デジタルなしでは成り立たない世界に

杉山知之氏(以下、杉山):今、バーチャルリアリティというところでいろいろ見せてもらったんだけど。例えば、建築は一番昔ながらのやり方で仕事をやってるようなところなんだけど、そういうところにもこういうデジタルコミュニケーションというか、コンピュータとネットワークみたいな波って、今後どんどん来ちゃうもんなんですか?

福田浩士氏(以下、福田):そうですね。間違いなく来ると思っています。建築ですと、その建築をつくるプロセスのなかでVRとかARというのがどんどん入ってきているという印象があるのと、あとはその建築を使った生活を行うシーンがどんどん増えてくるかなと思いますね。

今、ウェアラブルという、人の体にどんどんセンサーとかアウトプットデバイスが装着されるというようなビジョンがあって。それとは別の路線で、建物にセンサーやプロジェクターみたいなものが普及しているだろうというビジョンがあり、建築できることももっとたくさんあるだろうと思います。

杉山:そうだよね。だから、みなさんが考えているより応用範囲が広いというより、ふつうにこういう学校を見たときに、パンフレットに全面的に出てくるのは、CGだったり、ゲームだったり、グラフィックデザイン、そういうものが出てくるから、美術系のなかで少しデジタルが強い学校なのかなと見えちゃう人も多いと思うんだけど。

そうすると、社会の一部な感じ、一部に特化した専門家みたいに見えやすいんですよね。だから、保護者の方とかも、この学校に進学しちゃうと、専門性が高すぎて、つぶしがきかない人になっちゃうんじゃないかと。

だけど、事実はまったく逆で。これからこういうことを知らずして、どんな産業も成り立たない。現実問題、もうデジタルコミュニケーションなしに成り立っていないんですけど、もっとそうなるんですよ。

20年間、僕がいろいろな社会人の方にこの学校を利用していただいたりして、ありとあらゆる産業にいってるわけですよ。でも、デジタルとかネットとか使わない産業なんかないし、そこを使いこなせなかったら、売上なんかまったく上がらないそうですね。

大企業をやめて起業、不安はなかった?

だから、はっきり変わってきているので、むしろこういうところで勉強したら、どこの会社でも入れるという感じです。あとからまた説明あるかもしれないけど。だから、当然この大学に4年間通っても、いわゆるコンテンツ産業じゃなくて一般企業に入る人もいるわけですよね。

でも、デジタルハリウッドから採るということは、「ひと通りこういう世界のことをわかってるだろうから、いいな」っていって採ってくれるわけです。

だからもう、それがわかってる企業は先進的な企業が多いんですよね。先進的っていうのは、簡単にいえば、生き残っていく会社ですよね。変わらない大きな会社というのはたぶん危ないわけですよ。

だから、この何年間で、絶対揺るがないと思ってたような大きな会社が次々と揺らいでるじゃないですか。ソニーもそうだったし、シャープもそうだし。

だから、ああやって電化製品なんて、一番先端的なものを扱っているように見えていても時代は揺らいじゃったなって思うんです。

福田さんはいわゆる大きな企業にずっといることもできたけど、自分で会社始めるってときは怖くなかったですか? 「自分の人生大丈夫かな?」って。

福田:少し不安はありましたけどね。やっぱりお金が続くのかとか。やっぱり不安はありますね。今も不安はあります。

杉山:そうね。経営してたら常にそうだよね。

福田:そうですね。

ビジョンへの共感者は多数

杉山:でも、実際問題どうですか、意外と助けてくれる人は多いもんなんですか? 少ないもんなんですか?

福田:僕の場合は、むちゃくちゃ多かったですね。ビジョンに共感してくれる方もけっこういましたし。バカにされることも多い一方で、共感も多いんですよ(笑)。

「かめはめ波打ちたいよね!」って言うと、だいたい「打ちたい!」ってみんな共感はしてくれるんです(笑)。それを勧めはしないですけど。なので、応援してくれる人はそこそこいたかなと思います。

杉山:でも、少なくとも、今、こういう方向に関しては、世界的にそうだけど、出資者に困るようなことはあまりないですよね。ちゃんとした計画を立てれば。

福田:そうですね。出資はしていただけるんですが、やはり誰でも出資してもらいいたいわけではなくて、こっちも選びたいですよね。

杉山:もちろん、そうですね。

福田:誰がお金を出してくれるのかというのは。

杉山:会社経営ではそこも勉強のしどころですもんね。

でも、そういう感じなんですよ。だから、やりたいことがあるのに、誰もお金出してくれなくて、自分がやりたいことができないとかって状態じゃなくて、「ちゃんと未来が見えてるな、この子」という人には、けっこうみんな出したがるんですよね。

