「サイボウズ」の知名度が上がったのはなぜ?
創世期からの歴史を振り返る

第1部「ブランディングとPR・メディアとの関係」 #2/3

2015年8月20日、サイボウズ株式会社の新オフィスで「BtoB/IT広報勉強会」が開かれました。勉強会の第1部では、同社ビジネスマーケティング本部・コーポレートブランディング部の椋田亜砂美氏が「ブランディングとPR・メディアとの関係」をテーマに、サイボウズの事業内容やPR活動を紹介します。本パートでは、近年メディアへの露出が増え始めた背景として、「働き方」「チームワーク」「製品」における3つの取り組みをスライド資料で説明していきます。「グループウェアという製品を売る会社です」と語るだけではなく、会社のストーリーを伝えることで成長を遂げた「サイボウズ」の創世期からの歴史を振り返りましょう。

サイボウズのメディア露出が増えた背景

椋田亜砂美氏(以下、椋田):チームワークっていうところも、アワードを毎年してきたんですけども。2012年からPRイベント化して、大きく取り上げられたのは2013年からという形になっています。

これはあくまで露出が増えた時期なんですけども、それまで一つひとつ何をしてきたかっていうところが細かくありますので、現在の露出に至った背景をお話します。

働き方を変えた「創世期」から「定着期」までの取り組み

まずは働き方です。働き方について露出が増えたのは2013、2014年で。私はこの時期に人事だったこともあり、よく話せる部分ではあるんですけれども、2006年の8月に初めて「育児介護休暇6年」という制度をつくりました。

BtoBの企業、特にサイボウズぐらいの中小企業だと、まず新卒採用が難しいと。全然新卒に認知がないというところがあり、今でもそうですけど、技術者とか中途採用が難しいと。派遣社員も採用がすごく難しかったという人材難で、危機感がすごくありました。

当時平均年齢が、30歳ぐらいだったので、出産とか育児に入る女性社員が増えてきていて。その当時に「辞めます」っていうことになると、教育コストや採用コストもかかるため、長く働ける会社にしていこうということで、大きく人事制度を変えていくことになります。

最初につくったのが、小学校に上がるまで育児休暇が取れるという形の「育児介護休暇6年」というのをつくって、その半年後にあなたの働き方が選べますという形のワーク重視とライフ重視の人事制度に変えていきます。

今ここの部分、2006年、2007年を私はいわゆる「創世期」と言ってるんですけども。サイボウズが人材(確保)に危機感をもって、長く働ける会社にしようと着手しだしたのが、9年前の2006年からということになります。

人事制度をガラッと変えて、すぐに定着したかというと、もちろん全然そうじゃなくて。この2年間……特に2007年後半〜2009年は毎月毎月研修をしていました。

毎月社員を20〜30人ごとに区切って、2年目研修、3年目研修、中堅社員研修みたいな。あとは本部長合宿とかマネージャー研修みたいな形で、20〜30人プラス社長、副社長と人事、私とで健保組合の保養所に行って、1泊2日の合宿をすると。

合宿の中身は何をやっているかというと、当時は離職率が高く、2005年は28パーセントだったんですね。そういうこともあって、先ほども言ったように人材難であったんですけれども。

いろいろなモヤモヤを抱えている社員が多くて。例えば、「隣の人が何の仕事をしているかわかんない」というようなことから、日頃持っているモヤモヤをその合宿中で出しましょうと。それに対して全部、社長と副社長が答えますよと。

それプラス「育児介護休暇6年」とか、人事制度を変えることを何で今やり始めたのかと。ワーク重視、ライフ重視っていうのは「すごく働きます」というのと「私は週4で働きます」とか「時短で働きます」というのを選べる制度なんですけれども。

みんながワーク重視だった今までから、ライフ重視が加わることになって、時間管理をしなければいけないという仕事が増えていくわけですね。

そうなってくると、まず仕事が増える辺りをどうマネジメントしていいのかわからないとか。そうした「つくった人事制度」に対しての戸惑いや困惑もありますし。そういうことに対して全部答えていくための1泊2日の研修を、2年間毎月やっていました。

