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【新しいわたしの見つけ方】生き方は自分の心の声を聞いて決める 塩谷歩波 x 小林味愛(全3記事)

「銭湯未経験」の友だちに魅力を絵で表現したら、大ヒット イラスト集『銭湯図解』が生まれるまで

東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、スタハTAMAの起業コンシェルジュの小林味愛氏が、『情熱大陸』でもフィーチャーされた絵描きの塩谷歩波氏をゲストに迎えて行われた登壇イベントの様子をお届けします。塩谷氏の特徴的な銭湯イラストの誕生秘話や『銭湯図解』出版の経緯など、視聴者からの質問に答えています。

心に嘘をつき続けると、体が壊れる

塩谷歩波氏(以下、塩谷):もちろん「恩知らずになるのでは」という気持ちもすごくあったんですけれども。それ以上に、体を壊してしまったこともあるから、まずは自分の気持ちを大切にしたいというのがすごく大きかったですね。

でも、結果として自分ががんばればがんばるほど、小杉湯にいたことはつながってくると思うので。恩知らずにはならないだろうとは今、思っているんですけれども(笑)。そんな感じですね。

小林味愛氏(以下、小林):ありがとうございます、すごく共感します。世の中のことをよくわからないと、初めの「できるか、できないか」って、同じようなことをやっているほかの人のレベル感と比べたりとか。

塩谷:そうそう。

小林:自分に才能や資質があるのかわからないと、それを夢にして……その段階で夢にしちゃうと、乗り越えられなかった時の心理的な打撃がすごいから(笑)。「本当はやりたいんだけど」という心の声はありながらも、そこはちょっと封印して、「やりたい」よりも「やれること」だったり。「やりたい」を仕事ではなく、自分の趣味としてやっていくところって、やっぱり誰しもあるのかなと思います。

でもそれですごいなと思うのが、趣味でも本当に好きなことをやり続けてること。結局、いきなり独立とかじゃなく、本当に小さなステップをすごく積み重ねて来られているじゃないですか。

描きたいと思って絵を描き始めて、どんどん発信していったり、本にしていったり。小杉湯でいろんな活動をやっていったり。長年かけた小さなステップが、自分自身のすごく自信になって、自分の心に嘘をつけない状態になっているという。

人生プランとか、起業とかだと初めに事業計画を考えるけど。そうじゃなくって、心の声を聞きながら、その時々で自分のやりたいこと・できることを一歩一歩積み重ねてきた。この長年の蓄積の結果今がある、みたいなところにすごく共感しました。やっぱり自分の心に噓をつけなくなるタイミングってありますよね。

塩谷:そうなんですよね。そこで嘘ついちゃうと、体が壊れちゃうんですよね。

小林:わかる、そうそう! 私も前の会社の時に、それで10円ハゲが2個できました(笑)。

塩谷:それはまずい(笑)。

小林:美容院で言われてびっくりして(笑)。自分では嘘ついてないふうに、頭で整理しようとするじゃないですか。「これでいいんだ」という正当化。だけど、やっぱり体と心はそれを感じ取っていて、どこかにストレスがかかって、症状として現れることがありますよね。そのタイミングで「これは違うんだな」と割り切れる。私は前の職場の時がそうでした。

銭湯の絵を描き、Twitterで公開するうち、人気銭湯から声がかかる

塩谷:そうなんですよね。自分の声が湧き上がっているのに、それを抑え込んじゃうという。抑え込んじゃうこと自体が、過度なストレスになっちゃうんですよね。結果、「ぜんぜん大丈夫だよ」と思っても、大丈夫じゃないから体に出ちゃうんだと思うんですよ。

私は長年、抑え込んできたと思ってて。絵を描きたいのに、描く人生を選ばなかったという最初の時点から、だいぶ自分を抑え込み続けていたので。「もう出すべき時だ」というのが、ここ最近だったってことなんですよ。

小林:いやぁ、わかります。感慨深いというか。(抑え込んでいた時間は)10年とか、そんな感じですか?

