パープルリボンってどんなもの?
阿部知代氏(以下、阿部):みなさま、こんにちは。平日の午後に、このようなテーマに、ご興味を持ってお集まりいただき、本当にありがとうございます。ただいまより、渋谷区アイリス講座特別版シンポジウム「どうすれば『伝わる』?パープルリボン~渋谷から全国へ~」を開催いたします。
まず、このアイリスの講座についてご案内します。「アイリス」とは、渋谷区の男女平等・ダイバーシティセンターの名前です。渋谷区において、男女平等と多様性社会の実現に向けて、計画の推進・理解の裾野を広げるための啓発事業などを行っている施設です。渋谷区文化総合センター大和田の中にあります。
アイリス講座は、ジェンダーとセクシュアリティに関する問題の解決、そして多様性社会の推進を目的とする啓発事業です。
今年度のテーマは「女性と性的少数者のライフデザインを応援する」で、合わせて10の講座を開催しています。その中で今回のテーマが、「どうすれば『伝わる』?パープルリボン~渋谷から全国へ~」。
こちらはアイリス講座の特別版として開催いたします。「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA(DDSS)」のご協力により、ラフォーレミュージアム渋谷で開催することとなりました。
「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」についてもご案内します。これは「ダイバーシティ・イノベーション・サステナビリティ」をキーワードにした、基調講演とパネルディスカッションという構成で、都市開発、企業経営、教育、政治、スポーツ、マーケティング、エンタテイメント、テクノロジー、デザインなど、さまざまなカテゴリーの有識者を招聘し、ダイバーシティ社会の現在と未来についての理解を深め、可能性を提示。エキビジョン会場では、ユニバーサルデザインや次世代の福祉技術、テクノロジーサービスなどの展示を行い、新たな学びの場、人脈形成の場を提供しています。
みなさんピンクリボンやブルーリボンはお聞きになったことがあると思うのですが「パープルリボン」を聞いたことのある方は?
(会場挙手)
やはり今日は意識の高い方が多いですね。恥ずかしながら私は、この仕事をするまでパープルリボンが何を意味するか知りませんでした。
パープルリボンは女性に対する暴力根絶運動のシンボルです。内閣府によると「世界の子どもや暴力の被害者にとって、世界をより安全なものにする」という目的で、1994年にアメリカのニューハンプシャー州の小さな町で始まりました。近親姦やレイプのサバイバーによって生まれた運動なのだそうです。紫色のリボンであればどんなものであってもよく、身につけることでパープルリボン運動の趣旨への賛同を表明することになります。
個人間の暴力・虐待に関心を呼び起こすとともに、暴力のもとに身を置いている人々に勇気を与えよう、という願いから、現在この運動は世界40ヶ国以上に広がり、国際的なネットワークに発展しています。いろいろな布やリボンのバッジを付けることにより、女性に対する暴力を許さない社会を目指そうと多くの団体が活動しています。
日本では11月にキャンペーンを実施
阿部:日本では内閣府が「暴力は対象の性別や加害者と被害者の間柄を問わず、決して許されるものではありません。
とくにDV、性犯罪、買売春、人身取引、セクシャルハラスメント、ストーカー行為など、女性に対する暴力は、女性の人権を著しく侵害するものであり、男女共同参画社会を形成していく上で克服しなければならない重要な課題です」と呼びかけ、毎年11月12日から25日までの2週間は、女性に対する暴力をなくす運動の期間となっています。今年は初日となる11月12日(日)に点灯式が行われ、東京タワーや全国各地の建物などが紫色にライトアップされます。
申し遅れましたが本日の司会を務めますフジテレビの阿部知代です。12日は弊社フジテレビ社屋もパープルにライトアップされます。
(会場拍手)
ありがとうございます。日頃LGBT支援活動などを行っているご縁で今日の司会を仰せつかりました。とは言えパープルリボンの意味も知らなかった初心者なので、知識レベルはみなさまよりずっと下です。今日は学びたいと思います。
現在報道局に所属しており、今年は刑法が改正されて性犯罪への罰則が強化された、というニュースも取り上げました。最近では(神奈川県)座間での殺害事件。被害者9人のうち8人が女性でした。彼女たちは誰にも相談できなかった悩みや自分の心の内のものを共有してくれると思えた人に、ネット上で出会い、付いて行ってしまったのではと思います。
今日のテーマと直結するような事件が直前に起こってしまったのは、本当に不幸なことです。この事件についてもパネリストの方からいろんなご意見を賜りたいと思っております。
AV出演強要の被害者支援「ライトハウス」
阿部:今日はまずはパネリストの方お一人ずつからお話いただきます。 お二方からは加害と被害の構造、性被害の現状、団体の活動などについてそれぞれお話しいただきます。
まずご登壇いただくのは藤原志帆子様です。NPO法人・人身取引被害者サポートセンター「ライトハウス」代表でいらっしゃいます。アメリカの反人身取引団体での勤務を経て、2004年に日本で人身取引被害者の支援を開始されました。
相談の窓口を運営し、売春やポルノ出演の強要・性的搾取を目的とした人身取引被害の発見と救済事業を行うなど現場でのご支援の傍ら、児童施設や学校教員向けの研修講師としてもご活躍中です。
