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人工知能の急速な発達は、社会の何を変えるのか?(全3記事)

「仕事は絶対なくならない」人工知能研究の第一人者が説く、AI時代の人間の役割

“知のフロントランナー”と現役大学生が徹底討論する公開型授業『NISSAN presents FM Festival2017 未来授業~明日の日本人たちへ』が、2017年10月15日、東京大学本郷キャンパス工学部2号館212講義室にて開催されました。第8回目となる今回は、松尾豊氏・山極壽一氏・川村元気氏を講師に迎えて、「AIは産業・社会の何を変えるのか?シンギュラリティ後の世界で私たちはどのように生きていくのか。」をテーマに現役大学生と熱い議論を交わします。本パートでは、“人工知能研究のカリスマ”として知られる、東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏が登壇。そもそも人工知能とはなんなのか? 20年近く研究を続けてきた知見をもとに、学生たちの疑問に答えます。

AIビジネスの可能性

松尾豊氏(以下、松尾):次にビジネスの可能性をお話ししていきたいと思います。

今、目のお話をしましたが、今までこの「目で見て認識する」というのは人間に紐づいていたんです。目で見て認識する必要があるところには人が必ずいないといけなかった。だから防犯カメラをいくら置いても、結局、後ろで人が見てたんです。ところが、それが人から切り離されるということなんです。

これはどういうことかというと、従来、例えば蒸気機関とかエンジンとかがなかった頃は、力というのが人間とか動物に紐づいていたんです。筋肉に紐づいていた。だから人間とか動物なしに力を出すことはほとんど不可能だったわけです。

けれども、これが蒸気機関とかエンジンとかによって社会のいろんなところにばらまかれた。だから、我々が自動車も使えるし、工場で生産もしてるし、ということになってるわけです。

同じように、この認識というのが人間から切り離されて社会にデリバーされるということで、じゃあなにをやったらいいか。エンジンができて自動車ができたように、じゃあこのディープラーニングで認識ができるようになったらなにをやったらいいか、ちょっとまたお聞きしましょうか。これしゃべりたい人います?

参加者1:聖心女子から参加させていただいています、◯◯と申します。私は、マウスピース型のものを口にはめると、それが端末となって虫歯があるかとか歯の治療が必要かどうかを解析して、そのデータを地域医療の大もとになる病院に送ったりなどして、地域医療の支えになるような人工知能の使い方はどうかなと思って書きました。

松尾:そうですね。今のも人間の認識能力というか、ディープラーニングでの認識と組み合わせるとすごくおもしろいかもしれないですね。

人工知能で変わる産業

じゃあ、どういうふうに考えればいいのかヒント。まず農業とか建設とか食品加工、これらは大きく変わります。なぜなら、これ全部目が必要なんです。機械では認識ができないから人がやってたんです。だから人手不足で困ってるんです。それが今後大きく自動化されるはず。

ほかにもいろいろあります。例えば、介護、人手不足で困っていますよね。なんで人手不足で困るかというと、介護の作業って目が必要ですよね。見ながらやらないといけない。だから自動化できないんです。

それから製造でも、組み立て加工というのがありまして、いろいろ組み合わせて作るような加工は人がやっています。人が見ながら、この穴に合わせてはめこんだり、カチャッとやったり、いろんなことをやらないといけないので機械でできないんです。そういう系のものがこれからどんどん自動化されてくる。

(スライドを指して)ちょっと参考までに、市場の大きさというのがこんなふうになって。みなさんいろんなアイデア出していただいていて。例えば料理のレシピを考えるとか、それから広告とか、工場の生産とかいろいろありますけれども。

こういう産業ごとの市場の大きさを見ると、やっぱり自動車って超でかいんです。日本の国内において。それから建設とか医療とかこのへんもでかいです。自動車だけでも60兆円ぐらい市場があるし、建設でも50兆、医療でも40兆。生命保険、不動産、外食、物流、こういう大きな産業の中でどこらへんが変わりそうか。

目が必要で、単一な作業

考えるときのヒントが3つあります。3つ目は、マーケットが大きいことが重要です。先ほどのような大きなマーケット。それ以外にも2つほどあって。上側のは、今まで自動化されていない理由が「目がなかったから」。それ以外の理由で自動化されていないのは、これはもう目の技術は関係ない。

それが1つで、もう1つは「できるだけ単一の作業」。複合的作業というのは、これはアクチュエータのほうが難しくなるんです。ハードウェアのほうが難しくなるので、できるだけ単一の作業をやる。だから、目がないとできなくて、単一の作業で、かつ、マーケットが大きい。これだとどういうのがありますか?

