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競争と共創〜FinTechの現場から〜(全3記事)

FinTechで変わる私たちの生活 人工知能がビジネスを加速、夢見た世界ははすぐそこに

9月6日、新経済連盟が関西初の大型イベント「Hello, Future! 新経済連盟 KANSAI SUMMIT 2016」を開催しました。「競争と共創~FinTechの現場から~」と題して行われたパネルディスカッションには、日本のFinTech業界を牽引するコイニー、freee、マネーフォワードのトップ3人が登壇。FinTechによって、私たちの生活はどのように変わるのか。さまざまな意見が交換されました。

競争と共創〜FinTechの現場から〜

司会者:これより、パネルディスカッション「競争と共創〜FinTechの現場から〜」を開始させていただきます。

一般社団法人新経済連盟幹事、freee株式会社代表取締役、佐々木大輔。

(会場拍手)

コイニー株式会社代表取締役社長、佐俣奈緒子さん。

(会場拍手)

一般社団法人新経済連盟幹事、株式会社マネーフォワード代表取締役社長、辻庸介。

(会場拍手)

このセッションの進行は辻さんにお願いします。よろしくお願いします。

辻庸介氏(以下、辻):みなさん、こんにちは。マネーフォワードの辻と申します。1部では「FinTech」の話をさせていただければと思います。

まず、みなさんに手を挙げていただきたいんですけれど、FinTech、最近いろんな新聞とかを賑わせていますが、「だいたいこんな感じって意味がわかっているよ」という方、よろしければ挙手いただければと思います。

(会場挙手)

さすが、今日来ていただいている方は半分くらい。そういう理解度ということですね。

今日来ていただいた方には、FinTechがどういうものなのかという理解と、実際に我々3つの会社を起業しているものとして、現場でどういうことが起こっていて、どういうふうに世の中、未来が変わっていくのか、といったことをシェアさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

FinTechとは?

はじめに、簡単に「FinTechとは?」という、FinTechの簡単なインプットを僕からさせていただければと思います。

このあたりはご存知の方も多いと思うんですけれど、「Finance×Technology」ということで、FinTechという造語でございます。

もともと金融サービスは数字を扱うので、非常にITと相性がよく、昔からの潮流ではあるんですけれど、古くはネット証券やネット銀行が出てきました。最近になってアメリカでFinTechというコンセプトがうまくまとまりまして、今、ブームが来ているというかたちだと思います。

FinTechと言うと、本当にいろいろなものがございます。例えば、中小企業向けの会計とか、個人・中小企業の資産運用、ソーシャルレンディング、融資のところですね。あとは、個人の資産管理、ブロックチェーンがかなり話題になっていますが、ビットコイン、決済、金融情報。

このほかにもたくさんいろいろな分野があるんですけれど、こういった金融それぞれの分野がテクノロジーによって変わっていくということを、FinTechとイメージしていただければと思います。

今日お越しいただいた佐々木さんは、会計。会計だけに留まらず今後も拡がっていくと思うんですけれど、そういう分野をされていまして、佐俣さんは決済。それぞれの分野のスペシャリストとして、いろいろなお話をうかがえればと思います。よろしくお願いいたします。

では、私からのFinTechのざっくりとしたご説明は終わりにいたしまして、佐々木様、佐俣様から簡単に自己紹介をしていただければと思います。よろしくお願いします。

創造的な活動だけにフォーカスできるように

佐々木大輔氏(以下、佐々木):こんにちは。freee(フリー)の佐々木と申します。私たちは4年前にfreeeという会社を設立しまして、スモールビジネスに携わるみんなが創造的な活動にだけフォーカスできるようにしたい、と。

要は、小さなビジネスを運営している方が、よりかっこよく仕事ができる、そういう環境を作ろうということで、小さなビジネスを経営している方でもやらなければいけない経理などを中心としたバックオフィスの仕事を、人工知能を使って自動化していこう。こういうことに取り組んでいる会社です。

4年前に設立したんですが、今では従業員250人くらいの規模の会社になっておりまして、シリコンバレーのベンチャーキャピタルを中心に大型の資金を調達し、急成長している会社をやっています。

具体的に提供しているサービスは、小さなビジネスを始められる方が、会社を始めて、それから会社が大きくなっていくまですべてをサポートしていこうということで、会社設立をスマホからでも5分で終わらせることができるツール「会社設立freee」の提供から。

日々の会社の運営に使う会計ソフトの自動化。これは金融機関のデータとか、クレジットカードのデータ、それから人工知能を使って、経理のプロセス全体を自動化しようというものです。