2008年には母校のアメリカのウィスコンシン大学より名誉卒業生賞を受賞。2012年には『AERA』の中で「日本を立て直す100人」にも選ばれました。
ではこれより、藤原様のお話を20分間お聞きいただきます。まずは活動内容をご紹介するビデオからご覧ください。
(動画が流れる)
(会場拍手)
「性の商品化の中での暴力」をなくすために
藤原志帆子氏(以下、藤原):今、見ていただいた動画は、実は渋谷区のみなさんに協力していただき制作しました。スクランブル交差点の前のツタヤのビルなど、渋谷区に約6~7ヶ所あるオーロラビジョンで何度か流していただいたものです。昨年度もご協力いただきました。
今、相談が一番多いのが、ご覧いただいたアダルトビデオ産業で、無理やり出演させられている女性・男性、両方の若者です。昨年だけでも100人の方から相談を受けました。
そういうスカウトが行われていたり、アダルトビデオのプロダクションが一番多いのが、渋谷区なんです。渋谷区の持つ求心力や魅力を使って、「モデルしませんか」と誘いをかけているんだと思います。渋谷区と新宿区は、リクルート・スカウト会社の拠点となっていて、その中には違法なことをする会社も出てきているので、区役所の方は危機感を感じています。
渋谷区の区役所のみなさんや区議会議員の方々には、本当に応援していただいて、国への要望書を全国でいち早く出してくださいました。そうして今、国が動いております。
アダルトビデオ問題は解決に向けて、やっと動き出しています。このような日本で起こっている人身取引、アダルトビデオの問題だけではなくて、娯楽産業の1つとなっている売春や風俗産業、AVなどの性的搾取に関する相談がすごく多いです。
ここがライトハウスの専門性のある部分になっているんですが、「性の商品化の中での暴力」をなくすために、ライトハウスは13年間、東京で活動しています。渋谷に事務所を移してから3年目になるんですけれども、本当にいろんなところで、渋谷区のみなさんにはお世話になっています。
先ほどのとおり、全国で被害があり、アダルトビデオもここ2年半で被害の相談が300件に登ります。そういう望まないかたちでカメラの前で性行為をさせられたという相談の中では、東京都出身の方は10人以下もいないのですよね。
ほとんどは地方出身者や、進学や就職のために東京に来ている人です。例えば、たまたま、ディズニーランドに来るために東京に来たという女の子・男の子たちが被害に遭ってしまっています。渋谷だけではなく、いろいろなところでの被害が、今やっと明るみになってきました。
私たちの専門外にはなるんですが、さまざまな弱い立場に置かれやすい方たちが、「労働搾取」「臓器の売買」というかたちで、支配されて、利用されて、搾取されている。
その中でもライトハウスは、経済的にも一番、搾取した人間に効果をもたらす「性的搾取」をなくすために活動しております。
「人身取引」は難しい言葉で、わかりにくいと思うんですが、ここを私たちは解決したい。とくに、法律を作るべきだと思ってるんですね。守る手段がない。法律にも書かれていない。こういった被害に遭う子たちのために、その対策をやっていけたらと思っております。
深刻な事態となっている児童ポルノ
藤原:先ほどの性的搾取のスライドにもありましたが、とくに子どもの性の商品化は、渋谷もそうですが日本全体ですごく深刻です。子どもの児童ポルノ、具体的には子どもたちの虐待の記録が動画や画像になっている。
非常にここでは言いにくいような暴力が、高校生や中学生だけではなくて、本当に小さな赤ちゃんにまでおよんで、いろいろなことが起こっている。この「暴力の記録」の児童ポルノですけれども、最近まで日本は、それを自分の快楽のために所持することがOKだったんですね。
2014年に処罰化され、2015年に実際にそれが施行されました。諸外国から10年遅れましたね。警察のみなさんも、あの人間とあの人間が児童ポルノのコレクターであり、自分で作っているとわかっていても、作る瞬間や、頒布する瞬間をキャッチしないと、なかなか処罰できない。本当に日本だけがすごく遅れている時代が続いていました。
それでもやっぱり改正に含まれなかったのが、「着エロ」という問題ですね。4歳や7歳といった低年齢の児童が、紐のような水着を着せられる。こういったものが2014年の法律改正では対象外とされている。
このような着エロから、お話をここではしませんが「JKビジネス」をやめられない、といった相談であるとか。子どもたちの相談は、なかなか声が入りづらいです。16歳、17歳の高校生も含めて、子どもたちは、「自分が被害にあったきっかけを作ってしまったんだから」「自分が自ら知らない人とTwitterで話をしてしまったんだから」と、自分を責めてしまいます。
「アダルトチャットの強要」についても高校生からの相談もありました。このようなかたちで子どもからの10件以下なんですけれども、今年に入って2倍、3倍に増えています。やっとライトハウスの相談が伝わってきていると思うんですが、それでもやはり小さな数です。
その中で顕著に増えているのがアダルトビデオ被害で、11月の段階でも80~90件ほど来ています。男性からの相談もあるんですね。アダルトビデオへの強制出演も含めて、20人に1人は男性からの被害の相談です。
相談を受けた時に必ずおっしゃってくださるのが、「すみません、この電話、自分が男性なんですけどお話ししていいですか?」と聞いてくれるんですね。LINEでもそうです。