参加者2:東京大学の〇〇です。1つ質問なんですが、逆に、今、目がなかったから入っていないという、目が必要な産業というので建設などを挙げてくれてたと思うんですけれども、目が不必要な産業の例を挙げていただいてもよろしいですか?

松尾:目が不必要なのは、もうだいたい自動化されています。

参加者2:それは例えばどんな産業ですか?

松尾:例えば工場ですね。工場での生産で、自動車の生産はほぼ自動化されているんです。これは作るものが決まってて同じようなことをやっていけばいいので。あとは化学プラントとかも自動化されています。ほとんどもう機械化されています。

参加者2:じゃあ、同じものが回ってきたりするので視覚情報として知覚する必要がない産業は、目が必要ではないという?

松尾:そうです。あと家の中を考えても、洗濯機とか冷蔵庫とか、ここは自動化されていますよね。機械化されてる。これ知覚する必要ないですよね。だけど、洗濯物をたたむのはできてない。これは認識する必要があるので。

参加者2:目で知覚情報として入れる必要がある。

松尾:掃除機はあるけど、片付け機はない。そういう感じですね。

参加者2:じゃあ、図書館の司書さんとかは本を見て分類してるのかなと思うので、AIに目がつくようになったらなくなっていくのかなと。

松尾:そうですね。棚に戻すとかは、そのとおりです。その関連でいうと、店舗の陳列って全部そうなんです。陳列とか搬入とかそういうのは全部目が必要で、だから人がやってる。ほかにありますか?

自動化できる産業はなにか?

参加者3:立教大学4年の〇〇と申します。自動車の運転とかはやはり目で、それが動くものが機械なのか人間なのかとか、飛び出すのかとか。あと単一の動きなので、そういうのは自動運転になるのかなと思います。

松尾:そうですね。自動車はまさに大きな産業ですし。ただ、これ、みんな世界中で争っているのですごく熾烈な戦いですね。

参加者4:関東学院大学1年の〇〇と申します。学校の先生とまではいかなくても、塾とかの先生みたいな感じで、計算とか国語とかそういうのを教えてくれたりとかするのはもう自動化されてもいいのかななんて思いました。

松尾:ただ、先生はけっこう目だけじゃないですよね。いろいろ考えてしゃべらないといけなくて、そこはけっこう難しいですよね。だから、さっきの本を戻すとか陳列するぐらいだったらたぶんそんなに考えなくてもできるけど、先生の場合は、相手の気持ちを考えて、どのぐらいわかってるのかとか相当いろいろ考えないといけないので、ちょっと先かもしれないです。

参加者4:わかりました。ありがとうございます。

参加者5:東京大学の〇〇と申します。さっき運搬とか品出しとかを聞いて思ったんですけど、そもそもレジでキャッシャーを叩くじゃないですか。あれも最近、セルフレジとか、GUとかだと服全部入れて会計やってくれるというのがありますけど。

もう物を持って店から出るときに、例えば棚からなにがなくなっているかを画像認識で見るとか、あるいはなにを持って出ていったかを画像認識で取るとかで、そもそもレジ自体をなくすみたいなのもできるのかなって。

松尾:そうですね。それも大きいですよね。それってもし自動化できたらどのくらいの事業規模になると思います?

参加者5:小売が全部そうなると思うので、そこに書いてあるやつはだいたいいけます。

松尾:そうですよね。だからそうなんです。会計の自動化とかすごい大きいんです。小売全部に関係するし。

それからもう1個小売であるのは万引きなんです。実は小売のロス率ってだいたい1~2パーセントと言われていて、そのぐらい品物がなくなっちゃうんです。それをちゃんと検知できると防げるので、それも小売全体で1パーセントというと、これまた巨大ですよね。

というのがたくさんあります。例えば調理も大きいです。調理の自動化というのは大きい。片付けとかも大きいですね。それから話に出た中だと、さっきの万引きとか店舗内の陳列とか物流とかそういう、今、人手がかかっていてすごく多くの人がやってる産業で、できるだけ単一の機能で実現できるようなもの。

例えばさっき司書さんがありましたけれども、調剤薬局とかも近くて。これは薬を見ながら取り分けるわけです。これもできるかもしれない。こういうあたりだと思います。

人工知能と人間の関係性

最後、「人工知能、今後どういうふうになっていくのか。人間との関係は?」ということをお話ししたいと思います。

人工知能によって仕事がなくなるか? これどう思います? 今のお話で、例えば小売の仕事が自動化できるとしたら、仕事はなくなる? 仕事がどういうふうに変わるのか?

