食料生産の今後をどう思うか

司会者:続きましてお2人目の質問です。ジャックと晟矢との会話になります。まず葦苅さん、簡単にビジネスとリサーチの内容、自己紹介をお願いします。それからジャックさんに質問を出してください。

葦苅晟矢氏(以下、葦苅):理工学の学生ですが、昨年「ECOLOGGIE」という食料技術の会社を始めました。

ECOLOGGIEは世界の食糧危機に対して食料をより提供しやすくします。社会がより栄養分の高い食料を作れ、それを入手しやすくするのです。

そんな食料のソースは何か? 答えはこの白衣にあります。コオロギなどの昆虫です。私はコオロギが好きです。コオロギと一緒に生きてきました。3年間部屋で一緒に生活をしているんです(笑)。

(会場笑)

でも、昆虫は食料としても栄養価が高く、エコフレンドリーでおいしいんです。国によってコオロギを食す国もありますが、サプライチェーンや生産性が必ずしも良くない問題があります。

そこでスマートな昆虫ファーミングの技術を開発しています。この生産技術を活用することで、世界中どこでも昆虫を育てることができます。昆虫という栄養があり、安価で、エコフレンドリーな食料を提供することができるのです。

今日は本当にお会いできて嬉しいです。質問をさせてください。世界の食糧危機は本当に大変なもので我々は生涯この状況が続くでしょう。ですから、食料生産の今後をどう思いますか? とくに昆虫をタンパク源とする考えはどうですか?

世界的な食料問題について

ジャック・マー氏(以下、ジャック):非常に機知に富んだご質問ですし、トピックそのものも深いものだと思いますが、この若いお2人は世界が抱えている将来の問題を解決しようしているんですね。

会社を大きくしたいと思うならば、より大きな問題を解決すれば会社も大きくなる。でも大きな会社は責任も大きいんです。それは時価総額で大きい、大きな資産があることではなくて、責任そのものが大きい。だから大きな会社と言う。

こちらはデータセキュリティ、こちらは食料の安全保障の話。まさにそうだと思います。我々は長生きをしたいと思っています。日本はとっくに長寿命の国家ですが、30年先にはデータとテクノロジーのおかげで120歳まで生きるかもしれないと言われています。

120歳まで生きたときを想像してください。世界の人口は今70億ですけれども、150億くらいの人口になりますね。でも世界にそれだけの胃袋を満たす食料のリソースはないと思うんです。水もない、環境も足りない。そういうチャレンジ、大きな問題です。

アフリカでもそのほかの開発途上国ではそういった問題を今抱えているわけです。日本はそれほど食料問題を抱えていないかもしれません。でも考えてください。世界には本当に食料の問題があるんです。食料のセキュリティ、安全保障という議論がよくされますが、次の10年、20年でこれが本当に大きな問題になるでしょう。

ただ昆虫を食べる話ですけれども、これはずいぶん勇敢ですね(笑)。わたしはちょっと考えたこともないですし、専門家だとも言えないので知識がない。コオロギなどの昆虫はどちらかと言うとペットとしての扱いで、パートナーとして一緒にいたいですね。食べ物としてはどうだろう?

でも今日の話は非常に興味深い話なのでちょっとリサーチをしてみます。非常にクリエイティブだと思うので、あなたのチームに参加してもうちょっと聞いてみたいと思います。

ただ栄養源として昆虫を食べられるかどうか。どうでしょう? エビも昆虫と考えるならば、エビは受け入れられますね。

大学の研究をビジネスにするには

葦苅:2つ目の質問ですけれども、インターネット以外の最先端技術にも多くのお金を投資していますが、大学の研究をビジネスにするのにもっとも大事なポイントはなんでしょうか。

ジャック:とても良い質問だと思います。私は中国の大学で6年間教鞭をとった経験もありますので、大学の先生方は教育にむしろフォーカスすべきです。研究は必ずしも研究資金がないからではなく、いかに成果を出せるかが大事なので、需要がマーケットにあるかを見るべきです。我々はむしろ、成果を出すということを主眼にしています。

大学の研究室は、なかなかうまくいってないと思います。創業して間もない分野、あるいはまさに今芽生えようとしている分野は研究室の中にあるかもしれませんが、今は大学の外でもどこでも知識が偏在しています。

大学だけに知識が集中する時代ではありません。むしろ、研究者が我々のような会社をフォローしていただく。我々はどこに投資をしたらいいのか、どこに需要があるのかわかっています。

ただ大学の一部の先生方はそういったニーズがわからないので、頭の中にあるアイデアをビジネスにしようとしています。つまり研究室から出たアイデアをビジネス化することは、とても難しいんです。

