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地方創生 × お金(全4記事)

「School」の語源は“暇”だった 新たに物事に取り組む時の遊びの重要性

2017年6月10日から11日にかけて、世界遺産である和歌山県高野山にて、47都道府県がつながる地方創生イベント「地方創生会議」が開催されました。初開催となる今回は、地方創生に関わるさまざまな分野のキーパーソンを招いて、トークセッションやワークショップを行いました。トークセション「地方創生 × お金」では、株式会社CAMPFIREの家入一真氏、株式会社カタチニの齋藤健一氏を迎え、お金との向き合い方についてトークを繰り広げました。

その昔、暇は価値があるものだった

飛鷹全法氏(以下、飛鷹):いろんな意味で余白がなさ過ぎるとダメですよね。物事に新たに取り組む時って、立ち止まったり、ちょっと後退してみるとか、「遊び」の部分が大事だと思うんです。

そもそも「暇」っていう言葉が、なんかネガティブな響きを持ってたりするじゃないですか。常にあくせく働いていないといけないっていう脅迫観念に囚われてしまってるのかも知れませんが。

でも、学校って「school(スクール)」っていうじゃないですか。 あれギリシャ語の語源では「schole(スコレー)」って言って、暇って意味なんです。スコラ哲学なんて言葉もありますが、あくせく働かなくちゃいけない人は、哲学なんてできないんですよ。

じゃあ哲学者たちは、なぜ暇を持てたかと言うと、奴隷がいたからです。

ギリシャのポリスには社会のインフラとして奴隷制度があって、生存に必要なことは奴隷がやるので、ある意味哲学者は、もう宇宙のこととか、存在とは何か、とか考えるしかないんですよ。

「vita contemplativa(瞑想的生活)」っていう言葉があって、ギリシャの世界ではそれが非常に価値だとされていて、それが西洋の哲学の源流をつくったんですね。人類の知的遺産が、実はそうした社会制度の中で生まれたっていうのも興味深いですし、暇こそが価値がある生活そのものだったんですね。

そうすると僕らは知らずにある種の価値観の中でものを判断しているんだってことが分かりますよね。暇って言うのはネガティブで、あくせく9時5時で働いているほうが価値があるって社会に私たちはいるわけです。

でも、ひょっとしたらそういう価値観は強いられたものかも知れなくて、そこから自由になる選択肢っていうのが本来あってもいいと思います。ただ、やっぱり最低限の生活ができる条件としてのお金っていうのは、どうしても考えなきゃいけない。

お金を集める新しい選択肢が今は出てきた

そうした生活の条件を考える際に、雇用されるという従来型の選択肢しかなかったら苦しいんだけれど、そうじゃない選択肢が出てきたっていうのが今の時代だと思うんですね。

家入さんがやられている「リバ邸」みたいなところに行けば、そもそもお金がかからない生活ができるんだと。それは決して貧しいのではなくて、むしろ違う豊かさがあるってことなのかもしれません。

クラウドファンディングみたいに、自分がやりたいという夢に対して直接お金を集める手段も出てきて、実際、この地方創生会議自体が、まさにクラウドファンディングによって実現しているわけです。

これだけの会議を実施するにあたって、高野町や金剛峯寺に助成してくれと言っても、おそらく難しかったと思います。要は先例がないことを承認することが、なかなか従来型の組織では難しいんですね。そういう意味では、本当に今こうした場がここに実現してるっていう状況そのものが、新たな時代の幕開けの象徴というか、可能性を示しているんじゃないかと思うんですね。

我々が我々自身であるための主体性みたいなものをどう自分の手できちっと握っていくかっていうのは、自分の人生を生きる上でも非常に大事じゃないかっていう気がします。

それって地方のことを考えるときでも同じだと思います。地方っていう言葉自体に中央に対する地方っていうある種のベクトルが含意されていること自体が正しくないのかもしれないんですが。

新しい地域の主体、DMC

地方の自立性とも関係あるんですが、今、観光で新しい言葉がよく使われるようになってきましたよね。DMOっていう言葉、みなさん聞いたことないでしょうか?

