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「勝ち残る企業の条件」-クラウドが迫るマインドチェンジ-(全3記事)

成功する経営者は「みんなから見放される経験を何回もしてる人」 大前研一氏が語った共通点

2015年4月に行われたマネーフォワード主催の「MFクラウドExpo 2015」において、ビジネス・ブレークスルー代表の大前研一氏が登壇し「『勝ち残る企業の条件』-クラウドが迫るマインドチェンジ-」をテーマに特別講演を行いました。本パートでは、大前氏が来場者から寄せられた質問「企業が勝ち残るために、最も重要なポイント」や「成功していく人と、そうでない人の違い」などに対して回答していきます。(MFクラウドExpo 2015より)

ICTで世界第2位の農産物輸出国になったオランダ

大前研一氏:ここまで説明した全てを足してみるとどうなるかっていうと、あらゆる産業が実はICT産業になると。オランダの農業を見てください。もうICTの塊ですよ。オランダって、九州ぐらいの面積しかないんですよ。世界第2の農産物輸出国なんですよ。3つの商品に集中してるんですけど、トマトとかそういうものに。

でも、付加価値の高いものに集中して。そして九州ぐらいの面積しかないのに、農協も7つに集約してしまって、そしてものすごいリサーチをして、そしてICTでもって管理して、そして輸出競争力を持つと。世界第2の農産物輸出国。アメリカに次いで2位ですから。

普通皆さん、アルゼンチンとかオーストラリアだと思うでしょう? 違うんです。オランダのほうが多いんです。ということで、オランダの農業を見ると、完全にICT化と、こういうことですね。ですから農業までもが、当然漁業なんかもそうですね。釣った瞬間に、もうセリ落とすという。そういうふうなところに行ってきてます。

ですからもう今では、介護とかなんかそういうところも、もちろんそうです。中国でさえも今、健康保険制度というものを使って、療養を長期でやるとか、そういうとこの場所を選んで行くとか、そういうふうなシステムは、日本より進んでいます。

もう独禁法がないからね。どんどんとデータを使って、そういう商売を始めてるという、こういうことですね。ですから、あたしのうちは関係ねえよというところは、残念ながら、あんまり見当たらない。

関係ねえよと思ってるのは学校の先生でしょうけど、私はオンラインの大学を経営してますから。てめえら見てろ、という気持ちが、実はあるんですけどね。それを言うと、みんなが私を憎みますから。「ははあ」って文科省にお辞儀をしながら、文科省に触らないようにしてやってます。

それから自分の会社の再建費が必要になりますね、こういうことですから。GoogleもAmazonも、もう生まれたときの姿とは様変わりと。Appleなんかもそうですね。

セコムなんかいらなくなる? ビッグデータを活用しよう

セコムなんかも日本では、老人介護とかそういうところで、警備だけじゃなくて。1人住まいのじいちゃんばあちゃんのところが、一発でもってなんか助けを呼べるとか、そういうふうなとこにいってますし。

本当はセコムなんかいらなくなるんですよ。本当にスマホ、ITベースでもって、いわゆるIoTというやつで、センサーをドアの外に付けて、誰かが入ったとなったらすぐにわかるとか。ビッグデータで顔を認識してみたら、あいつは前科3犯のやつが入ったとか。

1人住まいの女の人が、表、ドアの外に誰かいると怖いわっていうようなときにも、センサーをこうやってやっとくと。カラスがパーって飛んでも起動しますけど、そこを映像解析でやると、そんなのわかるじゃないですか。

前科3犯なんていうのがいるとすぐにもう警察に。セコムに行かないんですよ。警察に行ったほうがいいです、そういうのはね。というようなことで、警察のビッグデータと照合すれば、大体誰かってのがわかるようになってます。

ですからこの領域は皆さん、セコムになったつもりで、セコムをつぶすにはどうしたらいいかと一生懸命、考えてください。土曜日の午後みんなで集まってやったら、200ぐらいアイデア出てきますよ。全部センサー。

センサーってのは、マシンtoマシンですね。いわゆるパケット通信網が、どこに行ってもありますから。それを使ってやってったら、結構いろんなことができると。既存の会社を倒すという命題で、土曜日の暇な午後にでもやってください、ぜひ。

