2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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石川善樹氏(以下、石川):私は予防医学の研究をしていて、世の中のビジネスパーソンの方々の研究をすごくするんですけれども。ほとんどの方は「仕事が楽しくなくて嫌だ」と言っているんですね。
仕事はつらくて、あまり楽しみもないと言っている方が多いんですけれども、たぶん自由にできていないんですよね。そういう方については、どういうふうにアドバイスしてあげたいですか?
千葉功太郎氏(以下、千葉):新卒が入ってきたときにしゃべっていることと一緒なんですけど、どんなルーチンに見える仕事でも、改善をしようと思えば楽しいじゃないですか。
例えば、昨日1時間かかったものを45分にするためにはどうすればいいのか、それができたら30分にするにはどうしたらいいんだろう、と考えるだけでもクリエイティブだと思っているので、結局視点の捉え方だと思うんですよね。それをルーチンだからこなさなくちゃいけないと思うのか、そのシステム自体を変えてやろうと思うのか。
前回のセッションでご一緒させていただいた為末(大)さんが、「同じ毎日のトレーニングでも、必ずちょっとずつ課題を持って改善していくことが続けられるコツなんだ」とお話されていたのと「全く一緒だな」「その通りだな」と思ったんです。要は、心の持ち方でどんな仕事でもクリエイティブになると思っています。
石川:視点次第ということですね。ありがとうございます。
宇佐美さんはどうですか? 社会人になられて、「ようやく待ちに待った社会人、働けるぞ!」と。
宇佐美進典氏(以下、宇佐美):そうですね。24時まで働けるって、こんなに幸せなことなんだと(笑)。本当にそう思っていましたね。やっぱり時間の制限なく働けるということのうれしさというか、楽しさというか。
つらさよりも、力を発揮する場があるということ、活躍できていたかどうかはまた別ですけど、場があるということがすごくうれしかったですね。
あと僕自身思っていたのは、働く時間って22〜23歳から60〜70歳くらいまで働くとして、そのうち平日働いているとすると、起きている時間の大半の時間は働いている時間にあてているわけです。
その時間がつまらないものとか、人生にとって無駄なものだと思っていると、自分の人生の大半を無駄なものに使っていると思えてしまうと思っていたので、「絶対にそうしたくないな」と。
だからこそ、働いている時間をより充実させていきたいと個人的にも思っていますし、会社をつくっていく上でも、一緒に働く人たちがそういうふうに思えるようになってほしいなと思っています。
石川:そうですね。私たちはほとんどの時間を働いて過ごしているわけなので、そこを少しでも価値あるものにしていきたいということですね。ありがとうございます。
石川:今から徐々に本題に移っていくんですけれども、「働きがい」ということで、日本人って「◯◯がい」って言葉がすごく好きなんですよね。「やりがい」とか「生きがい」とか「不甲斐ない」とか。
「かい」って、そもそもどういう意味なんだろうと調べてみると、「価値」という意味らしいんですね。だから、「働きがい」というのは「働く価値」ということなんだろうなと思うんですけれども。
実際、データとして日本人が働きがい、働くことに対してどれだけ価値を感じられているのかというのを国際比較したものがありますので、ちょっとご紹介したいと思います。こちら、正面に出るでしょうか。
これは東京大学の島津(明人)先生が「働きがい」というものを、「活力」元気を持って働いているか、「熱意」を持ってやっているか、仕事に「没頭」できているかというこの3点から比較されました。
調べた中では、フランスが一番高かったんですね。ドイツ、イタリア、カナダ、中国と順番で、棒が長いほど「働きがいがある」と感じているんですけれども。日本はどこに位置するかと調べてみると。次(のスライド)、よろしくお願いします。
