DMMのスタートは動画配信
尾原和啓氏(以下、尾原):こんばんは。10分対談、今日のお客様はDMMの亀山さんです。よろしくお願いします。
亀山敬司氏(以下、亀山):はい、わかりました。
尾原:『ザ・プラットフォーム』は「プラットフォームをどうやって作っていくか?」「プラットフォームがどう人を自由にしているか?」といったことをテーマにした本なので是非聞きたいのですが、亀山さんはいろんなプラットフォーム作ってこられているじゃないですか。どうしてそんなにプラットフォームをいろいろ立ち上げてらっしゃるのか、何が面白くてやってらっしゃるのかをお聞きしたいです。
亀山:わはははは(笑)。何が面白くて?
尾原:そう、特に最近「MAKERS」のような、先がまだわからない分野にまで着手されてるじゃないですか。
亀山:それは小笠原(治)さんに騙されてやってます(笑)。
尾原:あはははは(笑)。もともとプラットフォームの方に進み始めたきっかけって、何だったんでしょうか?
亀山:成り行き上プラットフォームになったっていうだけで。もともとはただのエロの配信サイトですからね。でもそれを売るにはちょっと早かったから通販始めた。
尾原:でもサイトを作る前も、それまでは問屋を通した流通だったのを、直接取引の委託販売制というプラットフォームを作られたわけですよね。普通はそんなこと考えないですよね。
亀山:とりあえずコンテンツを直接届けたほうがいいかなと思って動画配信を始めたんだけど、当時は回線遅いからね。
尾原:最初は動画配信からだったんですか?
亀山:そう。実は動画配信が最初なの。RealPlayer(リアルプレーヤー)ってあったでしょ?
尾原:はい! 懐かしい!
亀山:RealPlayerが出たときに動画を売り出したからね。その後Windows Media Playerに変えたんだけど。最初は画質が汚かったけど、始めたんだよ。
尾原:なるほど。それでもやっぱり早すぎるから、1回通販に戻すと。
亀山:動画もやりながらだったけど、通販の方を作ろうかなと思って。そこから、通販始めたらレンタルもライブチャットもやっちゃおうかなという。Amazonとかでシングルサインオンってやれるじゃない。これはいいわと思って、課金繋がりで、同じカードでいろいろ買えたらいいなとやっていたらプラットフォームになったのかな。だから成り行き上なった感じ。
ヤフーは東京駅、DMMは歌舞伎町
亀山:街に例えると、ヤフーは東京駅みたいなもので、プラットフォームとしていろいろ派生していくよね。
尾原:ヤフーは「検索」という、人が通る主要駅なわけですよね。主要駅にニュースを設ければ見てくれるし、乗換案内も設ければ使われる。だからヤフーは毎日使うものを集めた、情報のコンビニですよね。
亀山:楽天とかはあちこちにショッピングモールみたいなものを作って。秋葉原みたいなものですよね。
その街がだんだん出来てくるから、そこで別のビジネスを始めたり、旅行代理店楽天トラベル作ったりする。そうやっていろいろやっていくのも、結局その街で通用する通貨を作って、それをだんだん普及させていくような感じ。
尾原:そういう意味で言うと、今おっしゃったようにヤフーは東京駅で、最も人が来る場所だから毎日使うコンテンツを集めていった。
亀山:うちは歌舞伎町出身だからね。歌舞伎町の周りにFXの証券取引所を作ったりして。
尾原:なるほど確かに。
亀山:そこで使える通貨があるから、周りに他のビジネスとして英会話教室を作ったりしている感じです。
尾原:今の例の「歌舞伎町のFX」というのはわかりやすいですよね。DMMがFXを始めたとき、こういうやり方があったのかと驚愕で。
亀山:はっははは(笑)。まぁ、男がいっぱい集まってるからね。
尾原:欲望が強い男がね。結局、花街には絶対鉄火場があるという古来からの大原則ですよね。
亀山:最近はゲームセンターを作ったりね(笑)。ゲームセンターが流行ってるから。
大体、そこで共通マネーを作っていくんですね。楽天マネーとか、DMMマネーとか、Amazonマネーみたいなもので。
尾原:確かに。だからヤフーは東京駅で、楽天は秋葉原、それに対してDMMは歌舞伎町ですよね。すごくわかりやすい。
DMMはエロだったからAppleも手を出せなかった