セールスフォースオートメーションが営業マンを助ける

それからナンバーワン企業ってのは、自社の研究心が頼りないんで、どんどんと新しい会社を買ってきてます。先ほど言ったAmazonなんかも、Kiva Systems(キバ・システムズ)という物流のマテハンのすごいロボットを買ってますよね。だからAmazonの物流倉庫ってのは、もうものすごいスピードで動くようになってますけども。

こういったようなものが、これからは非常に重要になると。クラウドの領域を少し眺めてみると、Amazonがナンバーワンです。用もないのにサーバつくってる。なんだっつったら、いつの間にかクラウドコンピューティングで、シェアトップですね。

それからGoogle。金があるんでいくらでもという。それからMicrosoft。それからSalesforceはアプリ。ソリューションを含めたクラウドですよね。セールスフォースオートメーション。CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)。

これとFacebookなんかを組み合わせて、セールスマンの今日の行動ルートを推奨して、行く会社の社長さんの最近のニュースも全部そこで見られるようにしたりね。「社長! この前、見ましたよ! いい記事ですね!」ってそれ、来る途中で見ただけなんですけど。そういうふうにやると、やっぱり3分話がつながると。「15分、ちょっと入れ」と、こうなるわけですよ。

「社長! なんかいいのありませんか?」って言ったら、またおいでって言われて終わりでしょう? この差がでかいですね。それが、セールスフォースオートメーション。

CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)なんかでは非常に重要で。システムそのものだけじゃなくて、そこにコンテンツがこうやって入ることによって、セールスマンがテリトリーを変えても世継ぎができるし、今のようなところで話が最初の3分もったら、こっちの勝ちだと、こういうことですね。

クラウドビジネスは1社が駆け抜けると、2番手は苦戦する

クラウドの場合は、電子メールが非常に多いんですけども、ファイル共有っていうやつが、その次に出てくるんですね。それから経理とかいろんなことで、どんどんいきますけどもね。そこでいくつか、紹介したい会社っていうのがあります。Evernote。これもファイル共有ですね。

SugarSync、Dropbox。皆さんもDropboxみたいなの使ってると思いますけども。あらゆる種類のものを預かってくれる。非常に安い。最初のお試しは、何ギガまでは無料とかね。そのうちに、どんどんと値段が上がってっちゃうという、そういう話なんですけども、このようなサービス。

今、MicrosoftとDropboxが提携してますんで、パワポとかああいうやつも、全部そこの中で。iOSを使うと、パワポ、化けちゃうんですよね。これがなくなると。

医療系の人にちょっと紹介したいクラウドベースの会社があるんですけども。Practice Fusion。この会社はやっぱりすごい会社です。ライアン・ハワードっていう人がつくって。

私もこれ、創業2年ぐらいのときに行きまして。いいなあ、この会社、と思ったんですね。で、投資させてくれって言ったら、oDeskとおんなじで、もう利益出てるから要りませんと言われました。

何やってるかっていうと、開業医の電子カルテです。それをスマホベースでもってやれるようになってる。しかも、フリーミアム。無料なんです。無料でもって開業医にシステムを届けて、そこでカルテかなんかを出す。処方箋も出すと。

開業医はシステムを買う金がなくて困ってたら、結局無料ということでもって、今では11万人の会員がいる。

お客さんがぶら下がってんのが2,200万人。2位がもうないんですよ。昔から電子カルテをやってたのは、中小病院、大病院でしょ。こういうとこは有料でやってたんで、無料で来られると対抗できないんですよ。うちのほうがいいシステムだって言っても、これは手遅れなんですね。無料。

で、どこで稼いでんのっていうと、2つあります。1つは処方箋を書いて、GPSと連動させてこの処方箋を売っている薬局はここですと。傍のやつをGPSで教えてくれるようなふりをしながら、お金くれてないとこは示さないと。これ、いいじゃないですか。そうするとそこへ行きますから。ここに金を払って、そっちから稼ぐと。

それからもう1つは、ちょうどカルテの1番下、スペースの空いてるところに、広告のスペースを出したり。Googleもそうですけどね。AdWordsとかああいうのも、みんなそうですけども。こういうところで広告を出させてやると。