これは今だから言えることなんですけど。やってるときはすごい必死なので、「やってます」みたいなことは言わないんですけど(笑)。

社長、副社長も「何でこんなことやってるのか?」「会社としては長く働ける会社に変えていきたいからやってるんだよ」みたいなことを社内で向き合う時間が2年間あったということで、私はここを定着期と表現しています。

働き方に多様性が生まれた「進化期」

そんなことがありながらも、さらにいろんな制度を入れていきましょうというところは、全然流れは変わっていなくて、2010年にお試しで在宅勤務をやってみましょうという形でβ版で始めました。β版で始めて、「やってみてどうだった、こうだった」って言ってるときに年が明けて「3.11」がありまして。

そのときはやっぱり会社に行くのも不安なときだったので、全員を在宅勤務にしました。ちょうど3月で、うちの場合は決算だったんですよね。なので、全員家で仕事をして、決算を終わらせるということを何とかやり遂げました。

それで「在宅勤務できるじゃないか」ということになって、在宅勤務をそれ以降本入れしていくと。

あとはワーク重視、ライフ重視の真ん中に「ワークライフバランス型」というのを入れました。「残業をちょっとはするけど、たくさんはしたくないよ」みたいな人を入れて、「ワークライフバランス型」と言っていくとか。

あと「ウルトラワーク」っていうことをして、制度も進化をしていくっていう……「進化期」と言っているんですけども。働き方っていう側面でいうと、実は9年前から取り組み始めていて、地道な活動があって、徐々に時代に合わせて進化していったという背景があります。

“チームワーク”の価値を考え続けた「研究期」

チームワークも、先ほど「2013年ぐらいからブレークし始めました」と話したんですけれども、第1回のアワードを2008年に初めてやりました。そこは先ほどと同じ、いわゆる創世期なんですね。

2009年もサラッとやったんですけれども、2010年からは「オブ・ザ・イヤー」であれば「オブ・ザ・イヤー」にふさわしいちゃんとした場で表彰していこうということで。今、資料のうしろに載っているの「はやぶさ」さんとかスパコンの「京」とかですね。受賞いただいて。

この2年間が、チームワークでいう「研究期」になります。ちょうど私が人事から広報に移動してきたのが2010年だったので、人事で研修を2年間やったあとに、今度は広報でチームワークの研究をずっとやっていました。

サイボウズというソフトウェア会社が「チームワークは大事だ」って言っても、当時は誰も聞いてくれないんですね。なぜかというと、サイボウズは単なるソフトウェア会社で、人事コンサルの会社でもないので、私たちがそんなことを言ってもあまり説得力がなく、右から左に流されてしまうということがありまして。

その辺りの、「サイボウズが提供できる価値は“チームワーク”って言い続けていいのか?」というところから始まって、社内で何回も勉強会をしたりとか。「チームワークってそもそも何だ?」とか。

「チームって何だろう」みたいな文献研究を重ねて、「本当にこれをずっと会社としてやっていくのか」みたいなことをこの2年間やってました。

今のアワードっていうのは、引き続きずっとやっていましたので、2012年からこれをPRイベントにしようというふうにしていって、2013年に招致委員会等々が受賞いただいたときに全局に報道されていて、現在に至るみたいな形になってきています。

そういった2年間の研究期を経て、徐々にアワードとしても認知度が上がっているところなんですけども。チームということで、現在はアワードだけをやっているのではなくて、さまざまな活動を広げていっている形になります。これがブランディングをやっている”働き方”に続いて、チームワークの歴史です。

製品の進化と社長・青野氏の歴史

最後が製品のほうなんですけども、先ほど横ばいの時期があったというのは、まさにこの2006年〜2009年にかけての時期ですね。「サイボウズLive」という個人向け(サービス)をリリースしましたよ、というのは2009年になります。その後、2011年の11月に「cybozu.com」というクラウドの販売を始めます。

当然ながら、「私たちがクラウドをやっていいのかどうか」っていう製品の研究は、2、3年ぐらい研究をしてようやく世に出て、半年後に先ほど(お伝えしたように)戦車が出てますけども、1000社突破していってみたいな形で、こちらのほうも徐々に進化をしていったという背景があります。

ちなみに社長でいうと、青野(慶久)さんにもちょっと触れたいんですけど。2005年に青野が社長に就任しまして、サイボウズは2006年に東証1部になってから2度の下方修正をしているんですね。

