2024.10.01
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山本一太(以下、山本):例えば自民党の中でも健全な、いろんな議論の交換がなければいけない、競争がなければいけないと思っていて。いろいろなところで石破前大臣も発言されてますけども、総裁選挙もね、石破さんのような本当に政策の哲学と理念を持った人たちが出てきて、そこでしっかり議論をして決めていくプロセスがとても大事だと思うんです。
来年、率直に言いますが、総裁選挙で石破さんが今日おっしゃった哲学を訴えていくってことなんでしょうか。
石破茂(以下、石破):だから総理総裁は、本当に自分が思っているビジョンがあって、それを実現するためにやるもんでしょ。やりたいやりたいってなるもんじゃないでしょ。
国会議員だってそうじゃないですか。「国会議員になってみたい」とかさ、「一度はなりたい大臣に」とかさ。それって、政治家の生き様としては、私はあまり価値観を共有しないですよね。本当に自分がそれに値するかどうかは、やっぱり常々、昨日より今日、今日より明日。自分が少しでもマシになんなきゃいけないってことじゃないですか。
だけど、自民党って国民政党だから。右から左っていうのかな、いろんな価値観を持った人たちが支持してくださっているのが自民党じゃないですか。
いろんな意見があるはずでしょ。消費税はどうなんだ、エネルギーはどうなんだ、地方創生はどうなんだ、あるいは憲法はどうなんだ。いろんな政策があっていろんな意見があって。国民政党であればいろんな政策を代弁する、体現する。そういう人たちが意見を戦わさなきゃ。それって国民政党じゃないでしょ。
山本:まったくそうだと思います。
そういう意味でいうと、前回の総裁選挙、自民党野党時代に私もずーっとくっついて全国を回って、これほど自民党の政策を世の中に訴える舞台はない。あれ、やっぱりいろいろあったんですけど、よかったですよね。
石破:よかったですよね。
山本:私は半分ボランティアですべての会場へ行きましたから、当番じゃないときも。ああいった議論の展開があって、その中でいろんなせめぎ合いがあり、物事が決まっていくのは自民党の良さなんで。
石破さんもそうおっしゃっていましたけれど、総理には総理の理念があり、素晴らしいと思うのですが。国づくりに哲学があるという意味だと、ああいった舞台をつくるために……。私の勝手な希望ですけれど、ぜひ石破さんみたいな方に名乗りを挙げていただいて。国民に、自民党には多様な意見があり、いろんな人がいるとアピールしていただきたいと思っているんです。
石破:自民党には本当に多様な意見があって、なにか言うとすぐボコボコに叩いて……そうじゃなかったですよね。私たちが若い頃、20年以上前、15年も30年も前ですよね。みんな思い思いのことを言っていた。だけど、そのときには罵詈雑言とかはなくて、正面から議論を戦わせた。激しかったですよね。
山本:おもしろかったですよね。最近、元気ないですよね。
石破:山本富雄先生ってね、山本さんのお父さんね、農林大臣や自民党の農林官房をやっていてね、みんなワーワー言ってたんですよ。だけど、相手の人格を傷つけたり、あるいはどう見たって悪口のようなものには「君、そういう言い方はないだろう」ってピシッと抑えてらっしゃいましたよね。
だから相手の意見を尊重して、その上で議論を戦わせる自民党が確かにあった。それをもう一回取り戻していくのが大事なことじゃないだろうか。自分の考え方と違うからといって、それを排斥したり叩いてみたりっていうのは、少なくともかつての自民党の文化じゃありませんね。
山本:そうですね。私も石破さんもご存知の通りけっこう好きなことを今も言いながら生きているので、そういう意味では自民党は相当自由だと思うんですけど。とくに今の一回生や二回生は昔のことを知らないと思うけど、大人しい。これが小選挙区制の弊害かどうかわかんないけど、あまりに大人しいですよね。
石破:なんでしょうねえ。
山本:我々のころなんて、石破さんは私より政治家として先輩ですけど、なにかあったらすぐ若手がグループを作って提言して、騒いで、何回も激しい議論をやって。しかし、決まったらみんなでそっちに行くっていう考えだった。でも、どうも今の若手、あまりにも大人しいですよね。
石破:どうしちゃったんですかね。
「これは小選挙区制のせいだ」「党が力を持ったからこんなことになっちゃったんだ」って言うんだけど、同じ小選挙区制のイギリスはそうですか? カナダはそうですか? オーストラリアはそうですか?
