2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
リンクをコピー
記事をブックマーク
小川さやか氏(以下、小川):カストロの多自然主義みたいな話は、最近確かに人類学でめっちゃパースペクティビズムとかも含めて流行ってまして。
アニミズム的感性という、文化は1つで自然は多種類で、いろんな世界が実はうごめいていて。その多種間の間にコモンズが排退したりとかっていう話があったっていうのは、確かに今の日本の人たちにちょっと「えっ」てなってるかもしれないなとは思うんですけど。
もう1つやっぱり日本のアニミズムと一緒に語っていいかわからないですけど、もう少し偶然的な変容みたいな、変身みたいなものがあったと思うんですよね。その可能性がすごく減退したから、硬直的でアニミズム的感性が失われたんじゃないかなというふうにも思っていて。
例えば、規範的、倫理的に取り締まるみたいなのがあんまり好きじゃないので(笑)、いっそのことインターネットはすべて声の文化に戻ったほうがいいんじゃないかみたいなエッセイを書いたんですけれども。日本語ってとりわけ主語がなくても、どんどん変身していける言語じゃないですか。「私は宮台さんが好き、ていうのは冗談、って言ったら悲しい?」みたいな感じで。
述語に応じて、私が何者かっていう私、宮台さんが好きな私、宮台さんが好きという冗談を言う私、宮台さんが好きという冗談を言ったら宮台さんが悲しむか知りたい私みたいな感じで、変身していけるような言語で。
それに応じてすごく変容可能なものだったと思うんです。その変容可能性みたいなものと、例えばキツネ憑きとかですね。何かが変わったり、豹変したりするっていうようなものも十全に受け入れられてたと思うんですけど、今なんかそういうのがなくて。
発した言葉とか行動そのものが、物のようにフェティッシュ化して固定化してしまうのが、なんかつまんない現象の一歩なんじゃないかって思っていて。
そういう意味ではすごく、身体性をもう1度埋め戻すっていうのは、メタバースやなんなり、インターネットの世界においてすごく重要だなって思います。答えになってないかもしれないですけど。
林篤志氏(以下、林):そういう許容性が失われてしまったもの。実は今Discordの中にも、世間がなくなったっていうけど同調圧力めちゃくちゃ強いじゃんみたいなコメントもあったりするんですね。
今、さやかさんが言ってくださった許容性みたいなものがなくなってしまった要因ってなんだと思いますか。
宮台真司氏(以下、宮台):それは単純に言えば、文脈の共有がなくなったからですね。コンテクスト、テクストと共にあるもの、テクストの横にあるものを共有していれば、テクストは比較的どうでもいいんですよ。
しかし形式的に言えば、コンテクストの共有がなくなれば、テクストの同一性に固執するという神経症の症状が生まれるんですよね。
小川:そうですね。
宮台:今もすごい広がっているのが、現在だということです。例えば今コンテクストの共有に戻るということは、日本というマクロなレベルでは、はっきり言えば100パーセント不可能ですね。
それはさまざまな最近の事件を考えればわかると思うんですけども。なので、マイクロな民主政体、あるいは共同体自治、コミュニタリーミュニシパリズムが必要である理由が、コンテクストの共有から始める必要があるということなんですよね。
もちろんコンテクストにもいろんなレイヤーがあります。身体のレイヤーもあれば、身体と心のインターフェイスというレイヤーもあれば、心、あるいは意識のレイヤーもあります。いろんなレイヤーがあるんだけれども、コンテクストをたくさん共有していればしているほど人は寛容になるんですね。
林:うん。
宮台:これは形式的な問題なので、疑いがないという意味です。
林:これ、一応確認なんですけど、ここで言ってるコンテクストは、必ずしもそのパーパスと同一ではないですよね。
宮台:パーパスは、コンテクストとは何の関係もないですよね。パーパスはまさにテクストそのものです。だから、あんまり言及する必要はないと思うんですけれども。例えば遊びって目的ないですよね。遊びはただ楽しいだけです。
遊びをする前に、まず目的を決めようというトンマはいませんよね。そこから考えれば、そのすべてがわかると思います。