さらに会社が大きくなっていく段階では、給与計算とか人事の管理が必要になってきますので、そちらも含めてクラウドで自動化していく、こういったサービスを提供しています。

とくに、FinTechの領域でいうと、会計がFinTechと密接に関係しているのかなと思っています。この会計という分野にとらわれず、今後は新しいイノベーションを提供していこうと考えています。今日は、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

キャッシュレス社会を作りたい

:佐俣さんお願いします。

佐俣奈緒子氏(以下、佐俣):コイニーの佐俣と申します。私は、18年間、広島で生まれ育ちまして、その後、京都の大学に進んで、京都で過ごしたあと、就職で東京にということで、大学時代は関西に住んでいました。

今も、姉と弟が大阪に住んでいまして、それぞれ10年以上大阪にいるんですけれど、2人とも福島(区)に住んでいるので、大阪はすごく馴染みある、よく来る街のひとつになっています。

コイニーは、スマートフォンとタブレット、あと専用の端末を使ってクレジットカード決済をするというサービスをやっています。私たちには、キャッシュレス社会を作りたいという想いがあって、現金を持たなくても生活ができるような社会を作るために、まずはひとつ、クレジットカード決済を中心に提供しています。

例えば、大阪にはいっぱいたこ焼き屋さんがあると思うんですけれど、今は、みなさん現金で代金を払っていると思うんです。そこがクレジットカードで払えたり、あるいは、電子マネーで払えたり、モバイル決済、いろんなかたちのもので払えたりというものを、一つひとつ提供していくのが、私たちがやるべきことかなと思っています。

ほかに、これは先週出したんですけれど、オンライン決済で、簡単に決済ページを作って、お客様に請求するみたいなサービスも展開を始めました。

リリースして3日くらいなんですけれど、お店の方が金額を入れて、ボタンを押すと、決済のページができて、それをお客さんに共有すると、カードで支払いができるというサービスです。早速、週末にこれで車を売ってる人がいました。中古車の売買もできます、というようなかたちで、今、拡がっています。

さらに、今、大阪を中心に海外からのお客様がすごく増えていると思うんですけれど、とくに中国のお客様向けに、中国ですごく人気のWeChat(微信)という4億人くらいが決済として使っているサービスがあるんです。そこも今後、提供していきます。

とにかく財布を持たなくていいサービスは、我々が全部取り込んでしまおうと思っています。これが、コイニーが今やっていることです。

財布を持たずに生活ができるように

:ありがとうございます。質問したいんですけれど、コイニーさんがやられている「決済」って、なかなかみなさんに見えにくいところだと思うんです。ビフォー・アフターでどう生活が変わっているのか? そのあたりを具体的に教えていただいてもよろしいですか?

佐俣:ふだん生活する立場と、お店の方、2つの視点があるのかなと思います。

生活する立場でいうと、みなさん、今はお財布を持っていろんなところに出かけて、現金で払ったり、カードで払ったりというのをやっているんですけれど。コイニーみたいなサービスが拡がっていくと、まずお財布を持たなくていい。例えば、ケータイひとつ、カードひとつで生活ができるようになります。

払ったもののデータがすべて、現金とは違ってデジタルでレシートがあがってくるので、それが会社のものであればfreeeさんに取り込みます。個人のものであれば、マネーフォワードさんに取り込みます。

いろんなデータを購買情報で振り分けて管理することができるというのが、消費者側かなと思います。

お店側では、同じくデジタルデータになっていくので、それを会計ソフトに集めることで、なにもしなくてもバックオフィスが楽になるというところがひとつあると思っています。

お金で人生を前向きに

:ありがとうございます。だいぶイメージが湧きましたでしょうか。私の説明も簡単にさせていただきます。

今日、私をモデレーターに選んでいただいたのは、おそらく私が大阪の天王寺出身だからだと思うんですけれど(笑)、大阪で育って、京都大学を出まして、ソニー、マネックスを経て、起業いたしました。

新経連のFinTech推進プロジェクトチームというものを、佐々木さんと私でやらせていただいていまして、今、経産省さんのFinTech研究会にも参加させていただいておりまして、日本のFinTechをどう促進していくかということを話させていただいております。

我々の会社は4年前に立ち上げた会社なんですけれど、お金をもっと使うことによって、人生とか企業とか、そういったものの活動が前向きになっていくんじゃないか、と。それをテクノロジーでやっていきましょうと、起業した会社です。

今、主に2つのサービスを提供しています。個人向けのパーソナルファイナンスマネジメント(PFM)、日本語で言うと、自動の家計簿とか、資産管理。これが今、ユーザー350万を突破しています。

もう1つが、中小企業向けのクラウドサービス。これはfreeeさんと同じようなかたちなんですけれど、そういうサービスをやらせていただいております。

今、37億円ほど調達させていただいておりまして、けっこう金融機関様に多く出資していただいております。FinTechというのは、金融機関とテクノロジーの融合ということで、新しい金融サービスを一緒に生み出していきましょうと、今、いろいろ進めさせていただいている会社でございます。

FinTechで私たちの生活はどう変わる?

