2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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山本一太(以下、山本):なるほど。今言った「一極集中だから実は危ない」についてです。例えば今、自然災害も予想されています。とくに直下型地震はあるかどうかじゃなくて、いつあるかどうかと言われていますよね、そういう意味でいうと、逆に一極集中しないことが東京のためにもなるっていう発想ですよね。
そして今お話ししていて。石破さんと私はほとんど歳が変わらないんですけど、この本にも書いてあった『三丁目の夕日』じゃないですけど。我々が子どもの頃って、鳥取県と群馬県と程度の違いはあっても元気だったでしょう?
石破茂(以下、石破):元気だった、元気だった。
山本:お祭りになったら子どもはみんなお神輿を担いでいました。例えば前橋市、群馬県のね。シャッター街で有名になっちゃった前橋市も元気で、マイサンデパートってところに行ったら、草津方向から人が溢れてて。怖くて。マイサンデパートの屋上で10円の乗り物に乗ってね、ただ動くだけなのに大喜びしてた時代なんですよね。
あれがもう、すっかりこんなふうになっちゃったんですね。なにがいけなかったんでしょうかね。
石破:だから、私の鳥取市もそうでしたよ。シャッター通りなんかないし、
山本:ないです、商店街もみんなやってましたよね。
石破:みんなやってたし。「夏の土曜夜市」って私たちは言ってましたけどね、すごい人だった。
農山漁村も活気があった。日曜日になるとわんさかひとが来た。地方が元気で、地方が人口が増えた10年間っていうのが、青森だろうが山形だろうが宮崎だろうが高知だろうが、みんなあった。
山本:人口が増えたんですよね。小学校のクラスとか増えたりしましたよね。
石破:ですから、私たちの年代はその頃を憶えてるわけですよね。もう一回来ないかなって思うんですけど。我々が子どもの頃を振り返ってみても、目を見張るほど道路が良くなった。下水道が整備されてダムができて洪水が減って、群馬県は空港ないけど鳥取県は空港ができたりしてね。
山本:羨ましいんですよそれ。
石破:いや群馬は無理だろ(笑)。
……できたりしてですね、雇用と所得が、公共事業でずいぶんもたらされたんですよね。もちろん我々、民進党じゃないから「コンクリートから人へ」なんて言わないけど。必要な公共事業はやるんですよ。だけど、昭和40年代と同じことはできないよねってことです。
私の地元には「鳥取三洋電機」(現注:三洋テクノソリューションズ鳥取)ってあったんですよ。3,000人、4,000人と雇用してたんです。でも、今は影もカタチもないないですよ。だから「同じものを安くたくさん、大勢の人で作ろうね」っていうビジネスモデルが日本国中に展開して、雇用と所得がありましたよね。
そして、同じことできるかと。もちろん精密医療機器や航空機産業、ブランド、ファッション、伝統工芸など、そういう製造業は日本の強みがあるからもっと強化するけど。昔のような雇用と所得を確保するのは難しいよねということじゃないかな。
山本:なるほど。そこは石破さんの「日本列島創生論」の1つのポイントだと思うんですけども。やはり夢をもう一度、というのは無理だと。我々の30年代みたいな時代はやってこない。そのなかで、これ全国で『日本列島創生論』を、「地方は国家の希望なり」って読んでもらいたいと思うんですけどね。
ずいぶん長い間、地方創生担当大臣を務められていました。そのときも石破さんはよくおっしゃってましたけど、やはり地方振興は2つの柱に支えられていた。それは補助金と企業誘致である。つまり、公共事業と企業誘致である、と。
これは今おっしゃったように、日本列島の災害のレベルが上がったから防災にはお金を使わなきゃいけないと思うんです。しかし、この「補助金と企業誘致だけで地方振興だ」という時代は終わりだ、という話をされておられましたよね。ここは一番の要だと思うんですけど。
石破:そうするとまた「公共事業やんないのかよ」「企業誘致やんないのかよ」となるんですが、そうじゃありません、と。昔と同じことはできませんと言ってるだけの話なんですね。人の話はよく聞いてくれっていうことなんですがね。