この2つがビジネスモデルですから、お客さんも開業医もタダです。11万人の開業医、フランチャイズしたらもう勝負あったと。

クラウドっていうのは1社が駆け抜けたら、2番目はなかなか難しいと。皆さんも、自分の会社の商売で、これは自分の会社が素晴らしいと思ってるシステムだといったら、フリーミアムでやるってのがいいと思いますよ。これでああいうふうに駆け抜けていただくと。

日本のハードウェアメーカーは「チャイワン(China + Taiwan)企業」に負けた

それでこういうところを見ていると、Googleがかなりこの領域ではハードも含めて優勢になってきてる。データも集めてる。こういう感じですよね。Googleなんかはソフトの会社のくせに、なんでハードつくんのっつったら、EMS(Electronics Manufacturing Service)ですよね。

要するにシステム、ちゃんと設計したらつくってくれる鴻海(鴻海精密工業 / Foxconn Technology Group)とか、ああいう会社が山のようにありますから。ということで、今ではスマホセントリックのエコシステムができあがってると。

個人でもメイカーズムーブメント、メーカーにもなれるとこういう時代ですし。例えば格安スマホ、Xiaomiみたいな会社があっという間に世界3位になりましたけども。こういうようなところは、Media Tekみたいな台湾の会社に設計してもらって、石までつくってもらって1万円ぐらいでもって提供すると。

こういうことができるようになった。つまり今では、ソフトの会社でもハードウェアができるし、ハードの会社でもソフトっていうのを無料で、Androidみたいなものを持ってくることができると、こういう時代です。

ですから自分の会社はメーカーだというふうに思ったら間違いですし、1人メーカーズという動きもあるように、1人でもメーカーになれるということで、結局EMSを使うことによって、ハードもみんなワンセットで持つようになっちゃったと。

MicrosoftもGoogleもAmazonも。いずれも、鴻海が裏でつくってると。Xiaomiの携帯も、やっぱり鴻海がつくってるんですね。鴻海は、中国でチャイワン企業と言われてる。台湾の会社ですが、中国でやってる。100万人の雇用をつくってますから。

だから、そういうふうなところがあるために、ハードウェアっていうのは、昔のように大きなハードがないです。日本のハードウェアメーカーが、みんなぶっとんじゃった理由ってのも、チャイワンにやられてるわけです。

これが3Dプリンタとかロボットの部分ですね。いわゆる、1人メーカーズというふうなことです。

クラウドは大型発電所のようなもの、自家発電をしている場合ではない

今のことを整理しますと、クラウドって電気を考えるとわかりやすいねと。もともと自家発電で、自分のとこで発電して自分で使ってたと。どっかで大量に使って、それをメーターで計って買うってのが電気じゃないですか、発電所で。

今だから、クラウドの時代ってのは、そうやって量り売りの時代なんですね。そしてむしろ重要なことは、その電気を使って何やんのと。アイロンをかけるのか、テレビを見るのかという。そっち側から発想していかないと。

クラウド、どうしようっていうふうに考えても、なかなか難しいですけども。もう、非常に地に足の着いた考え方ってのは、そっち側からスタートしたほうが、私は楽だと思うんです。電気のアナロジーを使うと、意外に自分がつくりたいのはこういうもんだと。アイロンなんだとかね。こういう感じでやってくと。時代はもう、大型発電所と。

個々のところが自家発を持ってるっていう場合じゃねえんだと。それから、3.11みたいなときも、自分の会社のコンピュータが倒れても、こういうクラウドサービスの会社は、いろんなところにバックアップがあるんで倒れなかったし。

9.11のときも、あそこのシステムはニュージャージーとスウェーデンと、それからオーストラリアに置いてあるんで、すぐバックアップがとれて大丈夫だったんですね。そういうふうなことで。

クラウドを使わない理由というのは、いろいろありますけども。使わない人に理由を聞いても、しょうがないですよね。使いたくないとか、セキュリティがどうのこうのとか、いろいろ言いますから。私はこれ、使ってみてなんぼだと。

まずは、数人でいいから使ってみると。そして、従来のやり方と比べてみるという、こういうふうなことがいいんじゃないかと思ってます。使わない人に、なんで使わないのっつっても、ほとんど空しい調査ですよね。自家発電にこだわってるという、こういうことです。

