論理的な文章を作る2つのテンプレート

山口拓朗氏:(以下、山口):では、本題に入っていきます。今日は、論理的な文章になりやすいテンプレートを2つご紹介します。私がよく使っているテンプレートです。プラス、中盤では、「伝わる文章の書き方 5つのポイント」のご紹介をします。大きくこの3つをご紹介していきますよ。

簡単に言うと、テンプレートとは、文章の流れのことです。さっき「筋道を立てよう」と言いましたけど、それと同じ意味ですね。最初にこれを書いて、次にこれを書いて、その次にこれを書いて、最後にこれを書く。こういう大枠が決まっていると、ものすごく書きやすいんですね。スピード感も出ます。書くスピードも出やすくなります。

そして、このテンプレートは、当然読む人にとってわかりやすい順番になっています。それがまたとてもいいわけですね。なんとなくゼロから文章を紡いでいこうとすると、意外とスピードは遅いし、論理的にもなっていないし、伝わりにくい。わかりにくい。無駄な内容が多く必要なことが入っていない状態になってしまいます。

なので、これまでテンプレートを使ったことのない方は、ぜひテンプレートをご活用いただきたいと思います。

まず1つ目のテンプレートです。いきなりですけどちょっと文章を読み上げたいと思います。この文章を読み終えた方は、ぜひ感想を一言でチャットに書いていただきたいんです。読み上げますね。

「合宿スタイルの新人研修だと、毎日、家に戻りませんので、学生時代に夜更しなどの不規則な生活を送ってきた人にはメリットではないでしょうか。切磋琢磨する土壌が育まれますし、心の距離が近づきますし、必要な知識を効率よく学べます。

それと、早寝早起きの習慣も身につきます。管理されたスケジュールの中で寝食をともにしますから、社内の会議室で行うと、ノイズが多いため気が散りやすくなります。寝食をともにすることで、心の距離が近づき、一体感が高まります」

今、文章を読み上げました。この文章に対してあなたが感じたことを、一言でも二言でもかまいませんのでチャット欄に感想を教えていただけませんか? ありがとうございます。「何を伝えたいかがわかりません」。それは大変困った文章ですよね。

「何を言いたいのか不詳」ですね。ありがとうございます。「一番のメリットは?」と書いてありますので、おそらく一番のメリットが何かがよくわからない。「結局何を言いたいのかわからない」「イラっとします」。私もこの文章をいきなり突きつけられたら、ちょっとイラッとしますね。みなさんはどうでしょうか? これが、まさに論理的ではない文章の書き方になっています。

「間仕切り」の重要性

ここで最初に私がイメージする、伝わる文章のイメージを、みなさんにお伝えしたいと思います。目の前に箱があるんですね。この箱の中にあなたが伝えたいことを、どんどん入れていきます。相手に「はい、どうぞ」と箱を渡します。相手は読み手、読者ですね。

相手がその箱をもらった時に、「うわ、何この箱、汚ないな。何がどこに入ってんの? いろんなものが入ってるけど、よくわかんないな」。いろいろ探すんですけど、よくわからないわけですよ。「これじゃあ探せない。何かデータとか入ってるのかな? 入ってるっぽいけどわかんない」。これが、伝わらない文章の箱の渡し方。

伝わる文章の箱を渡す方は、相手がもらった時に、「あ、きれいですね。すごく整理整頓されていてうれしいです。ありがとうございます。こっちで整理する必要がないです。結論はここにありますね。理由もここにちゃんと書いてありますね。あ、これは具体例のA、B、Cですよね。これは補足情報で、これは必要なデータですね。これは明日からやるTo Doですね」。

こんな感じで一目瞭然です。だから相手の時間を奪わない。ストレスをかけていない。相手はとても喜んでくれる。理解しやすい。なんならそのまま誰かに渡したっていいわけですよね。けど、汚い箱を誰かに渡せますかね。渡せないですよね。だってぐちゃぐちゃですから。

伝わらない文章は、今お見せしているこの例文です。これはまさに汚い箱です。これをきれいな箱にする必要があるんですよ。箱の中にちゃんと間仕切りをする。何がどこに入っているかを、ちゃんとわかりやすい場所に配置していくことですね。

ここはちゃんと押さえておきたいんですけど、箱の中身は一緒です。一緒だけど、片や汚い、汚部屋みたいな箱。片や「すごくきれいですね。わかりやすいですね」。この違いです。

この例文はまさに汚い箱です。頭の中にあること、おそらくその場で思いついたことを、ただ書いているだけです。だから、インタビューの書き起こしっぽい感じになってしまうんですね。文章は相手にとって読みやすくしてあげなくてはいけないわけです。

