2024.12.03
セキュリティ製品を入れても検出されず…被害事例から見る最新の攻撃トレンド 不正侵入・悪用を回避するポイント
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伊藤穰一氏(以下、伊藤):ゲームの視点、もうちょっとテックの話で言うと、けっこうみんなゲーミフィケーションは「経済的な欲をくすぐる」みたいに単純化してしまうけど、ゲームの歴史、特にマルチユーザーゲームを見ていると、けっこうおもしろい。やっぱり良いゲームデザインというのは、進化するのにすごく時間はかかるんだけど、ゲームデザインの歴史を見るとすごくおもしろいです。
リチャード・バートルという最初のMMORPGを作った人物は、だいたいプレイヤーには4種類いると言った。「ストーリーが好きな人」「人間と対戦するのが好きな人」「自分のアチーブメントを育てる人」そして「ソーシャルな人」。この4つのタイプのプレイヤーをいかに一緒にコラボレーションさせるかが良いゲームの設計で、その中で例えばいろんなクエストが動くのが理想。
ゲーム内にお金のようなものがあっても、お金で買えない、クエストをやらないともらえないものとか、みんなとコラボレーションしないともらえないものというように、この4種類のプレイヤーが一生懸命協力しないと次に進めないような設計にすると、すごくおもしろい。ギフトエコノミーにあるようなお金で交換できないものですね。
今の馬の話も、ゲームデザイナー的に考えるといろんな社会で起きてほしいことをゲームにしてくすぐっていると思います。いろんなパーソナリティタイプがちゃんと連携してお互いに感謝を与える社会のためのゲーム作りなので。だからDAOの、今だと価値が上がるかもしれない、それと投票に口出せるかもしれないというトークンは、すごく単純なゲームフィケーションなので、すぐ飽きちゃうよね。
そうじゃなくて今の馬みたいな、いろんな複雑なプログラムをNFTの中にエンコードできる。そうするとこのコミュニティにはどんな人たちがいて、その人たちはお金以外のことでは何が目的で動いているのか。山登りが好きなんだ、これが好きなんだというパーソナリティをくすぐるようなおもしろいゲームをどうやってデザインするのかなというところだと思うんだよね。
伊藤:僕は、ゲームデザイナーたちがもっとNFTの中に入ってくると、こういうリッチなものができてくると思います。
でも、今ゲーム業界はNFT嫌いな人が多いんだよね。お金を持ち込むと良いゲームが悪くなるのは、実際にある。やっぱりゲームが単純化しちゃうから。で、お金持ちがゲームで進むのは嫌だから。だからプンプンお金の匂いがするNFTの業界と、本当にコミュニティをちゃんとテクノロジーにエンリッチできるゲームデザイナーたちのコラボレーションが必要なのです。
逆に山古志みたいにお金の匂いがしないところで実験すると、もしかしたらいいプロトタイプができるんじゃないかなとは思います。
小川さやか氏(以下、小川):自生貨幣大好き人間からすると、こういう種類のアイデアがいっぱいあるんですよ(笑)。
伊藤:作ってみたらいいと思いますよ。それでDAOの中のサブDAOで、1つのプロジェクトとしてゲームをやってみる。NFTを少しプログラミングできる人がいると、けっこうさっさと実験できると思うんですよね。
小川:例えば宮台先生がおっしゃるような人間の本当の触れ合い、性愛のようなものが普通の社会の中にはちゃんと組み込まれていて。そういうものと貨幣は連結してたと思うんですよね。子どもが産まれてとか、老人になってというような。死とは何かとか。
そういうものを全部もりもりっと入れた、貨幣のおもしろいバグシステムを妄想するのが好きなんです(笑)。そういう意味では私は山ガールだったので、どうしたら山の話がもっとおもろくなるのかも、ぜひ考えたいなと思います。
林篤志氏(以下、林):これはぜひ実験をやりましょう。
小川:じゃあ何がいいかは選んでください(笑)。
林:わかりました。
林:今日オーディエンスとして参加してくださっている方のほとんどは日本の方ですけれども、今の日本社会の現状と照らし合わせて、どのように社会システムを構築していくかにクロージングしていきたいと思います。1個ちょっと抽象度の高い質問ですけども、ピックアップします。
「人類は社会的進化をした生物として、集合脳が発展して集団脳が社会組織を作り、生存圏を広げていけば社会は進化した。その結果、生存圏を劣化させ破壊して文明が終焉するという人類の矛盾があると思います」と。「つまり社会が発展すればするほど社会が劣化するという、この矛盾をどう解いていけばいいでしょうか?」ということで、宮台さんに宛てられたような質問ですが、いかがでしょうか。