メールでも、「男性なんですけどいいですか?」と最初にメールが来て、「もちろんですよ」と言って、やり取りの中でやっと被害を話してくれることもあります。
私たちももう少し、さまざまな方が相談しやすくなるようなメッセージの打ち出し方をする工夫が必要だと思っております。このようなかたちで相談を受けています。
藤原:渋谷に特化した事例を1つだけご紹介します。先ほどビデオにもありましたが、アダルトビデオの相談がすごく多いんですね。
この問題に触れるまで、アダルトビデオは大きなお金がもらえて、それから実際に働いてる方たちの権利も守られ、それなりにメリットがあるからみなさん出ていると思っていました。
無理やり出演させられたレイプとも言える記録が、声を上げた方だけでも300人いて、それが何千本という数で「作品」になっている。それから「モデル」と言われてたのに、その場で裸にされて、今度はその裸の写真を元に「戻ってこい」と言われて。
それから1日かけてビデオを撮られる、ということを何度も何度も相談の中でお聞きすると……。もうこの業界、ずっと前からこういうことが行われていたのではとすら思えてきまして。
本当にキラキラ輝いてるAV女優さんとかは、今テレビにも出ていると思うんですけども。私たちのところに来る方たちはそういう有名な方もいますが、「普通」って言葉は変ですが、大学生や専門学校生から、看護師さんだとか保育士さんとか、普通の生活を最近まで送っていた方です。
たまたま声をかけられて連れてかれたところがモデル事務所。でもモデル事務所と書いてあるけれど、それはぜんぜん嘘で。身分証明書と自分の顔をビデオに撮られたりして、今日はこういうモデルの契約をして、ウチのプロダクションに所属して、「これからオーディションとかがんばろう」と言われて……。何のオーディションかは言われないんですけれども、「仕事が決まったよ」と言われ、それはアダルトビデオなんですよね。
AV出演強要、Mさんの場合
藤原:大学生のMさんも、もともと出身は地方都市なんですけれども、東京に住んで1年。渋谷に遊びに来てヘアカットのモデルを頼まれたりとか、そういうスカウトにはもう慣れてるわけですね。友達もみんなそう言われてるし、スカウトをされても「はいはい」と言って、断ることは慣れてきていた。
なので「モデルの仕事をしない?」と声をかけられて、「今日も無視しよう」と思っていたら、このモデルのスカウトの方が自分と同じぐらいの子で、しかもすごく爽やかな男性。20分、30分追いかけてきて「話を聞いて!」と言ってくる。なので「まぁ話聞いてもいいかな」と思って、可哀想に思えてきて、事務所に行きます。
そこで上半身裸の写真と、身分証明書、学生証のコピーを取られます。「モデルだから仕方ないのかな」って本人も思っていたし、「自分の体の線を見せないと」「自分のポートフォリオを作らないとプロダクションは自分を売り込めないから」と言われて、裸の写真も了承して。綺麗なお洋服も着せてくれたので、契約書へのサインも含めて了承します。
了承するんですが、契約書を見てみると「AV出演契約書」と書いてあるんですよね。その時にもうサインをしたくありません、って必死に抵抗するんですけども、入り口の周りにいる大人10人に囲まれてしまっている。密室に閉じ込められて、契約書にサインをするまで帰してもらえない。
事務所に来てからかなり時間が経ち、もう夜の9時、10時を回っている。明日も学校があるし、もうクタクタになってしまう。「大丈夫だろうか」と思いながらもクタクタにくたびれて、正常な判断もできないままサインをします。
それから数日後に仕事が決まり、120本近くものアダルトビデオに出演することになります。「120本」と聞いたら、自分の意思なのではないかと思われる人もいるかもしれません。
本人の中では、初めての撮影は記憶が全部飛んでるんですね。初めての撮影の次の日に、また次の撮影。1週間に3本分撮ってるんです。
3本の撮影が済んだら今度は、それから1ヶ月後に、どんどんビデオになり販売されていくんですが、販売のためのさまざまな宣伝活動に入っていくわけですね。
考える間もなく次々とスケジュールを入れられる。それに「行きたくない」と言うと、もうそんなことは許されなくて、一人暮らしの自宅の前で車が待ってる状態なんですね。
「とてもかわいい女子大生がデビューしました」というかたちで、Mさんの高校時代にがんばっていた部活動の内容や出身地など、かなり彼女の本当のプロフィールに近いかたちで売り出されて、人気女優さんになります。でも本人がもらった金額は微々たるものです。
東京の生活2年目で本当だったら彼女はいろんな夢があったと思います。本人は私たちと一緒に、撮影されたもののほとんどの部分を販売しないように、弁護士さんを使って削除してきたんですけども、なかなか不法にアップロードされたものが消えない。
消えないからこそ彼女が「女優さんになったよ」っていう噂が広まっているので、彼女自身すごく苦しんでいて……。ここ数ヶ月、連絡が取れなくなってしまって、弁護士さんとの交渉も滞っている。
このような、半分成功したけども、まだ成功していないような削除の問題であるとか、彼女自身の人生を狂わせてしまう出演の強要が、今すごく増えています。
日本は「人権意識の低さ」が問題
藤原:ライトハウスはそんな中で、私も含め相談支援員がボランティア含めて、今10人~15人ぐらいいます。2人担当で1人の相談者に寄り添い、相談の場所としてなるべく渋谷の会議室を借りて、実際に直面で会ってお話を聞きます。時には緊急のケースで札幌や福岡などの地方に飛ぶこともあります。