私、農林水産大臣も副大臣もやりました、例えば、群馬でも鳥取でも、作る農産品って超一級じゃないですか。農業って土と光と水と温度の産業なんだから、日本ほど土に恵まれ、春夏秋冬まんべんなく雨か雪が降り、適度に温暖で、そしてお日様の光が降り注ぐ。この4つの条件をすべて満たしている国はそんなにあるもんじゃないですよね。
例えていうと、栃木県のとちおとめ、福岡県のあまおうにしても、……鳥取県にもありますけど。私も一太さんほどじゃないけど世界中あちこち行きますけど、日本の果物ほど美味しい果物ってないじゃないですか。
山本:ないですね。イタリアのトマトも味が違いますもんね。それはそれで一種味はあるんですけどね。
石破:味はあるけどね。シンガポールはアジアで一番豊かな国で、大きさは淡路島くらいだから農地もまったくないわけですよね。そして、お金持ちだからいろんな国からいろんなもの輸入して食べとるわけです。あそこに出回ってるいちごの5割がアメリカ、3割は韓国、5%がエジプト、1%が日本。これなんなんでしょうかね。
お米でもそうでね、カリフォルニア米が美味しいっていうんだけど、私は……まずくはないがそんなにめちゃくちゃ美味しいとも思わないんですね。同じものづくりで自動車が世界に売れて、なんで農産品が売れないか。根源的な問いなんですけどね。
山本:なるほど。逆にいうと、やり方によっては地方振興の手段はいっぱいあるということなんだと思うんですが。ここでいろんなコメントが来てるんですけど、アンケートだけ済ませていただいて、オンザスポットアンケートできるんだけど。
前回はずっと石破前大臣と歌ってプラモデルの話だったんでそれはすごい楽しかったんですけど、今回はもうこれはこれでいい感じで政策議論になっています。ちょっと、ユーザーのみなさんにアンケートを採りたいと思います。
これから石破さんと議論していくことにも関連してるんですけど。地方創生の鍵はなにか。
「1.公共事業と企業誘致」、今これだけでは駄目だというお話があったんですけども。「2.地方自身の創意工夫」「3.優秀な首長」「4.官僚の意識改革」、これもこのあと、時間があれば石破さんにお聞きしたいと思うんですけども、いわゆる地方振興に関わっている中央官僚の意識改革ですね。
この4つ、どれが一番大事と思うか。アンケートをかけたいと思います。
すみません、アンケートが出るまでにも続きをしたいと思うんですけども。この本のなかで、国の役割についてもいろいろ石破さん触れられていますよね。人材とデータだと。もちろん、地方自治体の創意工夫も必要なんだけど、そのなかで国がやってきた地方振興について、きちっと明確に打ち出そうという方向性が感じられるんですけど、いかがでしょうか。
石破:私たちが高校生のころ、田中(角栄)総理の『日本列島改造論』、私たちが勤め人のころ大平正芳総理の『田園都市国家構想』、私が議員になったばかりのころは竹下(登)総理のふ『素晴らしい国・日本―私の「ふるさと創生論」』ってなったんですね。
歴代政権はすごく地方のことを気にかけて発展させようとしてきたわけですよ。人口が増えて経済が伸びている時代の政策なんですよね。そしてがんばるけれど、かつてのような高度経済成長はできないわけですよ。
人口は当面減るわけです。どんなに出生率が上がったって、それは今生まれた赤ちゃんがさらにお子さんを生んでくださるようになるまで20年かかるわけですよね。当面減るということは、所与のものとしないといかんですよね。
山本:人口が当面減るってところまでお話が進んで、ちょうどアンケートの結果が出ました。
「公共事業と企業誘致、18」「地方自身の創意工夫、27」「優秀な首長、30」、それから「官僚の意識改革、25」。
ということで、「優秀な首長」ということなんですが。すみません、この話はまたあとで。今の「所与のものとしなければいけない」というところから。
石破:いくら町村合併をやったとはいえ、日本には1,718の市町村あるわけですから。私はいろんなデータを地方創生大臣になって見た。日本国中のデータを見た。同じ高知県でも、ぜんぜん違う。たぶん群馬県でも、ぜんぜん違うはず。出生率がぜんぜん違う、あるいは平均初婚年齢がぜんぜん違う、帰宅時間がぜんぜん違う、まったく違うわけですよ。