観光庁のホームページを開くとすぐ出て来ると思いますが、英語で言うとDestination Marketing OrganizationもしくはDestination Management Organizationです。

もう1つDMCというタームがあって、Destination Marketing、ManagementのDMは一緒なんだけど、Companyになる。団体組織であるDMOに対して、DMCは小回りの利く事業体っていうように理解していますが、新しい観光の担い手として期待されているようです。

最近では、『Discover Japan(ディスカバージャパン)』とかでも特集号が出たりしているので、ひょっとしたらご存じの方もいるかもしれませんけど。

もう10年ほど前になりますが、経済産業省が推進する海外富裕層誘客事業に私は委員として関わっていたんですが、海外のバイヤーとかと商談すると、あなたはどういう立場かと聞かれるとDMCと言うと結構わかるんですね。

要は彼らが持っている富裕層のお客さんを、あなたの地域に送ったときにコーディネートとか手配をちゃんとやってくれる会社かどうか、DMCと言うとわかってもらえるんです。今の行政向けの議論では、広域観光連合みたいなニュアンスが強くて、本来私が理解していた意味とちょっと違うのかなというのが正直な印象なんですが。

その中で今の話をしたかったのは、今後地域の中心になっていく新しい主体として、私はDMCってタームを使いたいと思っているんですね。

そういう意味でのDMCの事例っていうのはまだなかなかないので、せっかくこういうメンバーも集まったし、まず立ち上げて事例をつくってみたらいいんじゃないかっていう話をしています。

今日はたくさんのアイデアや、地方のいろんな良いところを見せてもらいましたけど、それをどう実践して形にしていくかっていうのが、やっぱり本当に大事なポイントじゃないかと思うんです。その意味で、高野山でまず実践事例を立ち上げらられないかと密かに可能性を探ってるんですよ。

その中でCAMPFIREでは、地域パートナー制を導入して地域連携を進めていると伺いました。家入さん、具体的にどういう制度か、教えていただけますか?

小さな声や小さな物語の集積が、地方創生

家入:まず、なぜ立ち上げようと思ったかっていうのは去年ぐらいなんですけど。この数年、僕はそうやっていろんな地域を回らせていただいて、その中ですごく気づいたことがあって。

それがこの場で言うのもちょっと微妙なんですけど、僕は「地方創生」って言葉、あんまり好きじゃないなと思っていて(笑)。ごめんなさいね。

(会場笑)

そんな深い意味はないんですけど。

当時、地方創生、地方創生ってみんな言ってる中で、なんかすごく匂いを感じないって思っちゃったんですよね。仕組みとして従来のようなマジョリティのような仕組みというか、上からバッとこういう仕組みですよ、ドーンみたいな。

さあ、みんなどうぞみたいな仕組みにはめようとしているとすごく感じて、匂いを感じないと思って嫌だなと思いながら回っていたんです。

その中で一人ひとりと触れ合う機会があるじゃないですか。例えば高野山で出会う人たちとか、僕は(島根県隠岐郡)海士町が好きなので海士町に行ったときの話をよくするんですけど。

そこでは、自分はこういう思いでこの地を選んでやってきて、今こういう仕事をしていますよとか、そういう一人ひとりにいろんな物語がそこにあって。出会いの中で、すごい小さな物語がたくさんあったんですよ。

例えば「ガイドに載ってないけど、ここで見る景色、めっちゃきれいですよ」とか、「ここの料理屋さん、食べログに載ってないけどおいしいですよ」みたいな、そういう小さな声とか小さな物語みたいなものがたくさんあって。その集積が地方創生っていうものの本質なんじゃないかみたいなことをすごく考えるようになって。

そういった小さな物語みたいなものを、もっとつくっていくにはどうしたらいいのかって考えたときに、自分にはクラウドファンディングがあるじゃないかと思って。

その地域地域のいろんな頑張ろうとしている人たちや踏ん張っている人たち、そういった方々に使ってもらえるサービスにするためにはどうしたらいいかって考えたのが、「CAMPFIRE×LOCAL」っていうパートナー制度です。

要は僕らは、僕自身もだし会社も今は東京にあって。本当に地域を応援しますとか言いながらも東京にいるっていうのはどうなのっていう話もありつつ、その地域その地域で根ざした活動をしている方々ってたくさんいるので、そういった方と連携しながらその地域の本当に小さい魅力をどんどん積み重ねてくっていうことをやっていきたいというところではじまったんです。

僕らも同じプレーヤー

飛鷹:でも本当にそうですね。すべての人が同じ「大きな物語」の中にいるっていうのは幻想であったわけで、まさに社会主義の崩壊みたいな話なですよね。

地方には人の数だけ物語があってもいいし、そういう小さな物語で自分自身の地域を盛り上げたいっていうのが、地域のフリーエージェントであったりそういう人たちがCAMPFIREのパートナーであり得るという話ですよね。

