2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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記者:最近の安倍さんの声を聞くたびに、岸信介がよみがえってきたような気もしますよね。特定秘密保護法もあるし、軍事産業もやってるし、平和憲法も撤回を求めてるから。
もう1つのひどい政策の中で、最近、文部科学省が全ての人文社会科学を廃止する方針を打ち出しました。文学、社会学、心理学。その方針についてはどう思いますかと、なぜそういう方針を打ち出したのか。
宮崎駿氏(以下、宮崎):歴史というものに対する感覚がひどく鈍くなってるんだと思います。今、歴史の、ある場所にいるんだという感覚がひどく鈍くなっていて、このままずっと続くんだろうみたいな感じが、この国の中に蔓延しているんだと思いますね。
第二次大戦のあと、日本は冷戦の狭間で保守と革新というのは、民主主義か社会主義かという、そういう冷戦構造の中で揺れ動いてきたんです。それが冷戦が終了したあと、つまりソ連が崩壊したあと、はっきりした根拠、つまり保守と革新を分ける根拠を失ったんだと思います。その再建がまだ革新の側にできてないんだと思いますよ。
記者:スイスのフリーの記者でございます。原発でございますが、近々再稼働、第1号がまた再稼働されるというお話になっております。原発をどうお考えでございますでしょうか。日本はそれを放棄すべきだと思いますでしょうか。
宮崎:ええ。こんな地震だらけで火山だらけの国で、原発なんてもってのほかです。この土地だって本当にわずかな前に火山の噴火でできた土地ですから。
私は東京と埼玉の間に住んでいますが、そこの川沿いの小さな土地にいますけど。実は東京湾に津波か高潮が襲ってきた場合、東京都のハザードマップによると、私の家も沈没することになってます。そのスケールたるや、壮絶なスケールなんですよ。そういうことが起こりうる、確実にいや起こるだろう。そういう国に私たちはいるんです。
ここも津波が来るかという話になると、ここは意見の分かれるとこですが、友人たちは多く、そんなことはないだろうと言いますけど。でも実際、富士山はいつかは爆発して、巨大な阿蘇山のような形になるはずですから、この国は本当にわからないです。わからないということを前提に生きなきゃいけない場所なんです。そんなとこで原発なんかもってのほかです。
まして沖縄を何のために基地にするかっていったら、それは中国の封じ込めのための最前線でしょう? だけど、なぜアメリカは海兵隊をグアムに持っていこうとしてるか。最前線に最強部隊を置くことはできないんですよ。だってパールハーバーもクラークフィールドも、そこに最強の基地があったから、日本海軍は攻撃したんです。必ずそうなりますから、沖縄をその拠点にすることは、もはやアメリカの戦略上でも良くないことになってるはずです。ベトナム戦争のときとは違うんです。
ですから、辺野古に基地を作っても、結局それは自衛隊を使うことになるんでしょう。そういうことも含めて考えると、僕は辺野古の埋め立ての基地を作るのは、反対です。本当に。そこは標的を作るようなもんです。というのも入ってます。
記者:先ほどアメリカの消費文化、大量消費文化に非常に違和感を感じる、あまり好きじゃないとおっしゃったんでございますが、しかしながら、アメリカという国は監督の映画を大好きでございますし、非常に成功しているわけでございます。もちろんそうは言いましても、映画そのものを直接観られているわけではなく、ダビングされているわけでございます。アメリカ人の声優が入るわけでもありますので。
質問でございますが、ハリウッドは監督の映画をどのようにprocess、処理してるんでございますでしょうか。つまり、やはり翻訳などを通しまして、あるいはプレゼンテーションを通しまして、何か本来の意味、監督が打ち出したいと、訴えたいと思っていた意味とかっていうのは少し変わってると思いますでしょうか。変えられていると思いますでしょうか。
宮崎:いや。アメリカに私たちの作品を紹介するに際しては、ピクサーのジョン・ラセターが非常に友情と責任を持ってやってくれています。ですから彼を私は信用しています。本当に一番の親友です。
ついでに、ちょっと1つ。僕はイギリスのハードマンスタジオというところに、ブリストルにハードマンスタジオというのがあるんですが。そこに行ってそのスタッフと交流したときに、彼ら、彼女たちがこのDVDにサインしてくれって私の作品を持ってきました。完全な海賊版でした。中国製の。
(会場笑)
どういうふうになってるのか、私には見当もつきません。
