CLOSE

【 CUZEN MATCHAトークイベント 】スポーツドクター 辻 秀一氏に学ぶ 「いつも『ごきげん』でいる秘訣」(全2記事)

「集中」はできても「リラックス」ができない現代人 スポーツドクターが語る、パフォーマンスを上げるための心の持ち方 

集中力の向上のために、テアニンとカフェインを同時に摂取できる抹茶が効果的であるという研究結果が発表されています。世界を舞台に抹茶の飲用を拡げるスタートアップ「CUZEN MATCHA(空禅抹茶)」が開催した本イベントでは、スポーツドクターの辻秀一氏をゲストに迎え、自分の心を整え、パフォーマンスを発揮するための方法をお届けします。 本記事では、辻氏がメンタルトレーニングを始めた背景や、人生における「ごきげん」の重要性について語ります。

心が整っていることが、最大の病気の予防

辻秀一氏(以下、辻):私は「ごきげん」を専門にしています。資格としては、医師免許証は持っています。医師免許証ってでかい賞状みたいなんですけど、運転免許証のように更新はないので、いったん取ると死ぬまで(有効です)。

でも、病院で病人を診ることは一切していません。健康な人がより健康に、スポーツ選手やみんなが自分らしく生きることを生業にしています。やはり「病は気から」なので、心が整っていることが、最大の病気の予防だと信じて疑っていないんです。

今、人間が克服できていない4つの病気は、がんと動脈硬化と感染症と認知症です。この4つ(になると)、不機嫌になるんですよ。なので、機嫌良くいることは、心だけじゃなくて身体の健康のためにも良いんですね。

松岡修造さんとは前から仲良くしているんですけど。修造さんが、あるテレビ番組で「アンガーマネジメント」の特集をされていて、「怒りのマネジメントだけじゃなくて、そもそも『ごきげん』でいることが最大のアンガーマネジメントなんじゃないか?」と。

「『ごきげん』と言えば、辻先生だ」と思い出してくださって、テレ朝の番組で2時間ぐらい一緒に語りました。オンエアでは切られましたけど、「ごきげん」について修造さんと話したりする仕事をしています。

私がこの仕事をするようになったのは、まさに『スラムダンク勝利学』を書いたことが1つのきっかけです。これは私が医者をやっている若い頃ですね。専門は膠原(こうげん)病・リウマチ内科という治らない自己免疫疾患で、1日20時間ぐらいむちゃくちゃ忙しく働いていました。

1日の質は、出来事ではなく心の状態で決まる

:30歳ぐらいで医者になって、すごくストレスを抱えている時に、ロビン・ウィリアムズが主演をしている『パッチ・アダムス』という映画を見たんですね。見たことある人、いますか?

(会場挙手)

少ないですね。人と関わる仕事をしている人は絶対見たほうがいいです。人とはどういうものなのか(がわかります)。

パッチ・アダムスは、「見えない心が人を動かしているんだ」と主張している、すばらしいお医者さんです。(パッチ・アダムスの)同級生でむちゃくちゃ勉強ができる人が、理論的に患者さんを診るんだけど、患者さんの心に寄り添えなくて悩んでいる時に、パッチ・アダムスに「どうしたらいい?」と聞くんです。

(パッチ・アダムスは)「そのおばあさんはスパゲッティが好きなんだから、スパゲッティのプールを作って一緒に飛び込めば、おばあさんは笑顔になるよ」と言って、一緒に飛び込んだりする。(この映画の)テーマが「クオリティ・オブ・ライフ」だったので、人生には質があるんだということが、すごく僕には刺さりました。

みなさんはいつも「質」を意識していますか? やらなきゃいけないことに追われていて、意識していないですよね。でも、思考や空間やみなさんの行動など、どんな時にも質があります。

みなさん、1日の質を決めるのは、その日に起こった出来事だと思っているんですけど、違うんですよ。パッチ・アダムスが来日して、「(1日の)質を決めるのは自分の心の状態なんだ」と言いました。

僕がいつもする話ですけど、例えば落ち込んで1日を過ごすと、1日の質は落ちませんか? 落ち込んだ日だけ、1日が10時間に減ることはないですよね。量は変わらないですけど、落ち込んでいると質が悪くなります。

