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「勝ち残る企業の条件」-クラウドが迫るマインドチェンジ-(全3記事)

21世紀は「人・物・金」から「人・人・人」へ--大前研一氏が「もはやお金は経営に必須ではない」とビジネスの変化を語る

2015年4月に行われたマネーフォワード主催の「MFクラウドExpo2015」において、ビジネス・ブレークスルー代表の大前研一氏が登壇し「『勝ち残る企業の条件』-クラウドが迫るマインドチェンジ-」をテーマに特別講演を行いました。本パートでは、21世紀の経営で重要視されるのは「人・物・金」から「人・人・人」に変化するとし、今後勝ち残る経営の条件を紹介します。また、クラウド・ファンデングやクラウド・ソーシングの可能性にも言及し、これからのビジネスに起きる大きな変化について持論を展開します。(MFクラウドExpo2015より)

20世紀と21世紀の経済の違い

司会:皆様、お待たせいたしました。本日2つ目の特別講演「勝ち残る企業の条件」-クラウドが迫るマインドチェンジと題しまして、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長、ビジネス・ブレークスルー大学学長、大前研一様にご講演いただきます。それでは、大前様よろしくお願いいたします。

大前研一氏:こんにちは。大前です。昨日までちょっとローマにいて、アリタリア航空で帰ってきたんですけど、実は今日ちょっと前に帰る予定だったんです。たくさんの人が集まってるって言うんで、まずいなと思って1日早く出て昨日ちゃんと着いてましたんで。辻さん(辻庸介氏)もひと安心という感じじゃないかなと思うんですけど(笑)。

ローマに行くともう本当人が溢れていて、ちょうど何て言いますかね、日本には1,500万人ぐらい観光客が来ますけども、イタリアには7,000万人来ますからね。そうするとあんな感じになるんだなということで、私もその7,000万をちょっと実感してきたんですけど、自分もその1人だったんですけども。

今日は勝ち残る企業の条件ということで、クラウドが迫るマインドチェンジ。このマインドチェンジって、何事もそうですけども、なかなか難しいというふうに思います。それで21世紀と20世紀とどこが違うのかということを、私は何十年かこれについて書いてきてるんですけども。

21世紀の「見えない経済」を構成する4つの要素

まずちょっと古い本ですけれども『見えない大陸 INVISIBLE CONTINENT』という本を14、5年前に書きました。それはどういうことを書いたかっていうと、21世紀の経済って実は見えないんだよねと、っていうか見えない部分が多いんだよねということで。

これも1番左にあるように、要するに20世紀というのが見えてる経済、物とか土地とか、そういうふうな見えてる経済であるのに対して、21世紀を構成する経済要素っていうのは4つあると。

従来どおりのリアルな経済と。もう1つはサイバースペース上でもって富が築かれると。この中で私は、世界で初めてだと思いますけれども、富はプラットフォームに作られるんだと。プラットフォームというのがサイバースペースに出現して、そこの上で富を作ると。

今ではアメリカのビジネススクールなんかでもプラットフォーム戦略なんていうのを教えてますけども、この本が最初です。プラットフォーム上で富が作れるんだよと。

私も当時、できたてのいろいろなサイバー会社を見ていて、これはプラットフォーム、プラットフォームっていうのは人が寄ってきて、そしてみんながさらに集まってという、こういうふうなことが富をもたらすということに気がついたんで、サイバースペース。

しかも、ここは見えない大陸ですから、杭を打ってテリトリーを主張したやつが勝つんだというようなことで、西部開拓史に非常に似てるという、そんなことを書きました。

それからグローバル。これも私は20何年前に『ボーダレス・ワールド』って本を書きまして、ハーパーから出しましたけども。これはやはり国境を人、金、物が全部動くという、こういう世界なんですけれども。

実はレーガンさん、今思うとかなり古い大統領ですけれども、この人は規制緩和じゃなくて規制撤廃をしたんですね。何をやったかというと、通信と金融と物流なんです。

この3つが、実はボーダレス時代に最も重要な産業で、国境をまたぐ。お金、通信、そして例えばFedExとかですね。ああいう物流関係、これが国境をまたぐようになった。

大前氏が初めて説いた「ボーダレス経済論」

ですから、グローバル、ボーダレス経済ということを、これまた世界で初めて私がそういうボーダレス経済論というのを唱えたんですけども。

そのことが、もともと貿易っていうのはあったんですけども、そうではなくてお金とかそういうものまで全部大きな財産っていうのが通信回線上に行ってしまうと。

私はこれに最初に気がついたのは、アイルランドなんです。アメリカのシグナという保険会社の仕事を、当時でいうと、ワークステーションでもってアイルランドに送り込むと。

そうすると、アメリカ人が家に帰って寝てる間にアイルランド人がビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)でもってこうやって全部審査して、この保険請求業務は正しいかどうかと。

