20世紀と21世紀の経済の違い

司会:皆様、お待たせいたしました。本日2つ目の特別講演「勝ち残る企業の条件」-クラウドが迫るマインドチェンジと題しまして、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長、ビジネス・ブレークスルー大学学長、大前研一様にご講演いただきます。それでは、大前様よろしくお願いいたします。

大前研一氏:こんにちは。大前です。昨日までちょっとローマにいて、アリタリア航空で帰ってきたんですけど、実は今日ちょっと前に帰る予定だったんです。たくさんの人が集まってるって言うんで、まずいなと思って1日早く出て昨日ちゃんと着いてましたんで。辻さん(辻庸介氏)もひと安心という感じじゃないかなと思うんですけど(笑)。

ローマに行くともう本当人が溢れていて、ちょうど何て言いますかね、日本には1,500万人ぐらい観光客が来ますけども、イタリアには7,000万人来ますからね。そうするとあんな感じになるんだなということで、私もその7,000万をちょっと実感してきたんですけど、自分もその1人だったんですけども。

今日は勝ち残る企業の条件ということで、クラウドが迫るマインドチェンジ。このマインドチェンジって、何事もそうですけども、なかなか難しいというふうに思います。それで21世紀と20世紀とどこが違うのかということを、私は何十年かこれについて書いてきてるんですけども。

21世紀の「見えない経済」を構成する4つの要素

まずちょっと古い本ですけれども『見えない大陸 INVISIBLE CONTINENT』という本を14、5年前に書きました。それはどういうことを書いたかっていうと、21世紀の経済って実は見えないんだよねと、っていうか見えない部分が多いんだよねということで。

これも1番左にあるように、要するに20世紀というのが見えてる経済、物とか土地とか、そういうふうな見えてる経済であるのに対して、21世紀を構成する経済要素っていうのは4つあると。

従来どおりのリアルな経済と。もう1つはサイバースペース上でもって富が築かれると。この中で私は、世界で初めてだと思いますけれども、富はプラットフォームに作られるんだと。プラットフォームというのがサイバースペースに出現して、そこの上で富を作ると。

今ではアメリカのビジネススクールなんかでもプラットフォーム戦略なんていうのを教えてますけども、この本が最初です。プラットフォーム上で富が作れるんだよと。

私も当時、できたてのいろいろなサイバー会社を見ていて、これはプラットフォーム、プラットフォームっていうのは人が寄ってきて、そしてみんながさらに集まってという、こういうふうなことが富をもたらすということに気がついたんで、サイバースペース。

しかも、ここは見えない大陸ですから、杭を打ってテリトリーを主張したやつが勝つんだというようなことで、西部開拓史に非常に似てるという、そんなことを書きました。

それからグローバル。これも私は20何年前に『ボーダレス・ワールド』って本を書きまして、ハーパーから出しましたけども。これはやはり国境を人、金、物が全部動くという、こういう世界なんですけれども。

実はレーガンさん、今思うとかなり古い大統領ですけれども、この人は規制緩和じゃなくて規制撤廃をしたんですね。何をやったかというと、通信と金融と物流なんです。

この3つが、実はボーダレス時代に最も重要な産業で、国境をまたぐ。お金、通信、そして例えばFedExとかですね。ああいう物流関係、これが国境をまたぐようになった。

大前氏が初めて説いた「ボーダレス経済論」

ですから、グローバル、ボーダレス経済ということを、これまた世界で初めて私がそういうボーダレス経済論というのを唱えたんですけども。

そのことが、もともと貿易っていうのはあったんですけども、そうではなくてお金とかそういうものまで全部大きな財産っていうのが通信回線上に行ってしまうと。

私はこれに最初に気がついたのは、アイルランドなんです。アメリカのシグナという保険会社の仕事を、当時でいうと、ワークステーションでもってアイルランドに送り込むと。

そうすると、アメリカ人が家に帰って寝てる間にアイルランド人がビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)でもってこうやって全部審査して、この保険請求業務は正しいかどうかと。

で、チェックを切って発送完了して、翌日アメリカ人が来ると送るだけと。アメリカから仕事が国境をまたいで、その時に電話線で雇用が国境をまたぐんだと、こういう言い方を私はその本の中でしてるんですけども、今では普通ですよね。

私も大連に日本語のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の会社を経営してますけども、このようなことっていうのは、当時は最初に気がついたのはアイルランドとアメリカの間だったんですね。そういうことで、いわゆるグローバル、ボーダレス経済というものに気がついて、それも書きました。

21世紀に必要なのは見えないものを見る力

それから、マルチプル。これ、私学生なんかに教えてて1番わかりにくいところなんですけども、マルチプルっていうのは倍率という意味ですね。株価収益率、PERと言いますけども、これが倍率の典型的なもんです。

すばらしい経営者がいるとか、あるいは急成長してると、将来明るいというと、Price Earnings Ratio(PER)っていうのがどんどん上がってくる。それが時価総額を決めますんで、その時価総額でもって資金を調達して、でかい会社を買収することなんかができると。

すなわち、これから先はこの飛び道具、PERでもってこういうことができるようになるんだよと。銀行に行って「お願いします」って言うんじゃなくて、資本市場でもって資金を調達していくんだと。

これら4つの要素を使い切った経営者が、21世紀の優秀な経営者になるんだと。ここがちょっと疎いんだという具合にはいかないんですね。なぜかっていうと、競争相手っていうのはそういう疎い人のとこをこうねらってきますんで。

ということで、この経営としては、見えない部分が非常に増えている。だからまず、21世紀にどうやって勝ち抜くのって言われたら、見えないものを見る力、これって人によってある人とない人がいるんですよね。

21世紀の経営に不可欠なのはイマジネーション

いくら言ってもわかんないっていう人もいるんですけど。しかしこれは訓練で、とにかくそういうふうなものが見えるようにしていく。1番良いのは友達を持つことです。友達とそういうことを議論している間に、お互いに「ああ、そうだよな」って言って腑に落ちるところがあると思います。

ですから、見えてるもんだけでもって、あるいはExcelだけでもって、パッパッパッパッやってるような、そういうんじゃない友達、見えないものを見る力を持った友達というものを見つけていく必要があると思います。そういうことが簡単にできる人と、なかなかそうはいかない人っていうのはあります。

もちろん20世紀の経済でも、例えばウォルト・ディズニーなんていうのは、あのフロリダのワニがいっぱいいるような湿地帯で、通年型のリゾートを作ったわけですよね。あそこはワニしかいなかったわけですから。

今ではオーランドということでディズニーワールド。オーランドの飛行場、アメリカ第3位ということで、すごい発展してますけども、100万都市になりました。

しかしああいうものを見た時に、要するに未来の公園っていうのがここにこんな形でできるんだって見える人、「見えないんだよね」と。「ワニしか見えねえじゃんか」と、こういう人の違い、これイマジネーションとか構想力といいますけれども、21世紀非常に重要なスキルの1つです。

だから見えないものを見る力と、それらがフルに見えるようになってサイバースペースも見えるようになり、またボーダレスな世界も見えるようになり、マルチプルなんかも敏感に反応していくと。こういうふうな経営、これが21世紀に求められる第1です。