ダントツの最下位なんですね。これは昔からこうだったかというと、そうではないと言われています。少なくともバブルの頃までは、日本人は世界の中でも圧倒的に働きがいを感じて会社で働いていたんだけれども、90年代以降は下がっちゃったというふうに言われています。
石川:これだけビジネスパーソンが働きがいを感じていないという中でも、今日集まっていただいた3つの会社というのは、極めてポジティブで例外的な会社なのかなと思います。
この会社が、それぞれどういうところを工夫されてやってらっしゃるのかというところを、これからお伺いしていきたいと思います。
その前に、もう1つだけ研究をご紹介させてください。次のスライドにいってください。
私たち研究者は、「働きがいはどういう要因で決まるんだろうか」という、そういうのが好きで調査するんですね。これはいろんな業種の36の企業、8000くらいの部門、20万人の人たちに調査をしたものです。
働きがいといっても、1つひとつ会社は違うんですけれども、共通項は何だろうなというのを調べてみると、4つのステージがあるということがわかってきました。
まず最初にレベル1として、「自分は何をしたらいいのだろうか」ということをちゃんと社員がわかっているかどうか。あまりにも基本なんですけれども、一人ひとりの社員が自分は何をしたらいいのか、そのための道具がきちんと整っているのだろうかと、ここがあるかないかというのが大事だと。
次のステップというのが、「組織の中で自分は貢献できているのだろうか」。例えば、ここに書いてあるような、毎日最高の仕事をする機会に恵まれているなとか。これはおもしろいなと思うのは、「最近1週間で仕事について褒めたられたことがあるのか」とか。
こういう項目に対して「はい」と答えるような会社は、社員の方が貢献度を感じているということですね。
レベル1と2というのは、離職率と非常に関係していると言われています。
次にレベル3というのがありまして、これは「自分はここの人間なのだろうか」という、所属する感じですね。そういうものがあると言われています。例えば、会社のミッションが自分にとって重要かというものですね。
レベル3くらいになってくると、離職率とはほとんど関係がないと言われています。ここからは、生産性や利益率と関係してくる指標と言われています。
最後のレベル4になってくると、個人を超えてくるんですね。社員の一人ひとりが個人を超えて「全員が成長するにはどうしたらいいのか」。ここの質問項目で非常に興味深いなと思うのが、「仕事仲間に最高の友達がいるのか」。
先ほどちょっと友達の話をしていましたが、仕事仲間で友達、しかも「最高の」ということが重要だということなんですけれども。
何千とある質問項目の中で共通項を選び出してくると、だいたいこの12問を聞くといいだろうというのが、働きがい研究の現在のところの最新かつ最善の結論ということになっております。
こういうことを念頭に置いて、これから具体的に皆さんにそれぞれの会社の状況を伺っていきたいんですけれども。
まずは佐藤さんからお話を伺ってもよろしいでしょうか。会社での、働きがい(について)。
佐藤光紀氏(以下、佐藤):今日は「働きがい」のセッションということで、改めて「うちの会社って何してるんだっけな?」というのを、ちょっとおさらいしてみたんですけど。資料(のスライド)にいっていただいて。
これは「Great Place to Work」という、今日お越しいただいているオーディエンスの皆さんもエントリーされている企業が多くいらっしゃると思うんですけれども、世界中で働きがいのある企業をモニタリングしている調査機関のデータです。
我々も何年か前から、その調査の仕組みを使って自分たちの職場の働きがいとか企業価値というものを定量的に見てみようということで(調査)しているんですけれども。
石川:ちなみにどういう調査をされるんですか?