塩谷:絵が好きだと思ったのは幼稚園ぐらいだから、もっと経ってるような気がするんですよね(笑)。でも今思うと、ちっちゃい時に早々に見切りをつけたのは、ある意味では堅実だし、賢い生き方ではあるとは思うんですけれど。

それでもやっぱり捨てられなかった、それだけ強いものが絵を描くことだったというのは、今思うし。だからといって、今までの生き方を否定はできないしな、というのもあるので(笑)。

小林:わかります。そういう心の声って本当に行動に移す段階にならないと、あんまり人にしゃべれないから自分で抑え込むというか。自分の中で消化しようとするじゃないですか。だから周りから見たらちょっと唐突な選択だったり、「なんでいきなり?」って感覚を持たれるかもしれないけど、でも自分の中では何年も何十年もつながっていることなんですよね。

塩谷:そうそう、そうなんですよね。でも、私の今回の決断についてはけっこう、仲の良い友だちからは「ようやくやるんだ」って感じで言われたりすることが多くて。「おせぇじゃん」と言われるぐらいだったんですよね(笑)。

だからもしかしたら、今までの活動を知っている方とか、ファンのみなさんとかはちょっとびっくりしたのかもしれないけれども。それこそ前から知ってる人からすると、納得という感じだったのかも。

小林:なるほどね。小杉湯さんとはどういう出会いだったんですか。

塩谷:私が銭湯の絵を描いて、Twitterでどんどん上げてる時に、その活動を見てくれてDMをもらったんですね。「うちの銭湯のパンフレットを作ってほしいから、1回遊びにきてほしい」ってところから、仲良くなった感じです。

小林:小杉湯さんには何年ぐらいいらっしゃったんでしたっけ。

塩谷:4年ですね。

さらにTwitter公開を続けると、今度は出版15社から書籍化のオファー

小林:なるほど、ありがとうございます。ちょっと質問が来ているので、1回読み上げますね。「本の出版は、出版社からお声掛けいただいたのでしょうか。それとも持ち込みされたのでしょうか。書籍化までのお話など詳しく聞いてみたいです」とのことです。

塩谷:なるほど。本はですね、銭湯図解をネットで出し始めてから、15社から依頼をいただいて……(笑)。

小林:えー!

塩谷:そうなんですよ。15社から一気に来て。「うわー!」って思って(笑)。

小林:ネットって、Twitterとかですか?

塩谷:そうです、Twitterに上げてました。最初は本当にめちゃくちゃ衝撃的で。私が自分の人生の中で本を出すなんて、一切思っていなかったので。15社から来ても、もうどこから選べばいいんだと思う中で……すっごい迷ったんですけれども、一番話した時のシンパシーが合う担当者さんにお願いして(笑)。それでちょうど1年ぐらいかけて、書き下ろしとかいろいろやってという感じですね。

相手だけでなく、自分にも誠意を持って対応する

小林:ありがとうございます。あと事前にもちょっと質問をいただいていて、何個か読み上げますね。1個目が「自分の好きな人と関わりながら好きな仕事をしていくために、大事なことは何だと思いますか」。

塩谷:うーん、好きな仕事はなぁ……私が最近思うのは、やっぱり「誠意を持つこと」なのかなってすごく思ってて。本当に幸いなことに、私のクライアントさんって全員めっちゃくちゃいい人なんですよね。もう全員大好きなんですよ。クライアントさん、最高すぎて(笑)。

なんでそういう人たちが集まるんだろう、来てくれるんだろうというのも、まだ答えは出てないんですけれども。ただ私がお仕事をする上ですごく大切にしているのって、最初から最後まで絶対誠意を持ってお話しするように気をつけています。

クライアントさんであっても、ほかの取材してくださる人に対しても、自分がその人に対して下に見るような態度で話したりだとか、対等に見ないで話すというのは絶対やりたくなくて。そういうの、私もされた時にすごくイヤで。

小林:そうですよね。

塩谷:でもいるじゃないですか、人のことをモノのように扱う人って(笑)。

小林:いるいる、本当に(笑)。わかる。

塩谷:私、本当にイヤなので。とにかくどんな人でも誠意を持って、最初から最後までお付き合いするという気持ちでいます。その気持ちは本当にめちゃくちゃ大事にしてるから、そこなのかな。わかんないけど。

小林:自分がやられてイヤなこと、傷つくことをやらない人生・生き方を選んでいれば、必然的に、そういうことがわかる人たちが集まってくるのかもしれないですよね。

塩谷:あと誠意を持つというのは、自分に対しても、だと思うんでね。自分がやりたい、やろうと思っていることは……自分自身を貶めるようなやり方じゃなく、自分の中にもう一人の人がいて、その人を助けてあげるように自分の夢を応援することは大事かなと思ってて。

