2024.10.10
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テーマ「農業は成長産業? キーワード 6次産業化(農工商連携)、アグリ・インフォマティクス(農業情報科学)」について(全1記事)
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堀潤氏(以下、堀):それでは、水越さん。テーマの発表をお願いします。
水越孝氏(以下、水越):はい、今日はこれです。
(テーマ「農業は成長産業? キーワード 6次産業化(農工商連携)、アグリ・インフォマティクス(農業情報科学)」について)
脊山麻理子氏(以下、脊山):麻生財務大臣は4日、衆参両院の本会議で財政演説を行い、農業の体質強化策などを盛り込んだ2015年度補正予算案の早期成立に理解を求めました。
堀:総額3兆3213億円のうちTPP対策費は3122億円です。政府はTPPによる輸入関税の撤廃などで打撃を受ける畜産・農業の経営安定化などの関連法案を提出するとしました。
畜産と野菜・果物関連の基金を設立し、複数年度にわたって、農地の大規模化に必要な設備投資への支援を行う方向で検討。
各JAなどでは、安倍政権の判断に反発の声も上がっているんですね。そうした中で対策を急ぎましょうと。
まず、皆さんの意識調査の結果を見ていきましょう。
「総額3.3兆円の補正予算、特に重点を置くべきところは何ですか?」
子育てから、テロ対策、その他まで。せーの、どん!
未来への投資ですね、「子育て支援」使って。「介護」多いですね。意外に「TPP・農業対策」は36票ということで。やはり、一部特定の業界に対してというイメージなんですね。
水越:そうですね。パソコンで全国で見られるんですけど、たぶん投票される方は東京周辺の方が多いからというのもあるのかもしれない。
日本の農家の現状を見てみましょう。このグラフは農家数の推移です。
全体で215.3万戸、このうち全体の約6割を占める販売農家の減少が顕著です。グラフの青いほうです。昨年時点で132.7万戸、この10年前と比べると32%、63.6万戸も減っています。
一方、赤は自給農家の推移です。まず、ここで注目して欲しいのは、自給農家が全体の4割を占めること、そして、こちらは同じ期間で6.6%しか減っていないということです。
つまり、そもそも「市場」とは関係がない農家が全体の4割を占めていて、しかも自給ですから定年がないわけで、したがって、自然減という意味で実質的に横ばいと言えます。
堀:ある種ここ(自給的農家)は対策を取らなくても、それは変わらないので。
水越:そう、つまり、この問題の核心は販売農家が激減していて、かつ、その2/3が高齢化していて、後継者すらいないという現状です。
そして、グローバル市場で戦うのは彼らということです。これは誰がどう考えても厳しいはずであって、要するに、後継者すら確保できないような農政の延長線上に日本農業の未来はないと言うことです。
水越:一方で、農業に異業種から新規で参入するというのは、これだけ増えているんですね。
堀:あぁ、なるほど!
水越:はい、日本は企業の開業率が低いというのが、いろいろなところで問題になるんですけれども、これほど異業種からの新規参入が多い業界は他にありません。この意味においても、農業は成長マーケットであると言えると思います。
堀:「2009年改正農地法後の一般法人による農業新規参入の推移」と。
水越:2009年の農地法の改正は大きな転換点です。それまでは、農地を所有する人が耕作することが大原則でした。この原則を崩していきましょう、リースでもいいよと。そういった農地そのものの所有と利用の関係を是正したことが異業種参入を促した要因です。
堀:いわゆる農業法人と言われる、そういった分野の皆さんの進出を促したわけですね。
水越:結果的に、改正法施行から5年で1712法人が参入、うち62%、1060社が株式会社です。とは言うものの、農業全体の総生産出荷額8兆円と比較すると異業種組の市場規模はまだまだ小さいのが現状です。
堀:一部ですと。
水越:はい、市場規模はまだ大きくありません。ただ、それゆえ成長力は大きいとも言えます。今日は異業種参入市場の中で、もっとも成長率が高い植物工場の分野で頑張っている地方企業を紹介したいと思います。
滋賀県の琵琶湖畔の日本アドバンストアグリという会社です。この会社の6次産業化の中身をちょっと見てみましょう。
6次産業化というのは、生産・加工・販売、1×2×3で6次なんですけど。生産者がマーケティングに関わることで付加価値を高めましょうという取り組みです。
堀:作って生鮮品を出すだけの儲けよりも、そこで加工して、その加工品を自分のところで流通させて売る。その利益が全部1つのところに入ってくるということで。6次化。
水越:小さい会社なんですけれども、あまり「小さい、小さい」と言うと失礼になりますが、この会社の6次産業化事業体モデルは、AI、つまり、農業情報科学がベースにあります。
堀:これは植物工場!