林:なんでそれをわざわざ聞いたかというと、これからその反システム化に対する対抗策として、マイクロコミュニティ、小さな共同体が生まれていった時に、結局その中で同調圧力が生まれるんじゃないのっていう、そういう指摘とコメントがけっこういろんなとこで散見されたので聞いたんですけど。
そういった意味ではマイクロコミュニティの中でのコンテクストが共有されているっていうことが重要であり、それが大前提であるということですね。
宮台:「森のようちえん」の実践を最近よくやってるんですけれど。そこで遊んでる子どもたちには同調圧力はまったくないんですね。むしろ分業が生じるんです。あるいはみんなでやってる時に、「じゃあ君はこれね」「僕はこれね」とやることによって、遊びが楽しくなるということがあるわけですね。
そこからわかることだけれども、遊びっていうのはコンサマトリーであるが故に、つまり自体的というか、self‐contentであるが故に、つまりパーパスがないが故に同調圧力がないんですね。
簡単に言うと、目的の共有から始まっている場合には「君の営みは目的に資するところがない」みたいな感じで、同調圧力が目的という起点をベースにして働いてしまうんですよね。
宮台:これは社会学で言うと戦間期の議論だけれど、コミュニティというのは目的がないんです。アソシエーション、組織集団というふうに訳したりもしますが、組織集団には目的があるんですね。
これは非常に重要な議論で、我々は目的がないコミュニティをベースにして、つまりホームベースにして、バトルフィールドとしてのアソシエーション(組織集団)に乗り出す。特にこれがアングロサクソンの考えなんですよね。あるいはアメリカ的な通念であると言ってもいいわけですけれども。
その意味で言うと、アソシエーション、目的を共有する集団が、我々の感情的な安全、エモーショナルセキュリティを支えてくれるホームベースになる可能性は基本的にないんです。
ただ19世紀の後半にマルクスはアソシエーション、つまり人為的に作った集団だけれど、それが感情の安全を保障するコミュニティになり得るのではないかということで、ある種労働組合を構成した。そうした発想はイギリスの協同組合の発想などに、すでに19世紀の初めに見られるんですよね。
我々のホームベースであるけど、たまたまそこに生まれ落ちたっていう偶然性に依存しすぎていて、その分自分で作ることが難しい。自分たちで作ることが難しいっていう。
しかしそれをなんとかしないと我々の未来は開けないんではないかっていう発想は、19世紀に出てきていて。それは我々にとって、あるいは林さんにとっても非常に重要。なぜかって言うと、もう日本には自生的なコミュニティって残っていないからですよね。
林:そうですよね。だから高度経済成長の日本の、いわゆる日本型の大企業みたいなものっていうのはある種のアソシエーションでありコミュニティ的な機能を担っていたと僕は思ってるんですけど。
林:これは、春山さんにちょっと振りたいんだけど。YAMAPっていうベンチャーは、アソシテーションなんですか? もしくは、コミュニティ的な要素もあるんですか? 春山慶彦氏(以下、春山):さっきの流れで僕なりに振り返ると、アニミズム的って、小川さんが言ったように、僕もけっこう思考は日本語に引っ張られてると思っていて。
つまり主語がない言語は、ものすごく特徴的だと思ってるんですね。主語がない中で、僕らは文脈がわかる。これがコンテクストだと思っています。
そこに対しての「切実な場」があるかが極めて重要だと思っていて。こういう言語になったのはどうしてかと僕なりに考えると、やっぱり場とか風土とか。要は自然の変化が激しいので、無常観も含めてそっちのほうに重きがあるっていう文化形成をしてきたんじゃないかなと思っているんですけど。
戦後、災害が少なかったことも含めて、場がどんどん崩壊していって。それは自然環境もだし、世間もなくなっていってしまって。場がない中で、根がない葉っぱ同士でふわふわやっている。なんか生命力がないというか議論がかみ合わないという感じになっているのかなと思います。
自然に場を置いた時に、さっきの宮台さんの「森のようちえん」の話にもつながるんですけど、山に行くと未だにみんな挨拶するんですよ。まったく都会では挨拶しない人たちが山に行ったら挨拶をする。
あと、スピードも別にそれぞれのスピードで頂上を目指すことが何の違和感もないんですけど、都会でそれをやると、エスカレーターとかで歩いてるとイライラし始めるっていう。
