【3行要約】
・問題解決といえば「発生した問題」への対応が一般的ですが、近年は「見えていない問題」の発見が重要視されるようになっています。
・スキルベース代表の高松康平氏は、クライアントからの相談が「目標設定型」へと変化していると指摘。
・高松氏は「見えていない問題」を「現状は悪くないが、もっと良くなれる状態」と定義し、その発見こそが今後のビジネスパーソンに求められる思考法だと説きます。
今の時代に求められる、課題解決の考え方
高松康平氏:では、3時になりましたので始めてまいります。あらためまして、みなさん、こんにちは。スキルベースの高松康平と申します。

本日は7月11日に発売となりました『課題解決の思考法「見えていない問題」を発見するアプローチ』の出版記念セミナーを実施させていただきます。みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。パチパチパチパチ。
お忙しい中、ご参加いただきまして誠にありがとうございます。本日は2年間かけて執筆した本のエッセンスを1時間でお伝えすると。早口で話していきたいと思います(笑)。
スキルベースは2年間、いろんな企業さまのお手伝いをしてまいりました。その中で、あらためて整理した課題解決の考え方、特に「見えていない問題を発見するには?」というところのエッセンスをお伝えしたいと思います。では資料を映しながら始めてまいります。何か気になることとか感想があれば、随時チャットにいただければと思います。
スキルベースの高松康平と申します。今は研修講師のお仕事と、あとはコンテンツ開発。作って講師として登壇する、仕事をしております。
コンサル会社に入社して直面した課題
プロフィールは書いてあるとおりなんですが、まず新卒でマッキンゼーに入りまして、なかなかうまくいかないと言いますか、キャリアの初めの時期は「すごい人がいるな。どうやって考えたらいいのかな?」と思っておりました。

そしてリクルートに入りまして、そこにもすばらしい先輩方がいて、「どうやったらあんな人になれるのかな?」と、そんなことを思っている中でビジネス・ブレークスルー(現在は「株式会社Aoba-BBT」)という研修会社に入りました。そこではコンテンツ開発、そして講師として登壇をさせていただき、そしてスキルベースという会社を立ち上げて、今は研修講師の仕事ばっかりしている人間でございます。
今回は2年間かけて書いたこの本のエッセンスをお伝えします。ざっとまとめるとこんな感じでして、2023年の5月、研修カリキュラムの開発を開始しました。

その後、研修の提供も始めまして、またいつか本を出せたらいいなと、2023年12月に本の企画書を書き始めました。今回、日本実業出版社さんで出版をさせていただきましたが、2024年の9月に出版が決定して、10月から2025年の4月(まで)、原稿を執筆して5月、6月と修正、編集して。で、7月11日に出版したかたちとなります。
課題解決の本を2冊出版
2年前、2023年の5月くらいにカリキュラムの開発を始めたわけなんですが、正直、私は本を書くと思っていたわけではなくてですね、2冊の本を書いて満足感に浸っていました。本を書くのはけっこう大変な作業でございますので、私にとって大きなチャレンジでした。
2冊目の本を出したのが2023年の3月で、『会社の問題の9割は「4つの武器」で解決できる』。その3年前、2020年に出したのが緑色の本、『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』を出して。

『会社の問題の9割は「4つの武器」で解決できる』。もうこの本を読めば9割いけるよっていう「4つの武器」。問題解決にもいろいろあるので、それを4つに分けました。業務の問題。営業さん、つまり売上をどう上げるかの問題。そして成長性とか収益性をどう上げるか、事業全体の問題。そしてさらに価値創造の問題。
この4つの問題で、だいたい会社の問題の9割ぐらいじゃない? ということで、それに対するアプローチを整理する。それが2年前に出版した本の趣旨ですね。
で、本を出したというところで満足に浸っていて、「よし、この本をベースに研修を提供していくぞ」と思っていたわけなんですが、そんなに甘くはないと。これだけではまだまだ足りないんだと感じるイベントがいろいろとありました。
クライアントの依頼内容が変わってきた
まずこちら。本を出した直後の2023年ですね。ベンチャー企業のCOOからご相談がありました。もう原文をほぼそのまま載せています(笑)。
「うちの会社は、プロダクトが強いため、業績が伸びてしまう」。なんとうらやましい。「これは良いことだが、それで満足してしまっている。そういう時は、どのように考えたらいいんでしょう?」。

うーん、なんだかもう、問題なくないですか? でも、そういうことじゃないですね。「もっといけるよね? どうやって考えたらいいの?」っていうご相談。
私としては「困ったなぁ」と。だって、これまでの問題解決って、もう問題がある前提なんです。「売上が下がった」とか「利益が足りない」とか「ミスが起きた」とか。「先ほどのベンチャー企業の場合、問題がないといえばない。でも、もっと伸ばしたいんだよね」。あれ? 本を出して満足感に浸っていましたが、答えられない。ちょっとまずいな、ということがありました。
さらに、ある金融機関からのご相談です。「これからは支店長に目標を考えてもらいます。どのように考えさせたらよいでしょう?」。もともと目標は本部が考えていたんじゃないかなと思うんですが、金融業界も不祥事ですとか、だいぶいろんなことが起きたと。みなさんも大きく取り上げられたニュースを見たかもしれません。

ということで、「金融業界全体として、よりお客さま志向を高めていこうよ。地域を良くしていこうよ」と(いうことになりました)。戦略はトップダウンで落とすものの、具体的な目標はエリアごとに、支店長とか部長さんに考えてもらう。その時、どんなふうに考えたらいいのか。
「発生型ではなく設定型の問題解決を学ばせたい」
私も「確かにそういう時、どうしたらいいのかな?」と、また困ってしまいました。だって今までは、「今期や、この四半期はこれくらいの数字でやってね」と、トップダウンで数字が落ちてくるわけです。
でも、これからは目標を自分で考える。さぁ、どうやったらいいんでしょうか。「なんだか今までの本では対応できないじゃないの?」と、困ってしまいました。
そうしていると、人事の方からこんな問い合わせが多くなってきました。「発生型ではなく設定型の問題解決を学ばせたい」。この単語でご相談いただくことが本当に多くてですね。

この感覚をどうやったら伝えられるかなというところが難しいですが、研修業界ではけっこう今注目されているキーワードになっていると思います。
スキルベース的には、2024年の流行語大賞は「設定型」で、「今年の漢字」で言うと「設定型」の「設」みたいな……余計に伝わらなくなったかもしれませんが、それくらい我々にとってみると、「また設定型のご相談いただいた。えっ? 今回も? なんで? 本当に多いな」というふうに思いました。