では、本題に移っていきたいんですけれど、FinTechは、はじめにいろいろご説明したみたいに広い概念です。

ここに来てくださっている方は、半分くらいの方が経営者で、半分くらいの方が会社で働いてらっしゃる方ということで、そういう実際の方々の生活がどういうふうに変わっていくのか。

具体的に生活シーンのなかで、「FinTechを使っていくとこんなに便利になるんだよ」「こういう便利な世の中なっていくんだよ」ということを、イメージでけっこうですので、お話しいただければと思います。佐々木さんからお願いします。

佐々木:これは、僕がなぜ今のビジネスを始めたかというところにすごく密接に関連しています。僕は昔、ベンチャー企業でCFOをやっていまして、いわゆる財務の仕事をしてたんです。自分のチームに経理担当の人間がいたんですけれど、一日中、入力業務をやっているんですね。

当時、20人くらいのベンチャー企業だったので、できれば全員で直接価値を生むような仕事がしたいと。

そういうなかで、1人ずっと入力をしていなきゃいけない人間がいるというのをなんとかしたいなと思って、徹底的に業務を分析して、なにか無駄なことやってるんじゃないかと調べてみたことがあったんです。

結局そこでわかったのは、会計ソフトというものに限界があって、どうしても経理の業務では何度も何度も同じ入力をしなきゃいけないということが、そのときにわかったんです。でも、その時の僕は課題意識だけで、解決策というものは持ち合わせていなかったんですね。

その後、僕はGoogleに転職しまして、中小企業向けにテクノロジーをマーケティングする仕事をしていました。

やっているうちに、Googleという会社は世界にオフィスを持つ大企業ですけれど、ビジネスのほとんどすべてをクラウドの上でやっていて、紙で入力するとか、そういう作業は一切ないんですよね。なるほど、こういうふうに会社も経営できるのかと。

これを小さいビジネスにも広げられるのかなとみてみると、小さいビジネスの経営の現場では、今でもFAXが送られていたり、紙での入力業務が非常に多い。

ただ、Googleほどの大企業でもできるんだから、小さい会社も絶対できるんじゃないかと思って始めたのが今のビジネスです。

まさにそこに中心があるんじゃないかなと思っています。例えば、今、Amazon Prime Nowで物を頼んだりすると2時間以内に届く。ただ、これって、18時に振込みをすると、相手に届くのは翌朝の9時なんですよね。すでに今、物が届くよりもお金が動くほうが遅くなる、こういう時代です。

優秀な人工知能がアドバイスしてくれる時代が来る

さらに、例えば、家を貸しましょうと、Airbnbで家を貸せば、すぐに借り手が見つかる。しかも、ワンクリックで見つかるんですけれど。

じゃあ、お金を借りるってなった時に、ビジネスとしてお金を借りようとすると、決算書をバーっと何百枚もプリントアウトして提出しないといけない。

ユーザーエクスペリエンスのいい業界のなかではすでに経験できるようなことが、ひとたびファイナンスという文脈になった瞬間に圧倒的にユーザー体験が悪くなる、こういうことが今、起きていて。これらすべてがどんどん解決されていく時代が来るんじゃないかと。

とくに、入力業務とか、あるいは、決済、支払いが簡単になるとか、こういったところから始まっていくんだと思うんですけれど。これによって、今までデジタル化していなかった経済取引がどんどんデジタル化してデータになって、クラウド上のサーバーに入ってくる時代になっていくと思っています。

こうすると、そこから先は、本当に人工知能の世界になってきて、「じゃあ、あなたは今こういうことをしたほうがいいんじゃないか」と。

Facebookを使っていると、「もしかして、この人は知り合いですか?」って出てくるわけです。「あなたのビジネスでこういうことをやったほうがいいんじゃないですか」と、しかもわりと精度の高い提案が、近い将来どんどんできるようになっていくんじゃないかと思っています。

結果として、1人でビジネスをやっていて、1人で飲食店を経営していますという方にも、大企業のCFOと同じくらい優秀な人工知能エンジンがついてアドバイスをする。こういった世界ができていくんじゃないかなと、僕は思っています。

:ありがとうございます。

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