当然ながらもうすごく落ち込んで、「社長を辞めよう」と思ったらしいんです。2006年ぐらいに、当時M&Aも9社ぐらいして、売上も一時期120億とかいってたんですけど。

全部売却をして「僕は真剣に、すべてグループウェア事業に集中する」ということで、選択と集中を2008年に行って、2011年以降の製品の流れへとつながっていきます。

2010年にに第1子が生まれ、イクメン1年生となり、第2子が生まれて本格的なイクメンになって、今年の1月に第3子が生まれ、今16時に帰っているというような、イクメンの歴史と社長の歴史も実はあったりします(笑)。

働き方、チームワーク、製品の取り組みのまとめ

これらを全部まとめると、やっぱり2006年ぐらいから様々な活動をしてきたものが、ようやくこの2年ぐらいで表に出てきたということが言えるわけです。しかもそれぞれに潜伏期というような、かなり地道な時期がありました。

例えば、人事制度に向き合う時期があったり。「チームって何だろう」「これを私たちが価値としていいのか?」みたいなことを向き合う時期があったり。

製品のほうも、横ばいを突破するための新製品を研究する時期があったり、社長も落ち込む時期があったりみたいな。

こういった時期を経て、ようやく現在に至るみたいなのが、実は現在行っているブランディングの歴史でもあったりします。

会社のストーリーを伝える「サイボウズ式」の誕生

では、サイボウズ式はどうやって生まれたのかということなんですけれども、その横ばいの踊り場脱出ということと、クラウドサービス始めますというのと、チームワークをそろそろ世に出そうかなと思っていた時期だったのですね。

2010年、2011年とアワードをしてきた中で、よくあるように、そのアワードのときだけ立ち上げるサイト、ティザーサイトしか立ち上げてなかったんですね。

だけど「ティザーサイトではなくて、ここで常にチームワークに関するものを発信していき、価値を生んでいきたい」というふうに私が提案させていただいて。

同時に大槻が「旧来のサイボウズのイメージを打ち破るためのブログをつくりたい」ということと、「じゃあまずは一緒にやってみよう」ということで生まれたのが、サイボウズ式になります。

点から線、線から面へとつなげるPR

当時、私もチームワークの活動と同時に広報をしていたのですが、広報活動というのは「点」だったんですよね。取材がきたら受け、ベースは製品のほうをしっかりプレスをするというスタンスでいて、ワークスタイル、人事制度、社会問題、技術力、エンジニアとか。こうしたことを点で受けていたんですけれども。

この辺りをしっかりと「線」でつなげていって、今の社会問題と人事制度とか、ワークスタイルを結びつけて、「サイボウズはこういうことやってますよ」ということをちゃんと伝えないといけないということに気づき始めた。

あくまで「自分たちはこうだ」というのではなくて、伝える(側の)人にとって「自分にも関係あることだよね」というふうに伝わらないと、点でやってても意味がないと思い始めたのもこの辺りであります。

同時にそのサイボウズ式というのが、さっきの三要素、点から線、線から面とあるんですけども、やっぱりそのように面で伝えるには編集力がいるんですね。最近よく「編集力がうんぬん」というのをメディアでも書かれてるんですけれども、編集力というのはまさにそういうところで。

バラバラに散らばっているものをどうストーリーづけて、ターゲットに届けるかみたいなところをしっかりと編集する能力が必要だということで、サイボウズ式もやりながら、その辺りのノウハウを築いていく形になります。

フジテレビの取材であたえた社会へのインパクト

そうしたPRの仕方がつかめてきたっていうのが2013年ですね。フジテレビさんに取り上げていただいた、ちょうどこの頃、台風がくる度に、雨が降るとか大雪が降るとかっていう度に取材がきていた頃なんですけれども。

社長が、「明日は(従業員)ほとんど来ないんじゃないですかね」みたいなふうに言って、夕方に(取材に)きてもらって、次の日の朝きたら本当に誰もいない、みたいところがですね。これがまさに後半に続く、絵になるっていうところなんですけども。

「会社に実は誰もいないよっていうところを撮りたいから、撮らせてくれ」っていうふうに電話取材がきて、出したっていうことなんですけども。

この1本数分のテレビの中で、「社長」も見せることができれば、何でこういうことができるのかっていう「働き方」とか「オフィス」も見せられるし。そういうことができる「社風」ですよ、といったことがすべてストーリーになって3分で語られることによって、すごくインパクトをもたらす露出になっていくということができ始めた時期でした。

