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伝わる論理的な文章の書き方セミナー~伝わる文章の書き方5つのポイントとは?~(全6記事)

ビジネスに必要な「具体化」する力を損なう言葉の使い方 相手に誤解を与えない、効率的なコミュニケーションのコツ

東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』の著者で、伝える力【話す・書く】研究所の所長・山口拓朗氏が登壇したイベントの様子をお届けします。今回は、伝わる文章を書くためのポイントが紹介されました。

前回の記事はこちら

文頭から句点で終わるまでの、一文に入れる情報の数

山口拓朗氏(以下、山口):では第2講に入ります。「伝わる文章の書き方 5つのポイント」です。この5つのポイントはもしかしたら、「そんなことはわかっているよ」という内容かもしれません。ただ、知っていることとできることは、また違うと思うんですよね。私自身、この「伝わる文章の書き方 5つのポイント」を実践できているかというと、時々できていないことがあります。

「あ、やっちゃった」と思うこともあります。それぐらい、文章はすごくデリケートです。わかっていても、わかりにくく書いてしまうことがある。チェックポイントを押さえているんだけど、それが活かされていない時がある。もう知ってる項目があったら、それはご自身へのリマインドだと思って、やっていただきたいと思います。

その1、「一文一義で書く」です。「一文一義」とは何でしょうか? 一文一義の「義」は、意味の「意」と書いて「一文一意(いちぶんいちい)」という言い方をする時もあります。どちらでもOKです。「一文一義」か「一文一意」ですね。

日本語は文章にした時、最後に丸が打たれます。句点と呼ばれるものですね。句点を打つまでの一文の中に盛り込む情報は、1個の情報にしましょう。1個の意味にしましょう。これが「一文一義」です。

わかりやすい文章を作る上で、ものすごく大事なポイント、原則ですけど、これができていない方がかなり多いです。つまり一文が長い。長いからその中に2つ、3つ、4つとたくさんの意味が入るわけです。

なぜ一文が長いとわかりづらいのか

例文をお見せしたいと思います。まず読み上げますね。

「本日の会議でご指摘いただいたのは、店舗改修のコンセプトと費用についてで、コンセプトは最終的に『昭和レトロ』の方向でまとまりましたが、現段階で150万円ほど予算オーバーしているため、内装の仕様を再検討する予定です」。

この文章、一文が100文字以上、おそらく120文字くらいあります。長いです。じゃあどれぐらいが目安かというと、私の肌感覚で言いますと、長くても一文70文字ぐらい。長くてもですよ。だから、通常は20文字とか30文字とか40文字ぐらいで、進めていったほうがいいと思います。

じゃあ、改善してみましょう。まず多義。混乱してしまいますね。シンプルに丸を打ってみてください。

そうすると「本日の会議でご指摘いただいたのは、店舗改修のコンセプトと費用についてです。コンセプトは最終的に昭和レトロの方向でまとまりました。現段階で150万円ほど予算オーバーしているため、内装の仕様を再検討する予定です」。

このほうが読みやすいです。変わらないと思う人もいるかもしれないんですけど、世の中には読解力が低い方もかなりいらっしゃいます。読解力が低い方が読みにくい文章は、一文が長い文章です。一文が長くなればなるほど、情報がただストックされて、結論が先延ばしされるわけですね。

そうすると頭の中で混乱してきて、意味がわからなくなってしまいます。短い一文で、「ここ、わかった」「あ、次もわかった」「その次もわかった」と持っていってあげないと、あなたが読めたとしても、読解力が低い人は読めない。この現実をぜひ知っていただき、読者に優しい文章を書いていただきたいです。その優しさが「一文一義」です。

載せなくていい情報はできるだけ削る

もう1個例を挙げたいと思います。

「当塾では、契約しているコンサルティング会社の指示によって、既存の塾生の満足度を上げられるよう、成果達成の数値化やサポートシステムの稼働状況についてのアンケート調査を実施いたしました」。

先ほどよりは短いけど、100文字ぐらいあると思います。長いです。この例文を載せたのは、もう1個理由があります。(スライドに)色をつけましたが、「当塾では」「アンケート調査を実施いたしました」のように一文が長いと、主語と述語が離れるんですよ。

これが離れると、理解しにくくなる。述語が結論ですから、述語にたどり着くまでに、すごく間があるわけですね。そうすると、どうしても頭の中は混乱する。書き手にとっても、一文が長いと、主語と述語がまったく対応していなかったり、子どもが書くような文章になってしまう人がけっこういます。一文が長い文章は、すごくリスクを秘めていると思ってください。

こういうケースでは丸をつけるだけではなくて、主語と述語を近づける処理も必要です。こんな感じです。

「当塾では、塾生の成果達成の数値化やサポートシステムの稼働状況についてのアンケート調査を実施いたしました。このアンケートは、塾生の満足度を高めることを目的としています」。

最初に結論を書いて、そのあと理由を書いていますよね。ここをちゃんと分けてあげたほうが、読む人の理解が進むと思ってください。そしてカットしたところもあります。「契約しているコンサルティング会社の指示によって」という文章をカットしました。

何をカットするかは、もちろん相手が必要か必要でないかを判断基準にしてください。今回はこの「契約しているコンサルティング会社の指示によって」という文章は、わざわざ書かなくても、読む相手はわかっているよね、という感じですね。

