2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小泉純一郎氏(以下、小泉):去年、原発会社が事故後の新しい基準、厳しい基準に沿って安全対策をした。だから、再稼働を認めてくださいという申請を、九電(九州電力)が原子力規制委員会に出した。
それで、原子力規制委員会の委員長は「新しい基準に合格しました。しかし……私は安全とは申し上げません」と言いました。
規制委員会で合格の判断が出たら、みんな安全だと思うでしょ? ただ安全と言ってるのは政府だけ。「規制委員会に合格したから再稼働認めます。日本の原発は新しい基準に合格した。世界で一番厳しい安全基準です」と言った。
世界で一番厳しいことを訴えかけるなら、アメリカと比較してもらいたい。アメリカでは新しい原発を作る場合、自治体に事故が起こった場合の避難計画を出さないと許可しません。さらにすべての原発に軍隊をはり付けてます。日本はそんなことまでしていない。未だに避難計画なんて作ってない。
6年経って、そんな重い放射能じゃなくて、軽い除染物でもまだ処理できていない。1つも処分場がないわけです、日本は。
ビルの解体とかあるいは家電製品、自動車とか冷蔵庫とか、そういう産業廃棄物を処理する産廃業者の会社を作りたいと思うなら、自ら産業廃棄物の処分場を見つけて作らないかぎり、都道府県知事は許可を下ろしません。産廃業者もやってはいけない。自分で処分場を作らなきゃいけない。海に捨てたり野山に捨てたりしたら、環境破壊になるから。
産廃業者に対しては、自ら処分場を作らないかぎり会社を作ることを認めないにも関わらず、原発会社はどこも処分場を見つけていない。なぜ政府は原発を認めるのか、わからない。
産廃のゴミどころじゃないですよ。メルトダウンを起こした燃料棒の側だったら、即座に数分足らずでみんな死んじゃう。しかも、今でも除染ゴミのほうが大変なんですよ。捨て場所がない。どうしてこんな簡単なことがわからないのかな。
今、専門家は廃炉に40年ぐらいかかると言っている。
イギリスが一番、廃炉作業が進んでいる国と言われている。しかしイギリスは、廃炉に90年から110年かかると言っている。
日本は最初、なんでも小さく言う。費用は小さく、安全性は十分だと。でも、メルトダウンの状況は、6年かかってもまったくわからないんです。燃料棒1本1本をどこに引き出してどこに置くのかがわかっていない。あれは、40年ではできないと思いますね。
原発会社は、事故を起こした場合、無限責任になっています。損害賠償も除染も廃炉も全部自分の金でやりなさい。しかし事故が起こったら「金がかかりすぎる。自分の会社だけで賠償も除染もできません。電力は大事なインフラだから、政府が支援してください」と。
「やっぱり電力は大事。停電が起こったら大変。あらゆる会社も電力がなかったらやっていけないから仕方がない」と。政府はあの事故後、東電の要請に加えて上限の5兆円を支援しているわけです。
2年か3年経って「5兆円じゃ足りません。9兆円」という東電に対し、「じゃあ9兆円までやろう」と政府が応じた。そうしたら昨年「まだ足りません。追加支援してください」と東電が言ってきた。最初は小さく言って、あとでどんどん要求額が上がる。
もんじゅはいい例ですよね。30年前、普通の原子炉で残したゴミを、さらにもんじゅで活用すれば、このゴミがまた燃料に使える。夢の原子炉という謳い文句だった。名前は、3人寄れば文殊の知恵の「もんじゅ」を使ったと思う。
もんじゅは1985年、「夢の原子炉だ」と言って政府のお金を使って建設を始めた。10年経った1995年に完成。動き始めて2、3ヶ月で、まさかの火災事故。そして、建設をし始めてから30年経ってようやく「もんじゅはダメだった」と認識し始めた。
もんじゅを運営している組織を変えろと。いくら安全対策や、点検をしっかりしなさいと言っても、怠慢でしてなかった。それゆえ、事故が起きた。
夢の原子炉は幻の原子炉に変わりました。それで終わればいいんだけど、この30年間、なんと1兆1,000億円ものお金を費やしている。にも関わらず一度も動いていない。
