【3行要約】・問題解決において「わかる」とはどういうことか――多くのビジネスパーソンがこの基本的な問いに答えられず、課題解決に苦しんでいます。
・高松氏は、従来の「What・Where・Why」型問題解決の限界を指摘し、全体像の構造化が重要だと説きます。
・現状認識を疑い、目的の再確認や隠れた前提を壊す質問を通じて、新たな気づきから本質的な課題設定を目指すべきでしょう。
前回の記事はこちら 課題解決のために、まずは全体像を把握する
高松康平氏:(現状を分析して取り組む目標を決めるという話を踏まえて)じゃあ、いったんテーマを決めましたが、いきなり「課題はこれだ」とか解決策を考えることはできません。まず、その現状で何が起きているかがわかるということが大事です。
これをわかっていなかったのが私でございまして。もうね、「わかるってどういうこと?」と。わかったのは最近じゃないですかね。
私は新卒でコンサルタントを始めました。もう本当に、「なんだか、ぜんぜんわからない」って焦っちゃいましたよ。どうやったらわかるかがわかっていなかったので、めちゃくちゃ焦っちゃったんですよ。こういうことを知っていればもうちょっとよかったのかなという気がしています。
「わかる」ってどういうことなのか、徐々にわかるようになっていく。言葉で言うと、知らないものはわかりません。知っているとなるとわかってくると。

「要素(の数)」。これ、めちゃくちゃ大事でして、多いともうわかりません。会社の資料とかPowerPointとかがいっぱいあったり、ネットで検索すればいっぱい出てくるし、最近は生成AIとか、「Deep Research」をすれば、大量のデータが出てくる。でも多いと理解し切れないので、要素を少なくすることでようやく自分の脳でわかります。
関係性が見えてくるとわかる。つまり、図にしたり、つなげてみるとわかってくる。「全体像」。枠組みとか作ってみるとわかると。これが「わからない」と「わかる」。
まずは落書きレベルでも要素を書き出す
じゃあ、わかるためにまず何をすべきか。「情報認識」と呼んでいます。世の中的には、やはり「情報」といったら「収集」になりますが、いきなり情報なんか収集しません。テーマを設定したら、それに関して今は何が起きているのか、今知っていることとか起きていることを自分で認識することからやりましょう。

言い換えると、素材を用意するんです。料理って、いきなりはできないですよね。思考でも一緒です。素材をテーブルに載せましょう。
わかるために要素を抽出する。要素が多過ぎるとわかりません。大事そうなところを書き出すんです。もう落書きでいいんです。ちょっとでも同じような項目をまとめてみる。グルーピングと言ったりします。

これを最初にやらないと、なかなかわかるきっかけがない。最初はめちゃくちゃ不安です。いっぱい資料を読むだけではぜんぜんわかってきません。書き出してみるとちょっとわかってくる。まとめてくると、少し安心してくる。そんな気持ちの変化が出てきます。
こういうことをやらなきゃいけないんですけど、(当時の)私はやっていなくて、「資料を読んで、いきなりPowerPointをまとめられるかな?」みたいに勘違いしていたんですね。それは無理なんです。まず書き出して、まとめるんです。
構造化の3ステップ
テーブルの上に素材が載りました。では続いて、構造化です。図にするんですね。結果と原因の関係を一枚の図にまとめる。「今、どういう結果が起きているの? それを分けてみるとどうなの?」、「それはなぜなの?」と、結果、部分A、部分B、部分Cと原因のかたちで並べる。これが構造化になります。

やり方としては、「結果」。続いて「結果分析、どこどこ」。そして「原因分析、なぜなぜ」と、こんな並びでやっていくと。

これがなぜいいかなんですが、まず要素間のつながりがわかるわけですね。なぜこうなっているか。「あっ、これとこれが関係あるな」ということがわかってくる。あとは全体を俯瞰できるようになります。俯瞰することで、「ここを直していこうか」、「ここ伸ばすところだよね」という議論ができる。
あとは他人にも共有できます。ミーティングで、みんなが違う景色を見ている時ってあるじゃないですか。だからぜんぜんまとまらない。1人は大きな話をして、1人はすごく細かな話をしている。見ている世界が違うんです。「今、こういうことが起きているよね」と、共通認識を作ることができるんです。
「結果」「結果分解」「原因分析」。「どこどこ・なぜなぜ」。これ、最初にご紹介した見えている問題、いわゆる問題解決の思考法で言うと、「Where・Why」と似ている気がしますが、ちょっと違います。
原因を見つけても解決できないこともある
どう違うか。「結果」「結果分解」「原因分析」、これが1セットです。まずいったん何が起きているかを1枚にまとめるのが構造化となります。微妙な違いなんですが、けっこう大きな違い。こういうことです。
これまでの問題解決研修の反省点がいろいろあります。別に、悪いことをしているわけじゃないんですが、「これで全部いけるよ」みたいなことを言っていたのが、私の反省点です。

