習慣みたいなものが3の数字で出てくるというのは、けっこう言われているので。
佐渡島:学校と同じ状況で仲良くなる時に起きることって、学校で会う、部活で会う、塾でも会う、合宿とかで会う、というので、違う場所で会うことがすごく重要だなと思っています。モンストのリアルイベントを幕張で見た時に、すごいなと思ったのは、ミクシィがカードゲームを人気にしているんですよ。
香田:リアルなカードゲームなんですね。
佐渡島:そうそう、リアルなカードゲームを長蛇の列にしていました。僕は、コンテンツをロングスパンにしていくためには、スマホでの接触回数も重要なんですけど、手触りがある接触回数と、手触りのある人間との接触回数みたいなのは、実は超大切じゃないかなと。すごい戦略だなと思って感動しました。
香田:うちもやっていますが、ゲームがリアルイベントをやっていくのも、まさにそのためです。まずは集めさせるということで、その中のファン同士のコミュニティをつくるのも、やっぱり画面でできる体験よりも、五感で与える刺激のほうがより深く残るから。
それでもう1個、エンゲージがあがったりする気がするし、口コミもしやすくなります。あえて、非効率だけど一人ひとりに深く刺さるようなことをイベントでやっている、ということですかね。
佐渡島:そうですよね。
司会者:今の話ってたぶん、この裏側にある、テクノロジーがもたらすエンタテインメント産業の文脈の地殻変動のようなことで、テクノロジーって効率よく顧客を囲いこんだりとか、刺激を与えようとすることがあるんだけど。
なかなか真逆のリアルな体験の相乗効果とか、接点の最大化って、テクノロジーがエンタテインメント産業の未来にもたらす変化によって、次のスターのあり方とかが変わってくるんじゃないかと思うんです。テクノロジーって、今、お二人はどう捉えているか、もうちょっと、お聞かせいただきたいと思います。
香田:メディアというところだと、もちろんスマホが出てきているとか、たくさんあると思うんですけれど、テクノロジーによって、例えば、金山さんも一緒にやられていた「LIMITS(リミッツ)」という、デジタルアートバトルがあるんですけど、そこで与えられたお題に対して、20分で答えて、お絵描きをして……お絵描きという言い方は変ですけど、どっちが良かったか、勝つとか。
例えば明日、まさに、eスポーツのカンファレンスがあったり。デジタルで人がする行為が増えれば増えるほど、それが上手な人がスターになっていくという構造は、出てくるのかなと思っています。まさに遊びもデジタルになってきて、ゲームのスターもいるし。それは昔の将棋や囲碁、麻雀もそうですよね。
そういうものが今はゲームだったり、また別のAIを使ったゲームもありますけれど。僕が思っているのが、実はYouTuberもみんなでやろうと思ったけれども、できなかったことが、後でモノマネになったり。縄跳びを跳ぶのもそうなんですけど、みんなでやろうとしたけど、できなかったことをYouTuberが代わりにやってくれているというのもすごく変わるだろうし。
ゲームをやる人が1億人いれば、その中にスターが10人くらいいるような。そういう中で、やる人のピラミッドって大きいのかなと思っています。それはテクノロジーを加えて、新しいものがどんどん出てきてるからだと思ってるんですけどね。
佐渡島:さっきのお絵描きも、知らなかったんですけど、超おもしろそうだなと思います。卓球とかもすごいなと思っていて、卓球のプレーヤーだけを映す限り、今までの行為と変わらないわけじゃないですか。でも、卓球をやっている人の熱狂具合って、上がってる。
現実におもしろみをどうかぶせるのかって、すごく重要だなと思っています。僕は、TBSの往年の名ドラマを作った人たちと仲良くさせてもらってて、その人たちが、ゴルフコンペをやるので、出させてもらったんですよ。そうしたら、そのゴルフコンペがゴルフのスコアだけじゃなくて、細かいチーム戦になってるんです。コンペが終わった後って、みんな順位発表して賞品もらって、終わりじゃないですか。
だけど、その場合、発表にも時間がかかって、ゴルフが終わってから2時間、ずっと発表なんですよ。ゴルフという既存のルールに、もう1個ルールをかぶせることによって、さらにおもしろくなるんです。でも、既存の何かに新しいルールをかぶせるって、今まで難しかったんですよね。
佐渡島:僕は自分で会社をやるようになって、例えば、経営という視点で人の性格を見てみたり、社会の動きを見ていたり、それぞれの産業、市場規模がどうなっているかを見たりしています。そうすると、世の中を見るのがおもしろくなるんですよね。だから、経営者が経営にはまるのって、最高のゲームとして見られるということなんですよね。
でも、ほとんどの人が、そのメタ的な視点を持てない。メタ的な視点をもって世の中を見るのはすごく難しい。それで、VR、MR、ARで、ある意味VRの中は、よりゲームがリアルになるという話だと思うんですけど、MR、ARって現実にメタをかぶせられるってことだから、おもしろさがぜんぜん変わると思うんですよ。