さまざまな社会制度を使ったり、法律家・弁護士さんを雇ったり。その弁護士さんを雇うのも、若い被害者さんたちが自分でやらなきゃいけないんですよね。そのようなハードルもありますけれども、時には寄り添い、時には一緒に考えて、親御さんと繋がったり、行政と繋がったりしながら、長い時で2~3年関わっていきます。
次にお話するBONDさんと違って、私たちはシェルターというか、緊急保護施設を持っていないので、さまざまな保護施設を借りながら、なんとかやっております。
ライトハウスがいろいろな活動を通して思うのは、日本はこういうパープルリボンに関わるような人権侵害や、女性や若い男性も含む暴力や、それから性産業で行われているような人権侵害がなかなかなくならない背景として、やはり「人権意識の低さ」があると思います。性産業でどんなことが行われているか、そこで起きている暴力を許容してしまっている背景。
自己責任論が性被害者を苦しめる
藤原:それから、とくに子どもに対してでも言われるというのは本当にびっくりしてしまうんですけど。「自分で売ったんだから、自分で危ない目にあって、自分の責任だよね」という自己責任論。
JKビジネスで働いた子どもたちで、危ない目にあって殺されかけたり、レイプをされたり、呼び出されて集団強姦されたり……。そんな子たちに対してでも、「自分でそういう危ないバイトしたんでしょ?」。でも私たち大人は、バイトする背景をやはり知らないわけですよ。
やはりJKビジネスやキャバクラなどを若い時にやってしまう理由は、蓋を開けてみたら、若い時にあったいじめであるとか、それからさまざまな暴力を受けて、家ではネグレクト。本当に「ここまでよく生き延びてきてくれた」っていう子たちもいるわけですね。
もちろん本当に、自分を見失ってそういうバイトをした子も、たまにはいますが、やはり子どもたち自身は、「自分で足を突っ込んだから自分で解決しなきゃ」と思います。
「20歳になって自分が大人になって解決しようと思った」と言って、高校生から18~20歳、ずっと自分で苦しんでお金を返そうとしてきたなど、「風俗で働いて、そのお金で弁護士を雇って、アダルトビデオの作品を削除していこうと思った」という方もいました。
ライトハウスの活動を通してでもそうですし、最近の座間の事件もそうですが、この日本が「人身取引大国」とも言われてしまう中、どんな行動が必要と思うか考えて、ライトハウスにもぜひ共有していただけたらと思います。
ライトハウスは今、やはり法律が必要だと思っております。相談支援の現場を持っている団体は、BONDさんやライトハウスも含め、なかなか少ないですが、すごく貴重な声が入ってきてると思います。
こういった声を元に、日本ではまだない「人身取引禁止法」や、性暴力に関する法律を変えていく、その法律がしっかりと施行されていくところまでウォッチしてやっていきたいと思っております。刑法が変わりましたけど、まだまだ足りないんですよね。
ライトハウスの活動を周辺の2人に伝えてほしい
藤原:ライトハウスでは漫画も作りました。実際にあったストーリーを元に、男の子の被害、JKビジネスを辞めさせられなかった被害、リベンジポルノを描いています。
2年も前に出版された漫画なんですが、今も警察や教育委員会などから予約が何百冊も入ってきています。今また増刷中ですが、もしご興味のある方はホームページから見てください。
お願いになりますが、ぜひFacebookのページをフォローしていただけたらと思います。メールマガジンもお願いします。
ここでは話しにくいですが、ライトハウスの活動は民間の助成金や寄付金で成り立っています。有給スタッフ4人、パートタイマー2人。本当にこんな給料でよく来てくれるなというくらい、すごく優秀な人たちばっかりですけども、来年のことも本当にわからない状況なんですね(笑)。
そういう状況でなんとか13年走り続けています。相談窓口、LINEの相談窓口、ぜひこういう相談場所を続けていけるような支援をしていただけたらと思っております。ホームページを見てください。それから、(あなたの身の回りの)「2人」にぜひ、このライトハウスの活動を伝えて下さい。
ライトハウスの相談窓口は、4つあります。電話番号、メール、LINE。もう1つはスライドには載っていないんですが、独自に「ne-ne(ねーね)」という相談アプリを作って、今そこからも相談が入ってきています。
本当にみんなが使いやすいかたちで相談員がいることがいいと思って、窓口がたくさんで大変ですが、ここから相談をいつも受け付けています。ぜひお近くの若い人たちや教育に関わる人たちに、こういった窓口があると広めていただけたらと思います。
時間になりましたので、これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
(会場拍手)
阿部:藤原様、ありがとうございました。
「聴く、伝える、繋ぐ」を掲げるBOND
阿部知代氏(以下、阿部):では、次の登壇者をご紹介しましょう。橘ジュン様です。
橘様は2006年にパートナーであるカメラマンのKENさんとともに、街頭の女の子の声を伝えるフリーマガジン『VOICES』を創刊されました。これまでに少女たちを中心に3,000人以上に声をかけ、聴き、伝え続けてこられました。