ここに日本で、クラウドファーストということをやって、うまくいき始めてる会社、東急ハンズとか、楽天、パナソニックっていうような会社の例とか。TOTOなんかは、リターン・オン・アセット、ROA (Return On Assets)というものを見ると、自分でアセット、資産を抱えたくないと。総資産利益率というものを見ると、資産がでかくなると、やっぱり苦しいですよね。

ということで、クラウドの場合なら資産のほうに入ってきませんから。これで使ってるということをTOTOなんかは言ってます。一方、レガシィにこだわった会社っていうのは、ついにうまくいかないで辞めちゃったと。

特に月末と月初に大きな差がある、作業量に差があるようなところってのは、自分でコンピュータ抱えますと、1番でかいキャパシティーで抱えないといけないと。クラウドの場合には使用量でいくらですから、電気と同じですよね。そういうふうに考えたら、こんなふうになってくんのかなと、こう思います。

モバイル端末でMBA取得者まで雇えるようになった

日本企業の戦い方ですけども、とにかく変わった人間を集めてくださいよ。ダメだったら、自分の息子とか娘を会社に入れるとかね。そのぐらいのことまでしたほうがいいんじゃないのかというふうに思います。それから人事部が、今年は東大から何人、京都大学から何人なんて言ってるような人事部はダメですよね。

1番間違った方向に、素晴らしくいっちゃった人たちですからね。つまり今の学校に対して1番馴染んでる人ですから、直すのに100年かかると思います。そういうことですね。

それから皆さん個人としては、やっぱりせっかくこういう機会ですから、自分で使って見てくる。使ってもらいたい。経験してもらいたい。私の場合は、おもしろい会社があるっていうと、すぐ会いに行ってきます。

やっぱり行って話を聞いてみると、全然違うんですね。去年は、ベラルーシ、それからバルト三国に行きましたけど、やっぱりこの領域では、すごいものがあったと思います。

やっぱり国際競争力つけようと思ったら、国を越えてベストの人を集める。いなかったら、クラウドソーシングで集めてくると。こういうことを考えていただきたいと思います。それで皆さんとしては、さっき出てきたoDeskとかLinkedin、これ人事採用ですね。

イノセンティブ、それからクラウドワークス、我々はもうMBAまで全部、モバイル端末で採れるという、そういうものもあるし。7,000時間のコンテンツをAirSearchで頭出しができるようになってます。

年間1万8000人のIT技術者を輩出するベラルーシ

それから先ほどちょっと言いましたけどもエストニア、これはもう世界最先端のeガバメントを持ってます。ぜひこれを見てもらいたい、感じてもらいたいというふうに思います。Skypeの開発は、エストニアでやってます。

人口130万人しかいないエストニアが、食ってく唯一の方法はITだと。総理大臣もIT企業から来てる。CIO(チーフインフォメーションオフィサー)も、元IT企業という、そういう感じですよね。気合い入ってます。

ベラルーシ。これは、アウトソーシングのEPAM、ニューヨークに上場してますけど、そんな会社もあるし。楽天が買ったViber。900何十億で買ったViberはイスラエルの会社ですけども、開発はベラルーシでやってます。

War Game、これは私はあんまり好きじゃないですけど、本当の戦争のゲームですね。ロシアの兜かぶると、本当に強くなっちゃうという、そういうやつですよ。ベラルーシみたいなところへ行きますと、みんなITをやりたいんです。

ていうのは事務系のやつを選ぶと、共産主義だのアレクサンドル・ルカシェンコだの、おかしなことばっかり教えられるんで。ITだとすぐに国を脱出して、どこの国に行っても成功するから、もう男も女もみんなITですよ。

年間、あんな小さな国で1万8,000人もIT技術者、非常にレベルの高いのをつくってますよ。

英語の訛りを取る学校がフィリピンで流行中

インド。これはもう、いわゆるシステム受注から逃れて、次のスペース、ファシリティマネジメント。AT&T全体のマネジメントを、もうあっちでやっちゃうと。5万人、こういうふうなことをやってます。