実はこういった長い歴史を経て、ようやく世に出てきたところだっていうところを、一番認識していただきたいなと思っています。

その根底にはすべて「世界中のチームワークをよくすること」「世界で一番扱われるグループウェアメーカーになる」ためにと。どうしたら世界中のチームワークがよくなるんだろう? ということに活動を広げていっているという形になります。

なので最初に言った、単にサイボウズという名前を知ってもらえれば、名前が出れば何でもいいかっていうとそうではなくて、社会課題に取り組む企業であるというストーリーを知ってもらうと。それに取り組んだ中の人をどんどん出して、知ってもらうというふうに、最近は露出のほうを考えながらやっているという形になります。

社会問題への取り組みから生まれる新しい出会い

社会問題に取り組むということなので、チームワークのほうも私が担当しているチームワークのアワード。その年にヒットした商品、サービスの部署にいる人たちを表彰しようというところから始まったんですけども。

やっぱりイベントだけだと一過性になるので、それだけではなくて、学生にチームワークを教える活動を広げていったりとか。

あとはアンダー35の社会人の社会活動を支援する、チームを生む活動というのを行っていったりして。一見、サイボウズの製品とは離れているんですけども。企業の活動として、社会の課題を解決するという一環として、チームワークを切り口に行っているという形になります。

最近私が行っているのは、学校に行っていたりとかですね。若い社会人といろんなことを、「移住フェス」とかやっていたりするので。何やってるんだろう? と言われることもよくあるんですけども。

おもしろいのが、例えばチームワークを教えるというのも、アワードを知ったある中学校の愛知県の先生が、子どもたちに修学旅行でチームワークを教えたいから、過去にアワードを受賞したチームをアテンドしてくれって言われて。

それがきたのが11月ぐらいだったので、ちょうど11月ってアワードの真っ最中で、当時はなかなか応えられなかったんですけども。

ただ、そういうニーズがあるんだなっていうことはずっと頭にあって。その辺りをやってみたいなっていうことで、やり出したっていうのがきっかけだったりとか。

ブランディング活動の広がりと進化でさらなるファンを獲得

こちらも最近若い人たちで、自分の仕事をしながら何かやっている、プロボノをやっている人が非常に多くなっていく中で、こういう人たちにチームビルディングのことを伝えていくと、何かおもしろいことができるんじゃないかなと思ったことから、やり始めていることです。

こういう活動をしていくと、今までの製品という側面だけではまったく接することができなかった人たちとの接点ができてきます。

例えば、特に学校だとわかりやすいんですけれども、もちろん生徒たちもいれば先生もいて、あと親も関係してくるので、様々な学校での活動を通して、周囲にいる人たちが結果としてサイボウズのことを知ってもらえる、何でこういう会社がこんなことをやってるのかも含めて知ってもらえるっていうことが増えてきたりとか。

こういった社会活動、チームを生むという活動においても、Jリーグさんとかと今一緒にやっていたりするんですけども。あと、地方創生の各地域のキーマンとなる人たちが絡んできてくれたりしていて、やっぱりこういうのはブランディング活動をやっていないと出会えない人だったなと今振り返って思っています。

サイボウズが「グループウェアという製品を売る会社です」という側面を出しているだけでは絶対に出会えなかった人たちと、こういったブランディング活動を広げていく、進化していくことで出会えてきています。

結果的にサイボウズのファンが広まってきている、いい循環が最近生まれているなと思っているところです。

まとめると……

一旦まとめると、ストーリーが必要ということ、自分たちが「自社が提供できる価値」っていうところを考えること。ただ、考えるときには、定着するための時間が必ず必要になっていくんですけども。

これをやっているときは非常に辛いんですけども、定着期は何年か必要になるんですけども、結果的にこれが何年後かに会社の資産となっていくと。

点ではなくて線、面で伝えるということを並べていくと、説得力はもう各段に増してくるということと、社会との接点をつくり出すということで。結果、企業活動に関わる人、エコシステムが大きく広がっていくように、サイボウズのファンをたくさん増やしていくことができるということが、今までやってきて思っていることです。

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