パープルリボンってどんなもの?

阿部知代氏(以下、阿部):みなさま、こんにちは。平日の午後に、このようなテーマに、ご興味を持ってお集まりいただき、本当にありがとうございます。

ただいまより、渋谷区アイリス講座特別版シンポジウム「どうすれば『伝わる』?パープルリボン~渋谷から全国へ~」を開催いたします。

まず、このアイリスの講座についてご案内します。「アイリス」とは、渋谷区の男女平等・ダイバーシティセンターの名前です。渋谷区において、男女平等と多様性社会の実現に向けて、計画の推進・理解の裾野を広げるための啓発事業などを行っている施設です。渋谷区文化総合センター大和田の中にあります。

アイリス講座は、ジェンダーとセクシュアリティに関する問題の解決、そして多様性社会の推進を目的とする啓発事業です。

今年度のテーマは「女性と性的少数者のライフデザインを応援する」で、合わせて10の講座を開催しています。その中で今回のテーマが、「どうすれば『伝わる』?パープルリボン~渋谷から全国へ~」。

こちらはアイリス講座の特別版として開催いたします。「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA(DDSS)」のご協力により、ラフォーレミュージアム渋谷で開催することとなりました。

「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」についてもご案内します。これは「ダイバーシティ・イノベーション・サステナビリティ」をキーワードにした、基調講演とパネルディスカッションという構成で、都市開発、企業経営、教育、政治、スポーツ、マーケティング、エンタテイメント、テクノロジー、デザインなど、さまざまなカテゴリーの有識者を招聘し、ダイバーシティ社会の現在と未来についての理解を深め、可能性を提示。エキビジョン会場では、ユニバーサルデザインや次世代の福祉技術、テクノロジーサービスなどの展示を行い、新たな学びの場、人脈形成の場を提供しています。

みなさんピンクリボンやブルーリボンはお聞きになったことがあると思うのですが「パープルリボン」を聞いたことのある方は?

(会場挙手)

やはり今日は意識の高い方が多いですね。恥ずかしながら私は、この仕事をするまでパープルリボンが何を意味するか知りませんでした。

パープルリボンは女性に対する暴力根絶運動のシンボルです。内閣府によると「世界の子どもや暴力の被害者にとって、世界をより安全なものにする」という目的で、1994年にアメリカのニューハンプシャー州の小さな町で始まりました。近親姦やレイプのサバイバーによって生まれた運動なのだそうです。紫色のリボンであればどんなものであってもよく、身につけることでパープルリボン運動の趣旨への賛同を表明することになります。

個人間の暴力・虐待に関心を呼び起こすとともに、暴力のもとに身を置いている人々に勇気を与えよう、という願いから、現在この運動は世界40ヶ国以上に広がり、国際的なネットワークに発展しています。いろいろな布やリボンのバッジを付けることにより、女性に対する暴力を許さない社会を目指そうと多くの団体が活動しています。

日本では11月にキャンペーンを実施

阿部:日本では内閣府が「暴力は対象の性別や加害者と被害者の間柄を問わず、決して許されるものではありません。

とくにDV、性犯罪、買売春、人身取引、セクシャルハラスメント、ストーカー行為など、女性に対する暴力は、女性の人権を著しく侵害するものであり、男女共同参画社会を形成していく上で克服しなければならない重要な課題です」と呼びかけ、毎年11月12日から25日までの2週間は、女性に対する暴力をなくす運動の期間となっています。今年は初日となる11月12日(日)に点灯式が行われ、東京タワーや全国各地の建物などが紫色にライトアップされます。

申し遅れましたが本日の司会を務めますフジテレビの阿部知代です。12日は弊社フジテレビ社屋もパープルにライトアップされます。

(会場拍手)

ありがとうございます。日頃LGBT支援活動などを行っているご縁で今日の司会を仰せつかりました。とは言えパープルリボンの意味も知らなかった初心者なので、知識レベルはみなさまよりずっと下です。今日は学びたいと思います。