記者:イタリアの経済誌の者でございます。先ほど、引退を発表されてから生活があまり変わってない、30分遅く来て、30分早く帰るっていう話だったんでございますが。今取り組んでいらっしゃいますクリエイティブなプロジェクトについて、お話いただけますでしょうか。そして、もしかしたら将来的にはまた大きなプロジェクトに関わりたいと、今いろいろ悩んでらっしゃるのでございますのでしょうか。
宮崎:今、ジブリの美術館で短編映画を作っていますので、その10作目にかかっています。これは従来のスタッフ少しと、それからCGの新しいスタッフたちと出会うことになっています。それで、プロデューサーは3年ぐらいかかるであろうと言ってますが、若いスタッフを3年も拘束するのは良くないので、私はできるだけ早く終わらせたいと思っていますが。それだけでも精一杯ではないかと思っているんです。
記者:フランクフルト新聞の者でございます。辺野古、そして自衛隊、そしてまた米軍との関係でございますが、中国を脅威としてご覧になりますでしょうか。そして中国にどう対応すべきでしょうか。そして中国の軍事拡大政策などについては、どう対応すべきだと思いますでしょうか。
宮崎:中国は膨張せざるを得ない内圧を持っています。それをどういうふうに時間をかけてかわすかっていうのが、日本の最大の政治的な課題だと思います。答えになってませんか(笑)。
記者:ドイツの新聞でございます。日本の若者をどう見てらっしゃいますでしょうか。他の国を見ますと、若い人たちの中でも、やっぱり右傾化っていう傾向が出てきているわけでございます。日本でも田母神氏が若い人たちの中で人気を得ています。
一方では、多くの若者は政治に無関心というふうに言われてるんでございますが、そう言ってもやっぱり、右寄りの若い人たちが結構増えてるっていうふうに考えております。
今後、これはどういうふうに発展すると思いますでしょうか。つまり、過去のような若者が非常に政治プロセスに熱狂的に参加するような事態が来ると思いますでしょうか。それともそういうことはないと思いますでしょうか。
宮崎:スマホを手放してくれれば変わります。
(会場笑)
記者:私の質問は、本当にさっきの質問と全く反対の質問になるわけでございます。この日本の平和憲法というものは、やはり外国の占領国が日本に押し付けたというふうに、よく言われてるわけでございます。
しかしながら、今の日本での動きを見ますと、この憲法は非常に日本人が深く愛してるわけでございます。どうしてそういうふうに日本人は、この憲法に対してこんなに強い思いを持っていると思いますでしょうか。
宮崎:15年にわたる日本の戦争は、惨憺たる経験を日本人にも与えたんです。300万人の死者です。この経験は多くの、つまり私たちよりちょっと上の世代にとっては忘れがたいことです。それで、平和憲法というのはそれに対する光が差し込むような体験だったんです。これは今の若い人には、若い日本人にはむしろ通じないぐらいの大きな力だったんです、平和憲法というのは。
それで、平和憲法は占領軍が押し付けたというよりも、1928年の不戦条約というのが国際連盟を作るきっかけになったんですけども、その不戦条約の精神を引き継いでいるもので、決して歴史的に孤立したものでも、占領軍に押し付けられたものではないんだと思います。
記者:よく日本とアジアは理解できないという部分は、日本の教科書の中では加害という部分をあんまり薄めてますので、まさに最近の動きでは、中国、韓国も日本に対する歴史認識を指摘をしているんですが。
私の質問では、監督はたくさんのいい映画を作りましたので、まさにその思想も加害の部分も大変重く感じる日本の1人ですので、例えば将来的には、このテキストを日本の国がそういう支配できるようなテキストより、自分が作った映画にアジアのそういう観点をもっと入れたり、またはそうしたいというビジョンはありますか。またはアジアの人たちと共に映画を作っていきたいとか、そういうようなお考えはありませんか。
宮崎:いろんなアニメーションの作品が考えられますが、今私が作ろうとしてる作品は、こんな小さな毛虫の話です。指で突くだけで死んでしまいます。この小さな毛虫がこんな小さな葉っぱにくっついている生活を描くつもりです。それは、アニメーションが生命の本質的な部分に迫ったほうが、アニメーションとしては表現しやすいんではないかと思っているからです。意味わかりませんか。
(会場笑)
それで100年や200年の短い歴史よりも、もっと長い何億年にもつながる歴史をアニメーションは描いた方がいいと思っています。
彼女が、手を挙げてます(笑)。いいですよ、どうぞ。
記者:ありがとうございました。最後の質問はアニメに戻ります。今までのアニメの制作につきまして、監督としてはまだ実現していないこと、あるいは遺憾なものはありますか? また、オタク向けの作品はどんどん出てますが、監督はこの状況をどう思っていますか?