そうすると、例えば前橋市なら前橋市、館林市なら館林市、高崎市なら高崎市。どこでもいいけど、その街に一番合った政策って、そこの人たちが最も知っているんでしょ。それが霞が関でわかるっていうのは、かえっておかしなことじゃないですか。
霞が関に来て、公共事業あるいは企業。それは大事なことですよ。だけど、そこの街のポテンシャルを最大限に活かすことに、ちゃんと適合するかどうかなんですよね。
日本の経済が伸びて人口が増えてたとき、多少のばらつきがあってもミスマッチがあってもよかったんですよ。ですが、農業漁業林業、あるいはサービス業などを伸ばしていこうと思ったら、その地域の知恵でもっともいいものを作るしかない。私はそう思うんですよね。
私もずっと市町村回って、今300越えたかな。
山本:すごい回ってますよね。
石破:ぜんぜん。だって1,718市町村あって、まだ300なんですから。そこで「私はこんなに日本を知らなかったんだ」っていう反省があるんですけどね。
そこの市町村が、「なんだか最近人口が減ってきたな」「最近活力なくなってきたな」という感じはあるんだけど、じゃあ一次産業、二次産業、三次産業、三次産業……といっぱいありますよね、その街のどの地域のどの産業が、ヒト・モノ・カネがどこから来てどこへ出ていって、どんなヒトでありどんなモノでありどんなカネであり、どこから入りどこへ出ていくのか。
さらに観光客で見てみると、泊まってくれなきゃお金が落ちないじゃないですか。それを山本さんが観光の仕事でやってたから一番ご存知でしょう。
山本:旅館の息子です。
石破:泊まらないと、落ちるのはゴミだけなんですよ。では、泊まってもらうにはどうすりゃいいのか。
そういえば、うちの町って観光客の入れ込み数が多いけど、ちっとも観光業の収入増えないのなぜ? あ、それ泊まらないからだ、じゃあ泊めるにはどうしたらいいんだろう。泊まってもらうのは男性なのか女性なのか……とかね。すごく細かく考えてやっていく。
今、日帰りも圏内になってるわけです。例えば川越って街があるじゃないですか。小江戸って言われる、埼玉県のね。あれは日帰り圏内どころか、半日で行ったり来たりできちゃうわけでしょ。「じゃあ泊まってもらうにはどうしたらいいんだ」と。じゃあ夜にイベントだ。早朝にイベントだ。早朝や夜にひとが喜んでくれる。そういう街づくりってなんなんだってことになって、宿泊客が上がっていくわけですよね。
そういう、すごくきめ細かい街の作り方が大事になると思いますね。
山本:なるほど、そういう意味でいうと、さっきいった国の役割は、石破さんがこの本のなかに書いてあるとおりです。人材とデータ。こういうことでしっかりと後押しをしてあげなきゃいけないってことなんですけど。
今言った観光政策のなかですごくおもしろいと思ったのは、石破さんがこの本の中で言ってる「町おこしには3人の人間が必要だ」というところ。それは「若者」「バカ者」「よそ者」、この3種類の人間が必要だっていうのがすごくおもしろかったんですけども。ここをぜひ解説していただきたい。
石破:これはかなり一部では根強く言われてたことなんですけどね。
私、鳥取でずっと育ってて、悲しいなと思ったのは「若い者は黙っておれ」「よそ者は黙っておれ、バカなこと言うんじゃない」ってね、排斥されて嫌になって出てく人が多いことなんです。
でも若い人たちの視点って大事じゃないだろうか。だって、次の時代を担うのは若い人たちですもの。そして、よその人の視点ってのは、「あ、そうだったんだ」ってことを気付かされることがいっぱいありますよね。
山本:外から見ないとわからないですよね。
石破:絶対わからない。
そしてもう1つは、バカ者っていうと言い方が悪いのかも知れないけど、ユニークな発想って絶対に必要なはずなんですよね。
山本:だいたいバカ者いないとダメですよね。
石破:「なに言ってんだよ」って言われても、それがヒットに結びつくことってあるでしょ。
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