例えばムカついたまま誰かと話すと、対話の質が落ちます。不安なまま何か行動していると、行動の質が落ちるんですよ。ということで、自分の心の状態が、あらゆる瞬間の質に大きく影響しているんだなと、僕は30歳で気づきました。

『スラムダンク』がメンタルトレーニングを広めるきっかけに

:「心のマネジメントをどうしたらいいのか」、は医学部では教わらなかったんですよ。精神科の授業や病んだ心の勉強はたくさんありますけど、どうやって心を整えるかという授業はなかったんです。そこで私が出会ったのが、応用スポーツ心理学、メンタルトレーニングなんですね。「心の状態をマネジメントするのも1つのトレーニングなんだ」と学びました。

心と言うと、下手をしたら「宗教か」「壺を売られるんじゃないか」みたいな印象をどうしても持たれがちです。でも「心技体」という言葉があって、スポーツはビビると負けるし、チームワークが悪いと負けるので、心の話をすごく明るく正々堂々とできるんですよね。

(心を)トレーニングをしていくのは1つのスキルなんだということを、日本に広めたいなと思いました。30年ぐらい前ですけど、その当時『スラムダンク』が流行っていたんですよね。この漫画を使ってメンタルトレーニングをしたらおもしろいなと思って、井上雄彦先生の許諾を得て、初めて書いた本が『スラムダンク勝利学』だったんです。

おかげさまでこの本が40万冊近く売れて、みんな「(メンタルトレーニングが)怪しくないんだ」とちょっとずつわかってきた。でも、当時はメンタルトレーニングと言っても、企業で採り入れてもらうとか(はできませんでした)。

アスリートのメントレをやっていても、「内緒にしておいてください」と言うアスリートが多かったんですよ。やはりまだネガティブな印象を持つ人が多かったんですね。

やっと最近は、アスリート自身がInstagramに載せてくれるようになったし、こうやって(イベントに)集まる人が増えました。「集中とリラックス」やメンタルトレーニングと言って、休日の11時に渋谷に人が来るなんて、昔は絶対になかったですよ。

(会場笑)

:そういう時代だったんですけど、だいぶ変わって今に至ります。

人間の脳は「自分に向き合う」のが苦手

:あとはドクターの資格を持っているので、「ウェルビーイング」を大事にする、いろんな企業のサポートをしています。今まで我々は、企業も含めて「ウェルドゥーイング」をやってきたんですよ。どうやっていいことをやるか、どう戦略を立てるか、どう「ドゥーイング」を遂行するか。奥歯を噛み締めて、気合と根性でがんばって「ウェルドゥーイング」をし続けてきました。

でも、これからはロボットやAIがウェルドゥーイングをやってくれるわけですよ。もちろん調子が悪くなる時もあるけど、(ウェルドゥーイングを)インストールすれば、折れずに24時間働いてくれますからね。

だけど、それをする人がどうなのか、人のあり方にやっと関心が向くようになってきたわけです。ベースの部分なんですが、例えば携帯は、どんなアプリを使うかの前に、アンテナが立っていないと駄目ですよね。Zoomでどんな会議をやるかの前に、Wi-Fiが立ってないと駄目ですよね。そこの部分が「ビーイング」なわけですよ。

「今日何をしたいのか」は、みなさんスマホや手帳に書いてありますけど、「今日、自分はどうありたいのか」を考えて生きてないですよね。どうしてかと言うと、人間の脳は外に向いていて、「自分に向き合う」のが苦手なんです。脳が外側に向いているから、物事の処理はすごく得意なんですよね。

それ(物事の処理)をしないと医学部に入れないわけで、学校教育で徹底的に学びます。でも、自分に向き合うなんてことは、医学部のテストや医師国家試験にも出ないんですよ。

(試験では)「こういう事象や症状の人がいたら、どういう診断をし、その鑑別診断は何か、その時の治療方法を選択せよ」ということじゃないですか。僕らは外に対応する能力ばっかり育てられて、自分の内側のマネジメントがすごく弱いんですよ。