それからフィリピン。英語のコールセンターは、インドは評判悪いです。お前はどこにいるんだっつって、アメリカ人が怒り始めちゃうんです、インド訛りが強いんで。

フィリピンでは、その訛りを取る学校が流行ってまして、フィリピンがやってると、私も行ってそのコールセンターでずっと盗聴させてもらいましたけど、全くアクセントなく。ペンシルバニアの有力銀行のコールセンターで聞いてましたけど、フィリピンで聞いてましたけど、みんな「サンキュー」つって、いっちゃいますね。あれはいいなと、こう思いました。

あとはハッカーが多い国なんで、セキュリティソフトつくらしたら、やっぱりピカイチですよね。ハッカー転じてセキュリティソフト、当たり前ですよね、裏かきゃいいんですから。ということですね。だからこういう国にぜひ、行ってもらいたいと。

スマホで投票できるエストニアのeガバメント

このエストニアのeガバメントはe-Cabinet、i-Voting、世界中どこにいても、1週間前から投票できます、スマホで。スマホのSIMカードに、自分のIDが付いてます。これもやっぱり、すごいことですよね。

それから、i-Police。これ、いやですよね。捕まったら、すぐ前歴が出てきちゃいますから。e-Tax。これも日本でやったけど、誰も使わないですよね。Health。これは今、日本のマイナンバーでも、Healthやろうかどうかっていう感じですよね。

Education、これは私のほうが先行してますね。それから、m-Parking、こんなのは、あまりたいしたことないですね。そういうことで、起業家も全部会社登録はスマホ一発でできるようになってます。世界中どこからでも。

まずは自分で経験してみることが大切

ということで、まとめてみると最初のページに戻ってきました。わかりますよね。21世紀。4つの経済空間と、そしてこの3つのクラウド。そして、尖った人間。こういうのを見つけてくださいと。

ネットワーク上でクラウドソーシングで見つけるってのも、非常にいいと思うんですよ。ぜひ使ってみてください。oDeskでもクラウドワークスでも、何でもいいですから。あんまりマネーフォワードのところで、他の会社のこと言っちゃいけないんで、私も控えますけども。

なるべくそういうのを使ってみて、そして会社の中でも何人かで使って、評価してもらうと。前に一歩出るってことが、私は重要じゃないかというふうに思います。

ということで本来はこうくるんですけど、実はマネーフォワードってのは、クエスチョンフォワードで、私に皆さんから申込みのときに質問をいただきました。ということで、質問をいただいてるんで。

ここで本当はマイクを回して皆さんから聞いたらいいんですけど、そうすると難しいかなと思ったんで、Q&Aはいただいた質問を忠実に「注目してる日本と世界の起業家とその理由」。さっき見ていただいた人たちですよ。ね、ちゃんと私は話の中に織り込んでますね。

クラウドの利用で、初期投資のリスクが下げられる

「スタートアップにとって、クラウドの利用にはどのような意義があるか?」

つまり、でかい箱を買わないで済むということですよね。今は会計ソフトだけじゃなくて、いろいろ業務ソフトとか、あらゆるところでクラウドがありますから。ほとんどはフリーミアムですから、最初の頃は無料ってのが多いですよね。

今日、ここに来た元榮くん(元榮太一郎氏)の弁護士ドットコムなんてのも、使ってみたらわかりますけども、彼のサイトってのは弁護士をどうやって頼んだらいいかわかんない、なんていうときにはとにかく使ってみると。

そうするといろいろ、交渉なんかを手伝ってくれるということがわかって、ユーザーになるという、こういう話ですよね。ですからまず、スタートアップの人たちにとっては、クラウドでタダでできるものは、とにかく自分で経験してみると。

それから1人メーカーズっていって、なんかつくりたい場合でも、そういうふうなものを自分で利用してみる。ソフトとかパッケージは、ネット上にいっぱいありますから。もう、図面まで全部あります。モジュールもあるということで、今では驚くほどソリューションがネット上にあります。

うまくいっている人は、みんなに見放された経験を持っている

「起業家を育てるときに、意識していること。成功していく人と、そうでない人の違い」

これは私も社外取締役をやってた、ナイキのフィル・ナイトの言ってることですけども、起業家として成功するのは簡単だと。成功するまでやることだと。そしたら成功すんだと。つまり、ネバーギブアップという、こういうことですよね。