で、チェックを切って発送完了して、翌日アメリカ人が来ると送るだけと。アメリカから仕事が国境をまたいで、その時に電話線で雇用が国境をまたぐんだと、こういう言い方を私はその本の中でしてるんですけども、今では普通ですよね。

私も大連に日本語のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の会社を経営してますけども、このようなことっていうのは、当時は最初に気がついたのはアイルランドとアメリカの間だったんですね。そういうことで、いわゆるグローバル、ボーダレス経済というものに気がついて、それも書きました。

21世紀に必要なのは見えないものを見る力

それから、マルチプル。これ、私学生なんかに教えてて1番わかりにくいところなんですけども、マルチプルっていうのは倍率という意味ですね。株価収益率、PERと言いますけども、これが倍率の典型的なもんです。

すばらしい経営者がいるとか、あるいは急成長してると、将来明るいというと、Price Earnings Ratio(PER)っていうのがどんどん上がってくる。それが時価総額を決めますんで、その時価総額でもって資金を調達して、でかい会社を買収することなんかができると。

すなわち、これから先はこの飛び道具、PERでもってこういうことができるようになるんだよと。銀行に行って「お願いします」って言うんじゃなくて、資本市場でもって資金を調達していくんだと。

これら4つの要素を使い切った経営者が、21世紀の優秀な経営者になるんだと。ここがちょっと疎いんだという具合にはいかないんですね。なぜかっていうと、競争相手っていうのはそういう疎い人のとこをこうねらってきますんで。

ということで、この経営としては、見えない部分が非常に増えている。だからまず、21世紀にどうやって勝ち抜くのって言われたら、見えないものを見る力、これって人によってある人とない人がいるんですよね。

21世紀の経営に不可欠なのはイマジネーション

いくら言ってもわかんないっていう人もいるんですけど。しかしこれは訓練で、とにかくそういうふうなものが見えるようにしていく。1番良いのは友達を持つことです。友達とそういうことを議論している間に、お互いに「ああ、そうだよな」って言って腑に落ちるところがあると思います。

ですから、見えてるもんだけでもって、あるいはExcelだけでもって、パッパッパッパッやってるような、そういうんじゃない友達、見えないものを見る力を持った友達というものを見つけていく必要があると思います。そういうことが簡単にできる人と、なかなかそうはいかない人っていうのはあります。

もちろん20世紀の経済でも、例えばウォルト・ディズニーなんていうのは、あのフロリダのワニがいっぱいいるような湿地帯で、通年型のリゾートを作ったわけですよね。あそこはワニしかいなかったわけですから。

今ではオーランドということでディズニーワールド。オーランドの飛行場、アメリカ第3位ということで、すごい発展してますけども、100万都市になりました。

しかしああいうものを見た時に、要するに未来の公園っていうのがここにこんな形でできるんだって見える人、「見えないんだよね」と。「ワニしか見えねえじゃんか」と、こういう人の違い、これイマジネーションとか構想力といいますけれども、21世紀非常に重要なスキルの1つです。

だから見えないものを見る力と、それらがフルに見えるようになってサイバースペースも見えるようになり、またボーダレスな世界も見えるようになり、マルチプルなんかも敏感に反応していくと。こういうふうな経営、これが21世紀に求められる第1です。

「人・物・金」から「人・人・人」へ

そういうことができて、かつその辺のツールをうまく使う、さらに新しい物を作り出すというのが1番右側に書いたような変わった人間です。20世紀というのは経営の要諦っていうのは3つあって、人、金、物とこういうふうに言ってましたね。人、金、物ですよと。

ところが、21世紀は「人、人、人」なんです。要は、金は今コモディティになってまして、世界中1パーセント以下でもって金は調達できます。ですから、もはや金は経営に必須のものではなくなってる。いい人がいて、いい事業計画があったら金は集まると。

物も、特許なんかはなかなか難しい問題があったんですけど、金出したらだいたい使わせてくれてるし、お人よしのGoogleなんかはAndroidどうぞご自由にお使いくださいと。将来、それを全部こうまとめて自分の商売にしようとしてるんですけれども、そんなことを知らないでみんな使ってますよね。タダになっちゃったわけですよ。

そういうふうにして考えてみると、人、金、物というよりも、そういうものを使い切る人、これなんです。右側に書いたおっさんたちっていうのは、スティーブ・ジョブズに代表されるように結構性格がきつい人です。土曜日、週末一緒に過ごそうと思わない人(笑)。ね!?