2009年には10代、20代の生きづらさを抱える女の子を支えるNPO法人「BONDプロジェクト」を設立。虐待や家出、貧困など、さまざまな困難を1人で抱えてしまう女の子に寄り添う、「聴く、伝える、繋ぐ」を掲げて活動していらっしゃいます。
その日に行く場所のない、今困っている目の前の女の子のために、街のパトロール、自主的に保護の活動を。また「動く相談窓口」として全国各地を飛び回っていらっしゃいます。
テレビや新聞などでも多数ご活躍で最近もTBSのニュースに出ていらっしゃいました。著書に『漂流少女〜夜の街に居場所を求めて〜』『VOICES〜キミの声を伝える〜』『最下層女子校生〜無関心社会の罪〜』などがあります。
今年の5月には、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部改正の法律案を審議する衆議院の厚生労働委員会にも参考人として出席されました。
では、橘様のお話をうかがいます。橘様もまず動画からご覧いただきます。
(映像が流れる)
生きづらい10,20代を「聴く、伝える、繋げる」
橘ジュン氏(以下、橘):みなさん、こんにちは。「NPO法人BONDプロジェクト」の橘ジュンと申します。阿部さんの司会がすばらしくて、結婚式の新婦になったような(笑)。阿部:ありがとうございます。
橘:本当にありがとうございます。10代、20代の生きづらさを支援しているということなんですけれども、今回の座間の事件がありまして、いろいろなところで取材を受けています。
やはり身近な人に深刻な問題は相談しづらいんですよね。座間の事件とかもいろいろと私なりに考えているんですけれども、あの子たちの場合、誰かに話を聞いてもらいたかったよりは、自分の死にたい気持ちに共感してくれる人を探してたと思うんですよね。
困ってる子、悩んでる子、今しんどい子という、この繋がりを求めて、「なにかあったら相談を受けるよ」といろいろと伝えてますけれども、私たちの情報を知っていても選んでもらえなかったことに、とても後悔の思いを感じています。
どうやったら、そういった女の子たちに声が届くのかを考えていかなきゃいけないと思いながら、今日もみなさんとお話できればと思っています。
「本当に困難を抱えた女の子たちにとって相談できる場所ってどういうところなんだろう?」と、ライトハウスの藤原さんも考えていると思うんですけれども。
実際、私たちの場合は、私がライターという仕事をしているので、気になった子に声をかけて話を聞くことをずっとやっていることもあり、街に出て声をかけることをしています。
毎週、だいたい1回渋谷のセンター街へ出て、気になった子がいたら声をかけて、話を聞いて。その子が必要ならば保護するということもしているんですよね。こういったアウトリーチをしています。
ポリシーは「聴く、伝える、繋げる」です。メール相談、電話相談、面談、パトロール、アンケート、カフェ型移動相談というかたちでもあります。
「伝える」、フリーペーパー、イベント。「繋げる」。繋げるというのは、18歳未満の女の子たちでしたら、やはりいろいろな意味で、親権の問題とかもありますし、弁護士さんと相談してその子にふさわしい場所につなぐということをやっています。
すぐにつなぎたいと思っていても、なかなかそこにたどり着くことができないんですよね。保護しました。18歳未満です。私たちも彼女とやりとりをして、では児童相談所に相談に行こうと決めます。
だけど、児童相談所に電話します。「今すぐ来てください」って言ってくれるところはほぼありません。「じゃあしばらく待ってください。ちょっとケース会議します」。いろいろと行政的な事情があるんですね。
女の子たちが、やっとの思いでうちに来た。今日の今日、保護されなかったらどこに行くんですか? 夜の街に戻るんですか? ということですよね。
私たちはそういうことを、やはり彼女たちがどんな目に遭うか、夜の街にどんな危険があるか、私たちなりに女の子たちから聞いて知っているので、それはできない。
死にたい女の子たちの「動く相談窓口」
橘:「じゃあうちにおいで」ということで、本当にワンルームの事務所の片隅にマットをひいて、そこに女の子を泊めていました。
児童相談所から「どうぞ、今なら来てください」と連絡があって、そして一緒に同行する。または、本人から連絡を児童相談所にもらって、本人だけが来てくださいという児童相談所もあるんですよ。やり方がそれぞれ違います。
そんな意味で、私たちは同行支援とか中長期保護もしています。役割として「動く相談窓口」だと思ってるんですよね。
自分がどんな思いをして、どんな被害を受けてて、なんでこんなに「死にたい」「消えたい」「居場所がない」と感じているのか、わかってないんですよ。
そこで立ち止まってもらう、一緒に考える、その子のふさわしい場所をいろいろと考えることをやっているんですけれども、本当に次に進むのをためらう子が多いです。
メール相談は24時間受け付けています。対応というのは、できるときに返信しています。電話相談も、週1回夜の電話相談、ほかに3回夕方から夜まで電話を受けています。
ちゃんと声をあげようと決めて届けてくれた子たちなので、こういった子たちも大事だなと思ってはいます。でも、本当に声をあげられない女の子たちのための場所でありたいと思ってはいます。
さらに、今は女の子と若い女性に寄り添うということで「若草プロジェクト」。呼びかけ人は(瀬戸内)寂聴さん、村木厚子さんです。