だから「DMC」という言葉を使うかどうかは別として、我々としてもぜひそういう地域の本当に一つひとつの物語の主人公のみなさんとともに、手を携えて実際にコトを起こしていきたいなって思っています。

実際この地方創生会議っていうのを小幡君と一緒にやろうっていうことになったとき、議論だけじゃなくて実際にそこからプロジェクトが立ち上がるプラットフォームにしたいねっていう話をしていたんですね。

だからこれは僕が1人で言うべきことじゃないのかもしれませんが、この高野山から始まった地方創生会議的なプラットフォームが、いろんな地域で展開されてもいいし、とにかく具体的なプロジェクトが立ち上がってく場になればうれしいです。

僕らが解説者でみなさんが実践者でみたいなものでは全くなくて、僕ら自身もまさにそのただ中で走っている。みなさんよりは年齢が上になってしまうけども、本当に同じプレーヤーだと思っています。ぜひこれを1つの機会として一緒にいろんな取り組みをしていければと願っています。

ちょっと時間が少しだけ早いんですけど、次もありますので、今日はこんな感じで大丈夫でしょうか? 家入さん、何か言い残したことありますか?

課題先進国、日本でいかに課題に向きあうか

家入一真氏(以下、家入):そうですね。もう終わりですよね? あっという間でしたね。47都道府県からこれだけの方が集まって、本当にすばらしいことだと思いますし、すごいことだと思います。運営のみなさん、お疲れさまです。

よく思うのが、日本っていう国を1つとっても、よく課題先進国って言われるように、これから先結構しんどい状況にどんどんなっていくなっていうのをすごく思います。

僕らが今日本で生まれて日本で育って日本に今ここにいるっていうのは、課題にいかに一人ひとりが向き合うかっていうことにのみ意味があると思っていて、僕はビジネスというものを通じてそこに向き合っていこうと思ってます。

それが人によってはNPOだったり、人によっては個人だったり、人によっては働いてる職場だったりと、いろいろなかたちがあるとは思うんです。その課題みたいなものに一人ひとりが向き合うっていう小さな一歩の集積ということが、これから大事なんだろうなと思っています。

今日、このあと懇親会とかあると思うんですけど、家に帰ってもしかして宿坊だったり旅館に帰って、何か自分にできることって何だろうというのを1つひとつ考えることは、すごくいいことなんじゃないかなという、まじめな感じでしめたいと思います。ありがとうございました。

飛鷹:はい。齋藤さん、最後に何か一言お願いします。

お金は1つの民主化であり武器でもある

齋藤健一氏(以下、齋藤):はい。そうですね。僕は自己紹介も兼ねると、もともとリクルートに8年ほど務めさせていただきまして、ずっと新規事業の開発を責任者としてやらせていただいてました。

僕は自分の期待値が低くて、集まっていただいてるみなさんのような学生時代をあまり過ごしていなくて。

そこでリクルートという会社に入って、すごくすばらしい先輩方に育てていただいて、吐きそうな機会は何回もありましたけれども、泣きながら頑張って8年やってようやく事業開発できるという自信まではついたところまでは行きましたけど。

そのときに思ったのは、個人ってとてもいろいろな可能性があるんですけれども、見い出してくれる人がいたりとかそういった力を増幅させる装置がないと、例えばこういった場に立ててこなかったですし。

そういったものを準備する中で、お金というものは1つの民主化でもあり武器でもあると思いますので、ここを僕は今後つくっていきたいなというところで、カタチニという会社をつくったんです。

それは「お金 × ○○」と。「お金 × ホームレス」とかいろいろあると思うんですけれども、そういった方々の武器となるものをつくっていきたいなと思っています。

というところで、1回かたちにしたいなというところで、まずは飛鷹さんとDMCとか高野山で。

飛鷹:ぜひやりましょう!

齋藤:みなさんもDMCをつくりたいと書いた方については懇親会場で聞いていただければ、ぜひグループをつくって、みなさんでクラウドファンディングという最大の武器がありますので、キャンペーンをやってともに育てていくとか決済の相談があれば何でもできますし、そういった形でどんどん形にしていくことを、ぜひできればと思っています。

飛鷹:ありがとうございました。この続きは懇親会場でもまたいろんなお話ができればということで。

それでは今日はみなさん、本当に長きにわたってどうもありがとうございました。

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