まず「What」、問題を定義する。(例えば)「売上が伸びていないよ」と。で、「Where」が「ここで伸び悩んでいる」という、特に悪い部分。「Why」が「それはなぜか? これが原因だ」とやるわけです。
なんだか正しそうな気がするんですが、でも「売上が下がった」、「ここが伸びていない」、「こういう原因だ」と定義したとしても、それがどうやっても直せない原因だったら、もう「この特に悪い部分は直せないよね」ってなるんです。
つまり、これまでの問題解決研修って、「What」をやって、「Where」をやって、特に悪い部分はここ。「じゃあ、それはなぜ?」で「Why」をやる。「じゃあ、その『Why』をなくそう」となるんだけど、「いや、その『Why』がとんでもない強敵だったら、『Where』を直せないよね」となってしまう。それだと困る。
つまり、(どこを直すかという)「Where」は、なぜそういうことが起きているかに依存している。先ほどのページで言う、「どこどこ」と「なぜなぜ」を1セットで見ることが大事だと。
「悪いところ探し」に陥る危険性
さらに大事なのは、悪いところだけを見るんじゃないんです。問題解決って、「特に悪い部分を探そう、探そう」って言うんですけど、もちろん見えている問題だから直したい気持ちはわかる。だけど、いい部分もあるじゃない。これが問題解決研修の反省点としてある。
「What・Where・Why」のプロセスに分け過ぎちゃって、悪いところ探しのスタンスが染み付いちゃう。いいところをもっと伸ばしてもいいじゃん。言い方を変えると、悪いところを放っておいてもいいかもしれないですよね。そういったスタンスがなかなか出てこないところが反省点かなと思っています。
だから、今後は見えていない問題を発見する際には、「What・Where・Why」と切り刻むんじゃなくて、1セットで構造化して考えましょう。
構造化すると、今何が起きているかがわかってくるわけなんですが、ただ、手元にある知っている情報を整理したに過ぎないので、このままいくと、「今までどおりやっていこうぜ」ってなる可能性も高い。
もちろんその中で新しい気づきはすでにあるかもしれないけど、すぐにいっちゃダメなんです。だからここに、質問のプロセスを入れています。新しい認識をもたらす問いと向き合う。「結果」「結果分解」「原因分析」の認識を疑ってみる。
課題の原因について深掘ってみる
「うちの会社の人たちって、みんなこういう認識だよ。こういう結果が出ている。結果分解すると、『ここはいい』、『ここが悪い』、『それはなぜ?』」という。
それで、すぐ課題のフェーズにいくんじゃなくて、ちょっと質問して、「実際はどういうことが起きているのかな?」と、原因に向き合ってみる。「このままいくとどうなるのかな?」という、未来を想像するんです。だって、今だけじゃなくて、未来もちゃんと認識したいわけです。

「このままいくとどうなるのかな?」っていうのは、何か新しいチャンスや、もしかしたらリスクがあるかもしれない。今はどこの企業さまへ行っても、「人が足りない。採用や人材育成をがんばるぞ」と言っています。もちろんそれはがんばるんですが、このままいくとどうなるか? 人がもっと足りなくなるとみんな知っています。
そういう未来があるんだったら、もちろん採用もがんばるんだけど、「人がいなくなったり、採用できなくなったりしても、業務運営できるようにすべきことはないかな?」と考えるべきかもしれない。
今の問題に一生懸命になることはいいんだけど、それが逆効果といいますか、うまくいかないこともある。「このままいったらどうなるかな?」と想像してほしいんです。
「入社した時、どんな思いでしたか?」
さらにそれだけじゃないんです。まだ課題にはいかないです。「このままいくとどうなるかな?」っていうのは、今を起点に考えている時点で、現状の延長線上じゃないですか。「それだけでいいんですか? 気づいていない重要な事実はないですか?」という質問とも向き合ってほしいんです。

1つ目。「目的を再認識する」。もうね、会社組織で働いていると、いろんなことを言われる。大切な目的を忘れちゃいませんか。入社した時、どんな思いでしたか? 会社はどんな夢、ロマンを持っているんですか? 忘れていませんか?
また「外部環境の新しい兆しを発見する」。いろんな調査会社が調査結果を発表しています。でもそれ、みんな知っています。みなさんだけが知っている新しい兆しはないですか? お客さまから変な相談を受けたことはありませんか? そういう変化が新たなチャンスであり、リスクかもしれません。そういう気づきが新たな未来を作っていくんです。
「伸ばしどころを探す」。会社のデータをいつもこんなふうに縦で見ている、横で見ている。斜めで見たら新しいチャンスがないかなと。
また、因果関係を疑う。「こうやればうまくいく。こうやったからダメだったんだ」と言うけども、「本当なんですか? これからもその因果関係が通用するんですか?」と疑ってみる。
課題解決のヒントは現場に落ちている
そして「隠れた前提を壊す」。前提とは、「これは変えられない」とか、「これはできない」とか、「うちの会社はそういうことをしない」とか、「うちの部署はそういうことをしない」とか。本当ですかと。
「コストと品質は両立できない」。いや、そうなんですけど、「全部の品質を上げて」とは言っていない。「うちの会社にはちょっと厳しいよ」と、諦めちゃっていませんか?
ここで新しい気づきがないと、新しい未来はなかなか作れないと。だって、現状の認識が変わっていない中で、おもしろい打ち手はなかなかできない。
現状の認識を疑う。何か思い当たるものはないか。新しい気づきが欲しいんです。ここはやはり、ヒントは現場に落ちている。みなさん自身の心の中にあったりします。
ここで1つでも2つでも、「あっ、こんな未来ができるんじゃないかな」と、新しい気づきが出てきたら、気持ちがパッと晴れてくる。
最初は「よくわからないな」とモヤモヤしていた。構造化してちょっとわかってきたけども、わかってきたからこそ難しい未来も見えてきた。そうしたら質問して、新たな気づきがあると、なんだか気持ちが明るくなってくる。
新しい気づきができたら、課題を決めます。やはり現状の認識が変わってこないことには、そんなに簡単に新しい未来ができるとも思っていません。でも「わかる」というところがやはり大事で、わかってきたら課題は決められる。