だからシリコンバレーに行くと、2年でダメなものはやめなっていうことを、最近は言ってます。あまりにも速いんで、さっきのoDeskにしても、Practice Fusionにしても、2年でもう収益モデルができあがって、めどがつくと。そういう感じですよね。

クラウドワークスも今、3年目ですよね。そういうふうなところで、やっぱり勝負が非常に速くなってます。ですから、フィル・ナイトさんが言ってるような「勝つまでやりゃいいんだ」っていう時代とは、またちょっと、この世界では変わってきたなというふうに思います。

特にうまくいく人って、失敗を2、3回してます。つまり最初からピューってうまくいっちゃうってのは、あんまりないと思いますね。ですからマッキンゼーにいた南場智子なんかも『不格好経営』とかいうのに書いてますけど、やっぱり不格好ですよ。私も後輩なんで、傍で見てて、はらはら、はらはらしてますけども。

野球の経営まで始めて「こいつ大丈夫か」と思いますけども。なんかあったら、私もアドバイスはするようにしてますけども。やっぱり、最初からうまくいくって人少ないんですけど、2、3回失敗するっていうのは、結構重要なとこですね。

ですから今、非常に調子のいいようなスピードでもって伸びてるようなところも、人生をずっと辿ってみると、失敗やみんなに見放されたという経験を何回もしてると思います。だから積極的にそういうふうなことをして、それを糧に成長するということです。

正反対の人間とペアを組め

「企業が勝ち残るために、最も重要なポイントは何でしょうか?」

人です。自分で何とかできると思わないほうがいいです。自分と違う性格の人。要は、自分が理屈っぽいと思ったら、とんでもないアホなことを平気で言い始めるような、そういう右の業の人を連れてくると。だから血液型でいえば、A型とB型とかね、AB型とか。右脳型と左脳型とか。そういう人と組んでいく。

例えばホンダの創業は、本田宗一郎さん。構想そのものは藤沢さん(藤沢武夫氏)。もう、極めて緻密な経営計画とか経理とか。高橋荒太郎さんは松下の創業者の幸之助さんの最大の補佐でしたけど、厳しい経理システムつくりましたよね。

こういうふうに、左と右のタイプって重要ですし。ノーベル賞を2人で取ってるとこは、大半がこのタイプです。寝てるときに「蛇がとぐろを巻いてるのを見た」なんつったときに、要するに染色体のスパイラル構造っていうものに気がついたとか。

これは古くは、ケクレ(アウグスト・ケクレ)のベンゼン環なんてのもそうですよね。左脳と右脳と、これはものすごい相性がいいんです。でも皆さんは、自分とタイプが合わない人を嫌う傾向があります。類は友を呼ぶとか、そういうふうなの言うじゃないですか。やめたほうがいいです。

自分の意見が全く一致して、俺たちは本当に仲いいんだよねっていう人は要らないです、会社には。そうじゃなくて、やっぱり意見は違う。お互いのその違いを非常に尊重しながら、議論を重ねていくと。これが会社です。

大学のサークルと違いますから。あいつとはよく合うんだよねっていうやつは、無駄な人です。俺とそっくりだっつったら、その人は要らないんです。

ですからそこのところで最も重要なのは、自分の考え落としがちなこと、自分が必要ないというようなことを、やっぱりこれは重要だよということを言ってくれる、そういう人にバックアップされることです。自分でなんでもやるという器用な人は、やっぱり器用貧乏になります。

ですからそういう点で、この質問はいい質問ですけども、重要なポイントっていうのは、自分とコンプレメンタリーな、そういう人と一緒にやると。普段だったらそういう人と仲悪いんだけど、それが重要なんだよと。

ユダヤ人がそうでしょ。ユダヤ人の場合なら、自分に反対してくれる人を非常に重宝にするじゃないですか。Devil's Advocate(デビルズ アドボケート)っていいますけど、悪魔の使徒。

つまり、皆さんの意見が一致し始めましたと。「私はあえて反対意見を言わしてもらいます」ってやってくれる人が、非常に重要なんです。だから、ユダヤの人っていうのはそういうことで、喧々諤々と議論して結構最後の成功確率が高いと、こういうことですね。だから類は友を呼ばないでほしいというのが、私ですね。