箱の中に入れれば、書いた方は満足かもしれないですよ。「いやいや、私はここに全部書きましたから。誤解しているあなたが悪いですよね。ちゃんと書いていますから読んでください。あなた読解力がないんですか」と言うかもしれないですけど、箱のきれいさは、ものすごく重要ですよね。箱がきれいでないと、読み解くことも難しくなります。

プレゼン、営業、会議にも有効なテンプレート

そこで活用したいのがテンプレートです。汚部屋のように整理されていない文章を書いてはいけないので、まずお伝えをしたいのは、「列挙型」というテンプレートです。この型は、話し方や伝え方でも使われる、かなり有名な方法です。ビジネス文章でも非常に有効ですので、基本として押さえていただきたいと思います。

どういう感じで書いていくかと言いますと、まずは全体像を伝えます。例えば、「このスマートフォンを使うメリットは3つあります」のように、まずテーマと数を伝えます。「このスマートフォンを活用するメリット」、これがテーマ。テーマプラス列挙数を伝えます。そしてそのあと「3つあります」と言ったので、一つひとつの列挙ポイントを、1・2・3と伝えていくやり方です。

私は、よく木で考えるんですね。「幹」「枝」「葉」。木は「幹」が一番大事です。そこから「枝」が出ています。「枝」から「葉っぱ」が出ています。だからまず最初に「幹」から伝える。これが伝わりやすい文章の大原則です。細かい話から伝えてしまう方、書いてしまう方が多いんですよね。そうではなくて「幹」から伝える。その「幹」が「このスマートフォンのメリットは3つあります」、です。

「1つ目はこうです」「2つ目はこうです」「3つ目はこうです」。この型は、ビジネス文書だけでなく、あらゆる文章にお使いいただけますし、それこそ話し言葉でプレゼンテーションされる方、営業する方、打ち合わせや会議で発言する方もそうですね。

「私はAというプロジェクトに賛成です。理由は3つあります」、みたいな感じで伝えていくと、大きい「幹」から「枝」「葉」へと進んでいけるわけですね。では先ほどの文章を、このテンプレートに当てはめて読み上げます。

「合宿スタイルで新人研修を行うメリットは3つあります。1つ目が、仕事に必要な知識を効率よく学べる点です。社内の会議室で行う研修は、ノイズや誘惑が多く気が散りやすくなります。合宿形式であれば集中力を切らすことなく、学びを深めていくことができます。

2つ目が、時間管理されたスケジュールの中で、規則正しい生活を送れる点です。学生時代に不規則な生活をしてきた人も、正しい生活習慣を身につけることができるでしょう。3つ目は、同期同士の親交が深まる点です。寝食をともにすることで、心の距離が近づき、一体感が高まります。お互いに助け合い、切磋琢磨する土壌も育まれます。以上が合宿スタイルで新人研修を実施するメリットです」というかたちです。

「列挙型」の感想

少し固めの文章ですけど、全体の構造は理解いただけると思います。どうでしょうか? 先ほどとの違いを、一言で感想を書いていただけますか? 先ほどの汚部屋状態だった文章と、このテンプレートに当てはめた文章の違いを、感じていただけたと思います。こちらの列挙型のテンプレートについての、率直な感想をいただきたいと思います。

「すっきり読める」とても大事なポイントですね。「論理的かつ構造的な文章でわかりやすい」。論理的かつ構造的な文章。ものすごく大事なポイントですね。文章は自由な創作で、「表現力豊かに、自由に書きたいんだ」という書き方ももちろんあります。ただ、ビジネスシーンでまず大事なのは、論理的な文章です。構造がちゃんとしているもの。

「ポイントが最初に書かれているので、読み飛ばしがあっても大丈夫そう」。そうですよね。「ポイントが3つある」と書いてあるので、例えばこの列挙ポイントの1・2・3の、2番だけを拾い読みすることもできてしまうわけですよ。けど、さっきのぐちゃぐちゃな箱だと、どこに何が書いてるのかわからないから、そういう読み方もできない。

多少言い回しは変えていますが、先ほどと大きく文章を変えていないんですよね。でも、だいぶ読みやすくなったと思います。先ほどの文章と同じ情報が入っているんだけど、圧倒的にこちらのほうが読みやすい。これが、間仕切りされ、整理整頓された箱だと捉えていただけると、わかりやすいかなと思います。

伝わる文章の構造

それともう1つポイントがあります。それぞれの列挙ポイントの中身にご注目いただきたいんですけど、この中も小さい箱です。間仕切りされているからといって、この中身もぐちゃぐちゃにしてしまうとよくない。じゃあどうすればいいのか。(スライドに)色をつけます。

列挙ポイントの冒頭で、結論を必ず書いてください。そのポイントの結論です。そうすると列挙ポイントの中身も、またきれいに間仕切りされるわけですね。つまり整理整頓された文章になるんです。