宮台真司氏(以下、宮台):人類史を振り返ればいいんです。1万年以上前は遊動段階です。ダンバーズ・ナンバー(社会的接触を保持できる人の数の遺伝子的限界)以下で移動していました。1万年前から順次定住が拡がりましたが、それを支えたのが農耕です。農耕には計画が必要で、水利を含めて組織的な集団作業も必要で、さらに収穫物を保全・配分・継承するための紛争処理も必要なので、法と所有概念ができました。
その法に従って、150人以下のバンドだったものが、バンド集合体であるクランになりました。バンド段階ではリアル血縁による結び付きでしたが、定住で始まったクラン段階では疑似血縁(トーテミズム)になります。
同時に、法と所有の概念ができ、所有の継承線を定めるために、交尾と子育てのためのモノガミー的なメイティングが、永続規範つまり長く続かなければいけないという意識を伴うマリッジ(結婚)に進化しました。
その後、3,000年プラスアルファぐらい前に、行政に文字が使われるようになったことで、大規模定住化つまり文明化が生じます。文字は定住が始まった1万年前からありましたが、行政に文字が使われるようになったのは文明以降で、最近です。
並行して、音声言語につきものだった、言葉を歌のように使う詩的言語が後退し、言葉を統治のためにロゴスとして使う散文言語が前景化します。そのあたりから我々は、人類史的には最近すぎて持続可能性が確かめられているとは言えない、統治された文明生活に入ります。今日に至る「戻せないボタンの掛け違い」みたいなものに入っていくとも言えます。
宮台:それはすごくわかりやすい展開です。計算可能性が上昇しないと、大規模定住社会は統治できないし、計算能力が上がらないと民衆も生きられないということで、計算不可能なものを排除していく流れになります。
1万年前からの初期定住においてさえ、あまり知らない人たちと疑似血縁ベースの法生活を営むことがストレスフルだったので、定期的に祝祭を営むようになりましたが、文明化によってパフォーマティブ(遂行的)というよりコンスタティブ(記述的)な言葉に転態したことでよりストレスフルになったと言えます。
ところが、産業革命以降の近代文明になると、それでも計算不可能な領域として残っていた祝祭や性愛やそれらを保全してきた共同体までもが、どんどん切り捨てられていく流れになります。まず、(カール・)マルクスが言うように、資本投下の動機付けは計算可能性によるので、資本の増殖のために計算可能性を上げようとして、計算不可能な市場の外がどんどん計算可能に市場化されていきます。
この抽象的遷移の図式を行政に適用したのが(マックス・)ウェーバーです。産業化によって人々の生活が、市場だけでなく行政官僚制に依存するようになると、行政官僚にとっても、計算可能性がますます重要になるので、社会全体がどんどん手続き主義化していくと言うんです。これを彼は「鉄の檻」と呼びました。
ということで、19世紀後半からマルクスやウェーバーが警鐘を鳴らした「社会から計算不可能なものが消去されていく動き」が、今ご質問者のおっしゃった逆説です。それが逆説なのは、市場では資本の自己増殖が目的とされ、行政では統治コスト低減が目的とされるがゆえに、計算不可能性を消去する動きが人を没人格化しがちで、その動きに歯止めがかからないからです。
宮台:しかるに、僕らが資本主義から離れることは永久的にありません。僕らの社会が投資を必要とするからです。僕らが行政官僚制から離れることも永久にありません。自治的共同体においてすら統治が必要だからです。とすれば、僕らが 没人格として扱われないで済む生活世界を維持するには、生活世界を市場や行政の侵食から保全しようとする価値観の貫徹が必要になるんです。
冒頭の話で出ましたけど、僕らが計算可能性を受け入れるのは、「同じ世界で1つになる」というフュージョンの享楽が、リアルの界隈で失われない範囲内に限られる場合だけだという価値観が大切です。
ふだんはなくても定期的にやってくる祭りでフュージョンを享楽するという時間化されたかたちか、ある界隈に出かければフュージョンを享楽できるという空間化されたかたちか、というバリエーションがありますが、いずれにせよ、統治と矛盾しない範囲内で、どれだけコントロールする/される時空から、フュージョンの時空を擁護できるかです。
それが擁護できれば、取り替え可能な市場や行政のパーツであることの生きづらさから自由になれます。
これが今おっしゃった逆説でして、何がどう絡んで逆説になっているのかということは極めて明確で、それを徹底的に踏まえた上でテックをデザインすることが大切です。
ただし、「1人に1つのメタバース」みたいな各人ごとにカスタマイズされたゲーム的時空間でだけフュージョンの時空を回復するのでは、ゲームの外にいる少数の卓越者に、気候危機や戦争などの国際紛争に関わる営みを、任せきりにすることになりえます。僕は、専制に見えない「新しい権威主義」の問題だと言っていますが、まずい展開です。
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