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私たちにとってお金とは? 現在のお金の価値を再考(全4記事)

行き過ぎた投機性は人を狂わせる––ビットコインなど、仮想通貨の負の側面を説く

2017年10月18日、一般財団法人Next Wisdom Foundationが主催するイベント「まわるケイザイ大YEN会」が、東京都千代田区のLIFULL Tableにて開催されました。ビットコインをはじめとした仮想通貨やFinTechなど、近年注目を集めている「お金」の話。ほぼ毎日と言っていいほど触れるお金ですが、その本質について改めて考える機会はあまり多くありません。そこで、お金の歴史・現在・未来の3つのテーマを設定し、ゲストとともにお金の成り立ちから今後の在り方まで、余すところなく語り尽くします。第2部「お金の現在」には、西国分寺にてクルミドコーヒーを手がける影山知明氏と、株式会社LIFULLの井上高志氏が登場。地域通貨や仮想通貨など、世界で流通しているお金を通して、経済の本質とはなにかを考えます。

ビットコインが抱える難しさ

井上高志氏(以下、井上):あとはインターリージョナルで国際的に交換できるようになるとなかなか交換しづらいし、ストーリーも見えづらくなるよなというときに、ブロックチェーンとかビットコインみたいな仮想通貨・暗号通貨というのは、いろんなかたちに用途を変えながら変化しながら通貨として発行できるような新しいテクノロジーかな、みたいなことも感じているんですけど。

ただ、先ほどどちらかというと(仮想通貨には)反対派だと言っていたじゃないですか。

影山知明氏(以下、影山):あ、そうだ、事前のやりとりで(笑)。

井上:そこはなんで反対派なんですか?

影山:これは考え方なんですけど、2つ理由がありまして。1つが、貨幣、まあ通貨というものが持ってる機能はいくつかあって。交換、価値の保存、利殖、さらに今となっては商品にさえなっているという、通貨の機能性というものがいくつかあると思うんですけど、僕はむしろその機能性をちゃんとバラバラにしていく、それぞれに相応しい通貨があると考えています。

今日お渡しした「ぶんじ」というのはその中でも交換に特化している。そこには利殖性も、ましてや商品対象、投機の対象にもならないことで、むしろ交換ということをピュアに再現していくための道具になっていけばという思いがあって。

ビットコインは、むしろあらゆる機能性を1つの中に持たせようとしている難しさがあると思っています。

あとは、僕はビットコインがどうしても最後の最後で好きになれないのは、むしろ決済通貨としてインターネット上の利便性を高める道具に特化してくれてたらよかったんだけど、それが投機性を持ってしまったということですよね。かつて1円だったものが、さっきお話聞いたら、もう50万円ぐらいですか? 1ビットコイン(注:イベント開催の2917年10月18日時点)。

井上:そうですね。スタートが2009年ですか。1ビットコイン1円だったんですよね。今日あたりの取引だと50万か60万ぐらいなんです。つまり1円が50万倍や60万倍になってるんです。つまり10万円分ビットコインを買った人は、今は50億とか60億の価値分のコインを持っている。ものすごい投機ですよね。

影山:すごいことですよね。だからそうしてしまうと、しがないお店のレベルでいうと、ポイントカードとか10パーセントクーポンみたいなものを配ったときと同じように、できるだけ少ない労力でできるだけ多くのものを得たいと思う、言ってみれば消費者的な人格みたいなものが、投機性によって逆に引き出されちゃうと思うんですよね。

ビットコインをやるまでそうでなかった人でも、そうやってうまく山を当てれば何万倍にもなるぜってなったときから、お金との関わり方の動機が変容しちゃうことがあるように思っていて、それが生み出してるマイナス面はやっぱり無視できないなと感じます。

井上:そうですよね。それ自体を悪いとまでは断じるつもりはないんですけど、なにかお金の魔力というか、本当はそうじゃなかったのにその魔力に取り込まれてしまう人って僕もいっぱい見てるので。あれは怖いですよね。投機的にドーンと上がったりすると人格変わっちゃいますよね。

影山:ええ。

問題はお金を使う人の動機にある

井上:あと3分しかないので、「どうしたらお金ってなくせるんだろうね?」というところに戻ってくるんですけど。

つまり物々交換経済の時って、お互いが「イノシシあげるよ」「じゃあこのヒエとアワいっぱい食べて」とか「じゃあこのアケビいっぱい採れたからあげるよ」とか、みんな得意なことをやったり好きなことをやってみんなに贈与するという、そもそも値段はついてなくて、「あげるよ」と言ったら「じゃあお返しにこれ」という経済はあったはずで。その時って相手の努力が見えるじゃないですか。だからすごい感謝があるわけですよね。

ただ、先ほど影山さんが言ったとおり、どんどん複雑経済化してグローバル化してくると、誰が作ったかわからないわけですよね。今みなさんが着ているものも、眼鏡も、使っている物も、座っているものも、建物も、マイクも、コンピュータも、誰が作ったかってまったくわからないじゃないですか。だからありがたみがすごくわからない。

影山:感じづらいということですよね。

井上:でも、結局どこかで誰かがやってくれてるもので全部支えられてるということは、複雑化しているけどシンプルに言えば「誰かのおかげで生きてる」ってことですよね。だから、なにかそういう価値交換がお金以外のなにかになればいいなともやっと考えているんですけど。 

お金は人類史上最大の発明だ

井上:最後に会場のみなさんにメッセージをいただいて、締めてください(笑)。

影山:僕は通貨自体、お金自体はなくならないほうがいいと思っています。お金というのは人類の本当に史上最大といっていいぐらいの発明だと僕は思っているんですね。価値の交換を時間と空間を超えさせてくれます。