水越:もともとは照明器具のメーカーなのですが、植物工場の成長性に目を付け、農業照明用のLEDの開発に着手しました。試行錯誤を繰り返しながらも、収穫量が多くなってきたので地元のスーパーに販売するとともに健康食品のオリジナルブランドも開発しました。更に直営レストランもオープンし、植物工場で採れた野菜を調理しています。
ここでおもしろいのは、このフリップにもありますが「店産店消」というコンセプトです。レストランの中に植物工場を置いて、そこで収穫して、それを出す。
堀:店産店消!
水越:地産地消をもっとパーソナルなレベルで実現しています。将来的には老人ホームや給食センターなど、いろんな施設にこのビジネスモデルを展開できるんじゃないかと思います。つまり、ノウハウの提供という“サービス”が新しいアグリ・ビジネスになるわけです。
堀:これ、すごいですね。照明のLEDを少しバリエーション豊かにすることによって、発色が変わってきたり、栄養素の部分を少し変えていったりできるんですよね。
水越:さて、もう1つ紹介させてください。こちらはビッグプロジェクトです。
これは、清水建設が2010年からやっている「GREEN FLOAT構想」です。
堀:「GREEN FLOAT構想」! 何ですか、これ?
水越:これ、実は海に浮いているんですよ。
堀:すごい大きな懐中電灯かと思いましたけど!
水越:どう浮いているかというと、こういうものが浮いているんですね。
堀:これ、海の上?
水越:直径が3,000メートルで、高さが1,000メートル。上層部が空中都市、つまり、住居部分で、低層部分が植物工場になっているんです。
堀:はぁ......。
水越:これ全体で循環型の、完全自給自足の江戸時代型リサイクルシステムを作りましょうと。
堀:これ、なんで水の上なんですか?
水越:上から見ると、1つ3,000メートルのユニットが複数くっ付いていて、1つの海上都市を形成できるんです。
堀:なるほど! 人工島を造って、全体が自給自足型の都市になっている。
水越:はい、これを赤道のそばに浮かべます。なぜ赤道かというと、太陽光発電と海洋温度差発電をエネルギー源にしているので赤道付近が良いわけです。そこに循環型のエコロジー都市を作りあげようというのが、この構想です。
これは単なるビジョンではなく、大学などの研究機関やさまざまな要素技術を持つ企業と連携して取り組んでいます。清水建設では「次世代リサーチセンター海洋未来都市プロジェクト室」という組織を正式に立ち上げて、技術的な研究を行っています。
もちろん、事業費は20〜50兆円かかるとも言われていますが、野村證券グループがサポートメンバーとして参加していて、「資金調達はこっちでやるぞ」みたいなね。
堀:えっ!
水越:はい、決して夢物語ではありません。
堀:清水建設ですか。
水越:そして、これの良いところは、回遊するんです。
堀:おぉ! 移動するんですか?
水越:回遊できる。だから、「ここはおいらの領海だ!」なんて、そんな野暮な話はない!
堀:なるほど!
水越:農業というのも、既存の既得権であったり、あるいは選挙の集票だったりというところを超えた次元で発想していけば、非常に可能性のある分野であると思います。
堀:そうかぁ、確かにねぇ。回遊するというのが大きなポイントですね。いろんな意味で垣根がない。
水越:はい、お正月ですから、初夢ということで。
堀:いいですねぇ! ありがとうございました。
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