テクノロジーの変化に適応しないと、税理士も淘汰されていく

「中小企業の社長は、税理士事務所に求めるものは何だと思いますか?」

これ言いにくいですよね。何人か税理士みたいな顔してますもんね。エストニアは、税理士と会計士がいなくなりました。全部自動的にイーバンクの中でやってしまって、年末にTax Collectionってのが自動的に来ますんで。自動的に引き落とされて終わりと。したがって、税理士も会計士もいなくなった世界唯一の国です。

日本はそうなるのに、あと100年ありますから。ここにいる人は大丈夫ですね。私は、この人たちはそういうふうなことが優しくできて、無料でできたり安くできるようになったら、経営アドバイス、私は経営コンサルタントですけど、商売は無限ですよ。

だからやっぱり数字を読みながら世の中のいろんなことを勉強して、いいアドバイスをしてあげると。経営者とまた違う視点、今日見たように産業の垣根はこんなになってますから、そういう観点からいろいろとアドバイスできるということは極めて重要です。

ですから数字から納税申告だけやりまして、なんていうそういう無機質な、無味乾燥なやり方ではやっぱり淘汰されると思いますね。ですから、完全に社長さんなんかの知らないような、そういう時代の流れとかテクノロジーの変化とか、そういうことも含めて、ひと言アドバイスできるというふうなことが、非常に重要だと思います。

大きな流れを読めなければ、100年企業もつぶれる

「日本は100年以上続く企業が世界一多いと。日本の100年以上続く企業のマインドと欧米の大企業のマインドの相違点」

これはもう、あんまり重視しないほうがいいです。これからは全ての会社が滅びる可能性があると。100年だろうが、5年だろうが。この前、大仏殿のあれをやった宮大工がつぶれましたけども。そういうふうにこれからは、今日言ったような大きな流れというものを捉えられないと、やはり苦しいと。

だから、100年企業も安心するなよというふうに私は思います。私も友人の中に、何人もそういう人いますけども、やっぱりお客さんに合わして変わっていくと。購買の意思決定者に合わして変わってくっていうのは当たり前です。

これは実は日本と同じぐらい多いのは、ドイツなんですね、100年企業が多いのは。ドイツのほうも大きく変わってきてるし。EUという自動的に国境がなくなるという、こういうこともあったんで、特に大きく変わってきてるんですけども。日本だけではないんです。

日本のこういう本を読むと、みんな日本だけって書いてあるけど、ドイツも非常に強いです、古い企業が。どうしても変わんなくていいものっていうのは、もちろんあります。観光業なんかもそうです。

だけど、例えば中国人が日本に来て、爆買いなんかしてるじゃないですか。あの人たちの動機は何だと思います? 駆動力は。「Baidu」なんです。百度って書くやつ。みんなあれを見てくるんですよ。だから、Baiduの中の非常に高いシェアを取ると、自分の店に来るようになります。

広告出すのは5万円しかかかりませんが、もっといいのは中国人の留学生にぎゃんぎゃんあそこで発信してもらうと。

例えば山梨県のここが、富士山の写真を撮るのに1番だとBaiduで言ったら、みんなそこに来るようになって、今では観光バスが来るようになって、日本のお土産物屋まで出てきて。おい、何だこれはという感じですよ。日本人はまだ気がついてないけど。確かにそこは、富士山が1番きれいに見えると。

Baiduです。あの人たちは軽井沢に来ますと、Baiduをこうやって見て、駅前のレンタサイクルでもって自転車借りましょうというと、みんなそこで借りて日本人みたいな顔でこうやって行きますよ。顔見ただけじゃわかんないですから。

お昼ごはんはここで食べましょうと。メニューはこれってみんな書いてありますから。だから、Baiduから無視されたら、皆さんのルートに来ないですよ。わかります? つまり、そういう商売でも中国人を呼び込もうと思ったら、あなたがラオックスでなけりゃ、Baiduで勝負すんだと。

ラオックスは自動的にいっちゃいますからね。迷惑な話ですけどね、あそこ銀座にこんなバス止めて。でもそれはそれとして、この世界でもやっぱり、Baiduを駆使するというのが非常に重要になってます。ですから全ての産業がICTでもってメリットがあると、いうところがあると思います。