現在報道局に所属しており、今年は刑法が改正されて性犯罪への罰則が強化された、というニュースも取り上げました。最近では(神奈川県)座間での殺害事件。被害者9人のうち8人が女性でした。彼女たちは誰にも相談できなかった悩みや自分の心の内のものを共有してくれると思えた人に、ネット上で出会い、付いて行ってしまったのではと思います。

今日のテーマと直結するような事件が直前に起こってしまったのは、本当に不幸なことです。この事件についてもパネリストの方からいろんなご意見を賜りたいと思っております。

AV出演強要の被害者支援「ライトハウス」

阿部:今日はまずはパネリストの方お一人ずつからお話いただきます。 お二方からは加害と被害の構造、性被害の現状、団体の活動などについてそれぞれお話しいただきます。

まずご登壇いただくのは藤原志帆子様です。NPO法人・人身取引被害者サポートセンター「ライトハウス」代表でいらっしゃいます。アメリカの反人身取引団体での勤務を経て、2004年に日本で人身取引被害者の支援を開始されました。

相談の窓口を運営し、売春やポルノ出演の強要・性的搾取を目的とした人身取引被害の発見と救済事業を行うなど現場でのご支援の傍ら、児童施設や学校教員向けの研修講師としてもご活躍中です。

2008年には母校のアメリカのウィスコンシン大学より名誉卒業生賞を受賞。2012年には『AERA』の中で「日本を立て直す100人」にも選ばれました。

ではこれより、藤原様のお話を20分間お聞きいただきます。まずは活動内容をご紹介するビデオからご覧ください。

(動画が流れる)

(会場拍手)

「性の商品化の中での暴力」をなくすために

藤原志帆子氏(以下、藤原):今、見ていただいた動画は、実は渋谷区のみなさんに協力していただき制作しました。スクランブル交差点の前のツタヤのビルなど、渋谷区に約6~7ヶ所あるオーロラビジョンで何度か流していただいたものです。昨年度もご協力いただきました。

今、相談が一番多いのが、ご覧いただいたアダルトビデオ産業で、無理やり出演させられている女性・男性、両方の若者です。昨年だけでも100人の方から相談を受けました。

そういうスカウトが行われていたり、アダルトビデオのプロダクションが一番多いのが、渋谷区なんです。渋谷区の持つ求心力や魅力を使って、「モデルしませんか」と誘いをかけているんだと思います。渋谷区と新宿区は、リクルート・スカウト会社の拠点となっていて、その中には違法なことをする会社も出てきているので、区役所の方は危機感を感じています。

渋谷区の区役所のみなさんや区議会議員の方々には、本当に応援していただいて、国への要望書を全国でいち早く出してくださいました。そうして今、国が動いております。

アダルトビデオ問題は解決に向けて、やっと動き出しています。このような日本で起こっている人身取引、アダルトビデオの問題だけではなくて、娯楽産業の1つとなっている売春や風俗産業、AVなどの性的搾取に関する相談がすごく多いです。

ここがライトハウスの専門性のある部分になっているんですが、「性の商品化の中での暴力」をなくすために、ライトハウスは13年間、東京で活動しています。渋谷に事務所を移してから3年目になるんですけれども、本当にいろんなところで、渋谷区のみなさんにはお世話になっています。

先ほどのとおり、全国で被害があり、アダルトビデオもここ2年半で被害の相談が300件に登ります。そういう望まないかたちでカメラの前で性行為をさせられたという相談の中では、東京都出身の方は10人以下もいないのですよね。

ほとんどは地方出身者や、進学や就職のために東京に来ている人です。例えば、たまたま、ディズニーランドに来るために東京に来たという女の子・男の子たちが被害に遭ってしまっています。渋谷だけではなく、いろいろなところでの被害が、今やっと明るみになってきました。

私たちの専門外にはなるんですが、さまざまな弱い立場に置かれやすい方たちが、「労働搾取」「臓器の売買」というかたちで、支配されて、利用されて、搾取されている。

その中でもライトハウスは、経済的にも一番、搾取した人間に効果をもたらす「性的搾取」をなくすために活動しております。

「人身取引」は難しい言葉で、わかりにくいと思うんですが、ここを私たちは解決したい。とくに、法律を作るべきだと思ってるんですね。守る手段がない。法律にも書かれていない。こういった被害に遭う子たちのために、その対策をやっていけたらと思っております。