大きな事故は、スリーマイル、チェルノブイリ、福島もだけど、その間50年近く、点検ミスとか人為的なミスとか故障など、数え上げればキリがないほどの事故を起こしている。
最近「小泉さん、どんな技術だって事故は起こりますよ」と言われる。「事故が起きた場合のリスクと、その機械や技術から受けている恩恵、これを勘案してやらなきゃ科学技術の進歩はありませんよ」と。
確かにその側面もあります。しかし原発というのは、福島を見たって、スリーマイルを見たって、チェルノブイリを見たって、一度事故が起きてしまったら故郷がなくなってしまう。取り返しのつかない事故になります。20年から30年は、少なくとも帰れない。
故郷で仕事していた20代の人だって、20年か30年ぐらい外に出ていけば、避難した場所で仕事ができるようになります。戻ろうとはしないでしょう。40歳から50歳代の人が外で40年間やってたら、死んでしまいます。
小田原の鈴廣というかまぼこ屋をやってる鈴木(博晶)さん。今、商工会議所の会頭をやっているけれど、鈴木さんは「ことによるとこれ、小田原にも放射能は来る。避難しなきゃならない」と思ったとき、どうやっていいかまぼこができるのかと。
箱根から来る清水。このきれいな清水があるから井戸でかまぼこをやっていけるんだと。こんなにいい場所は、あそこの小田原以外はないです。もし移れと言われたら、自分の仕事はなくなっちゃう。
そこで小田原は、原発の電気を使わないで自然エネルギーでやるという運動を起こしたと言っていました。多くの人もそうでしょう。30年から40年は帰って来れない。避難していなきゃいけない。
だから、原発というのは事故を起こしちゃいけない産業なんです。とくに世界で一番地震の多い国・日本では。地震もあるし、火山の噴火もあるし、津波の危険性だってある。そして、これからますます安全対策のコストがかかってくる。
あの事故前までは、独占体制によって原発会社は、あらゆるコストに上乗せして電気料金を勝手に取れていた。原発を動かせば必ず利益が出るんだから。
そういうコストが一番安いんだったら、政府に支援を求めるなと思う。どんな対策だって……民間の金融機関、原発には保険をかけないでしょう。もし原発がゼロになったら、不良債権になって返ってこない。
いずれ原発ゼロにしなきゃならない時は来ます。遅かれ早かれ。原発ゼロでもできることを証明したわけだから。コストも原発よりは、はるかに少ない。原発より自然エネルギーが安全だし。
原発会社を了解してくれた自治体に、国民から税金をとって多額の交付金を与えないかぎりOKしないでしょう。廃炉は自分ではできない。一番コストが安かったら、全部自分の金でやればいいのに。国民の税金を使わないかぎり原発産業は成り立たない。
しかも、それは今の生きている人たちが負担するだけじゃない。若い人たちだけじゃなく、これから生まれてくる人も何百年、何千年と、核のゴミと危険が隣り合わせ。金をかけて処理しなければならない産業です。
だから、日本は原発をやってはいけない国。
クリーンとも言われているけど、ただ原子炉内だけにCO2を出さないだけ。実際、鉄を使ったり、セメントを使ったりするから、CO2は出してます。
核のゴミ処分だって、危険性があるから10万年は保管しなきゃいけない。中間貯蔵施設だって、どれだけ頑丈な設備を作ったとしても、100年、200年は保管しなきゃいけない。国民の税金を使うと、どれだけかかるのか。
原発はほとんど沿岸です。電気を供給するためには、高度の熱が出る。この熱を冷やさなきゃいけない。だから沿岸にほとんどある。沿岸の海水を大量に使って、熱を冷やす。
ところが、海水は温まる。海水を取ってきた別の口でまた大量の温水を吐き出す。大量に沿岸の水が海水を取ると、プランクトンや微生物が大量になくなる。
また、微生物や沿岸の海水生物たちにとっては、温度が1度変わると、やけどするぐらいのすごく大きな変化だから生態系そのものが変わってしまう。原発産業は核のゴミ以外にも海洋汚染産業、環境破壊産業です。