これはやっぱり週末ぐらいはもうちょっとリラックスしたいよねという時は、こういう人はやらないです。イーロン・マスクなんてあまりに性格悪くて、パートナーになった人はみんなもう勘弁してくれって言うんだけど、事業だけはあいつとやるかと、こんな感じですよね。ジャック・ドーシーとかね。もちろん、ジェフ・ベゾスもそうです。変わった人。

だから21世紀の人っていうのは、日本国が20世紀に作った優秀な人を大量にというんじゃなくて、1人でいいからすげえやつがほしいと。とがった人間1人。これが勝負なんですよ。

無難にそろった大勢より尖った1人が注目される

日本がやられてる領域を見ると、全部1人の人間にやられてるんです。アメリカにやられてるという人がいますけど、間違いです。アメリカもいわゆるベイエリア、シリコンバレー+サンフランシスコ、今は。ベイエリア以外は、全部ポシャってます。

今から2、30年前っていうのは、アメリカは3つのところがハイテクゾーンと言われて、ボストン128号線、ノースカロライナ、リサーチトライアングル、それとシリコンバレーと。今そういうところへ行ったら、見る影もありません。アメリカに負けてんじゃないんです。

こういうおかしな人間がそろっているベイエリア。そのうちのかなりの人はアメリカ生まれでもないです。あるいは移民の子。セルゲイ・ブリンだって、Googleの共同創業者ですけども、ロシアの移民の子ですよね。

スティーブ・ジョブズもシリアの子ということで、お父さん今シリアに戻っちゃってますけども。そういうことで変わった人間を作ろうと思うと、変わった種、これが重要だということに気がつくわけですよ。

日本の同質性っていうのはここで大きく試される。20世紀の大量生産、大量消費時代っていうのは、均質な人たちがたくさんいたほうが勝つと。軽薄短小。同じ方向でdo、more、bettterという比較級で言われてるやつは日本強いんですけど、あっちだよっていうようなやつは弱い理由は、あまりにも同質性が強いということです。

イーロン・マスクっていうのは、南ア連邦で生まれてアメリカに流れ着いた男です。今アメリカである意味、起業家として最もがんばってるというか、注目されてんのはイーロン・マスクですけども。

PayPalの創業に関わって、その後テスラモーターズやって、また今度はスペースXやって、何回も着陸に失敗してますけども、NASAから受注してますよね。

この人はあまりにも性格が悪いけども、世の中の秩序を壊してくれるということでGoogleのもう1人の共同創業者ラリー・ペイジが自分の財産は全部こいつに渡すと。自分の息子には渡さないと言ってんです。理由は、秩序を書き換えてくれる人間は息子じゃなくてこっちだと。

これもすごいことですよね。そういうものが賞賛されるというか、注目される時代になってる。

先生に従っていても指導要領以上にはなれない

日本はこの領域は、実は意外に強いんです。音楽とか、スポーツとか、バレエとか。バレエっていうのは踊るほうのバレエ。あんなとこ行ったら、日本の10代のやつがそこいら中で活躍してます。

文部科学省がいる領域。皆さんね、ダメなんです。文科省の犠牲者なんです、みんな。なぜかってたら、文科省っていうのは指導要領をもって教えるじゃないですか? 皆さん、優秀だから教えられたことを学んで、はき出して合格と、やってきてるんですね。

会社に行ったら上司の言うことを聞くと。上司の言うことを聞いたら、上司ぐらいにしかなりませんよ。親の言うことを聞いたら、親ぐらいにしかならないよ。先生の言うことを聞いたら、指導要領ぐらいにしかならないですよ。こういう連中の言うことを聞かない人間がこれからは重要になってくるわけです。

だから、日本は絶望的ですよね。何しろ学校行く時に親が「ちゃんと先生の言うことを聞くのよ」と言って、帰ってきたら「テレビなんか見てないで宿題しなさい」って言うじゃないですか! こんな家庭でろくなやつ育たないですよ! ね!?