深刻な事態となっている児童ポルノ

藤原:先ほどの性的搾取のスライドにもありましたが、とくに子どもの性の商品化は、渋谷もそうですが日本全体ですごく深刻です。子どもの児童ポルノ、具体的には子どもたちの虐待の記録が動画や画像になっている。

非常にここでは言いにくいような暴力が、高校生や中学生だけではなくて、本当に小さな赤ちゃんにまでおよんで、いろいろなことが起こっている。この「暴力の記録」の児童ポルノですけれども、最近まで日本は、それを自分の快楽のために所持することがOKだったんですね。

2014年に処罰化され、2015年に実際にそれが施行されました。諸外国から10年遅れましたね。警察のみなさんも、あの人間とあの人間が児童ポルノのコレクターであり、自分で作っているとわかっていても、作る瞬間や、頒布する瞬間をキャッチしないと、なかなか処罰できない。本当に日本だけがすごく遅れている時代が続いていました。

それでもやっぱり改正に含まれなかったのが、「着エロ」という問題ですね。4歳や7歳といった低年齢の児童が、紐のような水着を着せられる。こういったものが2014年の法律改正では対象外とされている。

このような着エロから、お話をここではしませんが「JKビジネス」をやめられない、といった相談であるとか。子どもたちの相談は、なかなか声が入りづらいです。16歳、17歳の高校生も含めて、子どもたちは、「自分が被害にあったきっかけを作ってしまったんだから」「自分が自ら知らない人とTwitterで話をしてしまったんだから」と、自分を責めてしまいます。

「アダルトチャットの強要」についても高校生からの相談もありました。このようなかたちで子どもからの10件以下なんですけれども、今年に入って2倍、3倍に増えています。やっとライトハウスの相談が伝わってきていると思うんですが、それでもやはり小さな数です。

その中で顕著に増えているのがアダルトビデオ被害で、11月の段階でも80~90件ほど来ています。男性からの相談もあるんですね。アダルトビデオへの強制出演も含めて、20人に1人は男性からの被害の相談です。

相談を受けた時に必ずおっしゃってくださるのが、「すみません、この電話、自分が男性なんですけどお話ししていいですか?」と聞いてくれるんですね。LINEでもそうです。

メールでも、「男性なんですけどいいですか?」と最初にメールが来て、「もちろんですよ」と言って、やり取りの中でやっと被害を話してくれることもあります。

私たちももう少し、さまざまな方が相談しやすくなるようなメッセージの打ち出し方をする工夫が必要だと思っております。このようなかたちで相談を受けています。

藤原:渋谷に特化した事例を1つだけご紹介します。先ほどビデオにもありましたが、アダルトビデオの相談がすごく多いんですね。

この問題に触れるまで、アダルトビデオは大きなお金がもらえて、それから実際に働いてる方たちの権利も守られ、それなりにメリットがあるからみなさん出ていると思っていました。

無理やり出演させられたレイプとも言える記録が、声を上げた方だけでも300人いて、それが何千本という数で「作品」になっている。それから「モデル」と言われてたのに、その場で裸にされて、今度はその裸の写真を元に「戻ってこい」と言われて。

それから1日かけてビデオを撮られる、ということを何度も何度も相談の中でお聞きすると……。もうこの業界、ずっと前からこういうことが行われていたのではとすら思えてきまして。

本当にキラキラ輝いてるAV女優さんとかは、今テレビにも出ていると思うんですけども。私たちのところに来る方たちはそういう有名な方もいますが、「普通」って言葉は変ですが、大学生や専門学校生から、看護師さんだとか保育士さんとか、普通の生活を最近まで送っていた方です。

たまたま声をかけられて連れてかれたところがモデル事務所。でもモデル事務所と書いてあるけれど、それはぜんぜん嘘で。身分証明書と自分の顔をビデオに撮られたりして、今日はこういうモデルの契約をして、ウチのプロダクションに所属して、「これからオーディションとかがんばろう」と言われて……。何のオーディションかは言われないんですけれども、「仕事が決まったよ」と言われ、それはアダルトビデオなんですよね。