どちらかというと、ビジネスが引っ張っていって、ビジネスの推進を支援する研究を大学の研究室がすべきではないかと思います。私個人の考えで、こんなに先生方がいる前でこんなことを言うのは恐縮なんですが、あえて率直なことを言うと、本当はそうじゃないかと思うんです。

大学は非常に大きな貢献と努力を重ねているわけです。ただ世界は今やあまりにも多くの人材の育成ノウハウと知識が大学の外にあります。大学発の研究をベンチャーにするのは難しいと思います。ですので、大学のプロジェクトをサポートしながら、大学が大きくなり、学生がたくさんきて、先生が満足できる。

学生みなさんが博士課程から、例えばビジネスに打って出るのは、とても懸命だと思います。そこから博士課程に戻っても良いですよと。冗談半分ですけど(笑)。

マー氏の話術はどうやって身につけたのか

葦苅:ありがとうございます。非常にユニークな考え方ですね。話し方がユニークなんですけど、どういうふうに身につけたんですか。3番目の質問です。

ジャック:言われてみるとそうですね……。良いスピーカーで、「話し方がうまいね」と人によく言われます。私は考えるのがむしろ得意だと思います。人とは違う着想や発想を持っているのではないでしょうか。

話がうまいわけではないんです。中国語もうまくないし、英語も通じるかもしれませんが、先生から見てどうでしょう?

日本の先生や中国の学生もそうですけれども、読むことはできても話せない。どうしても臆してしまう。シャイである必要はありません。人に自分をわからせるためのコミュニケーションなので、臆せず話すべきです。

少なくともドナルド・トランプが中国語を喋るより、自分はうまいと思ってるんですよ。そう思いませんか? 問題じゃないですよね。大丈夫ですね。

(会場拍手)

つまり、私の仕事は人を説得することですから、どういう言葉を使うかより、大事なのはどういう考えを自分が持っているか。それをしっかり伝えることです。その熱意です。なので、話し方は美しくないと思います。

違う着想点をみなさんに紹介したいと思っています。私たちのチーム、それから会社の人が現場で仕事をやってくれますから、私は人と考えを共有すること、シェアするための話をする役割を受け持っています。

まず大事なのは、裏表なく本当のことを言うこと。それから自分の考えを伝えること。ジャック・マーが何を考えているのか、それはみんな知っています。

つまり新聞で読み、書いてあることを言うだけでは何も伝わらない。ほかの人の時間を無駄にするだけで、得るものはありません。大事なのは、人の時間を大事にすること。

人が話を聞きにきているのは、それだけ時間をかけてくれてるわけですから、自分だけのユニークな着眼点を話さなければいけません。長く話を引っ張る必要もありません。

傲慢ではなく、ポイントにズバッと切り込む。そういった話し方が大事です。よろしいでしょうか。

(会場拍手)

ポストVR・ARを研究

司会者:ありがとうございました。それでは、3番目になりましたが、決して女性だから3番目ということではありません。質問をどうぞ。簡単にご紹介と、質問をお願いします。

玉城絵美氏(以下、玉城):今、早稲田の准教授をしております。

「Happy Hacking Life」の略称を表す「H2L」という会社の共同創業者です。得意分野はコンピューターサイエンスです。

私の得意分野はポストVR、ポストARです。高臨場感が味わえるので、ボディシェアリングと呼んでいます。VR・ARでいろんなシェアができます。

ビジョンと視覚だけではなくて音楽。音響もシェアできます。身体や手の仕草もシェアできます。多くの経験もシェアしたいと思っています。

最近ソーシャルメディアもいろんなものが共有できるようになりました。写真などを撮って見てもらうことができます。例えば、今ジャック・マーさんがこられたときに、写真を撮った学生の多くは、SNSで共有するでしょう。

つまり、経験を共有するということです。私のビジョンでは、手の仕草から身体の仕草をシェアしたいと思います。美しいビーチにロボットを置いて、この音を聴きとることができます。

例えば、我々の会社のサービスでは打ち寄せる波際の音をどこでもシェアできます。そして明日、実際に新しいプロダクトの最初のVRが出ます。これは手の仕草、ハンドジェスチャーをシェアするためのものです。

2020~2025年を目処にして、サービスを立ち上げようと思っています。いろんな経験の共有が、VR・AR上でできるように。山に登って登山したり、あるいは宇宙で遊泳したり、あるいは高齢者の方や若い方、年齢を問わずシェアリングができるようにしたいと思っています。経験を共有できることは、アリババではどう思っていますか?