冒頭で結論を示すとなぜいいのか。例えばこの文章を、上司に見せた。「いやいや多いよ。長いよ。内容はいいんだけど長いから半分に削って」と言われたら、5秒でこの文章を半分にすることができます。結論だけ残せばいいからですね。

結論だけ残すと、「1つ目が仕事に必要な知識を効率よく学べる点です」「2つ目が時間管理されたスケジュールの中で、規則正しい生活を送れる点です」「3つ目は同期同士の親交が深まる点です。以上が合宿スタイルで新人研修を実施するメリットです」と書く、あるいは伝えることができます。

つまり、伝わる文章とは構造です。構造が明確だと読む人は理解しやすい。そして、書き手自身も編集しやすいです。もし「倍に増やせ」と言われたら、「幹」は変えない。そして列挙ポイントの結論も変えません。ここは「幹」と「枝」だから、動かしてはいけません。

「幹」や「枝」は動かさずに、「葉っぱ」の部分を増やすんですよ。例えば、この列挙ポイント1・2・3、それぞれに、去年の合宿スタイルで行った研修の、何か具体的なエピソードを1個ずつ入れてあげると、倍ぐらいの量に増えていくんです。増やす時は「葉っぱ」です。

「幹」や「枝」は早々変えないです。大事な支柱ですよね。木の中で「幹」は支柱ですからここは変えない。「枝」も大事なものなのであまり変えない。けど、「葉っぱ」のところは増やしたり、削ったりすることができる。こういうイメージを持っていただきたいと思います。

おすすめするものを箇条書きで3つ書く

今日はしっかりと文章を書いていただくことができないので、箇条書きで3つ挙げていただけますか? あなたのおすすめのもの。例えば文房具とか、お化粧品とか、電化製品とか、そういう物理的なものでもいいし。あるいは小説とか、漫画とか、アニメとかでもいいです。何でもいいので、あなたのおすすめするものを3つ、箇条書きで挙げてください。

書き方としては、「私がおすすめするものは3つあります。①○○、②○○、③○○」みたいな感じで書いていただけますか? 例えば、「おすすめしたいものが3つあります。1つ目は、どこそこのメーカーの入浴剤です」。長文書く場合「この入浴剤はこういう成分が入っていて、入ると体はこんなふうに変化して、寝る時も寝入りがすごく良くなるんですよ」みたいなことが1個目に書かれていて。

2つ目が、「おすすめの小説が村上春樹の『ノルウェイの森』です」みたいな感じで小説を紹介して、「なぜそれがおすすめかと言うと」と理由が書かれていて、という感じですね。なので、まず先に結論を書くんですよ。ポイントの1・2・3の結論ですね。「○○の入浴剤です」「小説、村上春樹の『ノルウェイの森』」。そして最後、「毎朝の30分のランニングです」みたいな感じで、ポイントの結論をちゃんと書く。

「列挙型」を使う時は、上から順番に丁寧に書くやり方もあるんですけど、最初に結論だけ決めてしまうやり方もあります。結論だけを先に書いて、そのあと葉っぱの部分のボリュームを増やしていく。理由を書いたり、詳細を書いたりしていくんですね。

(チャットを見て)「ゴールドジム」。ゴールドジムが良い理由を、3つ挙げてくれているのかな。「お風呂に入れる」「カリキュラムが豊富」。自分が好きなものを1つ挙げて、そのおすす勧めの理由を3つ挙げるワークもありますので、そんなエクササイズでもいいですよね。まさにこの方はそうですね。

「ゴールドジムをおすすめします」と。その理由は3つある。1つ目が「お風呂には入れる」。そして「カリキュラムが豊富」。最後は「プールがある」。いいですね。

まず先に結論で、それがポイントの柱となります。そのあとはお風呂についての説明だったり、どんなカリキュラムがあるのかの説明だったり、プールの中でもいろんなプログラムがありそうですから、それを書いておくと。簡単に、複数の情報を整理整頓したい時に、この「列挙型」テンプレートが使えますので、ご活用いただきたいと思います。

もうひと方来ましたね。「健康のためにおすすめするもの3つ。ウォーキング、パーソナルトレーニング、タンパク質を摂る」。いいですね。どれも、健康のためにはすごく良さそうだなと思いますね。

説得力を高めるためには、この結論のあとの理由ですよね。なぜウォーキングがいいのか。なぜパーソナルトレーニングがいいのか、なぜタンパク質を摂るといいのか。さっき言った論理的な文章は、理由が明確なほど伝わりやすくなり、説得力が高まりますので、実際に長文を書く時には、そこも活かしていただきたいと思います。