宮崎:フィルムがなくなって、私達が使っていたセルがなくなって、絵の具で塗ることもなくなりました。それからバックグラウンド、背景を描くときの絵の具を私達はポスターカラーを使ってきましたが、ポスターカラーすらもう生産は終わるだろうと言われています。筆も良い筆が手に入りません。
それから紙がこの1、2年で急速に悪くなりました。私はイギリスのBBケントっていうケント紙をペンで描くときは愛用していたのですが、ついにこのとても素晴らしい、僕にとっては宝物のような紙が、線をすーっと引くとにじむようになりました。インクが使えなくなりました。
何か世界がもっと根元のほうで、みしみしと悪くなっていくようです。ですからアニメーションのことだけ論じてても、しょうがないんじゃないかなと思います。いつでも、どうしてこれが流行るのかよく分からないものが流行ります。それもいろいろあって良いんじゃないかと僕は勝手に思っています。
記者:フランスのテレビでございます。沖縄の子供たちのためにいろいろ寄付してると伺ってるんでございますが、今後基地がなくなったりあるいは縮小されて、軍事的なプレゼンスが少なくなると、沖縄はどのような県になると思いますでしょうか? どのような未来が可能になると思いますでしょうか?
ひとつのストーリーでございますけれども、わたくしの友人の祖父達が沖縄出身なんでございますが、1945年沖縄戦が行われた時には洞窟に逃げたために命拾いしたわけでございます。そこには沢山水もあった。水もあったから生き延びたと言ってるわけでございます。
そこの洞窟は、逃げた洞窟は今普天間基地の下になってるわけでございますけれども、こういうものもありますし、また不動産業が発達するということも考えられますし、あるいはまた観光業も考えられますが、宮崎ワールドというものを考えますと、どういう沖縄を想像できますでしょうか?
宮崎:僕は、沖縄は日本と中国と両方仲良くするところになるといいと思います。それが一番ふさわしいです。そして交易をする、それから非常におおらかな心を持っている人たちですから、ちゃんとやっていける島だと思います。
随分前、自分の子供たちが小さかったときに、私は二度ほど沖縄の小さな島に行きました。その時の宿のおじさんとおばさんが、どれほど子供たちに良い印象を与えたか、かくもおおらかで、優しい人々がいるんだっていうのが驚くべきことでした、本当に。
二度目の時は、僕は10人の子供を、大人は僕ひとりで連れて行きました。10人は4家族の子供たちですが、みんないつもはケンカしている兄弟が、いつも姉さんや兄さんの言うことをきちんと聞いて、そのおばさんに「本当に感心な子供たちだ」と褒められました。沖縄を思い出すと、いつもその人たちのことを思います。
記者:辺野古基金の共同代表の宮崎監督にお聞きしたいのですが、政府は辺野古に基地をつくれないとなると、危険な状態の普天間の固定化につながると、脅しともとれるような言い方を繰り返しています。宮崎監督としましては、辺野古問題の解決策どのような形で解決されるべきだとお考えでしょうか?
宮崎:普天間の基地は移転しなければいけません。それから辺野古を埋め立てるのはいけません。それで、第一次民主党の内閣の鳩山総理は「日本全体で負担しよう」というふうに発言したんです。僕はそれがまだ生きていると思っています。
記者:中国のチャイナニュースサービスのものですが、ちょっと質問がありますけれど、監督の作品の中で、いくつか直接戦争に触れたという名作があるわけですが、今年戦後70年という節目の年なんですけれども監督から見ればあの戦争あるいは70年前のあの歴史は一体どういうものなんでしょうか? それと、あれからどういう教訓、あるいは経験を得られるものだったんでしょうか?
宮崎:あの戦争に至る前、「どこで止められたんだろう」というふうによく考えます。そうするとだんだんさかのぼっていって、ついに日本とロシアの戦争にまで至ります。実はその前に日清戦争というのもありますが、これは結局東アジアにヨーロッパが来て、大砲で開国を迫ったことによるんです。文明の衝突から始まったんですね。
でもそれを言っていくと、どんどん責任が曖昧になります。ですから、僕はやっぱり「やってはいけないことはやってはいけないんだ」っていうことしかないんじゃないかと思います。他国を自国の犠牲にして侵略することは絶対あってはならない、どんな理由をくっつけても、どんなに美化しても美化しきれない。その原則だけは絶対守るべきであるというふうに思います。侵略してはいけないんです。それで私たちは島国ですから、一番やり易いはずです。
記者:先ほど、世の中は非常に変化しておりますので、アニメーションの将来を論じるのはどうかっていうことをおっしゃっていたんでございますけれども、しかしそれについて質問させていただきたいと思います。
アニメーションの今後はどうお考えになっていますでしょうか? つまり監督は長編作に今まで特化してきたわけでございますが、今新しい会社、例えばドリームリンクエンターテイメントなどがありますが、これは非常に機敏に視聴者の要望に、ニーズに応えられてすぐ作品を作れるというような会社なんでございますが、これがアニメーションの未来像になると思いますでしょうか?
それとも今まで監督が関わってきた非常に長い映画、制作するのに何年もかかって、非常にハイリスク、しかしながらハイリターンも期待できる、こういうような映画に未来があると思いますでしょうか?
宮崎:幸運と才能さえあれば何とかなるでしょう。
(会場笑)
司会:ありがとうございました。
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