「絵が描きたい」という気持ちは、ちっちゃい頃から抑えきれなかったので。それにちゃんと誠意を持って対応するしかないと思っていますね(笑)。

目的を持たず、ひたすら描き、発信していた

小林:ありがとうございます。あとですね、「小杉湯に出会うまでに具体的にどんなアクションをやってきましたか」。

塩谷:いやー……何もやってなかったですね(笑)。

小林:それを目的にしていないってことですよね。さっきの話だと、好きだから描きたい絵を描いて発信していたというのが、結果としてアクションだったという感じだけど。当時は、別にそれを目的に発信してたわけじゃないということですよね。

塩谷:ぜんぜんでしたね。だから「これをしたらヒットするだろう」みたいなことは、ぜんぜん考えてなくて。本当にただ絵が描きたいから描くという感じだったし。小杉湯に出会う前も、設計事務所で働きながらもやっぱり絵は描いてたりしてました。それも好きだから描いてる程度だったんですね。

小林:えっ、設計事務所にいた時ってどんな絵を描いていたんですか?

塩谷:何だろうな……なんか花の絵を描いたりとか(笑)。

小林:あぁ、本当に日常的にっていう。

塩谷:そうです。だから目的のために何かするってことは本当にやってなくて。でも、描きたい・やりたいという気持ちを積み重ねていったら、偶然当たったような気はしますね(笑)。

銭湯未経験の友だちに向けて描いた絵が大ヒット

小林:ありがとうございます。銭湯の絵をこういうかたちで描こうって思ったのは、どういうきっかけなんですか?

塩谷:当時Twitterを通して、友だちと交換絵日記みたいなことをやっていて。その子に、銭湯があまりにも最高だから、銭湯のことを伝えたいなと思って描いた絵です。「じゃあなんか銭湯の絵でも描くか」って思った時に、具体的にどこに浴槽があるとか、その子は銭湯に行ったことがないからわからないので。

小林:あぁ、確かに。

塩谷:一目でわかりやすい描き方と言ったら「建築の描き方でこれっしょ」って、簡単に描いたんですよね(笑)。

小林:すごっ(笑)。

塩谷:いえいえ。でも、この描き方って建築学科1年生の時に習ったやり方なので、建築をやってたこととつながっているんですよ。

小林:そうなんだ。

塩谷:その簡単なやり方を使っただけですね。

小林:ありがとうございます。あとですね、絵描きというやりたいことを見つけるまでに、取捨選択したこと。例えばほかにやりたいことがあって、何かを諦めたことはありますか?

塩谷:むしろ絵描きになる夢を諦めるためにいろんなことをやってたけれども、結局抗えなかったというほうです(笑)。だから、それこそ1回は建築家になったりもしたし、文章を書いたりもしてたけど。やっぱり「どうしても絵を描きたい」という衝動を抑えきれなかった感じですよね。

だからごめんなさい、質問に対して本当に正直なところを言うと、けっこう逆のパターンですね。

小林:ありがとうございます。あとおもしろい問いと言うか、本質的な問いで。「塩谷さんの生き方の軸があったら教えてください」って。

塩谷:うぉぉー……(笑)。

小林:(笑)。

食欲や睡眠欲よりも強い、絵を描きたいという衝動

塩谷:軸、軸かぁ。私の場合は「こういうふうに生きたい」と思ってるところがあまりないんですよ。とにかく衝動が強くて。絵を描きたいというのは、自分にとってご飯を食べるとか寝るとかよりも、すごく強い感情なんですね。それは1回夢を諦めようと思って抑え込む時期があったけれども、それでも出てきちゃうぐらい強い感情だったので。

その衝動に合わせているような感じがあって。例えば「30歳になったらこういう人になりたい」「40歳になったらこういうふうになりたい」という設計ができないぐらい、強い衝動なんですね。

絵を描きたいとか、ほかにもいろんな衝動が本当にあって、それに従って、その時その時でいろいろ考えている感じかな。あとはとにかく誠意を持って生きる、みたいなところ(笑)。だからそのあたり、ちょっと感覚が(他の人と)違うのかもしれません。

小林:でも、自分の素直な心を大事にしてるってことですよね。

塩谷:そうです、そうです。まとめてくださりありがとうございます(笑)。

小林:でも、それって変わらないものもあれば変わるものもあり、それも含めて今の心の状態、声を大事に聞いている感じですよね。

塩谷:そうですね。聞いてあげないと、具合が悪くなるから(笑)。

小林:本当にそうですよね。

塩谷:そうです。

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