参加者6:東京大学の〇〇と申します。先ほどお話にあったような単一の作業などは確実に近い将来なくなっていく、機械が行うようになって人間はしなくなるのかなと思いまして、それしかやることがない人々は仕事が失われるのは確実なんじゃないかなと思います。

最近よく言われてることかもしれないですけど、遊ぶこと、自分のためになにかすること、楽しむことというところがやっぱり機械にはない人間の特徴かなと思うので。

利益というのは人間の生活を便利にするためのもので、それで経済が回っていたと思うんですけど、人間の生活に最低限必要なものを機械がするようになると、プラスアルファの娯楽の部分が増えると思いますので、人間が人間を楽しませるための職業がどんどん豊かになっていくんじゃないかと思います。

松尾:ありがとうございます。そうですね。すごく正しいと思います。

職業がいろいろなくなると言われてるんですけれども、人間らしいところってやっぱりたくさんあって。1つはコミュニケーション。人はやっぱり人と接したいのでそういう仕事。それから目的を設定したり、価値判断をしたり、責任主体になったりするというのは人間しかできないはず。

一番最初に、鳥の話をしました。鳥は飛ぶということと鳥らしさというのがあると。じゃあ人間の場合、知能というのと人間らしさ。じゃあこの人間らしさの部分っていったいなんなんでしょうね?

知能の部分はいくらでも自動化できるんです。これは人工知能によっていくらでも便利になります。だけど人間らしさというのは変わらない。これはもう本当に長い年月かけて作られているので、ここは変わらないと思っています。

そうすると結局考えないといけないのは、知能を除いた人間の人間性っていったいなにかということで、これは考えれば考えるほど難しいですが。

仕事は絶対なくならない

例えば、いろんな論点がありますが、人間ってやっぱり進化的に社会的な動物としてできているので、例えば人に共感するとか、かわいそうな人がいたら助けたいと思うとか、そういうふうにできているんですね。感情がそういうふうに仕組まれているわけです。そう考えると、やっぱりできるだけ多くの人が苦しい思いをしないように暮らしていきたいというような理想を持ってて。

一方で、人間ってずるをする人を嫌うんですね。大昔から人殺しってあるんですけれども、その多くが仲間同士で殺してるんです。つまり、ルールを破った人を殺すということをやってるんです。

これはなぜかというと、人間というのは集団で協力して大きな敵と戦ってきた生物なので、誰かフリーライダーが出ると集団全体が損をするんですね。なので、それを嫌うように進化的に仕組まれているわけです。

というふうに考えると、いろんな感情とか社会のシステムが実は人間の進化由来の本能によって作られていると考えることができるんじゃないかと思います。

その全体として、我々の倫理観とか社会の仕組みとか、こういうものができている。僕はおそらく仕事って絶対なくならないと思ってまして、みんな忙しいの好きなんです。

社会の中で自分が役立っている。これは生産と直結していなくてもいいわけです。もうすでに現在でもほとんど生産に関わっていないですよね。なんだけれども、やっぱりなにかある仕事があって、その中で評価されて、出世して、とかいうのが好きな種族なんです。

それがこの生産と関係してるかというとあんまり関係なくて、だから遊ぶようになるかというと、僕は遊ぶようにはならないと思います。おそらく生産はこういうAIとかどんどん便利になってやってくれる。だけど、仕事はし続けるし、例えば人事なんかも絶対なくならない、人間の人間らしさというのはずっと残るんじゃないかなと思います。

まとめですが、やっぱりこの人間とはなにか? 知能を除いた、人間の人間性とはなにか。我々はどういう社会を作りたいのかということを考えていかないといけないんじゃないかなと思います。では講義を終わりたいと思います。

(会場拍手)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

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