いろいろなネットワーク、弁護士さんや地域の支援者さんたちがその子のために、「おいで」と言うんじゃなく「じゃあ私たちが行くよ」ということで、その女の子のところに行って一緒に考えていろいろとやってくれることをしています。なので、相談して、女の子にふさわしい支援者に繋ぐことがしやすい相談場になっています。
自分の思いをなかなか言語化できない少女たち
橘:メールがだいたい月に1,000件ぐらい来ます。1,000件来ちゃうんですね。これも来た順から返しているので、どうしてもすぐに返せないというような事情もあります。年間だと1万2,395件。
電話。着信が1万3,631件あったけど、つながったのは7,732件です。どうしても届かない子もいるわけですよね。だからメールも一緒に対応してるんですけれども、話せなかった、つながらなかった子もいると思っています。
面談。これは実際に会ってお話できた数です。やはりメール、そして電話、面談。会って一緒に考えることを目的・目標にして関わっているので、この面談の数はすごく大事だなと思っています。
同行支援。先ほども言いましたけど、すこし数が少ないですよね。女の子たちがうちで留まってしまう。次になかなか行けないというような状況です。
背景です。これは心の状態。「居場所がない」とか「寂しい」とか「消えたい」「死にたい」という声も含まれています。家族であったり、虐待、デートDVであったり、性暴力であったり。
うちに届く声ですけれども、「こういうことで、こういうことを、こういう人にされたから、死にたい」と、女の子たちはそう言わないんですよ。言えないんですね。自分の思いをなかなか言語化できないんです。
「眠れない」「自分の身体汚れちゃった」。そういう言葉で私たちに伝えてくれます。なので、彼女たちの背景を知るには本当に時間がかかります。
「なんでそんな大変な状況なのに相談しなかったの?」って人は言うかもしれません。だけど、女の子たちにとってみれば、相談できなかったんですよね。しようとも思わなかった。
なぜ相談にいたらないのか? これはもうシンプルに情報を知らない。やはり行政の窓口の相談の場所はすごい難しい名前ですよね。あとちょっと遠かったりもするし。自分のこの状態が、こういう場所で相談乗ってくることをわかっていません。
でも、危害を加えたり、利用する大人以外の繋がりがほとんどない子たちです。「家出をしてる。困っている」「じゃあ住む場所を紹介するよ。仕事紹介するよ」といったら、だいたいが自分の体を使った、そういった仕事になります。
だから、そうではない生き方をなかなか知ることができないという子が多かったです。人間不信になります。大人不信。自分が本当につらいとき、困ってるとき、気づいてもらえなかった。いわゆる見過ごされてきた子たちなんです。
大人というのは家族だけではないですよね。学校だってある。地域だってある。いろんな場所で大人と出会えたはずだけれども、彼女たち、そういった自分の状況を隠してることもありますけれども、なかなか気づいてもらえなかった。だから、どんどん深刻になっていくこともあると思います。
否定されたくない。理解してもらえない。見捨てられたくない。親や学校にバレたくない。自分だけがそうかと思っていた。周りもみんなそうだと思っていたという子もいます。
性的虐待を受けた、ある少女の場合
橘:ある性的虐待を受けていた子で、お父さんから小さい時から「お前のことがかわいくて大好きだから、こういうことをするんだよ」って言われて、虐待され続けてきた子がいるんですね。被害を受け続けてきた子がいるんです。だから、みんながそういうことを経験していると思っていた。
だけど、ある程度になって友達といろいろな話をするときに、「自分だけだ。こんな嫌な思いをしてたの。この違和感は本当に感じていいことだったんだ」と気づく。だけど、やはりそれまで気づいてもらえなかった。
彼女がどうしたかというと、もうどうすることもできなくて学校の窓から飛び降りた。飛び降りたんですよ。そこでやっと福祉につながり、病院につながったという、そんな女の子だっています。
もう自己肯定感は低いです。「お前なんて生まれてこなきゃよかったんだ」と言われ続けているから。そして性暴力なんて物のように扱われます。「私なんて生まれてこなきゃよかった」。自分でもそう思ってしまう。
だから、つらい、痛い、苦しい、しんどい。こんな言葉を誰かに相談していいなんて思えない。もっとつらい思いをしてる人がいる。もう自分なんてどうなってもいい。この自暴自棄になるときが本当に怖いときなんですけれども、そうなってしまう。
さらにいろんな被害を受けていて、それが親の場合、加害者が親である場合、その親にされていることは嫌だけれども、親のことは大好き。親を犯罪者にしたくないし、悪者にしたくない。だから自分だけが我慢する。ほかの家族にも嫌な思いやつらい思いをさせたくないから、「私が悪いんだ」。そうやって1人の問題として抱え込んでしまう子もいます。
(スライドを指して)街のパトロール風景です。実際に気になった子がいたら声をかけて話を聞く。先週も行ってきました。その子は地方から出てきて「これから帰る」と言っていた子でしたけど、いろいろな子と渋谷では出会います。やっぱり渋谷が声をかけやすいんですよね。
東京の子というか渋谷によく来てる子は、誰かに声をかけられるのが慣れているので、無視されたりとか通り過ぎるということも普通なんですけれども。地方から来た子というのは、「あの、すいません」って声をかけるとだいたい立ち止まってくれるんですよね。(東京の子と比べて)やさしいというか、少し違うと思います。