もう「宿題やるくらいだったら、ゲームでもやってなよ」というぐらいの親じゃないとダメですね。つまり、これって結構難しいんです。20世紀に日本はあまりにもうまくいきすぎたんで、それを引き続き大量に作るという、そういうマシーンができちゃったわけですね。

アイデアだけで資金が集まる時代

真ん中のやつが、実は3つのクラウドって。これ3つのクラウドっていうんですけど、オジンギャグですから。英語のスペルは違うんですね。crowd、群衆という意味でのクラウドではクラウド・ソーシングっていうのがありますね。それからもうひとつ、クラウド・ファンディングっていうのあります。

多分皆さん今日は、クラウド・コンピューティングということで来てると思うんですよ。これ、真ん中のやつなんですね、クラウドコンピューティング。でも皆さん、この3つはほぼ同格と思って考えてください。これは何を意味してるかっていうと、自分の持ってないものを使うっていうことです。

金のない人、すばらしい事業アイデアがありますと。そしたら、右側でクラウドファンディングを要求します。そうすると、Kickstarterなんかで、Pebble Timeというふうにして、スマートウォッチ。

これ、金がねえから作れねえけど、できた時にはお金出してくれた人にあげますよ。なんと24億円集めちゃいましたよ! 見も知らない人が少額ずつ出してくれるんですよ、その事業計画みたいなKickstarterなんかね。それで、24億円。

それから、ピクニック行く時のクールボックス。そこにUSBの端子とか何かいろんなものくっつけて、クリスマスツリーみたいなクールボックス。これがCoolestとか何かいう名前ついてましたけど、16億円集めました。

つまり、見も知らない人がこの商品をもらえると、プラス、エクイティになるということで20億円集まる時代ですよ。アイデアだけで。今までだったら、親から借りるとか。私もアタッカーズ・ビジネススクールっていうのやってますから、そういう意味で起業する時に、おじさんから借りるとか、銀行行ったって貸してくんねえですから。

そういう時に、今はクラウド・ファンディングで、日本でもここに書いてあるようにREADYFORとか、いくつかできてます。このようなファンディング、結構重要でしょう? 1人でもできると。小さい会社でもできると。大企業との差がなくなってきたと、こういうことですよね。

世の中には「仕事のない能力ある人」があふれている

1番左のクラウド・ソーシングというのは、自分の会社にない才能、ない人間などを世界中から募集すると。私はこれ最初に気がついたのが、oDeskって会社です。アメリカのIBMを出て、設立後2年で彼の会社に行きました。「投資したいなあ」と。「この会社スゲーな」と思ったんですね。

ですが、なんともう2年で収益が出てるんで「投資はいりません。このまま上場できます」って言われちゃったんですね。今では巨大なクラウドソーシング、トップの会社になっていますね。

日本ではこの前、私のところのアタッカーズ・ビジネススクールを出た吉田浩一郎くんのクラウドワークス、12月11日に上場しました。先程ここに来た元榮くん(元榮太一郎氏)も、うちのアタッカーズ・ビジネススクール出ているですけどね。この2人とも卒業生ですけれども、12月11日と12日と2日間連続でもってABS(アタッカーズ・ビジネススクール)の卒業生が上場しましたけど。

クラウド・ソーシング、これは小さな会社でも、自分の会社にそんなに優秀な人いなくても、こんな人を募集してるっていうと世界中から殺到しますよ。世の中っていうのは、仕事がない、能力はあるっていう人が溢れてるんです。

あるいは日本ではできないような、パンフレットを日本語で作りましたと。そのパンフを英語にしたい、インドネシア語にしたい、ロシア語にしたいといった時にoDeskを使ってやってみてください、殺到します。しかも、日本のエージェントを呼んでやらせるやつの10分の1ぐらいの値段で、数日でやってしまいます。

私は英語でプレゼンテーションする時にoDeskを使っています。信じられないスピードでやってくれます。しかもそれらの人というのは、吉田君のところと同じですよ。

要するに世界中には、日本人の女性で、能力があって、海外に住んでいて、暇な人がいっぱいいるんです。わかります。日本の出向社員の奥さんなんです。この人たちは、たぶん大学時代は旦那よりもできた人たちですよ。

そういう人が旦那の仕事でもって家でじっと待っているんですから。クラウドワークスに行くのは、当たり前じゃないですか。oDeskなんかもいっぱいいます。だから、このコンピュータソフトの開発なんかだったら、旧ロシア系の国が強いし、それからハッカー系の多いフィリピンこれもいいですよね、そういう意味では、安くて能力がある。

それから、ここに書いてあるイノセンティブなんていうのは、R&Dです。元々医薬の研究開発でもって、スタートしているんですけれども。今では、いろいろな開発研究、ここに登録している人にお願いすると。

皆さんの会社の研究開発よりこっちのほうがいいですよ。保証します。サラリーマンで研究開発無理というくらい、こういうところでやるか、逆にここを使って2チャンネルで開発してみると。そうすると、競争させると会社の良さもピンと来るじゃないですか。こういう時代になっているんですね。

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