だけど、みんな出したがるけど、よく選ばないといけない。どの人からお金もらうかによって……。間違った出資者もいるのでね。支配したりとか、すぐ儲かると思ってるとか。そういう人は困りますよね。

福田:そうですね。怖い大人、いやらしい大人、たくさんいますので(笑)。

杉山:(笑)。でも、ちゃんとした目を持っていれば、まったくバックグラウンドがなくて、一文無しからでも、始められるんですよ。

昔と違うのは、パソコン数台から始められるんだもんね。パソコン数台とスマートフォンが何台かあればいい。すごいよね。

福田:スタートするのにお金はとくにいらないですよね。

若者にチャンスが与えられる時代に

杉山:そこはまったく昔と違って。昔は会社を作ろうと思って、社員も最初から雇おうなんて思ったら、数千万円とか持ってないと、なにもできないじゃないですか。だけど、まったく違うし。

最近は都内なんかだとシェアオフィスとか、時間いくらで貸してくれるような場所もあるから、そういうところを利用したら、自分でオフィスを借りなくても、とりあえず会社は始められるんじゃない? そんな時期ありました?

福田:僕たちも会社設立して1年半ぐらいは、ずっとコーワーキングスペースとかシェアオフィスだったので、自分たちの自社オフィスはなかったです。

杉山:そこの家賃みたいなものはけっこう安く済んだ?

福田:そうですね。タダで使わせてもらっていたこともありますし。僕たちはKDDIに支援いただいていて、KDDIのオフィスをずっと借りてたんです。

杉山:そうやって、意外と若者にはすごいチャンスを与えてくれてるんですよ、今。そういう大きな会社で余裕あるところが、「じゃあ、半年間はタダでいいよ。芽が出るかどうかまで、タダで使っていいよ」とかって条件があるんですよね。そういうところが、いくつも。

福田:そうですね。

杉山:なので、やっぱりちゃんと学んで、ちゃんと技術があって、それで、こういうことをやるんだ。これはきっと世の中の人に役立つ、喜んでもらえるというのがはっきりしていれば、本当にチャンスはありますよね。だから、福田さんもすごくいい例ですね。

今、いわゆるスタートアップという言葉で最近言われるようになったけど、周りに会社つくってがんばってる人は多いんじゃないですか?

福田:多いですね。

杉山:そういうの見てどうですか? 増えてるなって感じはする?

福田:増えてるなって感じはしますね。ただ、すみません、すごい失礼なこと言いますけど、「小粒だな」って思うこともすごいたくさんあって。「こいつらちっちぇえな」とか「目指してるところがしょうもねーな」っていうのもよくあります(笑)。

杉山:(笑)。

福田:やはりどうせやるなら、でかいことを成し遂げたいですよね。

誰もやっていないことを先んじてやる

杉山:そうだよね。小粒でいいなら、簡単にできちゃうんだよね。自分たちが食っていくぐらいはなにかおもしろいことができるんだけど、「それでいいのかな?」というのもあるわけですよ。やっぱり、やる以上は。

とくにデジタルコミュニケーションなんていうのは、ネットでつながってる人って今40億人ぐらいいるわけですよ。今ここからだって40億人とつながろうと思ったらつながれるわけですよ。だから、すごい人数を相手に仕事ができるんですね。そんなのトヨタとかだってありえないですよ。40億人相手に仕事してるなんてないでしょう?

今、Facebookはアクティブユーザーが16億人近くなってきたんですよね。もうぜんぜん昔の、例えばハーバードとかスタンフォードとか、2000年になってしばらくぐらいまで教えていたビジネススクールみたいなところが想定していたものとはまったく違うんだよね。

そういう、大企業をケーススタディして理解して、自分のビジネスをつくっていきましょう、みたいなものがもう役立たない。FacebookとかGoogleがやったことを見るとね。

だから、福田さんがやってるようなこともあっという間にたぶん広がって。けっこうもう、そこら中から問い合わせとかあるんじゃないですか。

福田:あります。大企業もやっぱり自分たちだけで新しいイノベーションを起こせるとはあまり思っていないので、ベンチャーと協力してなにかやっていくとか、そういう志向が強くて、常に新しい種やベンチャー企業を探してる会社も多いですね。

杉山:でも、ある意味、「福田さんたちに頼まなきゃな」といつも思わせておくためには、けっこう研究開発とか、そういう勉強みたいなことも、ずっと重要なんじゃないの? 会社のコアとして。

福田:そうですね。競合がいると意味がないと、僕は思っているので。同じことをしていてる会社を2つつくっても意味ないので、誰もやっていないものを先んじてやる。それで、圧倒的にワクワクさせる、というのが大事かなと思っています。