亀山:今はちょっとプラットフォームがおかしくなってるんだよ。昔だったら楽天マネーとかヤフーマネーとかいろいろ作ってたんだけど、いきなりGoogleとか、Appleとかがスマホマネーを作ったじゃない? 上からドルを撒きだしたわけよ。そしたら、俺たちがせっかく作った街の文化が壊れていって。
尾原:今まではヤフーの東京駅、楽天の秋葉原という街の単位で暮らしていたところに。
亀山:そこにいきなりスマホでは「ドルを使え」とか言い出して。App Storeだったら「アプリを売ったら3割払え」と言い出したわけ。
尾原:しかも検索で直接アプリと結びつけちゃいますよと。
亀山:アプリで分断されてるから、囲い込んでたのもバラバラにされちゃう。サイバーエージェントもAmebaの街作ろうと思ってたのに。ニコ動も大変よ。
うちはエロだったからAppleも手を出さなくて、比較的安全で、被害は少ないけど。とはいえやりにくいよね。逆にベンチャーはやりやすくなったと思う。ベンチャーはプラットフォーム持ってないから。
昔は、うちとか楽天とかヤフーみたいなところが強かったわけよ。俺たちも有利にしようと思って、一生懸命作ってたからね。でもAppleのおかげでアプリのベンチャーは動きやすくなったよね。だから一般的には歓迎するけど、プラットフォーム屋としたら、「やられた、弱ったなぁ」みたいなもんだよ(笑)。
尾原:だからサービスじゃなくて、今度はハードのところでプラットフォーム(MAKERS)を作ろうかという話ですかね?
亀山:結局、今からAmazonと物販でやりあっても勝てないですよ。Amazonが売らない物を作らないといけない。どこでも売ってるものだと、何やっても結局Amazonに量販で売られちゃう。勝てないよ。
秋葉原が次の一等地になる可能性
尾原:でも一方でDMMの面白いところって、DMMはプラットフォームの上で「艦これ」とかを含めて、いろんなサービスをポコポコ立ててるわけじゃないですか。だったら任天堂のジレンマと一緒で。任天堂って、たぶんプラットフォームをやっていなくても、面白いゲームを作り続けられると思うんですよね。
一番わかりやすい例はセガで、セガは元々プラットフォームだったんだけど、プラットフォームをやめてしまった。でも実はゲームを量産できる体制があるから、今はセガモバイルとして、アプリのゲーム業界、AppleやGoogleの中ですごく儲けてるじゃないですか。
亀山:でも、みんながんばって儲けてるけど、結局プラットフォームに3割ハネられてるじゃない。
尾原:やっぱり胴元のほうがいいと。
亀山:胴元のほうが安定はするよ。だってクリエイティブな部分は作り続けないといけない。
尾原:1本1本、当たり外れがありますものね。
亀山:みんな当たり前に、「売るなら楽天で、Amazonで」「Appleストアは絶対に外せない」ということになってるから。そういうのは強いよね。プラットフォームが強いというのは、そういうこと。
尾原:そうですよね。そこでこだわり続けてやっていくし、そういう意味で次のプラットフォーム、次の一等地になる可能性見て、秋葉原に最新のMAKERSを集めるね。
亀山:「DMM.make」は、まだモノづくりのプラットフォームってないし。どうせ俺は技術もないしクリエイターでもないから、そういう場所を作ってみんなが集まってくれて、何か生まれればいいかなと思う。
尾原:なるほど。
亀山:Amazonの物販の街に勝てないから、今度は製造の街を作ってそこから直販をするというのはあるよね。
尾原:いい話ありがとうございます。今日はありがとうございました!
亀山:ありがとうございます。
亀山敬司(かめやま・けいし) 石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めるも、めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎につつまれている。※「かめっち会長」LINEスタンプはこちら。
尾原和啓(おばら・かずひろ) Fringe81執行役員、PLANETS取締役。マッキンゼー、Google、楽天執行役員リクルート(2回)等を経て、現在12職目。バリ島から各役員を兼務し人を紡いでいる。TED日本オーディションなど私事で従事。前著『ITビジネスの原理』はKindle総合1位、ビジネス書年間7位。詳細プロフィール。