スタートアップの始め方

サム・アルトマン:CS183B教室へようこそ! 私はサム・アルトマン、Yコンビネーターの社長です。9年前はスタンフォードの学生でしたが大学を中退してビジネスを始めました。そしてここ数年は投資家として活動しています。

YCは過去9年間、多くの人にスタートアップの始め方を実践的にお教えしてきました。ほとんどのアドバイスは各スタートアップに特化したものでしたが、一般的にどんなスタートアップにも共通することが全体の30%ありました。このクラスでは、その30%についてお教えしたいと思います。スタートアップを始めるのに必要なことの30%に過ぎませんが、少しでも皆さんの役に立てばと思います。

YCで同じ内容の講義をよく開催していましたが、それについて特に記録が残っているわけではありません。今回の授業は、初めての公式な授業です。何人かゲストスピーカーをお招きして、YCで講演していただいた同じ内容でこのクラスでもお話していただきます。

私達は現在725の会社へ投資しているという実績がありますので、このクラスでお話することも皆さんの役に立つことと思います。今は全てのスタートアップに投資することはできませんが、皆さんへ有益な情報を広くお伝えできればと思います。

卓上の理論ではなく実践的アドバイスを

私自身はこのコースの12あるクラスのうちの3つだけ講義を担当します。全てのゲストスピーカーは、YCも含め10億ドル以上価値のある会社の立ち上げに関わってきた人々です。つまり、このコースの授業は卓上の理論を展開するのではなく、実際に会社を立ち上げてきた人々の経験に基づきます。

このクラスは急速に成長し、最終的には大きなビジネスに成長するようなビジネスを始めたいと考える人に向けて構成されています。それ以外のケースにはあまり当てはまらないアドバイスが大半です。

最初に警告します。ここでお話するアドバイスを大企業やスタートアップ以外のビジネスで適用しようとしても大抵の場合上手くいきません。しかし、スタートアップ以外の機会を狙っている人でも興味を持っていただける内容です。スタートアップは未来のビジネスを担うので、どんな方もスタートアップについて理解しておくことは必要だと思います。

しかし、スタートアップとスタートアップではない会社とは大きく違います。今日、そして次回にわけて私がスタートアップで成功する為に必要な、大きく分けて4つのことについて簡単にお話します。このコースが回を重ねるにつれ、ゲストスピーカーの講師がそれらをより具体的に展開して話をしてくれる予定です。

スタートアップで成功するための4つのポイント

早速ですが、その4つのポイントとは、素晴らしいアイデア、素晴らしいプロダクト、素晴らしいチーム、そして実行力です。これら4つはそれぞれ重なるポイントもありますが、皆さんにポイントを理解してもらう為に4つに分けました。

たとえこれらのポイントを押さえても失敗する場合もあるでしょう。結果とは、アイデア×プロダクト×実行力×チーム×運、のように表すことが出来ます。そしてこの式の中の「運」となる数字はゼロから10万まで未知数です。

文字通り、それくらい誰にもわからないことです。しかし、皆さんがコントロールできる「運」以外の4つのポイントをしっかり突き詰めれば、成功する確率が上がります。

スタートアップが面白いのは、成功するチャンスが誰にでも平等であるという点でしょう。若く経験が少ない人でも、年を重ねて経験豊富な人でも、皆に平等なチャンスがあります。特に面白いスタートアップのポイントは、お金がない、コネがないという一般的には不利な状況が、実はスタートアップを始める際には有利に働くところです。

絶対に成し遂げたいことがあるか

どのようにスタートアップを始めるかについてお話する前に、なぜスタートアップを始めるべきか、についてお話したいと思います。この授業を開講するにあたり、少し迷いがありました。

なぜなら、ただスタートアップをやりたいというだけで始めるべきではないからです。スタートアップよりも楽にお金持ちになる方法は他にもあります。スタートアップを始めた人は皆、口をそろえてこう言います、「こんなに辛いことだなんて思ってもみなかった。」。

これ以外に自分のやりたいことをやる術がない、これがやりたいことをやるためのベストな方法だ、という場合にのみスタートアップを始めるべきです。

絶対に成し遂げたいこと、何かに情熱を持つことが大前提です。スタートアップを始めることについて考えるのはその次です。実際、YCで開講するクラスもこれを前提としています。

今日の講義の後半でFacebookのダスティン・モスコヴィッツから、「なぜスタートアップを始めるのか」について詳しくお話があります。今回のこのコース開講に、多くの方が注目してくれた事実を嬉しく思うと同時に、それならばしっかりと「なぜスタートアップを始めるのか」について皆さんにお話せねばならないと考えている次第です。

最優先すべきはピボットではなくアイデア

まず最初に、4つのポイントの中の「アイデア」についてお話します。最近ではアイデアはスタートアップを始めるのにあまり関係ないと認識されている風潮があります。更に言えば、どんなスタートアップを始めるかについてじっくり考える時間を費やすことはバカらしいとも言われます。

なんでも壁に投げつけてみて、どんなものがそこに定着するのか試してみる、上手くいくか、やる価値があるのかについて考えないでとにかく始めてみるという考え方が主流のようです。

ピボットは素晴らしい、ピボットがあればあるほど良いものだとよく言われています。これが完全に間違っているわけではありません。思いがけないきっかけが成長のチャンスに繋がることももちろんあります。

そして、プロダクトが実際にユーザーの手に渡るまでわからないこともあります。素晴らしい実行力をもって結果に繋げることは、素晴らしいアイデアを出すことに比べて少なくとも10倍重要で、100倍難しいです。

しかし、それが過剰に評価されているのも事実です。悪いアイデアが悪いことに変わりはなく、ピボットをもてはやす今日の社会は準最適だと感じます。素晴らしい実行力があったとしても、アイデアが最悪であれば成功することはできません。

もちろん例外もあります。しかし、成功している素晴らしい企業の多くはピボットではなく、素晴らしいアイデアから始めています。

成功しているピボットは、安易な方向転換ではなく創設者がやりたいことに焦点を絞ってやっています。Airbnbは当時ブライアン・チェスキーが家賃を払えなかったけれども、他人に提供できるスペースがあったからこそ始まりました。

しかし、一般的にはピボットは大きく成長しません。私も昔はアイデアは二の次だと思っていた口ですが、今はその考え方が大きな間違いであることをよく理解しています。