山本:違いますよね。
石破:そうじゃないでしょ。すぐ制度のせいにしちゃいけない。
確かに中選挙区制のころは侃々諤々、活力があったことは事実ですよ。でも、小選挙区制にしたから、私も山本さんも二世のようなもんだけど、二世じゃなくても、お金がなくても、高級官僚じゃなくても、タレントじゃなくても、国会議員になれるじゃないですか。それはそれで認めなきゃいけないですよね。
山本:いいところもあるしね。
石破:かかるお金って、何分の一になりましたもん。
山本:そうですか、小選挙区制になったらね。
石破:そう思いますね。だったらば、例えば小泉(純一郎)元総理がいらっしゃいましたよね、「郵政民営化!」ってね、「殺されてもやる!」っておっしゃったですよね。
私、小選挙区制導入を巡って、小泉先生は絶対反対、私は絶対賛成という、もうすごいバトルをやりましたよね。そして、小泉さんと橋本龍太郎さんが総裁選挙やった。私はバリバリ橋本さんとやった。鳥取県は、橋本さんが勝った県ですよね。
山本:私、小泉さんを支持していました。すいません。
石破:だけど、ある意味こんな憎らしいヤツはいないわけですよね。だけど、必要だったらば、防衛庁長官を指名する。私ね、すっごく驚きましたよ。「え? 私ですか」って。一生のなかであんなに驚いたことはめずらしいですよね。
山本:小泉総理が石破さんを防衛庁長官に任命したんですよね。
石破:私はもう本当に驚きましたね。
だから、なにを言ってもいい。ときには執行部に反することを言っても、それは本当に日本の国を思い、自民党を思ってればいいじゃないかということなんですよね。たとえ反執行部であっても、「農政の分野でこいつしかいない」「金融の分野でこいつしかいない」「外交でこいつしかいない」となる。それはそれで別でしょ。
私はそういうもんだと思うし、かつての自民党はそうだったもん。
山本:そうですね。なんか、この話だけでもっとやりたいし、地方創生もまだいろいろやりたい。憲法改正、北朝鮮問題、(聞きたいことが)山ほどあったんですけど、今日はしかしどうしても、石破さんから地方創生の話を聞きたかったんで、あっという間にもう時間になっちゃったんですけど。
最後に、石破前大臣は地方創生のまさしくスペシャリストなんですけど。なんといっても、外交安全保障の党を代表する論客なんで。金正恩、どうしたらいいですかね。
いろんなシナリオを見てると、どんなに考えてもやはり金正恩委員長の術中にはまりつつある状況になっちゃっている。どうしたらいいのかと、いろんなところで議論されてるわけなんですけど。そこをどう思われますか。
石破:核とミサイルさえ持てば、どんな体制でも認められるっていうね。それは許しちゃいかんですよ。
アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、みんな核を持ってますよね。ではなぜあの国々は核を持ってよくて、北朝鮮はダメなのか。突き詰めれば、そんな話にもなるでしょうよ。
だけど、「核を持っているからどんな体制でも認めろ」なんて言いましたか? お兄さんでも殺す、国民が何万人も餓死しているなんてわからない、食うや食わずで人権のかけらもない。でも核を持ったら、ミサイルを持ったら、どんな残虐な体制でも認められる。それを本当に認めたら、それこそ思う壺じゃないですか。
カギを握っているのは、間違いなく中国なんです。だって、中国は北朝鮮を好きでもなんでもない。金正恩と習近平って一度も会ったことない。
山本:首脳会談、ないですね。
石破:ないでしょ。それを兄弟国とかなんとか言われてもさ、あり得ないですよ。
中国にしてみれば不愉快千万である。だけどね、北朝鮮がなんかことを起こされて、「中朝同盟だから、戦争に付き合うのもたまらんね」「戦争になって難民がどっと流れ込んでくるのもたまらんね」と「戦争が終わった後にアメリカの同盟国が朝鮮半島を統一して、中国と国境を接するのもたまらんね」ということがあるわけです。じゃあ中国の懸念をいかにして取り除くかってことを考えないといかんのじゃないですか。
山本さんのほうがくわしいと思うけど、チャイナ・ドリームとチャイニーズ・ドリームとは違うんだよね。これってなかなか両立しない。だから習近平主席がどんな政策をとるか、日本はそれにどう関わっていくべきか。鍵は中国が握っている、ということをよく認識をしないといけないと思いますけどね。
山本:ありがとうございました。あっという間に時間になっちゃって。
今回はみなさん、こないだの歌とプラモデルの回とは対照的で、私もすごくおもしろかったんですけども。自民党の野党時代、そして政権を取り戻した総裁選挙。まあ、野党時代だったんですけどね。あのとき、実は総理が出るかどうかわからなかった。
当時、石破さんがご自分の会の「さわらび会」というのがありまして。政調の代理でエネルギー特命委員長に任命してくださって、石破さんと一緒にやらせていただいていたんです。その時、さわらび会に誘っていただいて。すごくうれしくて。入会したんですが。
その後、安倍総理に呼ばれて「今度の総裁総選挙に出たい」と聞いて、「総理が出るんだったらそっちを応援しなきゃいけない」ということで、わざわざ石破さんに会いに行って。事情を説明して、さわらび会を抜けさせていただいて。そのとき、石破さんから「そういうことをちゃんと言いに来た」とすごく評価していただいたんです。
あのとき、総理が出なかったら石破さんを応援していたと思うんです。でも、安倍総理が出て、石破さんははっきりおっしゃらなかったですが。情念と哲学を持っている石破さんのような人が出て、岸田(文雄)外務大臣も出て。
でも、自民党最後の野党時代の総裁選挙みたいに、あらゆる意見を戦わせて。石破さんが言っていたように、いろんな反対意見を言っても許される。それがかつての自民党。今も自由ですけれど、ああいう雰囲気をぜひ作りたいと思いますよね。
石破:そうですよね、だから本当に明るく楽しく、政策論議やろうよっていうことですよ。終わったらみんなが従うんだ、と。
「これを言ったら出世ないんじゃない」「これを言ったら選挙に出してもらえないんじゃないか」とか、そういう自民党ってあまり自民党らしくないじゃないですか。
山本:まったくおっしゃる通りだと思いますね。
今日は本当にありがとうございました。ぜひまたお忙しいとは思いますが、安全保障とか憲法改正もお聞きしたいんでぜひ来ていただければと思います。次はたい焼きも、もっと大きいものを用意しときますんで。
石破:これ以上、大きくないです。ありがとうございました。
山本:(拍手)
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