素人がちょっと勉強してみても、原発のことはわかる。どうして、経産省や資源エネルギー庁、各原発会社の社長たちや幹部たちなど、いわゆる賢い人たち、頭のいい人たちがなぜ、この事実を理解しようとしないのか不思議でしょうがない。私は、学業成績が優秀だったらみんな頭はいいと思っていた。
絶対安全でも起こるんです。最近、栃木の那須スキー場で引率した先生は、山岳の専門家でした。雪崩警戒情報が出てたにも関わらず、長年の経験で、高校生を引率してしまった。絶対安全だと思って引率した結果、あの悲惨な事故が起きたし、死者も出てしまった。
事故調査委員会の委員長が「絶対安全なんてない」と言うんだから。
だから私は、原発をただちにゼロにしても日本はやっていける。6年間で証明してしまった。これから、自然エネルギーに目を向ければ、補える量は30パーセントどころじゃない。将来、100年足らずで、日本はすべての電気を自然エネルギーで賄える時代がやってくる。勉強すればするほど確信を持ちました。
もう30分過ぎちゃった。申し訳ない。だいたいいつも90分は話しているんだけど。
(会場笑)
最後に、もう政治家はやめましたが、私は政治家のなかでこの人の記録を破る政治家は出ないだろうと思ってる人が1人いるんです。それは尾崎行雄、「憲政の神様」と言われた人。
その尾崎行雄氏が昭和26年に亡くなった。国会の近くに憲政の神様の偉業を称えて、尾崎記念館という政治資料館を作った。今は名前を変えて、憲法の「憲」、政治の「政」で憲政記念館になってる。
そこの憲政記念館の玄関に、石碑で尾崎行雄氏の揮毫が刻まれている。「人生の本舞台は常に将来に在り」と。
尾崎行雄氏は明治23年、33歳のときに、第1回帝国議会選挙で当選して、明治、大正、昭和、大選挙区、中選挙区制、小選挙区制と、制度は変わっても連続当選していき、合わせて25回も当選した人物。そして、昭和26年、94歳で亡くなりました。
94歳の亡くなる年に、「人生の本舞台は常に将来に在り」という言葉を残してるんです。90歳を過ぎれば、だいたいどうでもいいと考える人は多いです。しかし94歳で亡くなる歳になっても、常に将来のことを考えろといっていた。
いつ自分の働ける場所が来るかわからない。いつ自分の役に立つ場所が来るのかわからない。いつ考えが変わるかもわからない。私も考えが変わってきた。そのためには、将来に備えて常に向上心を持って学んでいかなければならない。努力していかなければならない。そういう言葉だと、私は受け止めているんです。
みなさんもこれから、ITなど、最先端の変化の時代に挑戦していこうという方ばっかりだと思います。これからどんな時代になるのか。大転換期ですよ。これからの変化にどう対応していくのか。常に改革、挑戦の精神を持って、三木谷(浩史)さんをはじめ、みんながんばっておられる。勉強しようとしている。いくつになっても向上心を忘れずにやっていこうと。
日本はいつもピンチをチャンスに変えてきた。第二次大戦敗戦後も屈することはなかった。2ドル前後の油が10ドル前後、50ドル、100ドル前後になっても屈しなかった。あのピンチのおかげで環境先進国にもなった。最大の敵だったアメリカを最大の味方にして、経済成長を遂げてきた。ピンチをチャンスに変えてきた国です。
あの原発の事故を二度と起こしてはいけない。ピンチをチャンスに変えるような国作りをしていかなければならない。
そのためには、自然界に無限にあるエネルギーを活用して経済発展できる国。これは原発に頼る時代よりもはるかにいい国だと私は確信しております。
だいぶ時間が超過しましたけれども、今日はお招きいただきましてありがとうございます。みなさんのご健康、ご活躍、心から祈念申し上げまして、お話を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございます。
(会場拍手)
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