外の対処能力のスーパースター(AI)が今世の中に出てきて、これだけじゃままならなくなったと。やっと内側のビーイングや心や質のような定量化しにくい部分に、人の関心が向き始めたように思います。

パフォーマンスを構成する2つの要素

:私の専門は心だけじゃありません。仕事や休むことや練習、試合といった、「人間の生きるすべてのパフォーマンスに心が関与していて、質を決めている」ということを専門にしています。心で完結してしまうと、ちょっと宗教家っぽくなっちゃうから、「いやいや、心は1つの手段ですよ」という話ですね。

それを図にまとめるとこうなります。私たちは「生きる」というパフォーマンス、行動を死ぬまでやります。常に何か結果や目標に追われ続けていきますよね。このパフォーマンスを構成する要素は2つしかありません。例外なく、すべての人がすべての瞬間、「内容」と「質」の2つの要素でパフォーマンスが決まります。このことを肝に銘じておく必要があります。

内容は「ドゥーイング」、何をするかという戦略です。みなさん、ドゥーイングはいつも考えてますよね。私も「何を話すのか」と頭をフル回転して考えていて、「認知の脳」と呼んでいます。

人間は動物よりも認知の脳が優れています。動物は生きるために「何を」しかしないのですが、僕らはビジネスやスポーツをするんです。(試合終了まで)残り3分を切って、5点差で負けている時に、どうやって追いつくのかをみんなで考えて、それを実行しようとするんです。それは(ドゥーイングを)認知するからです。

だからみなさん、今もうなずいたり、メモったり、写真を撮ったりする行動を決めてますよね。ここに犬が30匹いても、絶対こうならないですよね。

(会場笑)

:犬は(周りを)うろうろするわけですが、それは認知できないからですよね。この状況で「何をしたらいいのか」を常に問われ続けている一方で、自分では気づいていないですけど、今もみなさんは、それぞれの心の状態として何かを感じているわけですよ。

機嫌が悪くなると、パフォーマンスが下がる

:その何かしらを感じている状態で、心が乱れていて不機嫌だと、機能が下がります。機嫌が悪くなると、何をしていても質が落ちるという仕組みが僕らにはあります。

「俺だけは、イライラするといい仕事をする」という人はいないでしょう。「うちの選手だけは、不安になるとむちゃくちゃパフォーマンスが上がる」という選手を抱えているチームはないですよ。下手をすると選手たちにストレスをかけるんですよね。

「何をしなきゃいけないのか」を司るのが認知の脳で、常に問われ続けているから、この訓練はけっこうされているんです。「今、勝手に歌っちゃいけない」と学習しているから、みんな歌わずに座っていますよね。犬と違って、ここでトイレをしないですよね。「こういう状況では、大声を出して歌ってはいけない」と、みなさんは認知的に学習されているわけです。

子どもの頃はそれができないから、犬じゃなくても、3歳児が揃うとちょっとやばいですよね。まだ認知がしっかり学習できていないから、こうやって聞いてられません。つまり僕らは「集中せよ」というのは、ある意味けっこうやってるんです。

だけど、同時に心を整えて、リラックスしてごきげんでいることが、ないがしろになっています。ストレスを抱えながら、ただ気合と根性で我慢して、やるべきことをがんばってやってる人たちの集合体が今の文明です。でも、それだとスポーツでは負けます。

集中力を上げるための合わせ技

:つまり、するべきことに集中することは、みんなすごく学習しているんです。だから「集中しなきゃ」とはすごく思ってるけど、同時に心をリラックスしてごきげんでいることも、合わせ技で必要なんですよ。人間の脳みその中には、カフェインとテアニンが両方入ってないと駄目なんですよ。

みんなそれが苦手で、カフェインばかりとって「集中集中」とか言っているんです。それが仕事をすることだと思ってるんですけど、リラックス性とごきげん性が弱いから、それじゃよろしくないんです。

だから、この両者共存を実現して、食べる健康食品としての、カフェインとテアニンが入ってる抹茶がすばらしいんです。家にも僕のオフィスにも(CUZEN MATCHAが)あるし、「日頃飲むんだったらこれだよ」と言って、娘の会社や知り合いのオリンピック選手にもプレゼントしたりしてるんですよね。