これ、どういうことかって、やっぱ場の設定だと思っていて。自然を舞台にした時には人間ってそもそもが弱い存在なので「助け合おう」っていうデフォルトになる。これが僕は当たり前というか、地球環境の前提だと思うんですけど。都市化が進んでしまったが故に、そこの感覚が麻痺してしまったということだと思っています。
林さんが今言った質問で言うと、YAMAPは遊びのコミュニティなんですね。だからこうあらねばならないって、実はなくて。山を汚さないレベルで好き勝手に自分なりの楽しみ方をすればいいっていうか。
それは1人でもいいし集団でもいいし、子どもとでも親子でもいい。楽しむってことが今の時代において、すごく貴重な余白だと思っていて。自分で感じてどう楽しむかっていう。つまり出発点は自分にあるっていう。これが極めて貴重。逆に言うと、都会であまりにもそのスペースがなくなってしまったのが、もったいないなと思っています。
経済・社会指標の急降下は、「日本特有の劣等性」ではない 宮台真司氏が、他国も似た問題に直面すると考える理由
テクノロジーは「安全・便利・快適」を実現するが「孤独」も生む 宮台真司氏が説く、良いテックと悪いテックを区別する必要性
日本人の「適応力」が、地域社会の崩壊や人々の孤独につながる 宮台真司氏が指摘する、日本人の「学習志向」がもたらす弊害
なぜ都会では「遅い人」にイライラするのか? YAMAP代表が語る、人が「助け合いモード」になる場の特徴
宮台真司氏が語る、人が「損得マシーン」になる理由 打算なく「同じ世界」を共有するための仕掛けとは
安全・便利・快適だけに固執するデザイナーは「社会的に有害」 宮台真司氏が考える、これからのテックデザインのポイント
宮台真司氏が指摘する、歴史的に長く続いているものの価値 持続したものは、一挙にではなく徐々に変えたほうが良いワケ
なぜ資本主義が発達すると、「個性を失う人」が増えるのか? 宮台真司氏が説く、自分らしく生きるために必要な価値観
宮台真司氏が語る、これからの社会デザインに必要な観点 「僕らが擁護できる多様性は一定の枠内」
2024.12.12
会議で発言しやすくなる「心理的安全性」を高めるには ファシリテーションがうまい人の3つの条件
2024.12.19
12万通りの「資格の組み合わせ」の中で厳選された60の項目 532の資格を持つ林雄次氏の新刊『資格のかけ算』の見所
2024.12.16
32歳で成績最下位から1年でトップ営業になれた理由 売るテクニックよりも大事な「あり方」
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.12.10
メールのラリー回数でわかる「評価されない人」の特徴 職場での評価を下げる行動5選
2024.12.13
ファシリテーターは「しゃべらないほうがいい」理由 入山章栄氏が語る、心理的安全性の高い場を作るポイント
PR | 2024.12.20
モンスター化したExcelが、ある日突然崩壊 昭和のガス工事会社を生まれ変わらせた、起死回生のノーコード活用術
2024.12.18
「社長以外みんな儲かる給与設計」にした理由 経営者たちが語る、優秀な人材集め・会社を発展させるためのヒント
2024.12.12
今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは
PR | 2024.11.26
なぜ電話営業はなくならない?その要因は「属人化」 通話内容をデータ化するZoomのクラウドサービス活用術
Climbers Startup JAPAN EXPO 2024 - 秋 -
2024.11.20 - 2024.11.21
『主体的なキャリア形成』を考える~資格のかけ算について〜
2024.12.07 - 2024.12.07
Startup CTO of the year 2024
2024.11.19 - 2024.11.19
社員の力を引き出す経営戦略〜ひとり一人が自ら成長する組織づくり〜
2024.11.20 - 2024.11.20
「確率思考」で未来を見通す 事業を成功に導く意思決定 ~エビデンス・ベースド・マーケティング思考の調査分析で事業に有効な予測手法とは~
2024.11.05 - 2024.11.05