私は『VOICES MAGAZINE』という女の子たちの声を集めた本を持ち歩いているので、女の子に「実際こういう活動をしてるんだ」と話しかけます。それを見せて「よかったら話を聞かせて」と言うと、パラパラめくってくれて「いいですよ」って言ってくれる子もいます。
実際に街やメール、電話で出会う。なんでもいいですが、そういった女の子たちがもう家に帰れない、帰せないという状況だったら、私たちが保護します。
JKビジネスの驚くべき現場
橘:それで(スライドを指して)こういった場所を用意しています。本当に狭い部屋なんですけれども、女の子にとって清潔なベッドを用意して、うちのスタッフがその子が食べられそうな食事を一生懸命、用意しています。
一緒に女の子とスタッフが作ることもするし、一緒に勉強をすることもあります。女の子たちがうちにいる間、どう過ごしたいかは女の子たちに聞いて、それをできるかぎりお手伝いしています。
保護した女の子同士を、本当はあまり会わせないほうがいいんですけれども、たまたま気が合うこともあって、そういう子たちは一緒にテレビを見たりとかご飯を食べたりしています。
でも、保護したからといって、すごくよくなるかというとそうでもなくて、不安定になってしまうのが逆に出てくるんですよね。
それで、うちが保護して面談している間に「もう死にたい」「消えたい」とかいろいろな気持ちを書きなぐった紙を、私の目の前で紙吹雪のように散らす場面もあります。それをうちの猫ちゃんが喜んでじゃれることも多々あります。
(スライドを指して)これはJKビジネスの現場なんですけれども、これは実際に働いている女の子が控え室から撮ってきてくれた場所なんですね。「こんな感じで女の子たちと今待機してる」と言っていました。
本当に好き勝手に過ごしていいらしいんですよ。メイクしてもいいし、お菓子食べてもいいし、LINEしてもいいし、女の子同士がしゃべってもいい。女の子は名札に名前と番号を書かれて、札を首から下げています。
それでこの様子をマジックミラー越しに客が見ているわけですよ。これが見学店です。女の子たちの様子をデッサンするというのが見学店です。
気に入った女の子がいたら、その名前と番号を書いて「してほしいポーズ」をリクエストします。自分の目の前にその女の子を立たせて、そのリクエストするポーズをしてもらう。女の子は、それはとてもとても過激なポーズです。そこでようやくお金が入る。ここで待機しててもお金にならないみたいなんですよ。
だから女の子同士、控え室で別の女の子がそういったリクエストに応えてポーズを取ってる様子は見てるんです。「あんなことしなきゃいけないんだ」「こんなことしないとお客さんから指名もらえないんだ」という気持ちにさせられると言ってました。
JKビジネスに手を染める少女たちの背景
橘:ということで、そういうJKビジネスもそうですけれども、いろんな意味で家庭に事情がある。帰れない。そしてお金がないという子もいます。
だいたい「JKビジネスなんで知ったの?」とか「なんでそこで働こうと思ったの?」と聞いたら、一言、「お金がほしかった」と言うんですけど。
なぜお金が必要なのかは、なかなか大人には話せません、話しません。怒られるから。悪いことしてるとずっと言われてきているから。
「自分が悪いんでしょ。だからしょうがないんでしょ」「なに言われてもしょうがないもんな」と思っているから、「実はこうで……」と話せません。
私たちが知っている子も、学費がとか生活費が、そういった理由で働かざるをえなかった。それは学校が厳しくて逆にバイトができない子もいるんですよ。
「知られないよ。バレないよ」「友達同士でも受けられるよ」といって、「だったら……」という、そういう思いで働いてしまった。そうしたら内容がこうだったという子もいます。
藤原さんがお話ししていたAVの子と少し近いと思います。「こんなことされると思わなかった」「こんなことしなきゃいけないとは思わなかった」。そういう思いでやっています。
帰せない、帰れない。そういった困難を抱えて帰る場所がない女の子たちの「今」を見守る場所が必要なんですよ。
そのため、今、10代・20代の女の子のための自立準備のための家ということで「ボンドのイエ」を7月の半ばぐらいから始めました。
どういう子がこういった場所を必要とするか。公的支援につながる方法を一緒に考えるんですよ。私たちも保護したとき「あなたにはどこがいいかな、ここかな」。だけど、だいたいダメなんですね。いわゆる「その子はシェルターにはふさわしくない」という状況になっちゃうんですよ。
女の子が嫌がることもあります。「携帯使えなくなるのがイヤ」「親からこういうことされてるけど、でも連絡があったら連絡を返したい」「学校には行きたい」など。
法の支援からこぼれ落ちる少女たち
橘:高校3年生。18歳になった子。児童相談所にも婦人相談所にも入れないんですよ。行けないんです。「どこに行くの?」って。
そういう子ばっかりじゃないですけれども、結局、制度からこぼれ落ちてしまう女の子たちがいるんですよ。制度があってもそこで救いきれない。そういう女の子たちが今うちにいます。私はこういうことをずっと、いろいろなところで話してきました。「女の子たちが生活する場所が必要なんです。居場所が必要なんです」。
そうしたら、ある婦人保護施設のいずみ寮の施設長の横田さんという方が、寮の持ち物である一軒家を「じゃあBONDさんが使っていいよ」と言って貸してくれたんですね。