今採れた野菜だけど、1年後には腐っちゃってる。でもそれをお金に変えることで時間を超えられたり、ある地域の中だけでしか交換が成立しなかったものが海を超えて、今であれば世界中の人と交換ができるようになっている。交換の時間と空間を超えさせてくれる道具だと思ってるので、これはとても大事な側面だと思っているんですね。

ただ、お金を使う人間の動機が問題というのが今日申し上げたかったことです。それを自分の欲や自分のtakeのためにみんなが使うようになるとお金が悪さをし始めるから、そうじゃない交換を促すような使い方を自分としては提案したいし、地域通貨「ぶんじ」みたいなものは言ってみればそれのちょっとしたトレーニングになっているという感覚でもあるんですね。

そういう意味で、ギフト経済、贈与経済という言葉を使うときに、ともするとおそらく物々交換ということに向かっていく経済だと捉えられがちですけど、僕はそうじゃなくて、贈与をしながらそこにちゃんと貨幣が絡むことで、交換の再現性を高めていくという要素も持った新しい経済のモデルになりうるんじゃないかと思っていて。

自分自身が今やってることは本当にちっぽけなことで、こんなことを今日みなさんの前で言うことも憚れるような気持ちもあるんですけど、ちょっとずつでもなにかケースを、世の中に状況を作っていけたらいいなと思っていますので、もしよろしければぜひお店に遊びにいらしていただけたらなと。

井上:ぜひみなさんお店に行ってください。最後に「ぶんじ」を70枚。

影山:70枚だけなんですけど、もし手にしてみたいという方いらっしゃったら。

井上:おすそ分けいただくと。それはお店に行くとそれ……。

影山:はい、使っていただけます。

井上:使っていただける。じゃあぜひみなさん、70名限定早い者勝ちです。

本当、なにか実践していらっしゃる方の生々しいお話とか具体的な話が聞けて非常によかったなと思います。そして改めて思うのは、棒倒し理論みたいなものがあって、51パーセント以上の人が「こっち側のほうがいいじゃん」って思うと、たぶんムーブメントでドーンと広がって倒れると思うので、ぜひみなさんそういうお金の使い方とかお金ということを意識していただくと、じわじわ変わってくるんじゃないかなと思います。

通貨ごとにふさわしい流通範囲

井上:では質問を1問か2問ぐらい受けたいと思うんですが、質問があるという方は早い者順で。

司会者1:全員挙手していただければと思います。

井上:1人、2人……。

司会者2:先着3名ぐらい!

井上:ちょっと待ってください。手を挙げるのは何人でもいいですよ。答えたいのだけ答えますから。すみません。お1人、お2人。ほかにないですか? じゃあ聞いてみましょう。お願いします。

質問者1:ありがとうございます。今日は宴会だと思うので私も本当にだいぶお酒飲んじゃったんですけど。まさに西国分寺でやられている取組みは、閉鎖経済だからこそ、ある種プラスサムというか、お互いにアナログにやりとりできると思うんですね。

一方でそれってスケールしないんじゃないかという気もしていて。むしろグローバルに見たときに、「ぶんじ」を世界中で流通させるのは厳しいんじゃないかと思っていまして、ある種ローカルにニッチにある分野でどんどんプラスサムを増やしていくというのは勝てる戦略かなと思うんですけど。

一方で、とくにアジア、ASEANでどんどん人口が増えていくときに、そこでなにか、日本全体が縮小していくなかで、もっと伸びていくところにリーチしていく新しいお金×地域の違うかたちみたいなことってできないのかなと思うんですけど、そこらへんについてのお考えがもしあれば。

影山:大前提で言うと、僕自身は勝てる戦略みたいなことにはあんまり興味がないということと、今日黒田さんの話を聞いて励まされる気持ちだったのは、「通貨というのは回らなすぎてもダメだけど、回りすぎてもダメだ」ということを言ってらしたと思うんですね。

そういう意味で、法定通貨である円と「ぶんじ」は違う性格のものだし、流通範囲も違うと思うんです。それで構わないと思っているということです。

ただ、前段でおっしゃった閉鎖経済かということについては異論があって。これまででいうとエコビレッジとか、ある種の圏域を定めてその中で経済を回すというやり方がありましたけれど、僕らは僕らで普通にすぐ隣にはドトールがありPRONTOがありロッテリアがあるというなかで競争環境に置かれてるんですよね。

そのなかで別に西国分寺の人じゃない人も利用しに来るなかで経済活動を行っているので、こういった取組みを開放系の中でやっていることに意義があるとは思っています。

質問者1:なるほど。ありがとうございました。

質問者2:僕は東京都墨田区というところで仕事をしてるんですが、同じようにカフェがけっこう溜まり場になっている場所でして。今日話を聞いてぜひ「ぶんじ」的なものをやりたいなと思いましたので、またその話を。

影山:ぜひ。来週の火曜日の夜に国分寺の新しいクルミド喫茶店で「ぶんじ」にまつわるフリートークをする会がちょうどタイミングよくあるので、もう来週の火曜日ですからあれですけど、もしチャンスがあればいらしていただけたら。

質問者2:行きます。

井上:いいですね。最初にご質問いただいて、ほら、「スケールアウトをどうするんですか?」みたいな、いきなりここでスケールアウトの1つができるかもしれないですよね。僕、たまたま友人でカフェとかを110店舗ぐらい経営してる人、知り合いにいるんですけど。

(会場笑)

影山:ええ、いらっしゃいますよね(笑)。

井上:今度紹介します。

影山:ありがとうございます。ぜひぜひ。

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