必要なものを入れないといけないんだけど、載せなくていいものはできるだけ削る。これが文章の鉄則です。なので読み返した時に、一文が長くないかな? あるいは不要な情報が入ってないかな? と見極めながら、修正をしていただきたいと思います。というわけで、「一文一義の原則」、お伝えしました。

ビジネスに必要な「具体化」する力を損なう言葉の使い方

2つ目にいきます。「具体的に書く」です。今、具体的に書けない人が増えています。理由はいろいろあります。時間がないので理由は割愛しますが、例えばふだんの生活の中で、「ヤバイ」みたいな言葉ですべてを終わらせている方は、「ヤバイ」より先を伝えられない。

そうすると、どんどん具体化力が損なわれていきます。けれど、ビジネスシーンでは、具体的でない文章は非常に誤解を招きやすいです。いきなりですが、文章を読み上げます。

「仮に、課金・決済システムをホームページに組み込む場合、少し費用がかかります」。なんてことのない文章です。営業メールか何かの一文を取り出したかたちですけど、この文章で気になるところはありますか? おそらく、みなさんが気になっているところは、「少し」の部分ではないでしょうか?

「少しの費用」とはどれぐらいですかね? ぜんぜんわからない。5万円ぐらいでやってくれるのかな? そのあと何回かメールのやり取りをして、最後に金額提示がされました。50万円です。

「え? 50万円? 少しって書いてありましたよね」と相手は言います。「いやいや、50万円は安いほうですよ。本当は、100万円ぐらいするシステムですから、今回大奉仕です」「とてもそんな予算はありません。今回はすみません」となってしまうわけですね。

つまり、「少し」という言葉は共通認識がないわけです。5万円と50万円だったわけですから、そこに開きがある。こういった言葉を使ってしまうと、とたんに非効率、そして非生産的なやり取りが生まれてしまう。誤解を招きやすくなるんですね。

最初から「約50万円の費用がかかります」と伝えてあげれば親切だし、相手も「あ、50万円か」と、それをもとに検討することができると思います。これが具体的に書くということですね。

他にもよく見かける文章としては、「最寄り駅からそこそこ歩きます」。「そこそこ」ってどれぐらいですかね。5分を「そこそこ」という人もいるし、「そこそこは30分ぐらいじゃないですか」という人もいるんですよ。つまりそれは共通認識がないから使えません。

改善文として、「最寄りの大手町駅から9分ほど歩きます」と書いてあげれば、親切だし、具体的に言葉を紡いでいます。大手町のあたりは地下鉄の駅も多いですから、「最寄り駅」という言葉すら誤解されやすいんですよ。

「最寄り駅って日本橋駅かと思っていました」「京橋駅だと思っていました」となってくるんですよね。なので、そこもちゃんと固有名詞を使う。あるいは数字を使う。固有名詞と数字は究極の具体化ですから、特にビジネスシーンでは固有名詞、数字を使えるところは積極的に使ってください。

この「大手町駅から9分ほど歩きます」をもっと親切に言うのであれば、「大手町駅のA4出口から9分ほど」としてあげれば、さらに具体的です。どこまで具体的に書けばいいかは、相手にあなたがどこまで親切にしたいかです。具体的に書くとは、相手に親切に情報を伝えることだと思ってください。

曖昧な言葉はできるだけ使わない

具体化は伝わる論理的な文章の書き方のベースでもありますね。抽象的であればあるほど誤解されやすいです。「格好いいデザインです」。格好いいデザインって何ですか? 伝わらないですよね。だったら白と黒のモノトーン調で、モダンなテイスト……。

「モダンなテイストとは、こうです」と伝えてあげれば、あなたが思う「格好いい」が伝わるわけですね。でも、「格好いいデザインでお願いします」と言ったら、上がってきたデザインに「どこが格好いいんですか?」となってしまうわけです。言葉を具体的にしましょう。

「資料を多めによろしくお願いします」。これもけっこうひどい文章ですが、上司から部下に送った文章だった場合、「会議資料は8部印刷のうえ、参加者全員に配布願います」と、これぐらいぜひ書いていただきたいんですね。「資料って会議資料のことか。8部印刷すればいいんだね。参加者全員に配布すればいいのね」。誤解がないわけですね。

でも最初の文章は、「え、資料って何でしたっけ?」「多めにってどれぐらいですかね?」「よろしくお願いって何をお願いされているんでしょう」となってしまうわけです。これはもう、本当に非効率ですし非生産的ですよね。

じゃあ改善文がベストかと言うと、「会議資料って、今私は会議を5本ぐらい並行して持ってるんですが、どれですかね」となったらアウトです。その場合は「プロジェクトBの営業資料を8部印刷の上」としてあげないといけないわけですね。

だからどこまで具体化するかは、相手がどこまで知識レベルがあるか、どこまで自分が伝えようとしている情報を把握しているか。それに応じて変えなくてはいけないんです。日本語は特に、抽象的な言葉が非常に多いので、注意して使わなくてはいけません。

「なるべく早くお願いします」とか、そういう言葉はふだんから使わない方がいいです。もう封印してください。「金曜日の午後3時までにメールでお送りください」と伝えてあげたほうがいい。伝わらないとあなたが損をしてしまいますから。

相手もそうですよね。「なるべく早くと言っていたから、別に来週でいいのかと思っていました」と言われてしまうわけですから、そういった曖昧な言葉は、できるだけ使うのをやめましょう。

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