本当は制度を作れるようにして、そこで女の子たちの保護ということができればよかったんですけれども。困ってる子が今いるから、正直、時間もかかるし待ってられないんですよ。
被害とか犯罪に遭う前に、犯罪を起こす前に、そういう女の子たちのための安心できる場所がないんですよ。ないとは言わないですけど、少ないです。なので、私たちができることをしようと思って、これを今やりました。
生活しても大変なんですけれども、うちのスタッフが毎日女の子たちの話を聞いて、その子たちのためにご飯を作って、そして帰りを待つ。そして学校に行く、仕事に行くとなったら「行ってらっしゃい」と見送る。たぶん、みなさんにとって普通のことだと思うんですけど、虐待を受けてる子はそういうのが当たり前じゃありません。
「待っててくれてるの?」って。「私のためのご飯なの?」って。「私のために布団をひいてくれてるの?」って。「これ私が使っていいの?」「私トイレ入っていいの?」って1回1回聞いてくるんですよ。そういった子たちなんです。
だけど、その子たちだってやっぱり隠されてきた虐待によって見過ごされてきた被害なんです。そういう意味では、こういった被害者と認められるためのハードルが高いがゆえに、いろいろと支援を受けられない、自分一人で抱えてしまう子が多いです。
本当に「親に援助してもらえない」もそうですし、「保険証がない」「交通手段がない」「お金がない」「周りに知られたくない」という理由から、泣き寝入りしてしまうんですよね。
当たり前のことが、女の子たちにとってはとっても大変なことなんです。したくても、できないんですよ。だから手伝う大人が必要なんですよね。
法、制度からこぼれ落ちている女の子たちのケアが必要だと思うんですよ。みなさんはどうですか? 誰にも頼ることができず、生活スキルも社会スキルも十分に身につけられないまま、社会に出るのは本当に大変ですよ。
「誰なら私をわかってくれるんだろう?」と、そういった思いで必死に、それこそ裏アカで、闇サイトで、自殺サイトで繋がってしまう子だっているかもしれないんです。と思ってたら、本当にそういう事件が起こってしまいました。
若年女性の中長期的なフォローを含めたトータルサポートができる相談センターが必要です。「困ってれば相談するでしょ」「嫌だったら逃げるでしょ」。そうじゃないんです、できないんです。そういう子もいるんです。
時間がかかります。信頼を得るには、女の子が話してもいいと思ってくれるまでには時間がかかるんです。そういった意味では、やっぱり中長期的なフォローができる場所が必要だと思います。
「いきる」と誓った少女の願い
橘:すぐにでもやらなきゃいけないと思ってるんですけど、性教育、SNS、JKビジネス等に関する教育現場でのリテラシー教育ですよ。女の子たちはわかってるんですよ。でも「1人が嫌だ」とか「寂しいから」とか「誰かにわかってもらいたいから」といって、そういうところにアクセスしてしまう。そういうところに出向いてしまう。
「こんなこと、こういうふうになるよ」という現実をちゃんと教える教育が必要なんじゃないかと私は思うんですよね。ただ、やはり教育現場では、いろいろな意味で経験ない子、「寝た子を起こすな」というような思いもありますので、なにもかも知ったからいいというわけではないと思う方もいると思うんですけれども、知らなかったらどこに相談するんですか?
身近な人には相談できないし、ダメだって言われていることをしてしまったら、実際自分がそういった危険な目に遭ってたら、相談できないのではないかと思うんですよね。
なので、せめて「こんなときは相談できるよ」という場所を教えることも大事だと思います。情報がお守りになるんですよ。「ちゃんとした場所に相談行こうね。1人じゃないよ」。これはきれいごとじゃなく、本当にそうやって伝えられるといいなと思います。
藤原さんもそうですし、私たちのような小さい民間団体は、やりたくてやっているんですが、行政だけでは担うことのできない活動をしているのが私たちでもあると思うんですよね。
連携はむずかしいんですよ。やはり行政につなぐと、いろいろとその先の情報や、この子がどうなったかは絶対教えてくれないですし、同じような立ち位置でそういった女の子の支援というのがしやすいかというと、すごくしづらいんですね。
そういう意味では、そういう子が公的支援の対象になりにくい。なので、私たちができること、民間団体ができること。得意なことは、お互い役割としてできることをやっている。そこを認めてもらえるといいと思うんですよね。
それで、一緒になにかできないか、「じゃあここは任せよう」とか、そういう関係性ができたらいいなと思うんですよね。
だから女の子たちと似てますよね。やはり信頼を得るには時間がかかるし、いろいろな意味でやり続けるしかないと思っています。
ということで、これは私の大好きな1枚なんですけれども。女の子たちは「死にたい」「消えたい」「居場所がない」「寂しい」「つらい」。いろいろな言葉で私たちに声を届けてくれます。私たちが相談を受けてる子は、死とけっこう隣り合わせな女の子たちなんですね。
だけど、この女の子が「いきる」といって、自分で自分の画像をこうやって送ってくれたんですよ。この震えている文字、弱々しい「いきる」という文字が、私たちに声を届けてくれる女の子そのものです。
この女の子に「みんなに声を伝えるときの1枚にさせてね」って言って、許可をもらって載せています。ありがとうございました。
(会場拍手)
阿部:橘様、どうもありがとうございました。