香田:ちなみにさっきの卓球のMRなんですけど、ゴルフは、ボールを打ってカップに入れるという種目じゃないですか。でも今、アメリカで流行っているのは、トップゴルフという、打ちっぱなしを……昔よくとんねるずの番組でやっていたような新しいゴルフの遊び方みたいなもの。
ああいう感じで、1つのカップにボールを入れるというよりは、それぞれのサークルがあって、そこに光が当たって、ここに入れたら100点、こっちに入れたら50点、と的当てゲームのようにアレンジした遊び方があります。
そういった文脈の中で、今まさにうちで作っているのはダーツなんです。ダーツのルールって、ちょっと小難しいところがあるじゃないですか。でも、投げて的に当てる行為だけを抽象化すると、今度は動いているボールに、風船を当てるようなものがデジタルでできたりします。友達の顔にさしたり、それをマッチングに使ったりということで、抽象化して、デジタルに拡張して遊びにする。そういうものは、新しい取り組みとしてやっていたりしますね。
佐渡島:へえー。超おもしろそうですね。
香田:まさに佐渡島さんがおっしゃったように、ルールももう一段階上に抽象化している。卓球だったら、ボールをそれぞれが打ち返すとした時に、別の使い方がないかな、というのは、MRとARですごくやりやすくなってる気がします。
司会者:今っておもしろいんですね。サッカーのスターは、仮に日本だったら、Jリーガーや日本代表ですけれども、そこにフットサルで有名な選手がいて、フリースタイルサッカーというスターがいて、という。
今まで卓球のスターは卓球のスターでしかなかったけど、「PONG!PONG!」ができたら「PONG!PONG!」のスターが生まれるみたいに、ダーツも進化することによって、新しいストリートダーツプレイヤーが出てきて、新しいルールが生まれてくる。そういう感じなんだろうな。
佐渡島:例えば、サッカーとか、ラグビーとか、アメフトとか、今の世の中に存在するスポーツってぜんぶ、運動神経の良し悪しによって、できることが変わってくるじゃないですか。
だから、スポーツは民主化されていないんですよ。一方で、eスポーツは、今までのスポーツだと活躍できなかった人が活躍できる。スポーツの民主化と言えるかもしれない。
サッカーのプレー人口が多いのは、発展途上国でも、みんなが始めることができるのが大きい。テクノロジーの発展で、もっとスポーツも民主化されて、いろいろな人が楽しめるようになるのだと思います。
最近の印象に残っているエピソードとして、僕らがいろいろ考えていることを話した時に、著作権の専門家に「それは絵の具の発明と一緒だ」と急に言われたんですよ。
(会場笑)
香田:絵の具ですか?
佐渡島:はい、絵の具。もともと数百年前は、絵の具を作るところから絵を描くことが始まったんです。絵の具の作り方がわからない人は、絵を描こうと思わなかった。絵の具の青色を作るためには、青色を作るにはどこどこの岩を掘って、ということを知らなきゃいけないわけですね。
絵の具の発明で、絵の具を作れない人でも描けるようになって、新しい描き方に挑戦する人が現れて、印象派が出てくる。技術が民主化されると、その先には、新しい楽しみ方が必ず待っている。eスポーツだけじゃなくて、物語を作ることも、もっとぜんぶが民主化すると思うんですよ。
香田:まさに、コルクでやられている漫画を描くことって、その漫画の背景には物語がありますよね。もっと言うと、キャラクターじゃないですか。それこそハリウッド(映画)も、だいたい何十分でなにが起きると決まっている話ではあるけど、それがあんまり民主化されていないし、知られていなかったりしている。そういうものも、例えばデジタル化して、ここでこういうのを描いたらピッとできるようになるものって、これからできたりするんですか?
佐渡島:それをやりたいなと思っています。ある種、僕が持っている編集技術は、民主化されていない。僕が持っている知識は、古いコンテンツの作り方の中でのルールな気すらするんですよ。それで、そこをぜんぶゼロベースで考えて、これからの時代に当たるものってなんだろうと考える必要がある。そこに挑戦するクリエイターの中に次世代のスターがいるんじゃないかなって、今、考えています。
だから今、僕が持っている知識のほとんどがある種、無意味な知識になる可能性があると思いながら、いろいろなことを考えているんですよね。
司会者:なんだか、新しいブームがポッとテクノロジーで出てきて、デジタルの領域の中から新しいスターが生まれるような話になっていると思うんですけれど、すごくおもしろいですよね。テクノロジーによってもたらされる新しいルールの中で、新しいスターができるようなことだから。
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