佐藤:従業員に対するアンケートがベースです。そこから徐々に新しい気づきとか学びを経て、いろんな人事上の施策や企業文化づくりとか組織づくりに活かしていっているということで。我々なりの取り組みということで、少しご紹介をすると……。
「どんな人たちと、どんなふうに働いていきたいんだっけ?」ということで、我々としては「アントレプレナーシップ」とその人たちに対する「モチベーティング」と「ダイバーシティ」というこの3つの考え方を、あらゆる組織づくりやフィロソフィー、企業文化のベースにしていっているということです。
簡単に言うと、起業家精神あふれる人材がやる気を持って働いて、多様性を認め合いながら優れた組織をつくるということをしています。
「実際にしていることってどんなことがあるんだ?」って数えてみたら、何百という単位の細かい施策群に分かれていました。それを分類してみようということで、いい機会なので調べてみたんですよね。次のスライドにいっていただいて。
要素としては、5つの要素に分かれています。これはいわゆる調査のフレームに近しい感じなので、我々ならではというよりは、一般的なものだと思うのですが。
信用、誇り、連帯感、公正、尊敬という要素に分類されて、それぞれ「どうやら従業員が働きがいを感じる瞬間というのがあるね」ということでした。実際の細かい打ち手みたいなところで抜粋してみると。次のスライドへ。
かなり文字が細かいので、ざっと見ていただければと思います。実際に、従業員同士が誇りとか信頼、尊敬の念を持って働くためのいろんな施策です。あらゆる手を、考えつく限りいろいろやっています。
これって人事施策とか福利厚生とか諸々の評価の仕組みなんですけど、ポイントで言うと、「それをして、業績が上がるのか?」ということとしっかり紐付ける。
こういう人事上の施策って経営者の自己満足になりがちというか、これをしたらなんとなく社員が喜んで、うれしそうだから自分も幸せみたいな、そういう感覚で終わっちゃうと、ちょっとまずいよねということで。
どちらかというと企業価値を上げ、業績を上げ続けるために、つまり顧客により貢献し、株主に対してしっかり価値を高めていく手段として、こういう働きがいのある環境づくりがあるんだということです。
あくまで業績を上げる、パフォーマンスを上げることとセットになった、そういう施策としてすべて実行して、うまくいったものはより良く残して、うまくいかなかったものは形を変えて、それをいろんな軸で連携させながら会社のオペレーションに落とし込んでいくということをしています。
石川:今やられていることを1つひとつ見ると、特にこれが重要というのは何かあるんですか?
佐藤:優先順位というのは特にないですね。例えば最近ダイバーシティが、うちでいうと7ヵ国20数拠点のオフィスで仕事をしていて、以前と違ってワンフロアに全員顔を合わせてという働き方ではないステージになっているので。そうすると、よりダイバーシティを成長の軸の中心に据える必要が出てきていて。
その結果、国を超えたコミュニケーションとか時差を前提としたコミュニケーションとか、性別、女性のキャリア支援とか、そういうことが経営課題として上がってきました。
それをどういうふうにしたら我々なりにクリアしていけるんだろうということを実行していったら、今のようになったと。ステージによって、だんだん打つ手の中身が変わってきたというのがあるのかなと思います。
石川:先ほどのデータでも、日本人はほとんど働きがいを感じられていないというのがあったんですけれども、いきなりこれ全部はできないと思うんですね。1つ前のスライドに戻っていただいていいですか?
私がおもしろいなと思ったのは、5つの要素にきちんと言語化できたというところがポイントだったのかなと思うんですけれども。うちの会社はこういうポイントで見ていくんだという。
ここに至るまでに、どれくらいの時間で、どういう努力をされて、言語化されたのかなというのに興味があります。
佐藤:評価制度1つをとっても、例えば360度のマルチサーベイって、全員が全員を評価し合うという仕組みとしてはわりとポピュラーなものなんですけれども、それに自分たちなりのカスタマイズを加えて、十数年くらい毎年ずっと評価の度に問題を洗い出して、次をより良くしていくみたいな。鰻屋さんのタレみたいな。
石川:秘伝のタレみたいな(笑)。
佐藤:タレを足し続けてトロトロにしていく、みたいな。そういうベースとなるものに味を加えて熟成させて、さらに加えて。こういうふうにして時間の経過とともにできていくので、仕組みだけポンと持ってきたからといって、再現性があるかというと必ずしもそうではなくて。
やっぱりそれぞれの会社ごとの、独自の企業文化や思想とうまく組み合わせていくプロセスが大事だと思います。優先順位というよりは、プロセスでできていっているという感じですかね。 石川:ありがとうございます。業績と関連する、働くことの価値というものをこうやって5つにできたということは長い歴史があるし、微妙な改善を積み重ねてきたということなんですね。
佐藤:はい、だと思います。
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