人材計画や事業計画はクラウド化できない

「総務・経理の現場で、今後どのような仕事・業務が残っていくか?」

それはもう事業計画ですよね。人材計画とか事業計画とか、ファシリティマネジメントとか、そういうやつは自動化できませんし。クラウドでできる仕事じゃないんですよね。ですからそういうふうなところ、つまり考える仕事、捻る仕事。付け加えたり、やめたりするような仕事。

私も戦略計画とかそういうのをずっとやってきてますけども、そういう仕事は結局、自動化できないです。昔Lotus Carsっていう会社が私をボストンに閉じ込めて、大前研一のつくる戦略計画ってのはこういうもんだっつって、雛形をつくらされましたけどね。

でもあんなの見てると、私自分でつくってておかしくてしょうがない。こんなの持ってきて俺が社長だったら「バカ、出直してこいって言うよ」と言ったんだけど。

そんなチープな計画じゃダメですよ。形式だけですから。だから今でいうところのパートみたいなのを、当時Lotus Carsも考えてたんです。そういうことで、考える仕事。それは施設とか人とか、事業計画とか、そういうの、何でもいいんですけど、そっちの仕事は移っていきません。クラウドでやるのも非常に難しいと思います。

何歳になってもチャレンジする意識を持つことが大切

「経営者の働き方はどう変わるか?」

経営者っていうのは、私はやっぱり「みんなにやれ」って言うんじゃダメです。自分でやってみると。そして会社のみんな、やってる人たちと意見を合わせたときに、わかるようにすると。最終的に経営者が判断しなきゃいけない。だから判断する人間として、使ったこともないと、君らに任せるよと、これは危険過ぎます。

ですからやっぱり1番経験のある人は、そういうものを自分で使ってみると。ダメだったら、私みたいに孫と一緒にやるのが1番です。孫と一緒にやると。息子とやるとなおいいと。こういうふうになってくると思いますよね。

すなわち経営者も自分で手を染める。自分で実際に感覚を持つことが重要です。任せて安心なんてことはないです。だからそこはぜひ、何歳になってもそういうことをやってもらいたいと。

私は今72歳なんですけど、バイクもやってるしスノーモービルもやるし、ジェットスキーもやるし、こちらのほうもやると。どれといってやらないもんはないと、そういうことで。ずっとそこに食いついていってると。

『インターネット革命』っていう本を書いたのは95年ですけど、ちょうど20年経ちましたけども。まだずっと革命が続いてるんで、なかなか手を休めないんですけど。

72歳でも関係ないんですよ。常にそこにチャレンジするという意識を持つということが重要で、その最大の武器は自分でやってみるということです。ですからぜひ、経営者もそういうことで考えていただきたいというふうに思いますね。

複数の企業を掛け持ちしていいのはイーロン・マスクぐらい

「クラウドを活用して、複数の企業を掛け持ちして働く生き方の可能性について」

やめてください。事業家になったら、1個に集中してください。そりゃあ、だからっていって2つも3つも掛け持ちして、マインドが集中できるかと。やっぱり企業っていうのは、考え続けて考え続けて、特にお客さんのことを考え続けて、それで商売になるもんですよ。だからそういうところで、楽になったからって2つも3つもっつったら。

イーロン・マスクだったら、スペースXとテスラモーターやっててもいいですけど、普通の経営者だったら、やっぱり1個に集中してとことんCustomer Satisfactionというところを追求してもらいたい。私でしたら、Student Satisfactionとかね。うちで受講してくれる人たちの満足度とか、そういうところを考えながらやると。

これはやっぱり、2つも3つもやってたらダメです。私もいくつかの会社をスタートしましたが、今はもう全部それを他人に譲って、大学というか経営のプラットフォームの仕事だけをやってるということですけれども。

この歳でもそれができてる理由は、1個に集中してるからです。ですからそういう意味では、簡単になったからって2つも3つもやっちゃいけないです。金があるからっつって、浮気を3つも4つもやっちゃいけないのと同じですよ。

理由は人間としての生き方、こっちを考えていただきたいと、こう思います。以上で質問終わりなんですけど、よろしいですか? どうもありがとうございました。皆さんの今後を祈ります。

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