心の状態はわかりにくいように思いますけど、内側にあるからわかりにくいだけで、簡単です。機嫌が良いか悪いかどっちかですよ。こっち側(機嫌が悪いほう)に傾けば、何をしていたとしても質が落ちる仕組みなんです。

某東京大学とかに行くと、「ごきげんをもっと定義してください」(と言われます)。定義じゃなくて「今機嫌が悪いですか?」という感覚が大事なんですけど、(みんな)定義が欲しくなるんですよね。

「今、私は機嫌がいいかどうか、先生ちょっと分析してもらえません?」と言われるんですが、いやいや、自分で感じてくださいと。「何かにとらわれていますか? そしたらちょっと機嫌悪いんじゃないですか?」という感じです。みんなすごくはっきりさせたがるんですけど、そんなにはっきりしていない。

組織における「ごきげん」な人材の重要性

:ただ、(言えることは)機嫌がいい方向か悪い方向かです。機嫌が悪い状態は心理学でノンフローと言います。一般用語で言う、ストレスを感じている状態が多くなればデプレッション。これは戻れない病気、うつの状態です。こっち側はゆらがず・とらわれずといった自然体な感じで、フローと言います。

無理にポジティブにしているのとはちょっと違います。後でも出てきますが、これの究極がゾーン(高い集中力を保ち、適度な緊張状態とリラックス状態が適切なバランスを維持できている状態)ですね。でも、今ゾーンになっていたらちょっと怖いですよね。ゾーンは究極だから、別に毎日ゾーンじゃなくてよくて、ちょっと機嫌のいい状態を作っていればいい。

みなさん、ほとんど仕事はここ(ノンフロー)で、休みに遊びに行けばここ(フロー)となってるんです。いやいや、仕事も日常もここ(フロー)じゃないとですよね。

私たちはみんな、いろんなことでゆらいだりとらわれたりして、こっち(ノンフロー)に行く要素が多いんです。なぜなら、不機嫌の原動力になるものに対して「解決していこう」と認知をするからです。ビジネスって、不便だから解決しようとしますよね。

なので、人間はごきげんになりにくいんですけど、フローな状態で機嫌が良いほうが、やはり結果や成果が出やすいし、変革や成長にも強くなるし、元気や健康の元になります。何より、心理的安全性や関係の質やチームとか、いろいろ大事にしなきゃいけない人間関係の根幹に、絶対にフローがあるんですよ。

いろんな企業でこのフローのトレーニングをする時に社長に言うのが、「フローの人材を増やしていかないと、組織のパフォーマンスが上がらないし、結果が出ない。そして変革や成長に強い組織になりにくい」と。みなさんが(物事に)とらわれていると、変革しにくいんです。

なんで子どもが成長するかと言うと、機嫌が良いからです。大人になると機嫌が悪くなって成長しにくいんですよ。「コロナの前はさ」「若い頃さ」とか言ってとらわれていると、変革や成長がしにくい。そして人間が生きる上ですごく重要な、健康や人間関係(にも影響します)。

不機嫌な時にした判断は間違いやすい

:あと、(機嫌が良い状態でいることは)脳の働きにも良いんです。機嫌が悪い時って、理解力が落ちるから、本を読んでても頭に入りにくくなりますよね。人間の機能が落ちて(理解力の)質が悪くなるので、不機嫌な時に判断や決断をすると間違いやすいんです。

携帯は壊れてないけど、アンテナが立ってない時って、Instagramの画面が見えにくいですよね。人間も一緒で、ノンフローになると、人間としての機能が圏外の方向に行って、質が落ちるから理解しにくくなるんです。

みなさん、パフォーマンスってアウトプットだけだと思ってますけど、人生はすごくインプットのパフォーマンスでできています。私は今アウトプットをしていそうだけど、みなさんの様子を超インプットしています。

なんとなくみなさんの様子をインプットしながら、僕はアウトプットしている。みなさんも今そうですよね。インプットを一方的にしていそうだけど、うなずいたりしてアウトプットしてますよね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 営業マネージャーが部下の育成でつまずきやすい“壁” おすすめのロープレのやり方、メンバーの質問力を上げるコツとは

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!